benevolence
強勢は2番目の音節「ne」にあります。/ə/(schwa)は曖昧母音で、弱く短く発音します。「v」は有声の唇歯摩擦音で、上の前歯を下唇に軽く当てて息を摩擦させます。「l」は舌先を上の歯茎につけて発音します。「ンス」は、語尾の/s/をしっかり発音することが重要です。日本語の「ス」よりも息を強く出すイメージで。
善意
他者の幸福を願う気持ち。親切心や思いやりといった意味合いを含む。行動の動機となる内面的な感情を指すことが多い。
The old woman showed great benevolence by sharing her warm blanket with the shivering stray cat.
その老婦人は、震えている野良猫に温かい毛布を分け与えることで、大きな善意を示しました。
※ この例文では、見知らぬ弱い存在(野良猫)に対する優しさが「benevolence」として描かれています。誰かが困っているときに、具体的な行動で助けの手を差し伸べる「親切心」や「思いやり」といった意味合いで使われる典型的な場面です。'show benevolence' で「善意を示す」という表現も覚えておくと便利です。
The company's benevolence led them to build a new community center for the town.
その会社の善意が、町のために新しい公民館を建設することにつながりました。
※ ここでは、「benevolence」が企業や団体が行う社会貢献活動の動機として使われています。単なる利益追求ではなく、地域や社会のために何か良いことをしようとする「慈善の心」や「公共心」を表しています。'benevolence led them to do...' は「善意が彼らを~するよう導いた」という、結果を表す自然な表現です。
His gentle smile and eyes full of benevolence made everyone feel comfortable around him.
彼の優しい笑顔と善意に満ちた瞳は、周りのみんなを心地よくさせました。
※ この例文では、「benevolence」が人の性格や態度、特にその人の内面からあふれる優しさや親切な気持ちを表しています。言葉にしなくても、表情や雰囲気から伝わる「温かい心」を描写するのに適しています。'eyes full of benevolence' のように、人の特徴を表す際にもよく使われます。
慈善活動
善意に基づく具体的な行動。寄付やボランティア活動など、困っている人々を助けるための活動全般を指す。
A kind old man often showed his benevolence by giving food to stray cats.
親切な老人は、野良猫に食べ物を与えることで、よくその慈善の心を示していました。
※ この例文では、個人の「慈悲の心」や「善意」が、野良猫に食べ物を与えるという具体的な「慈善行為」として表れています。日常のささやかな善行もbenevolenceと表現できる、温かい場面です。
The local church organized a special event to raise money for benevolence in the community.
地元の教会は、地域社会の慈善活動のためにお金を集める特別なイベントを企画しました。
※ ここでは「benevolence」が、地域全体を支援するための「慈善活動」や「チャリティー活動」を指しています。教会や団体が社会貢献のために行う活動によく使われる、典型的な文脈です。
Thanks to the queen's benevolence, a new hospital was built for the poor.
女王陛下の慈善活動のおかげで、貧しい人々のための新しい病院が建設されました。
※ この例文では、「benevolence」が女王の「寛大な寄付」や「慈悲深い支援」といった、具体的な大規模な慈善行為を指しています。影響力のある人物の行動によって、社会に大きな良い変化がもたらされる場面で使われます。
寛容さ
他者の過ちや欠点を受け入れる心の広さ。単なる許容ではなく、理解や共感を含んだ、より積極的な態度を意味する。
The old man showed great benevolence by sharing his food with the hungry child.
そのおじいさんは、お腹を空かせた子供に食べ物を分け与えることで、大きな寛容さを示しました。
※ この例文は、困っている人に対して親切な行動を取る「寛容さ」を表しています。目の前でお腹を空かせた子供に、自分のもっているものを分け与えるおじいさんの温かい気持ちと行動が「benevolence」として描かれています。日常の小さな善意の行動にこの単語が使われる典型的な例です。
Many people appreciate the benevolence of the foundation that helps poor families.
多くの人々が、貧しい家族を助けるその財団の寛容さに感謝しています。
※ ここでは、「benevolence」が慈善団体や組織が行う社会貢献活動、つまり集団的な「善意」や「慈悲」を表しています。財団が困っている家族を助けるという具体的な行動が、多くの人々に感謝される「寛容さ」として表現されています。組織的な活動にも使われる典型的な例です。
Her decision to forgive him came from a place of deep benevolence.
