seduce
第一音節の母音 /ɪ/ は日本語の「イ」よりも曖昧で、口をあまり開けずに発音します。「duce」の部分は、英語の「デュー」に近い音ですが、日本語の「ジュ」よりも唇を丸めて前に突き出すように発音するとより正確です。強勢は第二音節にありますので、「ヂュース」を意識して強く発音しましょう。
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誘惑する
魅力的な言葉や行動で相手を惹きつけ、自分の意のままにしようとする。恋愛、ビジネス、政治など様々な文脈で使用される。相手を欺くニュアンスを含む場合もある。
The bad friend tried to seduce him into skipping class.
その悪い友達は、彼を誘惑して授業をサボらせようとした。
※ この例文は、悪い影響を持つ人が、相手を望ましくない行動へ引き込もうとする場面を描いています。単に誘うだけでなく、魅力的な言葉や説得で、相手の気持ちを悪い方向へ強く引きつけようとするニュアンスが伝わります。'seduce 人 into doing something' の形で、「人を誘惑して~させる」という典型的な使い方です。
The sweet smell of the cake tried to seduce her, but she resisted.
ケーキの甘い香りが彼女を誘惑しようとしたが、彼女は抵抗した。
※ ダイエット中の彼女が、ショーウィンドウに並んだケーキの甘い香りに強く引きつけられているけれど、懸命に我慢している場面です。人だけでなく、食べ物や魅力的な物事(機会、アイデアなど)も『seduce』の対象になります。'tried to seduce' は「誘惑しようとした」という意味で、強い誘惑があった状況を表します。'resisted' は「抵抗した」という意味で、誘惑に打ち勝つ様子を描写しています。
The huge amount of money could easily seduce him to betray his team.
巨額のお金は、彼を簡単に誘惑してチームを裏切らせるだろう。
※ 目の前に大金があり、それが彼をチームを裏切るという、道徳的に間違った選択肢に引き込もうとしている状況です。大きな利益や権力など、抽象的なものが人を誤った道に導くような文脈で使われます。'seduce 人 to do something' も「人を誘惑して~させる」という使い方です。'could easily seduce' で、「簡単に誘惑しうる」という可能性と、それに伴う危険性を表しています。
そそのかす
本来気が進まないこと、あるいは道徳的に良くないとされることを、言葉巧みに促す。悪いことを企むニュアンスを含むことが多い。
He tried to seduce her into stealing the money.
彼は彼女をそそのかして、お金を盗ませようとした。
※ この例文は、誰かが相手を道徳的に良くないことや、するべきでないことに引き込もうとする、最も典型的な「そそのかす」の使われ方を示しています。映画や物語で、悪者が弱い立場の人を操ろうとする場面を想像してみてください。動詞の後に「人」、そして「into + 動名詞」で「〜するようそそのかす」という形を覚えると便利です。
The sweet smell of the cake easily seduced me into buying it.
ケーキの甘い香りが、私を簡単にそそのかしてそれを買わせた。
※ この例文は、「seduce」が物や状況の「抗しがたい魅力」によって、人が特定の行動を取ってしまう様子を表しています。まるで、甘い香りがあなたを誘惑し、思わず財布の紐を緩めてしまうような情景が目に浮かびますね。ここでは「そそのかす」が、人の意志を惑わせるような強い誘惑を意味しています。
The clever salesman tried to seduce me into buying an expensive car.
その巧みなセールスマンは私をそそのかして高価な車を買わせようとした。
※ ここでは、セールスマンが言葉巧みに、あるいは魅力的な提案で顧客を自分の望む行動(高価な車を買うこと)に誘導しようとする場面を描いています。単に「誘う」のではなく、相手の判断力を鈍らせ、惑わすような「そそのかし」のニュアンスが伝わります。ビジネスシーンや交渉の場で、相手を巧みに説得しようとする状況で使われることがあります。
引き込む
魅力的な何か(例えば、本、映画、ゲームなど)が人の注意や興味を強く惹きつけ、夢中にさせる。良い意味で使われることが多い。
The mysterious old painting truly seduced me with its deep colors and hidden details.
