fill
母音 /ɪ/ は日本語の「イ」よりも、口を左右に少し開いて発音する短い音です。「フィル」のように伸ばさないように注意しましょう。また、語尾の /l/ は舌先を上の歯の裏につけて発音します。日本語のラ行の発音とは少し異なります。
満たす
容器や空間、必要などを不足なく満たす。物理的なものだけでなく、感情や条件など抽象的な対象にも使える。例:グラスに水を満たす、空腹を満たす、条件を満たす
I was thirsty, so I filled my glass with cold water.
喉が渇いたので、コップを冷たい水で満たしました。
※ 喉がカラカラの時に、冷たい水をコップに注ぎ、ゴクッと飲む瞬間の情景が浮かびますね。まさに「コップを水で満たす」という、最も基本的な「fill」の使い方です。「fill A with B(AをBで満たす)」という形は、飲み物や食べ物を容器に入れる際によく使われます。
The concert hall quickly filled with excited fans.
コンサートホールはあっという間に興奮したファンでいっぱいになりました。
※ ライブが始まる前のワクワクした雰囲気と、ファンが続々と会場に押し寄せてくる様子が目に浮かびます。ここでは「fill」が自動詞として使われており、「〜でいっぱいになる」という意味になります。場所が人や物でいっぱいになる様子を表すのにぴったりの表現です。
We need to fill this big hole in the garden with soil.
庭にあるこの大きな穴を土で埋める必要があります。
※ 庭にぽっかり空いた穴を、土を使って埋めていく具体的な作業のイメージが伝わります。物理的な空間や穴に何かを「詰める」「埋める」という状況でも「fill」は頻繁に使われます。「soil」は「土」という意味の基本的な単語です。
埋める
空いている場所や時間を何かで埋める。空白を埋める、欠員を埋める、時間を埋める、といった使われ方をする。
She felt so thirsty and quickly filled her glass with cold water.
彼女はとても喉が渇いていたので、素早くグラスに冷たい水を注ぎました。
※ この例文は、喉が渇いてコップに水を注ぐという、誰もが経験する日常のワンシーンを描写しています。「fill」は「(容器を)満たす」という最も基本的な使い方で、`fill A with B`(AをBで満たす/注ぐ)の形が典型です。`thirsty`(喉が渇いた)はよく使う形容詞なので、一緒に覚えておきましょう。
My dad carefully filled the big hole in the garden with soil.
父は庭の大きな穴を、丁寧に土で埋めました。
※ 庭で子供が遊んだ後や、何かを植える準備として穴を埋める光景です。「fill」は「(空間を)埋める」という意味でも非常によく使われます。ここでも`fill A with B`の形が使われ、「穴」という空間を「土」で埋める様子が具体的にわかります。`carefully`(注意深く)のような副詞は、動作の様子を鮮やかに伝えますね。
The baker smiled as she filled the paper bag with fresh bread.
パン屋さんは、紙袋に焼きたてのパンを詰めながら微笑みました。
※ 焼きたてのパンが紙袋に詰められる、温かいお店の情景が目に浮かびますね。「fill」は、このように「(袋や箱などに)物を詰める」という意味でも頻繁に使われます。`as she filled`のように`as`を使うと「~しながら」という同時進行の動作を表すことができ、臨場感が増します。
満腹
お腹がいっぱいになった状態。名詞として使われる頻度は低いが、動詞のfillから派生したイメージを掴むために掲載。例:get one's fill(お腹いっぱいになる)
My little brother said, "No more dessert! I've had my fill."
弟は「もうデザートはいらないよ!お腹いっぱいなんだ」と言いました。
※ この例文は、小さなお子さんが夕食後にお腹がいっぱいになり、大好きなデザートでさえ断る、という可愛らしい情景を描いています。「I've had my fill.」は「もうお腹がいっぱいだ」「もう十分食べた」という意味で、食事の場面で非常によく使われる典型的な表現です。この「fill」は名詞で「満腹」を表し、「have one's fill」で「満腹になる」という意味になります。
After eating the delicious pasta, I finally had my fill.