彼を許すという彼女の決断は、深い寛容さから来ていました。
※ この例文では、「benevolence」が人の内面的な性質や、行動の動機としての「寛容さ」を示しています。誰かを許すことは、簡単ではないこともあります。しかし、彼女が相手を許したその行為が、心の奥底にある「慈悲」や「寛容さ」から生まれたものだと伝わります。人の心のあり方を表現する際にも使われます。
コロケーション
善意の行為、慈悲の行為
※ 最も基本的なコロケーションの一つで、具体的な善行を指します。単に「benevolence」と言うよりも、行為の主体や対象を明確にすることで、より具体的な状況を表すことができます。例えば、「He performed an act of benevolence by donating to the charity.(彼は慈善団体に寄付することで善意の行為を行った)」のように使われます。フォーマルな場面や報道などでよく見られます。
慈悲心、博愛の念
※ 内面的な感情や心の状態を表すコロケーションです。単に「優しさ」と言うよりも、より普遍的で深い人間愛や寛容さを含意します。「She felt a sense of benevolence towards the refugees.(彼女は難民に対して慈悲の念を抱いた)」のように、特定の対象に向けられた感情を表すことが多いです。文学作品や心理学的な議論でよく用いられます。
(人や物に)惜しみなく慈悲を注ぐ
※ 「shower」は「降り注ぐ」という意味で、benevolenceを惜しみなく与える様子を比喩的に表現しています。「The king showered benevolence upon his loyal subjects.(王は忠実な臣下たちに惜しみなく慈悲を注いだ)」のように、権力者や恵まれた立場にある人が、弱い立場の人々に対して恩恵を与える状況を描写する際に使われます。やや古風な言い回しで、文学的な響きがあります。onとuponはほぼ同義ですが、uponの方がよりフォーマルです。
〜に対する慈悲、〜に対する善意
※ 前置詞「towards」と組み合わせて、benevolenceの対象を明確に示す表現です。「His benevolence towards the poor was well-known.(彼の貧困層に対する慈悲はよく知られていた)」のように、特定のグループや個人に対する善意を強調する際に使用します。客観的な記述や報道など、様々な場面で使われます。
神の慈悲、神の恵み
※ 「divine」は「神の、神聖な」という意味で、神による慈悲深さや恩恵を表します。「They thanked God for his divine benevolence.(彼らは神の慈悲に感謝した)」のように、宗教的な文脈でよく使われます。より一般的な「God's benevolence」という表現も可能です。
慈悲を実践する、善行を行う
※ 「practice」は「実践する、実行する」という意味で、benevolenceを行動に移すことを意味します。「He practiced benevolence by volunteering at the local shelter. (彼は地元のシェルターでボランティアをすることで慈悲を実践した)」のように、具体的な活動と結びつけて使われることが多いです。倫理的な議論や道徳教育の文脈でよく用いられます。
慈悲心に動機づけられて
※ 行動の背後にある動機が慈悲心であることを強調する表現です。「Motivated by benevolence, she dedicated her life to helping others.(慈悲心に動機づけられて、彼女は人生を他者への奉仕に捧げた)」のように、高潔な行為や献身的な活動を説明する際に使われます。ややフォーマルな印象を与える表現です。
使用シーン
学術論文や研究発表で、特に社会科学や倫理学の分野で使われることがあります。例えば、「利他行動の根源には、人間の根源的なbenevolence(善意)が存在する」のように、理論や概念を説明する際に用いられます。文語的な表現です。
ビジネスシーンでは、CSR(企業の社会的責任)に関する報告書や、従業員の行動規範を定める際に使われることがあります。例:「当社の企業理念は、社会に対するbenevolence(慈善)の精神に基づいています」のように、企業の姿勢を示すフォーマルな文脈で用いられます。日常会話ではほとんど使いません。
日常会話ではあまり使われませんが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、慈善活動や人道支援について語られる際に登場することがあります。例えば、「その財団は、多大なbenevolence(慈善活動)によって、多くの人々の生活を改善してきた」のように、やや硬い表現として用いられます。
関連語
類義語
慈善行為、慈善団体、慈愛。困っている人や恵まれない人々への金銭的、物質的な援助を指すことが多い。名詞。 【ニュアンスの違い】「benevolence」よりも具体的な行為や組織を指すことが多く、金銭的な支援や寄付といった意味合いが強い。しばしば組織的な活動を伴う。フォーマルな場面で使われることが多い。 【混同しやすい点】「benevolence」はより一般的な善意や親切心を指すのに対し、「charity」は具体的な慈善活動や寄付行為を指すという点で意味が限定される。また、不可算名詞としても可算名詞としても使われる点に注意。