その神秘的な古い絵画は、深い色合いと隠れた細部で私の心をすっかり引き込んだ。
※ 美術館で一枚の絵に心を奪われ、時間が経つのも忘れて見入ってしまう様子を描写しています。「seduce」は、人だけでなく、芸術作品や美しい景色などが持つ魅力によって、見る人や体験する人の心を強く惹きつける場合にも使われます。ここでは絵画が持つ神秘的な魅力に「引き込まれる」様子を表しています。
The tempting smell of freshly baked bread seduced me into the small bakery.
焼きたてパンの魅力的な香りに誘われて、私は小さなパン屋さんへ引き込まれた。
※ 街を歩いていて、ふと漂ってきたパンの香りに抗えず、思わずお店に入ってしまう様子をイメージしてください。「seduce」は、このように五感に訴えかける抗いがたい魅力によって、人が何か行動を起こしてしまう状況でよく使われます。「seduce + 人 + into + 場所/行動」で「人を〜へ引き込む」という意味になります。
The difficult puzzle completely seduced my attention, making me forget everything else.
その難しいパズルは私の注意を完全に引き込み、他のすべてを忘れさせた。
※ とても難しいけれど面白いパズルに没頭し、周りのことが全く気にならなくなる様子を表しています。「seduce」は、人の注意や心を強く捉え、集中させるという意味でも使われます。ここでは、パズルが持つ魅力が、学習者の集中力を「引き込む」様子を描いています。「making me forget...」は、その結果として起こったことを説明する表現です。
コロケーション
(人)を誘惑して~させる
※ この構文は、seduceの後に直接目的語(誘惑する相手)を置き、さらにinto + 動名詞を続けることで、「~するように誘惑する」という具体的な行為を示します。単に魅力で惹きつけるだけでなく、言葉巧みに、あるいは状況を利用して相手をある行動へと導くニュアンスが含まれます。例えば、"He seduced her into investing in his failing company"(彼は彼女を誘惑して、経営不振の会社に投資させた)のように使われます。ビジネスシーンや、倫理的に微妙な状況を描写する際によく用いられます。
約束で誘惑する
※ seduceの対象が「人」ではなく、「約束」という抽象的な概念である点がポイントです。甘い言葉や実現可能かどうか疑わしい約束で相手を惹きつける状況を表します。政治的な文脈や、マーケティング戦略を批判的に語る際に用いられることがあります。例えば、"The politician seduced voters with promises of lower taxes"(その政治家は減税の約束で有権者を誘惑した)のように使われます。注意点として、seduceは性的な意味合いを帯びることもありますが、ここではそうした意味合いは薄く、むしろ欺瞞的なニュアンスが強調されます。
五感を魅了する
※ この表現は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感を刺激し、快楽や陶酔感を与えることを意味します。文学作品や、高級な商品・サービス(香水、料理、音楽など)の広告でよく用いられます。例えば、"The exotic spices seduced the senses"(エキゾチックなスパイスが五感を魅了した)のように使われます。"appeal to the senses"(五感に訴える)という類似表現がありますが、seduceの方がより積極的で、抗いがたい魅力で引き込むニュアンスが強くなります。
~から誘い出す、引き離す
※ この表現は、seduceが「引き離す」という意味合いを持つことを示します。seduce someone from their duty (義務から誘い出す)、seduce someone from their principles (主義から誘い出す)のように使われ、元々信じていたものや守るべき立場から、誘惑によって離反させるニュアンスを含みます。道徳的な堕落や裏切りを強調する際に用いられます。例えば、 "He was seduced from his loyalty to the cause" (彼はその主義への忠誠心から誘い出された)のように使われます。
