mandate
第一音節に強勢があります。/æ/ は日本語の「ア」と「エ」の中間のような音で、口を少し大きく開けて発音します。『ン』は、続く 'd' の影響で、口を閉じずに鼻から息を抜くように意識すると自然です。最後の /t/ は、息を止めて破裂させずに終わらせる(内破)と、よりネイティブに近い発音になります。
専門的な内容に関するご注意
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委任
権限や任務を正式に与えること。選挙で選ばれた代表者が国民から託される権限、企業が従業員に与える権限など、公式な場面で使われることが多い。
The new mayor received a strong mandate from the people to improve the city.
新しい市長は、市を改善するために国民から強い信任(権限)を得ました。
※ この例文は、選挙で選ばれたリーダーが、国民からの大きな支持(『委任』された権限)を得て、新しいことを始める情景を描いています。「mandate」は、特に政治の文脈で、国民が政府やリーダーに与える『信任』や『負託』という意味で非常によく使われます。国民が「この人に任せる!」という意思表示をした結果の『権限』と考えると分かりやすいでしょう。
Our team's mandate is to find new ways to reduce energy consumption in the office.
私たちのチームの任務は、オフィスでのエネルギー消費を減らす新しい方法を見つけることです。
※ この例文は、会社や組織の中で、あるチームや委員会に『与えられた特定の任務や権限』を指しています。会議室で、チームメンバーが真剣に話し合い、自分たちの『委任された役割』を理解している様子が目に浮かびます。「a team's mandate is to do something」のように、『〜の任務(権限)は〜することだ』という形でよく使われます。
The school board issued a mandate for all students to wear masks during class.
教育委員会は、全生徒に授業中にマスクを着用するよう義務付ける指令を出しました。
※ この例文では、「mandate」が政府や公的な機関が持つ権限に基づいて『公式に発行する命令や指令』という意味で使われています。学校で、新しいルールが発表され、生徒たちがそれに従っている情景を想像できます。これは、その機関が『委任された権限』で行う、ある種の強制力を持つ指示です。「issue a mandate」で『指令を出す』という表現を覚えておくと便利です。比較的フォーマルな文脈で使われます。
委任する
権限や任務を人に託すこと。フォーマルな状況で、責任や権限を明確にして人に任せるニュアンス。
The manager mandated the team to finish the report by Friday.
マネージャーはチームに、金曜日までにその報告書を終えるよう指示しました。
※ この文は、会社や組織で上司が部下に対し、特定の任務や責任を正式に「委任する」「指示する」場面を描いています。締め切りが迫る中で、マネージャーがチームに明確な指示を出している様子が目に浮かびますね。`mandate + 人(または組織)+ to do` の形で、『〜に…するよう委任する/指示する』という意味でよく使われます。
The new law mandates all citizens to wear masks in public places.
新しい法律は、すべての市民に公共の場所でマスクを着用することを義務付けています。
※ この文は、政府や公的な機関が、国民や団体に対して特定の行動を「義務付ける」あるいは「指示する」場面を示しています。法律や規則によって、ある行動が強制力を持って求められる状況です。ニュースなどで、法的な義務や指示について話す際によく耳にする表現です。
The voters mandated the mayor to improve public transportation in the city.
有権者たちは、市長に市内の公共交通機関を改善するよう(権限を)委任しました。
※ この文は、選挙などで、有権者(市民)が選んだ政治家に対して、特定の政策の実行を「委任する」という、少し政治的な文脈での使い方です。市民の期待や意思が、選ばれた人物への「任務」として託されている情景が伝わります。国民の負託に応える、といったニュアンスも感じられますね。
指令
公式な命令や指示。政府や組織が発行する法的拘束力のある命令を指すことが多い。
Our boss announced a new company mandate: everyone must use the new software by next month.
私たちの上司は新しい会社の指令を発表しました。来月までに全員が新しいソフトウェアを使わなければなりません。
※ 会社の上層部や経営陣が従業員に対して出す「公式な指示」や「義務」として使われる典型的な例です。上司が会議で新しいルールを読み上げ、社員が「やらなければならない」と感じるような具体的な行動を促す場面が目に浮かびますね。
The city council issued a clear mandate for all residents to recycle plastic bottles.
