stir
母音 /ɜː/ は、口を少し開け、舌の中央を少し盛り上げて出す音で、日本語の「アー」よりも喉の奥から響かせるイメージです。「r」は、舌をどこにもつけずに口の中に浮かせるようにして発音します。アメリカ英語では「r」の音をはっきりと発音しますが、イギリス英語では弱まることがあります。
かき混ぜる
液体や食材などを、均一にするため、あるいは混ぜ合わせるために、スプーンやヘラなどで円を描くように動かすこと。比喩的に、混乱を引き起こす、扇動するという意味合いでも使われる。
I like to stir my coffee slowly with a spoon every morning.
私は毎朝、スプーンでコーヒーをゆっくりとかき混ぜるのが好きです。
※ 朝の穏やかな時間、温かいコーヒーをゆっくりと混ぜる情景が目に浮かびますね。「stir」は飲み物や液体をかき混ぜる時によく使われます。この例文のように、「何を使って(with a spoon)」混ぜるのかを一緒に表現すると、より具体的で自然な英語になりますよ。
Mom carefully stirred the soup in the pot with a wooden spoon.
お母さんは木べらで鍋の中のスープを丁寧に混ぜました。
※ 夕食の準備中、お母さんが焦げ付かないように、あるいは味が均一になるようにと、鍋の中のスープを丁寧に混ぜている様子が伝わってきます。料理の場面で、鍋やフライパンの中のものを混ぜる時も「stir」をよく使います。過去形「stirred」も自然に使いこなしましょう。
He used a fork to stir the salad dressing in the bowl.
彼はボウルの中のサラダドレッシングをフォークでかき混ぜました。
※ サラダを作るために、油と酢などのドレッシングがしっかり混ざるように、フォークでかき混ぜている場面です。複数の材料が混ざり合うように「かき混ぜる」際にも「stir」が使われます。この例文は「何を使って(a fork)」混ぜるか、そして「どこで(in the bowl)」混ぜるかを示しており、とても分かりやすいですね。
心を揺さぶる
感情を強く刺激し、感動や興奮、あるいは不安や怒りなどの感情を引き起こすこと。物語や音楽などが人の心を動かす場合などに用いる。
The old song stirred a deep feeling in her.
その古い歌は、彼女の中に深い感情を揺さぶった。
※ カフェで懐かしいメロディーが流れてきて、ふと物思いにふける女性の様子を想像してみてください。昔の曲が、忘れかけていた思い出や感情を呼び起こし、心をじんわりと揺さぶる瞬間です。「stir a feeling in someone」は「(誰かの)感情をかき立てる・揺さぶる」という、とても自然な英語表現です。
The sudden news stirred a lot of worry in me.
その突然のニュースは、私の中に多くの心配事をかき立てた。
※ スマートフォンで速報を見て、思わず息をのむような場面です。予期せぬ情報が飛び込んできて、不安や心配な気持ちが心の中にわき上がってくる様子を表しています。「stir worry/fear/concern in someone」は、何かのできごとが人々の不安や恐怖、懸念を「かき立てる」という際によく使われます。
Her brave words stirred hope in everyone listening.
彼女の勇敢な言葉は、聞いているすべての人に希望を揺さぶった。
※ 困難な状況の中で、ある人が勇気ある言葉を語り、それに耳を傾けていた人々の心に、諦めかけていた希望の光が再び灯るようなシーンです。人々の心にポジティブな感情(この場合は希望)を力強く呼び起こすときに「stir hope in someone」と表現します。スピーチなどで感動を与える場面によく合います。
騒ぎ
ちょっとした混乱や騒動。一時的なもので、深刻な事態には至らない程度のものを指すことが多い。例えば、ちょっとした意見の衝突や、噂話などが広まる状況。
The sudden loud noise caused a stir in the quiet library.
突然の大きな音が、静かな図書館にざわめきを引き起こしました。
※ この例文は、普段静かな場所で予期せぬ音や出来事によって人々が「ざわつく」「動揺する」様子を鮮やかに描いています。図書館という場所が「静か」であることで、その「ざわめき(stir)」がより際立ちます。'cause a stir' は「騒ぎを引き起こす」という、この単語の非常に典型的な使い方です。
When the pop star appeared, she caused a huge stir among the shoppers.