大衆を魅了する、世論を誘導する
※ 政治、広告、メディアなどの文脈で、ある特定の考えや商品を受け入れさせるために、魅力的な情報やイメージを用いて大衆の心を掴むことを意味します。必ずしも否定的な意味合いだけでなく、良い意味で大衆の関心を引きつける場合にも使われますが、操作的なニュアンスを含むこともあります。例えば、"The advertising campaign aimed to seduce the public with images of a luxurious lifestyle."(その広告キャンペーンは、贅沢なライフスタイルのイメージで大衆を魅了することを目的としていた)のように使われます。
沈黙させる
※ 言葉巧みな手段や魅力的な提案によって、本来発言すべき人が沈黙してしまう状況を表します。告発や批判を封じ込めるような、ややネガティブなニュアンスを含むことが多いです。例えば、"The corporation tried to seduce the whistleblower into silence with a generous settlement offer."(その企業は、寛大な和解案で内部告発者を懐柔し、沈黙させようとした)のように使われます。
使用シーン
学術論文や書籍において、比喩的な意味合いで用いられることがあります。例えば、ある理論や研究が「研究者を魅了する(seduce researchers)」といった表現で、その魅力や影響力を強調する際に使われます。心理学、社会学、政治学などの分野で、人の行動や思考に影響を与える要因を説明する文脈で登場することがあります。
ビジネスシーンでは、マーケティング戦略や広告キャンペーンの効果を説明する際に、間接的に用いられることがあります。例えば、「消費者を誘い込む(seduce consumers)」ようなキャッチコピーやデザイン戦略について議論する際に使われます。ただし、直接的な表現は避けられ、より婉曲的な言い回しが好まれます。フォーマルな文書やプレゼンテーションでは、使用を控えるのが無難です。
日常会話では、ほとんど使われません。映画や小説などのフィクション作品で、登場人物の行動や心理描写として用いられることがあります。ニュース記事やドキュメンタリー番組などでは、政治的な扇動や詐欺行為などを報道する際に、比喩的な表現として使われることがあります。ただし、性的な意味合いを含む可能性があるため、使用する際には注意が必要です。
関連語
類義語
魅力的なものを提供して誘惑する。通常、良い意味ではなく、何かを得るために相手を誘い込むニュアンスがある。ビジネスや広告、策略的な状況で使われることが多い。 【ニュアンスの違い】"seduce"よりも誘惑の度合いが弱く、より表面的な魅力で惹きつけるイメージ。また、性的な意味合いは薄い。"entice"は、相手の欲望や興味を利用して行動を促す。 【混同しやすい点】"seduce"はより感情的、肉体的な誘惑を指すのに対し、"entice"は物質的な利益や便宜で誘う場合に使われることが多い。広告で「期間限定セールで顧客をenticeする」など。
おびき寄せる、誘い込む。罠や策略を用いて、獲物や人を引き寄せるイメージ。動物を捕獲する際や、危険な場所へ誘い込む状況で使われる。 【ニュアンスの違い】"seduce"が相手の感情や欲望に訴えかけるのに対し、"lure"はより策略的で、相手が気づかないうちに誘導するニュアンスが強い。罠や餌を使って誘うイメージ。 【混同しやすい点】"lure"はしばしば否定的な意味合いを持ち、危険な状況や欺瞞的な意図を含むことが多い。"seduce"よりも計画的で、相手を操るニュアンスが強い。
誘惑する、そそのかす。道徳的に悪いことや、控えるべきことをするように誘う意味合いが強い。宗教的な文脈や、自制心を試される状況で使われる。 【ニュアンスの違い】"seduce"よりも誘惑の対象が具体的で、禁じられた行為や欲望を刺激するニュアンスが強い。"tempt"は、良心や道徳観との葛藤を伴う。 【混同しやすい点】"seduce"は必ずしも悪い意味ではないが、"tempt"は通常、否定的な意味合いを持つ。例えば、「悪魔がイエスをtemptする」のように、道徳的な試練を表す。