美味しいパスタを食べた後、ついに満腹になりました。
※ この例文は、レストランなどで美味しい料理を堪能し、心から満足して「お腹いっぱいになった」と感じる場面を描いています。食事の満足感を伝えるときに自然に使える表現です。「finally」を加えることで、「待ち望んだ満腹感」や「たくさん食べた後の達成感」が伝わります。これも「have one's fill」の形で、「~で満腹になる」という中心的な使い方です。
We ate so much at the buffet, we definitely got our fill.
ビュッフェでたくさん食べたから、間違いなくお腹いっぱいになったよ。
※ この例文は、食べ放題のビュッフェでたくさんの料理を楽しみ、すっかりお腹がいっぱいになった友人同士の会話を描いています。食べ放題など、たくさん食べることを想定している場所で「もう十分食べた」と満足感を表現するのにぴったりです。「get one's fill」も「have one's fill」と同じように「満腹になる」という意味で使われ、特に口語でよく登場します。グループで食事を楽しんだ後によく聞かれる表現です。
コロケーション
心の空白を埋める、欠落感を満たす
※ 「void」は空虚、空白を意味し、物理的な空間だけでなく、感情的な欠落感や喪失感を表す際にも使われます。この表現は、何かを失った後や、人生に目的や意味を見出せない時に、それを埋め合わせる行為を指します。例えば、新しい趣味を始めたり、人間関係を深めたりすることで、心の空白を埋めようとする状況で使われます。心理学的な文脈や、自己啓発的な内容でよく見られます。
(人の)後任を務める、(人の)代わりをする
※ 文字通りには「誰かの靴を履く」ですが、比喩的には「誰かの役割を引き継ぐ」という意味になります。単に仕事を引き継ぐだけでなく、その人の能力や実績、影響力も引き継ぐニュアンスが含まれます。例えば、退職した上司のポジションを引き継ぐ場合などに使われます。組織やチームにおいて、人材の交代がスムーズに行われることを期待する文脈で使われることが多いです。
要求を満たす、条件に合う
※ もともとは演劇などで「プログラム(bill)を満たす」という意味から派生し、現在では「必要条件を満たす」「目的にかなう」という意味で使われます。例えば、ある製品が特定のニーズを満たす場合や、ある人物が特定の役割にふさわしい場合に「This fills the bill」のように使います。日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われ、特に要求や基準を満たすことを強調したい場合に適しています。
(用紙などに)記入する、書き込む
※ 「fill out」は物理的に何かを埋める行為から、書類やフォームの空欄を埋める、つまり記入するという意味で使われます。特に、個人情報やアンケートなど、決められた形式の用紙に情報を書き込む場合に用いられます。日常的な場面で頻繁に使われる表現で、ビジネスシーンでも、申込書や申請書などへの記入を指示する際に用いられます。類似表現として「complete」がありますが、「fill out」の方がより口語的で一般的です。
(容器などを)満たす、いっぱいにする
※ 物理的な空間を何かで満たす行為を表します。例えば、コップに水を注いで満たす、ガソリンタンクにガソリンを補給する、といった状況で使われます。比喩的に、スケジュールを予定で埋め尽くす、といった意味でも使われます。日常会話で頻繁に使われる表現で、「fill」だけでは意味が曖昧になる場合や、完全に満たすことを強調したい場合に「fill up」が用いられます。
(人に)…を知らせる、…について説明する
※ 「fill in」は「(欠けている)情報を埋める」というイメージから、「人に何かを知らせる」「状況を説明する」という意味で使われます。特に、会議や出来事に後から参加した人に、何が起こったのかを説明する際に用いられます。例えば、「Could you fill me in on what happened at the meeting?」のように使います。カジュアルな会話でよく使われ、ビジネスシーンでも、インフォーマルなコミュニケーションで用いられます。
(音・匂いなどが)満ちる、広がる