市議会は、全住民にペットボトルをリサイクルするよう明確な指令を出しました。
※ 政府や自治体などの公的な機関が、市民や住民に対して「守るべきルール」や「義務」を課す場合によく使われます。ニュースで発表を聞き、市民がリサイクルに取り組む様子が想像できますね。'issue a mandate'(指令を出す)は非常によく使われる表現です。
The client gave us a strict mandate to finish the project by Friday.
クライアントは、金曜日までにプロジェクトを終えるという厳しい指令を私たちに出しました。
※ ビジネスの場面で、顧客や依頼主が「必ず守ってほしい要求」や「指示」を出す際に使われます。期限や品質など、重要な事柄について「譲れない指示」というニュアンスが伝わり、金曜日までの達成に向けて奮闘する状況を想像できます。
コロケーション
明白な信任、明確な委任
※ 選挙や投票などによって、ある政策や行動に対する支持が明確に示された状態を指します。単に『mandate』と言うよりも、支持の強さや正当性を強調する際に用いられます。政治的な文脈で頻繁に使われ、政府やリーダーが政策を推進する根拠となります。例えば、『The president won the election with a clear mandate to reform the healthcare system.(大統領は医療制度改革を行う明確な信任を得て当選した)』のように使います。反対に、支持が弱い場合は 'weak mandate' と表現します。
広範な権限、包括的な委任
※ 特定の範囲に限定されず、広い範囲の活動を許可する権限を指します。組織や個人が、多様な問題や課題に取り組むために必要な自由度を持つことを意味します。ビジネスシーンや国際関係でよく用いられ、『The CEO has a broad mandate to restructure the company.(CEOは会社を再構築するための広範な権限を与えられている)』のように使われます。関連語として、'narrow mandate' (限定的な権限)があります。
信任を求める、委任を得ようとする
※ 選挙や投票などを通じて、国民や関係者からの支持を得ようとすることを意味します。政治家やリーダーが、自身の政策や計画を実行するために必要な正当性を得るために行います。『The prime minister will seek a fresh mandate in the upcoming election.(首相は次の選挙で新たな信任を求めるだろう)』のように使います。これは、リーダーシップの正当性を確立し、政策を推進する上で非常に重要な行為です。
権限を逸脱する、委任の範囲を超える
※ 与えられた権限や任務の範囲を超えて行動することを指します。組織や個人が、本来許可されていない行為を行う場合に用いられます。ビジネスや法律の分野でよく使われ、『The committee exceeded its mandate by approving the project without proper authorization.(委員会は適切な承認なしにプロジェクトを承認し、権限を逸脱した)』のように使われます。これは、責任の所在を明確にする上で重要な概念です。
委任を受けて、指示のもとで
※ 特定の権限や指示を受けて行動することを意味します。組織や個人が、上位機関や依頼主からの指示に基づいて活動する場合に用いられます。『The company is operating under a mandate from the government to reduce emissions.(その会社は政府からの排出量削減の指示のもとで操業している)』のように使われます。この表現は、責任の所在と行動の根拠を明確にするために重要です。
民主的な信任、民主的な委任
※ 国民の自由な意思に基づいた選挙や投票によって与えられた信任を指します。政府やリーダーが、国民の支持を得て政策を実行する正当性を持つことを意味します。政治的な文脈で頻繁に使われ、『The government claims to have a democratic mandate for its reforms.(政府は改革に対する民主的な信任を得ていると主張している)』のように使われます。これは、政治的正当性を強調する上で重要な概念です。
強力な信任、強い委任
※ 非常に多くの支持を得て、政策や行動に対する承認が揺るぎないことを意味します。リーダーシップの安定性や政策の実現可能性を高める上で重要です。『The new law has a strong mandate from the public.(新しい法律は国民からの強力な信任を得ている)』のように使われます。 'clear mandate' と同様に、支持の強さを強調する際に用いられます。