魅力で人を惹きつける、魅了する。相手を喜ばせ、好意を持たせるような、肯定的な意味合いが強い。社交的な場面や、人柄を表す際に使われる。 【ニュアンスの違い】"seduce"が時に相手を操るニュアンスを含むのに対し、"charm"は純粋な魅力で相手を惹きつける。性的な意味合いは薄く、好感度を高めるための行動。 【混同しやすい点】"seduce"が相手の感情を揺さぶるのに対し、"charm"は相手を心地よくさせる。"seduce"は深い関係に発展する可能性があるが、"charm"は表面的な好意にとどまることが多い。
人を惹きつける魅力、誘惑的な力。名詞としても動詞としても使われ、洗練された魅力や、神秘的な魅力で人を引き寄せるイメージ。観光地や商品などを宣伝する際に使われる。 【ニュアンスの違い】"seduce"よりも間接的で、言葉巧みな誘惑というよりは、雰囲気や外見的な魅力で惹きつける。"allure"は、憧れや好奇心を刺激する。 【混同しやすい点】"seduce"が具体的な行動を促すのに対し、"allure"は感情的な憧れを抱かせる。観光地の「allure」は、その場所への憧れを喚起する。
欺く、騙す。意図的に真実を隠したり、偽りの情報を与えて相手を誤解させる。犯罪、詐欺、政治的な策略など、ネガティブな文脈で使われる。 【ニュアンスの違い】"seduce"は必ずしも欺瞞を伴わないが、"deceive"は常に欺瞞的な意図を含む。"deceive"は、相手を騙して利益を得ることを目的とする。 【混同しやすい点】"seduce"は相手の感情や欲望に訴えかけるのに対し、"deceive"は嘘や偽りで相手を欺く。"deceive"は、信頼関係を破壊する行為。
派生語
- seduction
『誘惑』を意味する名詞。動詞『seduce』から派生し、行為や状態を表す接尾辞『-tion』が付加。日常会話から文学作品まで幅広く使われ、誘惑という行為そのものや、誘惑的な魅力そのものを指す。
- seducer
『誘惑者』を意味する名詞。動詞『seduce』に、人を表す接尾辞『-er』が付加。主に文学作品や、やや古風な用法で使われる。魅力的な人物が誰かを誘惑する役割を担う。
- seductive
『誘惑的な』を意味する形容詞。動詞『seduce』に、性質を表す接尾辞『-ive』が付加。人の魅力や、環境、物事などが持つ誘惑する性質を指す。広告や文学作品で頻繁に使用される。
反意語
『反発する』『拒絶する』を意味する動詞。『seduce』が相手を引きつけるのに対し、『repel』は相手を遠ざける。物理的な反発だけでなく、感情的な嫌悪感を表す際にも用いられる。日常会話、科学論文など、幅広い文脈で使用される。
『抑止する』『思いとどまらせる』を意味する動詞。『seduce』が相手を積極的に行動させるのに対し、『deter』は行動を抑制する。犯罪抑止、政策決定など、抽象的な文脈でよく用いられる。
『嫌悪感を抱かせる』という意味の動詞。『seduce』が魅力で引きつけるのに対し、『disgust』は強い嫌悪感によって拒絶する感情を引き起こす。日常会話や文学作品で、感情的な反応を強調する際に用いられる。
語源
"seduce"は、ラテン語の"sēdūcere"に由来します。これは「引き離す」「誘い出す」といった意味を持ちます。さらに分解すると、"sē-"は「離れて(away)」や「別に(aside)」という意味の接頭辞、"dūcere"は「導く(to lead)」という意味です。つまり、元々は「(正しい道から)引き離して導く」というイメージでした。現代英語では「誘惑する」「そそのかす」という意味合いが強くなっていますが、本質的には「本来いるべき場所や状態から引き離す」という根本的な意味が残っています。例えば、魅力的な広告が私たちを「誘惑」して購買行動に走らせる、という状況は、まさに本来の目的から「引き離されて導かれる」状態と言えるでしょう。
暗記法
「seduce」は単なる誘惑ではない。人を引き離し、禁断の領域へ誘うイメージを宿す。文学では運命を左右する転換点として描かれ、『失楽園』の蛇の誘惑は堕落の象徴だ。社会では欺瞞や裏切りを伴い、弱者を操る権力者の姿を映す。現代では広告戦略にも潜み、倫理的な問題を孕む。人を魅了し、操り、時には破滅へと導く、文化に深く根付いた言葉なのだ。
混同しやすい単語
『seduce』と『deduce』は、接頭辞が異なるだけで、語幹部分は同じ '-duce' であるため、スペルと発音が非常に似ています。意味は大きく異なり、『deduce』は『推論する』という意味です。特に、動詞の活用形(deduces, deduced, deducing)を覚える際には、混同しないように注意が必要です。ラテン語の『ducere』(導く)が語源であり、接頭辞によって意味が変化することを理解すると区別しやすくなります。