※ 空気(air)という空間を満たすという文字通りの意味から、音、香り、感情などがその場に広がり、満たされる様子を表します。例えば、「laughter filled the air(笑い声が満ちた)」のように使います。比喩的な表現であり、五感で感じられるものだけでなく、雰囲気や感情が広がる様子も表現できます。文学作品や詩的な表現でよく用いられ、情景描写を豊かにする効果があります。
使用シーン
学術論文やレポートで、データや調査結果の傾向を説明する際に使われます。例:『アンケートの結果、回答者の過半数が〜という項目を「非常に重要」とfill(評価)していることがわかった。』といった形で、意見や評価が集中していることを示す場合に用いられます。学生が論文を書く際や、研究者が研究結果を発表する際に役立ちます。
ビジネスシーンでは、会議の議事録や報告書で、特定の役割やポジションを埋める(fill)という意味で使用されることがあります。例:『新プロジェクトチームのリーダーのポジションをfill(埋める)ために、社内公募を行う。』または、『このポジションをfillできる人材は限られている』のように使われ、人材配置や組織運営に関する文脈で重要です。また、書類に情報をfill(記入)するという意味でも使われます。例えば「必要事項をfillしてください」など。
日常会話では、容器や空間を文字通り「満たす」という意味で頻繁に使われます。例:『コーヒーをfill(満たす)』、『バスタブをfill(満たす)』など、具体的な行為を表現する際に便利です。また、『お腹をfill(満たす)』というように、満腹感を表すのにも使われます。さらに、時間を持て余している状態を表す「fill time」という表現も一般的です。
関連語
類義語
『場所・時間・地位などを占める』という意味で、物理的な空間だけでなく、抽象的な概念にも使われる。ビジネスシーンやフォーマルな場面で頻繁に使用される。 【ニュアンスの違い】『fill』が文字通り何かで満たすことを意味するのに対し、『occupy』は占有し、他のものが入り込む余地をなくすというニュアンスが強い。また、軍隊が領土を占領する、人が役職に就くなど、より広範な意味を持つ。 【混同しやすい点】『fill』は容器や空間を満たすイメージが強いが、『occupy』は空間、時間、地位などを『占める』というニュアンスで、物理的な充填だけでなく、抽象的な占有も含む。場所や時間を『占める』という意味では、『take up』とも混同しやすい。
『再び満たす』『補充する』という意味で、資源やエネルギーなど、一度空になったものを再び満たす際に使われる。フォーマルな場面や、資源管理、在庫管理などの文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】『fill』が単に満たす行為を指すのに対し、『replenish』は一度空になったものを回復させるというニュアンスを含む。失われたものを回復させるという含みがあるため、精神的な充足感を表す場合にも用いられる。 【混同しやすい点】『fill』と異なり、『replenish』は必ず『再び』満たすという意味合いを持つ。そのため、初めて何かを満たす場合には使用できない。また、『refill』も同様の意味を持つが、より日常的な場面で使用される傾向がある。
『飽和させる』『浸透させる』という意味で、液体や情報などが完全に浸透し、それ以上受け付けられない状態にする際に使われる。科学的な文脈や、情報過多の状態を表す際にも用いられる。 【ニュアンスの違い】『fill』が単に満たすことを指すのに対し、『saturate』は完全に浸透させ、余地がない状態にするというニュアンスが強い。また、比喩的に感情や情報が過剰に満たされている状態を表すこともある。 【混同しやすい点】『saturate』は物質が完全に浸透し、飽和状態になることを指すため、対象が液体や情報など、浸透性のあるものに限られる。『fill』のように、容器に物を詰めるような場合には適さない。また、色彩の鮮やかさを表す際にも用いられる。
『詰める』『詰め込む』という意味で、旅行の荷物を詰めたり、箱に物を詰めたりする際に使われる。日常会話で頻繁に使用される。 【ニュアンスの違い】『fill』が空間を満たすことを意味するのに対し、『pack』は物をぎっしりと詰め込むというニュアンスが強い。隙間なく、効率的に物を詰めるイメージ。 【混同しやすい点】『fill』は容器全体を満たすことを指すが、『pack』は必ずしも全体を満たす必要はなく、物を詰め込む行為自体を指す。また、『pack』は名詞として『一団』『群れ』という意味も持つため、文脈に注意が必要。