そのポップスターが現れたとき、彼女は買い物客たちの間にものすごい騒ぎを引き起こしました。
※ この例文は、有名人の登場によって、人々が興奮したり驚いたりして「ざわめく」「騒然となる」状況を表現しています。'huge stir' の 'huge' は、単なる騒ぎではなく「ものすごい、大変な」騒ぎであることを示し、人々の感情的な高ぶりまで伝わります。日常生活で予期せぬ出来事が人々の注目を集め、活気あるざわめきを生み出す場面によく使われます。
The unexpected news created a stir throughout the whole town.
その予期せぬニュースは、町中に騒ぎを巻き起こしました。
※ ここでは、特定の出来事(ニュース)が原因で、広範囲の人々(町全体)が動揺したり、噂し合ったりする「騒ぎ」の状態を描写しています。物理的な音だけでなく、人々の感情や反応、議論が渦巻くような状況で「stir」が使われる典型例です。'create a stir' も 'cause a stir' と同様に「騒ぎを生み出す」という意味でよく使われる表現です。
コロケーション
記憶を呼び起こす、思い出をよみがえらせる
※ 「stir」はここでは「かき混ぜる」という物理的な意味から転じて、「心の奥底にあるものを揺さぶる、呼び覚ます」という意味合いになります。過去の出来事や感情が、あるきっかけによって鮮明に思い出される状況を表します。例えば、古い写真を見たり、昔の音楽を聴いたりしたときに使われます。単に「remember」と言うよりも、感情を伴った、より深い記憶の想起を表すニュアンスがあります。文学的な表現としても用いられます。
論争を引き起こす、物議を醸す
※ 「stir」はここでは「騒ぎを起こす、かき乱す」という意味合いで使用されます。ある発言や行動が、人々の間で意見の対立や激しい議論を引き起こす状況を表します。政治的な問題や社会的な問題など、意見が分かれやすい話題に対して使われることが多いです。ビジネスシーンでも、新商品の発表や企業の戦略変更などが「controversyをstir」することがあります。より穏やかな表現としては「spark debate」などがあります。
感情を揺さぶる、感動させる
※ 「stir」はここでは「感情をかき立てる」という意味合いで使用されます。映画、音楽、演劇などの芸術作品が、人々の心に強い感情的な反応を引き起こす状況を表します。喜び、悲しみ、感動など、様々な感情に対して使われます。「touch emotions」や「evoke emotions」と似た意味ですが、「stir」はより強い感情の動きを表すニュアンスがあります。文学的な表現としてもよく用いられます。
騒ぎを起こす、事を荒立てる、面白半分で騒ぎを大きくする
※ 直訳すると「鍋をかき混ぜる」ですが、比喩的に「余計なことをして騒ぎを大きくする」という意味になります。すでに存在する問題や対立をわざと刺激し、状況を悪化させるような行為を指します。しばしば、面白半分で、または悪意を持って行われる行為を指します。例えば、噂を広めたり、挑発的な発言をしたりする行為がこれに当たります。日本語の「火に油を注ぐ」に近いニュアンスです。口語表現としてよく使われます。
眠りから目覚めかける、寝返りを打つ
※ 「stir」はここでは「わずかに動く、身じろぎする」という意味合いで使用されます。深い眠りから完全に目覚める前の、浅い眠りの状態や、寝返りを打つなどの軽い動きを表します。詩的な表現や文学的な表現で用いられることが多いです。日常会話ではあまり使いませんが、小説などで人物の描写に使用されることがあります。
大衆の関心を呼ぶ、世間の注目を集める
※ 「stir」はここでは「かき立てる、刺激する」という意味合いで使用されます。ある出来事やニュースが、多くの人々の関心を引きつけ、話題になる状況を表します。政治、経済、社会問題など、幅広い分野で使用されます。例えば、新しい技術の発表や、著名人のスキャンダルなどが「public interestをstir」することがあります。「arouse public interest」とほぼ同義ですが、「stir」の方がより強い関心や興奮を表すニュアンスがあります。
行動を促す、奮起させる