同情、哀れみ、思いやり。他者の苦しみに対する深い共感と、それを軽減したいという気持ちを表す。名詞。 【ニュアンスの違い】「benevolence」が善意に基づく行動を指すのに対し、「compassion」は他者の苦しみに対する感情的な反応を強調する。より個人的で感情的なニュアンスを持つ。日常会話や文学的な表現でよく使われる。 【混同しやすい点】「benevolence」は行動を伴うことが多いが、「compassion」は感情的な共感にとどまる場合もある。また、「compassion」は苦しんでいる人への感情であるため、対象が限定される。
寛大さ、気前の良さ。金銭、時間、資源などを惜しみなく提供する性質を指す。名詞。 【ニュアンスの違い】「benevolence」がより広い意味での善意であるのに対し、「generosity」は具体的な提供行為に焦点を当てる。しばしば、金銭的な寛大さを意味する。日常会話やビジネスシーンで使われる。 【混同しやすい点】「benevolence」は必ずしも具体的な提供を伴わないが、「generosity」は常に具体的な提供を伴う。また、「generosity」はしばしば見返りを求めない行為を指す。
親切、優しさ、思いやり。他者に対する友好的で親切な態度や行為を指す。名詞。 【ニュアンスの違い】「benevolence」よりも日常的な場面で使われ、より個人的な親切心や優しさを表す。形式ばらない関係での好意的な行為を指すことが多い。日常会話で頻繁に使われる。 【混同しやすい点】「benevolence」はより普遍的で組織的な善意を指すのに対し、「kindness」は個人的で具体的な親切心を指す。また、「kindness」はしばしば小さな行為を指す。
利他主義。自己の利益よりも他者の幸福を優先する考え方や行動を指す。名詞。 【ニュアンスの違い】「benevolence」が善意に基づく行動全般を指すのに対し、「altruism」は自己犠牲を伴う利他的な行動を強調する。哲学や社会学の文脈でよく使われる。 【混同しやすい点】「benevolence」は必ずしも自己犠牲を伴わないが、「altruism」は常に自己犠牲を伴う。また、「altruism」は倫理的な概念として扱われることが多い。
- humanitarianism
人道主義。人道的精神に基づき、人々の苦痛を軽減し、生活を改善しようとする思想や活動を指す。名詞。 【ニュアンスの違い】「benevolence」が個人的な善意に基づく行動を指すのに対し、「humanitarianism」はより大規模で組織的な人道支援活動を指す。国際的な援助活動や人権擁護活動などが含まれる。フォーマルな場面で使われることが多い。 【混同しやすい点】「benevolence」は個人的な行為にも適用されるが、「humanitarianism」は通常、組織的または大規模な活動を指す。また、「humanitarianism」は特定のイデオロギーや原則に基づいていることが多い。
派生語
『有益な』という意味の形容詞。『bene-(良い)』と『facere(作る、行う)』を組み合わせた語根に、形容詞化の接尾辞『-ial』が付いた形。benevolenceが『善意』という心の状態を表すのに対し、beneficialは『良い結果をもたらす』という効果・影響を表す。日常会話からビジネス、学術論文まで幅広く使われる。
『恩人』『慈善家』という意味の名詞。『bene-(良い)』と『facere(行う、作る)』を組み合わせた語根に、人を表す接尾辞『-tor』が付いた形。benevolenceが抽象的な善意であるのに対し、benefactorは具体的な行為によって恩恵を与える人を指す。フォーマルな場面や、慈善活動に関する文脈で使われることが多い。
『受益者』『恩恵を受ける人』という意味の名詞。『bene-(良い)』と『facere(行う、作る)』を組み合わせた語根に、人や物を表す接尾辞『-ary』が付いた形。benevolenceが『善意』という行為の動機であるのに対し、beneficiaryはその行為によって利益を得る人を指す。法律、保険、遺産相続などの文脈で頻繁に使われる。
反意語
- malevolence
『悪意』『敵意』という意味の名詞。接頭辞『male-(悪い)』と『volere(願う、欲する)』を組み合わせた語根を持つ。benevolenceが他者への善意であるのに対し、malevolenceは他者への悪意を意味する。文学作品や心理学の分野で、人間の暗い側面を描写する際に使われることが多い。
『利己主義』『わがまま』という意味の名詞。benevolenceが他者への配慮を含むのに対し、selfishnessは自己の利益のみを追求する態度を指す。日常会話から社会問題の議論まで、幅広く使用される。benevolenceの対義語として、行為の動機における対立を示す。
『残酷さ』『冷酷さ』という意味の名詞。benevolenceが優しさや慈悲深さを意味するのに対し、crueltyは意図的に苦痛を与える行為や性質を指す。歴史的な出来事、犯罪、虐待などの文脈で使われ、感情的な対立を明確に示す。
語源