使用シーン
学術論文や研究発表で、研究の根拠や正当性を示す際に使用されます。例えば、「本研究は先行研究の知見を委任(mandate)されており、さらなる発展を目指す」のように、研究の基盤となる権威や承認を意味する文脈で使われます。また、政府や研究機関からの研究委託(mandate)を受けていることを示す際にも用いられます。
ビジネスシーンでは、プロジェクトの推進や組織運営における「指令」「権限」「委任」といった意味合いで使用されます。例えば、「取締役会からの指令(mandate)を受け、新規事業を立ち上げる」や、「市場調査を行う権限(mandate)を与えられた」のように、公式な指示や権限の付与を指すことが多いです。また、顧客からの委託(mandate)を受けて業務を遂行する場合にも使用されます。
日常会話ではあまり使われませんが、政治や社会問題に関するニュース記事や討論番組などで見かけることがあります。例えば、「国民は選挙を通して政府に変化を求める指令(mandate)を与えた」のように、選挙結果や世論が政府や組織に与える影響力を表す文脈で使用されることがあります。また、稀に、友人との会話で「親から部屋を片付けるように言われた(mandated)」のように、やや大げさな表現として使われることもあります。
関連語
類義語
権限を与えること、または与えられた権限そのものを指す。ビジネスや法律の文脈で、正式な許可や承認を意味することが多い。 【ニュアンスの違い】"mandate"が選挙などを通じた国民からの委任というニュアンスを含むのに対し、"authorization"はより一般的な権限付与を意味する。上司から部下への指示、システムへのアクセス許可など、幅広い場面で使用される。 【混同しやすい点】"mandate"が政治的な意味合いを持つ場合があるのに対し、"authorization"はより事務的・技術的な文脈で使用されることが多い。政治的な文脈で"authorization"を使うと、権限の正当性が疑問視される可能性がある。
権威、権力、権限を意味する。個人や組織が持つ支配力や影響力を指すことが多い。学術的な議論やニュース報道など、フォーマルな文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】"mandate"が具体的な指示や任務を伴う委任であるのに対し、"authority"はより抽象的な権力を指す。例えば、警察は法に基づいて"authority"を持つが、特定の事件について捜査する"mandate"を与えられる。 【混同しやすい点】"authority"は不可算名詞として「権威」や「権力」を意味する一方、可算名詞として「権威者」や「専門家」を意味することもある。"mandate"は通常、具体的な指示や任務を指すため、人に対して使うことはない。
公式な指示、命令、指令を意味する。政府機関や企業などが、組織内部または外部に対して出す公式な指示を指すことが多い。ビジネスや行政の文脈でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"mandate"が国民からの委任という正当性を含むのに対し、"directive"は組織内の階層構造に基づく指示というニュアンスが強い。トップダウン型の指示系統を想起させる。 【混同しやすい点】"directive"は、必ずしも支持や賛同を伴うとは限らない。組織の方針として一方的に出される指示である場合もある。一方、"mandate"は、支持基盤や合意形成を前提としている。
任務、委任、委託を意味する。特定の任務や調査などを誰かに依頼する際に使われる。芸術作品の制作依頼や、公式な調査委員会の設置など、比較的フォーマルな文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】"mandate"が広範な支持に基づく委任であるのに対し、"commission"は特定の目的のために選ばれた個人またはグループに対する委任である。より限定的な任務を指す。 【混同しやすい点】"commission"は動詞としても名詞としても使用される。動詞の場合は「委託する」という意味になり、名詞の場合は「委託された任務」または「手数料」という意味になる。文脈によって意味が異なる点に注意。