※ 「stir」はここでは「刺激して行動を起こさせる」という意味合いで使用されます。演説や出来事が人々に影響を与え、具体的な行動を起こさせる状況を表します。社会的な運動や政治的な活動などで、人々の意識を高め、行動を促す際に用いられます。「spur to action」と似た意味ですが、「stir」はより感情的な側面を伴うことが多いです。例えば、不正を告発するドキュメンタリーが人々の「actionをstir」することがあります。
使用シーン
学術論文や研究発表で、比喩的な意味合いで使われることがあります。例えば、「議論をstir(活発化)させる」のように、あるテーマに対する関心や議論を喚起するという意味で用いられます。また、心理学や社会学の研究で、特定の感情や行動を「stir up(引き起こす)」という表現で使われることもあります。
ビジネスシーンでは、フォーマルな文書やプレゼンテーションにおいて、問題や関心を「stir(引き起こす)」という意味合いで使われることがあります。例えば、「市場に新たな関心をstir(呼び起こす)新商品」のように、ポジティブな意味で用いられることもあります。しかし、日常的なビジネス会話では、より直接的な表現が好まれるため、頻度は低いです。
日常会話では、料理の際に「stir(かき混ぜる)」という意味でよく使われます。例えば、「スープをstir(かき混ぜる)」など。比喩的な意味では、ニュースやゴシップ記事で「controversy(論争)」や「excitement(興奮)」を「stir up(引き起こす)」という表現で見かけることがあります。例えば、「政治家の発言が論争をstir up(巻き起こした)」のような文脈です。
関連語
類義語
『(液体などを)激しくかき混ぜる』、『(人々を)扇動する』という意味。政治的な文脈や、人々の感情を揺さぶる状況で使われることが多い。他動詞。 【ニュアンスの違い】"stir"よりも強く、騒ぎや混乱を引き起こす意図や結果を含むことが多い。感情的な興奮や不安を煽るニュアンスが強い。 【混同しやすい点】"stir"は単にかき混ぜる、または感情を動かす程度だが、"agitate"はより積極的に、そして往々にして否定的な結果を伴う行動を指す。また、"agitate"は政治的な意味合いを帯びやすい。
- rouse
『(眠りなどから)起こす』、『(感情などを)呼び起こす』という意味。文学的な表現や、強い感情や行動を促す場面で使われる。他動詞。 【ニュアンスの違い】"stir"よりも、眠っていたもの、潜在的なものを呼び覚ますというニュアンスが強い。感情や意識を活性化させるイメージ。 【混同しやすい点】"stir"は静的な状態から変化させるニュアンスだが、"rouse"は潜在的なエネルギーや感情を表面化させるイメージ。また、"rouse"はしばしば詩的な、またはフォーマルな文脈で使用される。
『(感情を)興奮させる』という意味。喜び、期待、興味などを引き起こす状況で使われる。他動詞。 【ニュアンスの違い】"stir"よりも感情の度合いが強く、ポジティブな感情を伴うことが多い。強い興味や期待感を抱かせる。 【混同しやすい点】"stir"は感情を穏やかに動かすイメージだが、"excite"はより強い興奮状態を引き起こす。"excite"は通常、ポジティブな感情に関連付けられる。
『(行動や感情を)促す』、『(思い出などを)呼び起こす』という意味。特定の行動や反応を引き出す状況で使われる。他動詞。 【ニュアンスの違い】"stir"よりも、具体的な行動や反応を引き出す意図が強い。きっかけや動機を与えるイメージ。 【混同しやすい点】"stir"は感情を動かすことが中心だが、"prompt"は行動を促すことが目的。また、"prompt"はしばしばビジネスや学術的な文脈で使用される。
『(眠りから)目覚めさせる』、『(感情や意識を)呼び覚ます』という意味。比喩的な表現や、精神的な目覚めを表現する際に使われる。自動詞/他動詞。 【ニュアンスの違い】"stir"よりも、より深い意識や感情の目覚めを意味することが多い。潜在的な能力や感情を呼び覚ますイメージ。 【混同しやすい点】"stir"は感情を穏やかに動かすイメージだが、"awaken"は深い眠りから目覚めるような、より劇的な変化を意味することがある。また、"awaken"はしばしば文学的な文脈で使用される。