『seduce』と『reduce』も、接頭辞のみが異なるパターンで、スペルと発音が似ています。『reduce』は『減らす』という意味です。こちらも動詞の活用形を覚える際に注意が必要です。語源は同じくラテン語の『ducere』(導く)ですが、接頭辞 're-'(再び、戻す)がつくことで、『元の状態に戻す』→『減らす』という意味に変化しています。
『seduce』と『sedate』は、最初の3文字が同じ 'sed-' であるため、スペルが似ています。『sedate』は『落ち着かせる』という意味の形容詞または動詞です。発音も似ていますが、アクセントの位置が異なるため(seduceは2音節目、sedateは2音節目)、意識して発音練習することで区別できます。ラテン語の『sedere』(座る)が語源で、『落ち着いて座らせる』イメージから『鎮静させる』という意味につながっています。
『seduce』と『pursue』は、どちらも何かを『追い求める』という意味合いを含むため、意味の面で混同されることがあります。『seduce』は『誘惑する』という意味合いが強いのに対し、『pursue』は『追求する』、『追いかける』という意味です。スペルと発音は異なりますが、文脈によっては意味が近くなることがあるため、注意が必要です。特に、目標や願望を追いかける状況では、どちらの単語が適切か慎重に選ぶ必要があります。
『seduce』と『acid』は、直接的なスペルや発音の類似性はありませんが、カタカナで表現した場合(スデュース vs. アシッド)に、語感やリズムが似ているため、特に発音練習の初期段階で混同される可能性があります。『acid』は『酸』という意味の名詞、または『酸性の』という意味の形容詞です。全く異なる意味を持つため、文脈から判断することが重要です。
『seduce』と『service』は、語尾の '-uce' と '-ice' の部分が視覚的に似ているため、スペルミスを起こしやすい組み合わせです。『service』は『奉仕』、『サービス』という意味で、名詞または動詞として使用されます。発音も大きく異なりますが、スペルチェックの際に注意が必要です。特に、急いで文章を書いている時や、タイプミスをしやすい状況では、注意深く確認することが重要です。
誤用例
『seduce』は日本語の『誘惑する』に相当しますが、性的なニュアンスや、倫理的に問題のある誘惑を含むことが多いです。広告など、一般的な購買意欲を刺激する場合には、より中立的な『entice』を使うのが適切です。日本人は『誘う』という言葉を広義に捉えがちですが、英語では文脈によって語彙を選ぶ必要があります。日本語の『誘う』を安易に『seduce』と直訳すると、意図しない誤解を招く可能性があります。
『seduce』は、しばしば欺瞞や不正な手段を用いて相手を誘導するニュアンスを含みます。単に説得して行動を促す場合は、『persuade』がより適切です。日本人は、『seduce』を『口説く』という意味で捉えがちですが、ビジネスの文脈などでは不適切です。背景には、日本人が『説得』という行為に、相手をある程度強引に動かすイメージを持ちやすいことが考えられます。
『seduce』は、美しい景色や芸術作品など、人の心を強く惹きつけるものに対して使うと、やや不自然に聞こえます。この場合は、『captivate』や『enchant』など、より詩的でロマンチックな表現が適しています。『seduce』は、より直接的で肉欲的な意味合いを含むため、美しいものに心を奪われるという文脈にはそぐわない場合があります。日本人は、美しいものに心を奪われる状態を『誘惑される』と表現することがありますが、英語ではより繊細なニュアンスを表現できる語彙を選ぶことが重要です。
文化的背景
「seduce」は、単に誘惑するという行為を超え、しばしば権力関係や道徳的境界線が曖昧になる状況を示唆します。その語源が「引き離す」という意味を持つように、人を本来いるべき場所や状態から引き離し、禁断の領域へと誘い込むイメージがつきまといます。
文学作品における「seduce」は、しばしば主人公の運命を大きく左右する転換点として描かれます。例えば、ジョン・ミルトンの『失楽園』において、蛇(悪魔)がイヴを「seduce」する場面は、人類の堕落の象徴として解釈されます。ここでは、蛇は甘美な言葉と虚偽の約束でイヴの知的好奇心を刺激し、神との契約を破らせることに成功します。この場面は、単なる誘惑ではなく、知性と欲望、そして自由意志の葛藤を描き出しており、「seduce」が単なる肉体的な誘惑を超えた、より深い心理的な操作を意味することを示唆しています。