指示、命令、指導を意味する。具体的な行動や手順を示す際に使われる。取扱説明書や料理のレシピなど、日常的な場面でも使用される。 【ニュアンスの違い】"mandate"がより広範な権限や任務を伴うのに対し、"instruction"は特定の行動や手順に関する具体的な指示を指す。より限定的で具体的な内容を伝える。 【混同しやすい点】"instruction"は、通常、具体的な行動や手順に関する指示であり、その背景にある理由や目的は必ずしも明示されない。一方、"mandate"は、なぜその任務が重要なのか、どのような目標を達成すべきかといった背景情報を含むことが多い。
正当な理由、根拠、許可証を意味する。警察が家宅捜索を行うための捜索令状や、製品の品質を保証する保証書など、法律や契約に関連する文脈で使用されることが多い。 【ニュアンスの違い】"mandate"が国民からの委任という正当性を含むのに対し、"warrant"は法律や契約に基づく正当性を示す。より客観的で法的な根拠に基づいている。 【混同しやすい点】"warrant"は、動詞として「正当化する」という意味も持つ。ある行動や意見が正当である理由を示す際に使用される。一方、"mandate"は動詞として使われることは稀である。
派生語
- remand
『差し戻す』という意味の動詞。接頭辞『re-(再び)』と『mandate(命令する)』が組み合わさり、『再び命令する』から転じて、法廷で事件や容疑者を一旦差し戻し、再調査や審理を命じる意味合いで使われる。主に法律・裁判関連の文脈で使用される。
『要求する』という意味の動詞。接頭辞『de-(下に、完全に)』と『mandate(命令する)』が組み合わさり、『強く命令する』から転じて、権利や正当性に基づいて何かを強く要求する意味合いを持つ。日常会話からビジネス、政治まで幅広い場面で使用される。
『義務的な』という意味の形容詞。『mandate』に形容詞化の接尾辞『-ory』が付いた形。命令されたこと、つまり義務として行わなければならないことを指す。契約書、法律、規則など、フォーマルな文脈で頻繁に使用される。
反意語
『拒否権』という意味の名詞、または『拒否する』という意味の動詞。『mandate』が権限を与えて実行を命じるのに対し、『veto』は権限を行使して実行を阻止する。政治的な文脈で、特に大統領や国連安全保障理事会の常任理事国が持つ拒否権を指す場合によく使われる。
『自由裁量』という意味の名詞。『mandate』が特定の行動を義務付けるのに対し、『discretion』は個人の判断に任せることを意味する。ビジネスや法律の文脈で、規則や指示に縛られず、状況に応じて最適な判断を下す権限や能力を指す。
『権利放棄』という意味の名詞。『mandate』がある権利や義務を保証するのに対し、『waiver』はその権利や義務を自発的に放棄すること。契約、保険、スポーツなど幅広い分野で使用される。たとえば、訴訟を起こす権利の放棄などが該当する。
語源
「mandate」はラテン語の「mandatum」(委任されたこと、命令)に由来します。これは「mandare」(委任する、命令する)の過去分詞形です。「mandare」はさらに、「manus」(手)と「dare」(与える)という二つの要素から構成されています。つまり、元々は「手に委ねる」「権限を与える」といった意味合いでした。現代英語における「委任」「指令」といった意味は、この「権限を与える」という根源的な意味から派生したものです。たとえば、選挙で国民から「mandate(委任)」を得た政治家は、国民の「手」によって権限を与えられたと解釈できます。このように語源を辿ることで、単語の持つ意味合いをより深く理解することができます。
暗記法
「mandate」は、単なる命令を超え、権威の源泉をめぐる物語を内包します。中世の王権神授説では、神から与えられた絶対的な権威を意味しましたが、社会契約説の登場で、国民からの信託へと意味合いが変化。現代では選挙を通じた国民の意思として、政府に与えられる政治的な権限を指します。文学では、シェイクスピアのハムレットが父の霊から受けた復讐の「mandate」のように、重い責任と義務を伴う、希望と未来を託された概念なのです。
混同しやすい単語
『mandate』と『mandatory』は、スペルが非常に似ており、意味も関連するため混同しやすい。しかし、『mandate』は名詞(権限、命令)または動詞(命令する)として使われるのに対し、『mandatory』は形容詞で「義務的な」「必須の」という意味です。日本人学習者は、文脈の中で品詞を意識し、名詞・動詞と形容詞の違いを明確にすることが重要です。語源的にはどちらもラテン語の『mandatum』(命令)に由来しますが、使い方が異なります。