『(事件や行動を)扇動する』、『(紛争などを)引き起こす』という意味。ネガティブな文脈で使われることが多く、紛争や犯罪などを引き起こす意味合いが強い。他動詞。 【ニュアンスの違い】"stir"よりも、より積極的に何か(通常は悪いこと)を引き起こす意図がある。計画的に扇動するニュアンス。 【混同しやすい点】"stir"は単に感情を動かす、または行動のきっかけを作る程度だが、"instigate"はより積極的に、そして否定的な結果を伴う行動を指す。また、"instigate"は法的な意味合いを帯びることもある。
派生語
- stirring
『stir』に接尾辞『-ing』が付加された形容詞で、『心を揺さぶるような』、『感動的な』という意味合いを持ちます。単に『混ぜる』という動作から転じて、感情を揺さぶるような状況や出来事を表現する際に用いられ、文学作品や演説などでよく見られます。名詞としても使われ、『騒ぎ』や『興奮』といった意味になります。
『instigate』は『inner-(中に)』+『stig-(突く、刺激する)』という語源を持ち、『扇動する』、『引き起こす』という意味合いを持ちます。『stir』が物理的な攪拌を表すのに対し、『instigate』は内側から刺激して行動や感情を引き起こすという、より抽象的な意味合いで使用されます。ビジネスシーンや政治的な文脈で、計画や行動の開始を促す際に用いられます。
『dis-(否定、分離)』+『turb-(かき乱す、混乱させる)』という語源を持ち、『邪魔する』、『乱す』という意味合いを持ちます。『stir』が何かを混ぜたり動かしたりするのに対し、『disturb』は平穏な状態を乱すという、より否定的な意味合いで使用されます。日常会話からビジネス、学術論文まで幅広く使用されます。語源的には『stir』と近いですが、意味の方向性が異なります。
反意語
『calm』は『穏やかな』、『静かな』という意味で、『stir』が『かき乱す』、『興奮させる』という意味を持つことと対照的です。『stir』が嵐や騒動といった状況で使われるのに対し、『calm』は凪や静寂といった状況で用いられます。比喩的な意味でも、『stir up trouble(騒ぎを起こす)』に対して『calm the situation(状況を鎮める)』のように対比されます。
『appease』は『なだめる』、『鎮める』という意味で、『stir』が感情や状況をかき立てるのに対し、その逆の作用を表します。特に怒りや不満を鎮める際に用いられ、政治的な文脈や人間関係において、対立を解消するために使われることが多いです。『stir up discontent(不満を煽る)』に対して『appease discontent(不満を鎮める)』のように対比されます。
『quell』は『鎮圧する』、『抑える』という意味で、『stir』が何かを活発化させるのに対し、その勢いを抑え込む意味合いを持ちます。反乱や騒動など、激しい動きを鎮める際に用いられ、フォーマルな場面や報道などで使われることが多いです。『stir up rebellion(反乱を煽る)』に対して『quell a rebellion(反乱を鎮圧する)』のように対比されます。
語源
"stir」の語源は古英語の「styrian」に遡り、「動かす」「かき混ぜる」といった意味を持っていました。さらに遡ると、ゲルマン祖語の「*sturjanan」に行き着きます。この語根は、「突き動かす」「掻き乱す」といった動きや興奮を表す概念と関連していたと考えられます。現代英語の「stir」は、文字通りにかき混ぜる行為だけでなく、感情や関心を「かき立てる」という意味合いも持ち合わせています。日本語の「心を騒がせる」という表現に近いニュアンスで、物理的な動きから感情的な動きへと意味が拡張された好例と言えるでしょう。例えば、政治的な演説が聴衆の心を「stir」するように、目に見えない影響力を持つ言葉としても使われます。
暗記法
「stir」は単なる攪拌ではない。感情や社会を揺さぶる、文化的な震源地だ。公民権運動で不正を「かき混ぜ」、世論を動かす政治の舞台裏。シェイクスピアは心の葛藤を描き、ロマン派は自然の激しさを表現した。古写真が記憶を呼び覚まし、過ぎた日への郷愁を誘う。英語圏では、心の奥底を揺さぶる、感情の起爆剤として生き続ける言葉なのだ。
混同しやすい単語
発音が非常に似ており、特に語尾のRの発音が弱い場合、区別が難しくなることがあります。'stir'は『かき混ぜる』という意味の動詞ですが、'stare'は『じっと見つめる』という意味の動詞です。スペルも似ているため、文脈で判断することが重要です。英語のRの発音は日本語にはないため、意識的に練習する必要があります。