また、「seduce」は、社会的な文脈においても、欺瞞や裏切りといった負のイメージを伴います。政治的な陰謀や詐欺事件などにおいて、「seduce」は、権力者が弱者を言葉巧みに操り、自己の利益のために利用する行為を指すことがあります。例えば、ある政治家が国民を「seduce」して戦争に駆り立てるというシナリオは、プロパガンダや扇動といった概念と結びつき、「seduce」が単なる魅力的な誘惑ではなく、人を誤った道へと導く危険な行為であることを示唆します。
現代社会においては、「seduce」はマーケティングや広告戦略においても用いられます。企業は、消費者の潜在的な欲求を刺激し、自社製品を魅力的に見せることで、購買意欲を「seduce」しようとします。しかし、過剰な広告や誇大広告は、消費者を欺き、不必要な消費を促す可能性があるため、「seduce」は倫理的な問題と結びつくこともあります。このように、「seduce」は、文学、政治、経済といった様々な分野において、人を魅了し、操り、時には破滅へと導く複雑な意味合いを持つ言葉として、文化的に深く根付いています。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、まれに語彙問題。英作文で高度な語彙として使用できる可能性も。
- 頻度と級・パート: 準1級以上でまれに出題。1級レベルでは長文で読解語彙として登場する可能性あり。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、環境問題、心理学など、やや硬めのテーマの長文で使われることが多い。「誘惑する」という意味から、倫理的な文脈で使われることもある。
- 学習者への注意点・アドバイス: 直接的な意味の「誘惑する」だけでなく、「(魅力で)引きつける」という意味も理解しておく。名詞形`seduction`、形容詞形`seductive`も合わせて覚えること。文脈によってはネガティブな意味合いになることに注意。
- 出題形式: Part 7(長文読解)でまれに出題される程度。Part 5, 6での直接的な語彙問題としては出題されにくい。
- 頻度と級・パート: TOEIC全体での出題頻度は低い。
- 文脈・例題の特徴: 広告、マーケティング、人材採用などのビジネス関連の文脈で、「(魅力的な条件で)引きつける」という意味合いで使われることがある。
- 学習者への注意点・アドバイス: TOEIC対策としては優先順位は低い。ただし、長文読解の中で意味がわからなくても文脈から推測できるようにしておくこと。ビジネスシーンでの婉曲的な表現として使われる場合があることを理解しておく。
- 出題形式: リーディングセクションで頻出。学術的な文章の中で、比喩的な意味で使われることが多い。
- 頻度と級・パート: リーディングセクションで比較的頻繁に見かける。
- 文脈・例題の特徴: 心理学、社会学、歴史学などの分野で、抽象的な概念や理論を説明する際に使われる。「(考え方や感情を)引きつける」「(人を)魅了する」といった意味合いで使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: TOEFLでは、直接的な「誘惑する」という意味よりも、比喩的な意味で使われることが多い。文脈から正確な意味を把握することが重要。同義語の`entice`や`lure`とのニュアンスの違いも理解しておくと良い。
- 出題形式: 長文読解問題で出題される可能性あり。文脈理解を問われることが多い。
- 頻度と級・パート: 難関大学の入試問題でまれに出題される。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、文化、歴史、文学など、幅広いテーマの文章で使われる可能性がある。直接的な意味だけでなく、比喩的な意味で使われることも多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 単語の意味を暗記するだけでなく、文脈の中でどのように使われているかを理解することが重要。類義語や対義語も合わせて学習することで、読解力を高めることができる。過去問で実際に出題された文脈を確認しておくことが効果的。