『mandate』と『mend』は、語頭の音が似ており、特に発音練習が不十分な場合、聞き間違えやすい。また、スペルも最初の2文字が同じであるため、視覚的にも混同しやすい。『mend』は動詞で「修繕する」「直す」という意味であり、『mandate』とは全く異なる意味を持ちます。日本人学習者は、発音の違い(/mæn/ vs. /mend/)を意識し、文脈から意味を判断する練習が必要です。
『mandate』と『manage』は、語頭の音が似ており、どちらもビジネスや政治の文脈で使われることがあるため、意味の混同も起こりやすい。『manage』は「管理する」「経営する」という意味であり、『mandate』の持つ「権限」や「命令」の意味合いとは異なります。日本人学習者は、それぞれの単語が持つニュアンスの違いを理解し、適切な文脈で使い分ける必要があります。
『mandate』と『maintain』は、どちらも何かを維持したり、継続したりする意味合いを持つため、文脈によっては意味の混同が起こりやすい。『maintain』は「維持する」「整備する」という意味であり、『mandate』の持つ「権限」や「命令」という強い意味合いはありません。日本人学習者は、それぞれの単語が持つ意味の範囲を理解し、文脈に応じて適切な単語を選択する必要があります。
『mandate』と『mundane』は、スペルの並びが一部似ており、特に急いで読んでいるときなどに視覚的に混同しやすい。『mundane』は形容詞で「ありふれた」「平凡な」という意味であり、『mandate』とは全く異なる意味を持ちます。日本人学習者は、単語を注意深く読む習慣を身につけ、スペルの違いを意識することが重要です。
『mandate』と『demand』は、どちらも何かを強く求める意味合いを持つため、意味の混同が起こりやすい。『demand』は「要求する」「需要」という意味であり、『mandate』の持つ「権限」や「命令」の意味合いと重なる部分があります。しかし、『mandate』はより公式な、または権威的なニュアンスを持つことが多いです。日本人学習者は、それぞれの単語が持つニュアンスの違いを理解し、文脈に応じて適切な単語を選択する必要があります。
誤用例
日本語の『〜を義務付ける』という発想から、mandateを『mandate 人 to do』の形で使ってしまう誤用です。確かにmandateは『〜に義務を課す』という意味を持ちますが、この構文は一般的ではありません。正しくは、mandateは『〜を(法的に、公式に)義務付ける』というニュアンスで、主に『mandate something』の形で使われます。人の行動を直接的に義務付ける場合は、require, order, instructなどが自然です。日本人は、命令や義務といった行為主体を明確にしたがる傾向がありますが、英語では、行為そのものに焦点が当てられることが多いです。
mandateは『国民からの信任』という意味合いを持ちますが、『信任を得たから何でもできる』という解釈は誤りです。これは、政治における権力に対する考え方の違いに起因します。日本では、選挙で選ばれた政治家は、国民の代表としてある程度の裁量権を持つと考えられがちですが、英語圏(特にアメリカ)では、mandateはあくまで『政策の方向性に対する支持』と解釈されます。信任を得た政治家は、国民が期待する政策を実行する責任を負うのであり、決して無制限の権力を持つわけではありません。この背景には、権力分立やチェック・アンド・バランスといった、西洋の政治思想があります。
mandateは、個人的な『許可』や『権限』を表す言葉としては、やや大げさで不自然です。mandateは、組織や集団から与えられた、公式な権限や委任を意味します。個人の裁量で何かを行う場合は、authorization(許可)やpermission(許可)を使う方が適切です。日本人は、何らかの行動を起こす際に『〜しても良い』という許可を得ることに慣れていますが、英語では、状況に応じて自律的に判断し行動することが期待されます。そのため、許可を求める場合でも、mandateのような強い言葉を使うと、かえって不自然に聞こえることがあります。
文化的背景
「mandate(権限、命令)」は、単なる指示ではなく、与えられた側の責任と義務を強く伴う、公的な委託、あるいは使命を意味します。その背景には、統治の正当性、社会契約、そして「天命」といった、権威の源泉をめぐる文化的・歴史的な概念が深く関わっています。