『積む』『積み込む』という意味で、トラックや船などに荷物を積む際に使われる。また、ソフトウェアをコンピュータに読み込む際にも使用される。 【ニュアンスの違い】『fill』が空間を満たすことを意味するのに対し、『load』は特定の場所に荷物を積み上げるというニュアンスが強い。重量や運搬を伴う場合に用いられることが多い。 【混同しやすい点】『fill』は容器を満たすイメージだが、『load』は特定の場所(トラックの荷台、船倉など)に荷物を積み上げるイメージ。また、『load』は名詞として『積荷』『負担』という意味も持つため、文脈によって意味が異なる。
『詰め込む』『押し込む』という意味で、特に乱雑に物を詰め込む際に使われる。日常会話でよく用いられ、ややくだけた表現。 【ニュアンスの違い】『fill』が比較的丁寧に満たすことを意味するのに対し、『stuff』は無理やり押し込むようなニュアンスが強い。整理されていない状態を表すことが多い。 【混同しやすい点】『fill』は丁寧に満たすイメージだが、『stuff』は乱雑に、あるいは無理やり押し込むイメージ。また、『stuff』は名詞として『物』『材料』という意味も持つため、文脈によって意味が異なる。フォーマルな場面では避けるべき表現。
派生語
『満たす』『実現する』という意味の動詞。『full(満ちた)』を『fill』と関連付け、『完全に(ful-)』満たすイメージ。約束や義務、目標などを果たす文脈で使われ、ビジネス文書や契約書で頻出。日常会話でも使われるが、ややフォーマルな印象。
動名詞または現在分詞として『満たすこと』『満たしている』という意味。歯科治療における『詰め物』や、お菓子やパンなどの『中身』を指す名詞としても使われる。日常会話で具体的な物を指す場合によく用いられる。
- filler
『詰め物』『隙間を埋めるもの』という意味の名詞。『fill』する『-er(もの)』という語構成。会話の『間を埋める言葉』や、文章の『水増し』といった比喩的な意味合いでも使われる。ニュース記事や、美容整形などの文脈でも登場する。
反意語
『空にする』という意味の動詞、または『空の』という意味の形容詞。『fill』が何かで満たす行為であるのに対し、『empty』は中身を取り除き、空虚な状態にすることを指す。容器や場所だけでなく、比喩的に感情や思考が空虚な状態を表すこともある。日常会話からビジネス、文学作品まで幅広く使われる。
『空虚』『無効』という意味の名詞または形容詞。法律用語としては『無効な』契約などを意味し、学術的な文脈でも使われる。日常会話では、感情的な空虚さを表す比喩表現として用いられることがある。『fill』が物理的、精神的な充足を表すのに対し、『void』はそれらが完全に欠如した状態を示す。
『排出する』『空にする』という意味の動詞。『fill』が何かを内部に蓄積するのに対し、『drain』は液体などを外部に排出して中身を空にすることを意味する。比喩的に、資源やエネルギーを消耗させるという意味でも使われる。日常会話では、お風呂の水を抜くなどの具体的な状況で使われるほか、精神的な疲労を表す際にも用いられる。
語源
"fill」は、古英語の「fyllan」(満たす、満腹にする)に由来し、さらに遡ると、ゲルマン祖語の「fullijan」(満たす)にたどり着きます。これは、「full」(満ちた)という語の派生語です。「full」自体は、インド・ヨーロッパ祖語の根「*pele-」(満たす)から来ており、この語根は、古代教会スラヴ語の「plunu」(満ちた)、ギリシャ語の「pimple」(満たす)、ラテン語の「plenus」(満ちた、完全な)など、多くの言語に影響を与えています。つまり、「fill」は、もともと「満たす」という基本的な概念を表す言葉であり、その意味が時代を経て「埋める」「満腹」など、具体的な行為や状態を表すように広がっていったと考えられます。日本語で例えるなら、「充満」という言葉が近いニュアンスを持っています。何かで空間や容量をいっぱいにするイメージです。
暗記法
「fill」は単なる空間充填に留まらず、人の内なる欲求や充足、社会的役割を担う意味も。中世の領主は軍役を「fill」し、現代では「fill a position」のように責任を果たす。感情を満たす比喩も豊かだ。喜びが心を「fill」し、文学では心の渇きを癒す。消費社会では欲望を「fill」すると謳うが、真の充足は得難い。欲望、充足、役割…「fill」は文化の深淵を映す鏡なのだ。