「benevolence」は、ラテン語の「benevolentia」に由来します。これは「良い(bene)」と「意志、望み(volens)」という二つの要素から構成されています。「bene」は「well(良い)」を意味し、例えば「benefit(利益)」や「benediction(祝福)」などにも見られる接頭辞です。「volens」は「velle(望む)」の現在分詞形で、「voluntary(自発的な)」や「volunteer(ボランティア)」といった単語と共通の語源を持ちます。したがって、「benevolence」は文字通りには「良い意志」や「良い望み」を意味し、それが転じて「善意」「慈善活動」「寛容さ」といった意味合いを持つようになりました。誰かのことを思って「良い」ことを「願う」気持ち、と考えると覚えやすいでしょう。
暗記法
「博愛」は、支配者が社会秩序を保つためのツールでもありました。中世の騎士道では忠誠心を引き出す手段、近代では資本家が社会不安を鎮めるための慈善活動として利用されました。ディケンズの『クリスマス・キャロル』のスクルージの施しは贖罪の象徴です。現代では共感に基づく行動を指しますが、権力構造が背景に存在し、自己満足やイメージ戦略に利用されることも。真の博愛は、対等な関係と相互尊重に基づいた社会を目指すものなのです。
混同しやすい単語
『benevolence』と『malevolence』は、接頭辞 'bene-' (良い) と 'male-' (悪い) が反対であるため、意味も正反対です。スペルも非常に似ており、注意が必要です。意味は『悪意』や『敵意』です。文脈をよく読み、どちらの接頭辞が使われているかを意識することが重要です。
『benevolence』は名詞、『benevolent』は形容詞です。意味はどちらも『慈悲深い』に関連しますが、文法的な役割が異なります。例えば、『He showed benevolence.』(彼は慈悲深さを示した) と『He is a benevolent person.』(彼は慈悲深い人だ) のように使い分けます。品詞を意識することで、正確な英文を作成できます。
『malice』は『悪意』という意味で、『malevolence』と意味が近いですが、スペルと発音が異なります。『malice』はより日常的な言葉で、個人的な恨みなど具体的な悪意を指すことが多いです。一方、『malevolence』はより抽象的で、組織的な悪意や運命的な悪意を指すことがあります。発音とニュアンスの違いに注意しましょう。
『benevolence』と『evidence』は、どちらも名詞であり、語尾が似ているため、スペルを間違えやすいです。『evidence』は『証拠』という意味であり、全く異なる概念を表します。文脈から意味を判断し、スペルを正確に覚えることが重要です。
『violence』は『暴力』という意味で、語尾の '-lence' が共通しているため、スペルを混同しやすいです。また、どちらも抽象的な概念を表す名詞であるため、文脈によっては意味を取り違える可能性もあります。スペルと意味の違いを明確に区別しましょう。
『benefit』は『利益』や『恩恵』という意味で、語頭の 'bene-' が共通しているため、関連付けて覚えやすい一方で、混同しやすい側面もあります。『benevolence』は『慈悲深さ』という抽象的な概念であるのに対し、『benefit』は具体的な利益や恩恵を指します。それぞれの単語が持つ意味の範囲を理解することが大切です。
誤用例
While 'benevolence' implies well-meaning kindness, using it to describe a large-scale company benefit can sound inappropriately sentimental or even naive. 'Largesse' is more suitable for describing generous provisions, especially from an organization. Japanese learners might directly translate '慈悲' (jihi) or '恩恵' (onkei) as 'benevolence,' but in English, 'largesse' better captures the institutional nature of the benefit without implying an emotional connection.
'Benevolence' generally describes a disposition or quality of being well-meaning and kindly. While it *can* refer to a specific act of kindness, it's less common and can sound overly formal or even slightly sarcastic in everyday conversation. 'Kindness' is a more direct and natural way to express sincere appreciation. Japanese learners might choose 'benevolence' because it feels like a stronger, more emphatic version of 'kindness,' but English favors directness in expressing simple gratitude.