「mandate」という言葉は、古代ローマの時代から存在し、元々は「委託された任務」を指していました。しかし、その文化的重みを増したのは、中世ヨーロッパにおける王権神授説です。王は神から統治の権限を「mandate」された存在であり、その権威は絶対的なものでした。この考え方は、王が国民に対して負うべき責任よりも、国民が王に従うべき義務を強調するものでした。しかし、ルネサンス以降、社会契約説の台頭とともに、「mandate」の意味合いは変化し始めます。ジョン・ロックやジャン=ジャック・ルソーといった思想家は、政府の正当性は、神ではなく国民の同意に基づくと主張しました。この考え方によれば、政府は国民から「mandate」を受けて統治するのであり、その権限は国民の信託によって制限されるべきものとなります。
現代の民主主義国家において、「mandate」は選挙を通じて国民から政府に与えられる政治的な権限を指すことが一般的です。選挙で選ばれた政府は、国民の意思を反映した政策を実行する「mandate」を持っていると考えられます。しかし、選挙結果の解釈をめぐっては、しばしば議論が起こります。例えば、ある政党が過半数の議席を獲得した場合、その政党はすべての政策について国民から「mandate」を得たと言えるのか、あるいは、特定の政策についてのみ「mandate」を得たと言えるのか、といった問題です。また、低い投票率の場合、「mandate」の正当性はどの程度なのか、といった議論も存在します。このように、「mandate」は、現代社会においても、権力、責任、そして民主主義のあり方を考える上で、重要な概念であり続けています。
文学作品においても、「mandate」はしばしば重要なテーマとして扱われます。例えば、シェイクスピアの『ハムレット』では、ハムレットは亡き父の霊から復讐の「mandate」を受けますが、その実行をためらい、苦悩します。この物語は、「mandate」を受け取った者が、その責任をどのように果たすべきか、あるいは、果たすことができるのか、という普遍的な問いを提起しています。また、SF作品においては、「mandate」はしばしば、人類全体の未来を左右するような重大な任務を指すことがあります。例えば、宇宙探査ミッションの乗組員は、地球からの「mandate」を受けて、未知の惑星を探査し、人類の生存の可能性を探ります。これらの物語は、「mandate」が、単なる指示ではなく、希望、責任、そして未来への期待を背負った、重い託しものであることを示唆しています。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、語彙問題。稀にリスニングでも。
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。特に1級の長文読解で登場しやすい。
- 文脈・例題の特徴: 政治、経済、社会問題など、やや硬めのテーマで出題されることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「命令」「権限」「委任」など複数の意味があるので、文脈に応じた訳し分けが重要。動詞と名詞の両方の用法を理解しておくこと。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)。
- 頻度と級・パート: 比較的頻出。特にビジネス関連の文章でよく見られる。
- 文脈・例題の特徴: 企業の方針、プロジェクトの指示、契約書など、ビジネスシーンでの使用が中心。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「職務権限」「委任」の意味で使われることが多い。類義語の「authorize」との違いを理解しておくと役立つ。
- 出題形式: リーディングセクションで頻出。
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻繁に登場する。
- 文脈・例題の特徴: 政治学、社会学、歴史学など、学術的なテーマで使われることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「国民の信任」「政府の権限」といった意味で使われることが多い。抽象的な概念を表す文脈で登場することが多いため、文脈全体を理解することが重要。
- 出題形式: 主に長文読解問題。文脈から意味を推測させる問題が多い。
- 頻度と級・パート: 難関大学の入試で頻出。標準的な大学でも稀に出題される。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、政治、経済など、論説文でよく見られる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈によって意味が大きく変わるため、前後の文脈から正確な意味を判断する必要がある。類義語との識別も重要。