混同しやすい単語
発音が非常に似ており、特にfeelの過去形feltとの混同が起こりやすい。'fill' は『満たす』という意味の動詞ですが、'feel' は『感じる』という意味の動詞です。発音記号を確認し、母音の長さに注意することが重要です。fill は短母音 /ɪ/、feel は長母音 /iː/。
'fill'と'fell'はどちらも短い母音を持ち、発音が似ているため、特にリスニングで混同しやすい。'fell'は'fall'(落ちる)の過去形であり、文脈によって意味が大きく異なる。'fill'は何かを容器などに満たす行為を指しますが、'fell'は物が落ちた、または誰かを倒したという状況を表します。過去形と現在形の違いに注意しましょう。
スペルが似ており、特に手書きの場合に混同しやすい。'fill' は短い 'i' の音ですが、'file' は二重母音 /aɪ/ の音です。意味も異なり、'file' は『ファイル』『やすり』などの意味を持ちます。発音を意識して区別することが大切です。語源的には、file はラテン語の filum(糸)に由来し、書類を糸で綴じたことに由来します。
発音が似ており、特に日本人学習者には 'i' と 'u' の区別が難しい場合があります。'fill' は『満たす』という意味の動詞ですが、'full' は『満杯の』という意味の形容詞です。品詞が異なるため、文法的な構造から区別することも可能です。full は唇を丸めて発音する /ʊ/ の音である点に注意。
スペルが似ており、特に 'il' の並びが共通しているため、視覚的に混同しやすい。'fill' は短い 'i' の音ですが、'foil' は二重母音 /ɔɪ/ の音です。意味も異なり、'foil' は『箔』『ホイル』などの意味を持ちます。発音を意識して区別することが大切です。また、foil には「阻止する」という意味もあります。
語尾の「ll」のスペルと短母音「i」の組み合わせが共通しているため、視覚的・聴覚的に混同しやすい。'fill' は「満たす」という意味だが、'pill' は「錠剤」という意味の名詞。文脈が大きく異なるため、意味から区別することも重要です。pill は比較的身近な単語なので、fill とセットで覚えておくと良いでしょう。
誤用例
日本語の「意見を述べる」を直訳的に捉え、「意見」という中身を「fill(満たす)」という動詞で表現しようとする誤りです。英語では、意見や感情を表現する行為には、'fill'ではなく、'voice'(声に出す)、'express'(表現する)、'state'(述べる)などの動詞が適切です。'fill'は物理的な空間や容器を満たすイメージが強く、抽象的な概念には不自然です。日本人が「中身を埋める」という発想に囚われやすいのに対し、英語では「外に出す」という発想で表現することを意識しましょう。
この誤用は、'fill A with B'(AをBで満たす)という構文を不適切に適用したものです。しかし、'bore'(退屈させる)という動詞は、感情を引き起こす対象(この場合は講演者)が主語となり、感情を抱く対象(聴衆)が目的語となる構造が自然です。つまり、'The speaker bored the audience.'が正しい形です。日本語では「講演者が聴衆を退屈で満たした」という表現も可能ですが、英語では感情の伝達方向をより直接的に表現します。このような能動的な感情表現は、英語のストレートなコミュニケーションスタイルを反映しています。
この誤用は、'fill out'(記入する)という句動詞を知らない場合に起こりがちです。'fill'だけでは「(物理的に)満たす」という意味になり、フォームに情報を書き込む意味合いは含まれません。'fill out'は、フォームの各項目を情報で埋めて完成させるというニュアンスを持ちます。また、'with your heart'は感情を込めて記入することを伝えたい意図かもしれませんが、ビジネスや公式な場面では不適切です。代わりに、'carefully'(注意深く)や'accurately'(正確に)などの副詞を使用し、丁寧かつ正確な記入を促すのが一般的です。英語では、感情的な表現よりも、明確さと正確さが重視される場面が多いことを理解しましょう。
文化的背景