発音が似ており、特に早口で話される場合や、聞き取りにくい環境では混同しやすいです。'stir'は動詞ですが、'star'は『星』という名詞です。スペルも非常に似ているため、文脈で判断する必要があります。語源的には、'star'は古代ゲルマン語の'sterron'に由来し、'stir'は古英語の'styrian'に由来します。起源が異なる点も興味深いです。
発音が似ており、特にアメリカ英語では'stir'と'steer'の発音が近づくことがあります。'stir'は『かき混ぜる』という意味ですが、'steer'は『操縦する』という意味の動詞です。また、'steer'は『去勢された雄牛』という意味の名詞でもあります。スペルも似ているため、文脈で判断することが重要です。例えば、料理のレシピで'steer'が出てくることはまずありません。
発音が似ており、特に語尾のRの音が不明瞭な場合に混同しやすいです。'stir'は動詞ですが、'store'は『店』や『蓄える』という意味の名詞または動詞です。スペルも似ているため、文脈で判断する必要があります。'store'は、何かを保管する場所というイメージから、店という意味に発展しました。
'stir'と'sir'は、母音と子音の順序が逆になっているため、発音時に混同しやすい可能性があります。特に、早口で話す場合や、発音が不明瞭な場合には注意が必要です。'stir'は動詞ですが、'sir'は男性への敬称として使われる名詞です。'sir'は中世フランス語の'sieur'(領主)に由来します。
発音が似ており、特に語尾のRの発音が弱い場合に区別が難しくなることがあります。'stir'は動詞ですが、'stair'は『階段』という意味の名詞です。スペルも似ていますが、'stir'には'i'が含まれ、'stair'には'ai'が含まれるという違いがあります。'stair'は、上へ昇るための段というイメージから、階段という意味になりました。
誤用例
日本語の「扇動する」を直訳すると "stir" が思い浮かびやすいですが、"stir" は感情や議論を『かき立てる』ニュアンスが強く、特定の意見へ誘導する意図には不向きです。"sway" は、より相手の意見を変えさせる、影響を与える意味合いが強く、政治的な文脈で適切です。日本人が「〜に扇動する」という構文を "stir to" と直訳してしまう傾向がありますが、英語では "stir up" のように、感情などをかき立てる対象を直接目的語にとることが多いです。
"stir" は物理的に混ぜる、または感情や議論をかき立てる意味が主で、記憶を『呼び起こす』という意味では不自然です。"evoke" は、感覚やイメージを通して記憶や感情を呼び起こす際に適しています。日本人が「記憶を呼び起こす」を "stir memories" と表現しようとするのは、日本語の「記憶を呼び起こす」という表現をそのまま英語に当てはめようとするためです。英語では、記憶が自然に湧き上がってくるニュアンスを "evoke" で表現します。
日本語の「波紋を呼ぶ」を直訳して "stir the water" とすると、英語では不自然な表現になります。"stir the water" は文字通り水をかき混ぜる意味合いが強く、比喩的な意味合いは伝わりにくいです。この文脈では、疑念や議論を『巻き起こす』という意味合いで "raise questions" が適切です。日本人が「波紋」を「水面の波」と捉え、"stir the water" と表現してしまうのは、日本語の比喩表現をそのまま英語に翻訳しようとするためです。英語では、抽象的な事柄が引き起こす影響を表現する際に、より直接的な動詞を選ぶ傾向があります。
文化的背景
「stir」は、単にかき混ぜるという動作を超え、感情や社会的な変動を喚起する言葉として、英語圏の文化に深く根ざしています。静かな水面に石を投げ込むように、人々の心や社会の状況を揺さぶり、変化を引き起こす力強いイメージを内包しているのです。
例えば、アメリカの歴史において、「stir up trouble」という表現は、公民権運動や労働運動などの社会変革期に頻繁に用いられました。抑圧された人々が現状を「かき混ぜ」、不当な状況を変えようとする、積極的な抵抗の意志を示す言葉として機能したのです。これは単なる騒ぎではなく、社会の根底を揺るがす、変革への熱意の表れでした。また、政治的な文脈では、「stir up public opinion」という表現が、世論を特定の方向に誘導しようとする動きを指すことがあります。メディアや政治家が、ある問題に対する人々の関心を「かき立て」、支持や反対の声を高めようとする際に用いられます。この場合、「stir」は、感情的な反応や行動を促す、操作的なニュアンスを帯びることもあります。