While 'benevolence' isn't strictly incorrect here, 'generosity' is a better fit because it focuses on the act of giving rather than the underlying disposition. 'Benevolence' suggests a deeper, more philosophical kindness, which can clash with the subsequent mention of bragging. The juxtaposition creates an awkward contrast. Japanese learners, seeking a sophisticated word, might opt for 'benevolence,' overlooking that 'generosity' more accurately reflects the specific action and avoids potentially inflated connotations. In this context, 'generosity' is also more aligned with the common saying "actions speak louder than words," which is a universally understood concept.
文化的背景
「benevolence(博愛、慈悲深さ)」は、単なる親切心を超え、特に支配階級や権力者が示すべき美徳として、社会秩序の維持や正当化に深く結びついてきました。中世ヨーロッパの騎士道精神から、近代のパターナリズム(温情主義)まで、その時々の社会構造を反映しながら意味合いを変化させてきた言葉です。
中世においては、領主や騎士が農民や弱者に対して示す「benevolence」は、単なる施しではなく、彼らの忠誠心を引き出し、社会の安定を保つための重要な手段でした。これは、キリスト教的な慈善の精神とも結びつき、教会や修道院が貧しい人々への施しを行うことも「benevolence」の一環とみなされました。文学作品においては、アーサー王物語に登場する円卓の騎士たちが、弱者を守り、困窮者を助ける姿が「benevolence」の象徴として描かれています。ただし、この時代の「benevolence」は、しばしば身分制度の維持を目的としており、真の意味での平等や解放を目指すものではありませんでした。
近代に入ると、「benevolence」は産業資本家や政治家が社会福祉政策や慈善活動を通じて示す態度を指すようになります。これは、資本主義社会における格差の拡大に対する批判をかわし、社会不安を鎮めるための手段として用いられました。例えば、19世紀のイギリスでは、工場主が労働者のために学校や病院を設立することが「benevolence」とされ、その一方で、低賃金や劣悪な労働環境といった根本的な問題は放置されることもありました。ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』に登場するスクルージが、改心後に貧しい人々に施しをする姿は、「benevolence」による社会的な贖罪の象徴として解釈できます。しかし、この「benevolence」もまた、しばしばパターナリズム的な性格を帯びており、施しを受ける側の人々の主体性や尊厳を尊重するものではありませんでした。
現代においては、「benevolence」はより広い意味で、他者への思いやりや共感に基づいた行動を指すようになりました。しかし、その背景には、依然として権力構造や社会的な不平等が存在しており、「benevolence」が単なる自己満足やイメージ戦略に利用されることもあります。真の「benevolence」は、施しを与える側と受ける側の間の対等な関係を築き、相互の尊重と連帯に基づいた社会の実現を目指すものでなければなりません。その意味で、「benevolence」は、常にその社会的文脈を考慮し、批判的な視点を持つことが求められる言葉であると言えるでしょう。
試験傾向
準1級、1級で語彙問題や長文読解で出題される可能性があります。特に、文章の内容一致問題や空所補充問題で、文脈から「benevolence」の意味を推測させる形式が多いです。ライティングで「charity」や「kindness」などの類義語との使い分けを意識しましょう。リスニングでの出題頻度は低めです。
Part 5, 6, 7の読解問題でまれに出題される可能性があります。ビジネスの文脈よりも、社会貢献活動や企業の姿勢を説明する文章で使われることが多いです。選択肢として「generosity」などの類義語が提示される場合があるので、微妙なニュアンスの違いを理解しておく必要があります。TOEIC Speaking/Writingでの使用は稀です。
リーディングセクションで、アカデミックな文章(歴史、社会学、心理学など)において出題される可能性があります。文脈から意味を推測させる問題や、パラフレーズ(言い換え)を選ぶ問題で問われることが多いです。ライティングセクションで使う場合は、やや硬い印象を与える可能性があるため、適切な場面で使用する必要があります。リスニングでの出題頻度は低めです。
難関大学の長文読解問題で出題される可能性があります。文脈から意味を推測させる問題や、内容説明問題で問われることが多いです。単語の意味だけでなく、文章全体の内容を理解する力が求められます。和訳問題でbenevolenceを含む文を正確に訳せるように練習しておきましょう。記述問題で「慈悲深さ」や「博愛」といった意味を記述できる必要があります。