「fill」という言葉は、単に空間を埋めるという物理的な行為を表すだけでなく、人間の内面的な欲求や充足感、さらには社会的な役割を果たすという意味合いを文化的に含んでいます。空虚を満たす、欠落を補うといったニュアンスは、人間の根源的な願望と深く結びついており、さまざまな文脈でその象徴性が表現されてきました。
特に興味深いのは、fillが「役割を果たす」「義務を遂行する」という意味合いで使用される場合です。中世ヨーロッパの封建制度においては、土地を所有する領主は、国王に対する軍役の義務を「fill」する必要がありました。これは単に兵士を供給するというだけでなく、社会的な責任を全うすることを意味し、fillという言葉が社会構造と密接に結びついていたことを示唆しています。現代においても、fill a position(役職を埋める)、fill an order(注文を処理する)といった表現は、組織における個人の役割や責任を強調する際に用いられます。これらの表現は、単に物理的な空間を埋めるだけでなく、社会的な期待や義務を果たすという、より抽象的な意味合いを含んでいます。
また、fillは感情的な充足感や満足感を表す際にも用いられます。例えば、fill one's heart with joy(喜びで心をいっぱいにする)という表現は、喜びという感情が心という容器を満たすイメージを描き出します。この比喩は、感情が人間の内面を豊かにし、空虚感を埋めるという考え方を反映しています。文学作品においても、fillはしばしば登場人物の心の渇きや満たされない思いを表現するために用いられます。失恋や孤独感を抱える人物が、愛情や友情によって心が「fill」される様子は、読者の共感を呼び、感情的なカタルシスをもたらします。
さらに、fillは「満腹にする」「満足させる」という意味合いから、消費文化とも深く結びついています。現代社会においては、商品やサービスが人々の欲望を「fill」すると宣伝され、消費行動が感情的な充足感を得る手段として捉えられています。しかし、この消費的なfillは、一時的な満足感しかもたらさず、真の充足感を得られないという批判も存在します。fillという言葉は、人間の欲望と充足感、そして社会的な役割といった、複雑な文化的背景を反映した多層的な意味を持つ単語と言えるでしょう。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解、稀にリスニング
- 頻度と級・パート: 準1級・1級で頻出。2級でもまれに出題
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場。動詞としての「満たす」「埋める」、名詞としての「十分な量」の意味で使われる
- 学習者への注意点・アドバイス: fill A with B (AをBで満たす) の形を確実に押さえる。派生語の fulfillment(達成、充足)も重要。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 6(長文穴埋め)、Part 7(長文読解)
- 頻度と級・パート: 頻出。特にPart 5, 6で重要
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンで頻出。書類への記入、役割の補充、注文の履行など
- 学習者への注意点・アドバイス: fill out (書類に記入する)、fill in (空欄を埋める)、fill an order (注文を履行する) などの句動詞を覚える。fillの後に続く前置詞に注意。
- 出題形式: リーディング、ライティング
- 頻度と級・パート: 頻出。アカデミックな文章でよく使われる
- 文脈・例題の特徴: 抽象的な概念やデータ、空間などを「満たす」意味で使われる。論文やレポートなどでよく見られる
- 学習者への注意点・アドバイス: 抽象的な文脈での意味を理解することが重要。例えば、fill a gap (ギャップを埋める)、fill a role (役割を果たす) など。名詞形 filling (詰め物) も覚えておくと良い。
- 出題形式: 長文読解、語彙問題、英作文
- 頻度と級・パート: 頻出。難関大学ほど出題頻度が高い
- 文脈・例題の特徴: 幅広いテーマで登場。文脈に応じた意味の把握が重要
- 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な意味に加え、比喩的な意味も理解する必要がある。fillのコlocation(語の組み合わせ)を意識して学習する。