文学作品においても、「stir」は重要な役割を果たします。例えば、シェイクスピアの劇中では、登場人物の心の葛藤や感情の高まりを表現するために、「stir」が用いられることがあります。心の奥底に眠っていた感情が「かき立てられ」、行動へと駆り立てられる様子を描写するのです。また、ロマン派の詩人たちは、自然の力や人間の感情の激しさを表現するために、「stir」を好んで用いました。嵐が海を「かき混ぜ」、人々の心を揺さぶるような、壮大なイメージを描き出したのです。
現代英語においても、「stir」は、感情や記憶を呼び覚ます力を持つ言葉として使われ続けています。古い写真を見たときに、「stir up memories」(記憶を呼び起こす)というように、過去の出来事や感情が鮮やかに蘇る様子を表現します。また、「stir a feeling of nostalgia」(懐かしさをかき立てる)というように、過ぎ去った時代への憧憬や郷愁の念を表現する際にも用いられます。このように、「stir」は、単なる物理的な動作を表すだけでなく、人々の心に深く響く、文化的な含みを持つ言葉として、英語圏の文化に生き続けているのです。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、語彙問題(同意語選択、空所補充)。リスニングで口語表現として出る可能性もわずかにあり。
- 頻度と級・パート: 準1級以上で出題される可能性が高い。2級では稀。
- 文脈・例題の特徴: 科学、社会問題、歴史など幅広いテーマで登場。比喩的な意味合いで使われることも。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「かき混ぜる」の基本的な意味に加え、「(感情などを)掻き立てる」「(世論などを)喚起する」といった意味も重要。名詞形'stirring'(感動的な)も覚えておくと役立つ。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)。
- 頻度と級・パート: TOEIC全体としては中程度の頻度。Part 5で語彙知識が問われることが多い。
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンにおけるプロジェクト、組織改革、市場動向など、変化や影響に関する文脈で登場しやすい。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「(議論などを)巻き起こす」「(関心を)集める」といった意味で使われることが多い。類義語の'prompt', 'arouse'などとのニュアンスの違いも意識。
- 出題形式: リーディングセクション(長文読解)。
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻繁に登場する語彙。
- 文脈・例題の特徴: 科学、社会科学、歴史など、学術的なテーマの文章で、変化や議論、感情の動きなどを表す際に使用される。
- 学習者への注意点・アドバイス: 比喩的な意味合いで使われることが多い。「(議論を)巻き起こす」「(関心を)集める」といった意味を理解しておくこと。名詞形'stir'(騒ぎ、興奮)も重要。
- 出題形式: 主に長文読解。文脈から意味を推測する問題や、同意語選択問題で問われる。
- 頻度と級・パート: 難関大学の入試問題で出題される可能性がある。標準的なレベルの大学では頻度は低い。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、科学技術、歴史など、幅広いテーマの文章で登場。比喩的な意味合いで使われることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な「かき混ぜる」という意味だけでなく、「(感情などを)掻き立てる」「(世論などを)喚起する」といった意味を理解しておくことが重要。文脈から意味を推測する練習を重ねることが大切。