prompt
母音 /ɒ/ は日本語の『ア』と『オ』の中間のような音で、口を大きく開けて発音します。語尾の /pt/ は、/p/ で一度息を止め、/t/ を弱く発音するイメージです。『トゥ』とハッキリ発音しないように注意しましょう。
促す
行動や発言を促す意味合い。相手に何かをさせたいときに使う。例: 'The teacher prompted the student to answer the question.' (先生は生徒に質問に答えるように促した。)
Her gentle question prompted him to share a new idea.
彼女の優しい質問が、彼に新しいアイデアを話すよう促しました。
※ この文は、会議やグループディスカッションで、誰かが発言をためらっている時に、別の人がそっときっかけを与えて、新しい意見やアイデアを引き出す様子を描いています。「prompted him to share」で「彼が共有するよう促した」という行動を促す典型的な形です。誰かの言葉や行動が、別の人の行動のきっかけになる場面でよく使われます。
His warm smile prompted me to start talking.
彼の温かい笑顔が、私が話し始めるのを促しました。
※ この例文は、新しい人との出会いや、少し緊張する場面で、相手の優しい態度が、自分の行動のきっかけになる様子を表しています。「prompted me to start talking」のように、「(人)が~し始めるのを促す」という形で、感情や状況が行動を後押しする場面で使われます。相手の優しさに触れて、安心し、自然と会話が始まるような温かい情景が目に浮かびますね。
The sudden alarm prompted everyone to evacuate the building.
突然の警報が、全員にビルから避難するよう促しました。
※ この文は、緊急事態や予期せぬ出来事が、人々にある行動を迅速に行うよう促す状況を描いています。「prompted everyone to evacuate」で「全員が避難するよう促した」という、緊急性の高い行動を促す典型的な使い方です。ニュース記事や災害時の説明など、客観的な情報伝達の場面でよく見られます。何かがトリガーとなって、特定のアクションが起きる様子がよくわかります。
きっかけ
行動や思考の開始点となるもの。合図、ヒント、刺激など。例: 'The news served as a prompt for her to take action.' (そのニュースは彼女が行動を起こすきっかけとなった。)
Her big success was a prompt for me to start my own business.
彼女の大きな成功は、私が自分のビジネスを始めるきっかけとなりました。
※ この例文では、他人のポジティブな行動が「自分も何かを始めよう」という意欲につながる様子を描写しています。誰かの頑張りや成果が、私たち自身の行動を後押しする「きっかけ」になることはよくありますね。ここでは 'be a prompt for 〜' で「〜のきっかけになる」という典型的な使い方をしています。
The sudden power outage became the prompt for our family to prepare an emergency kit.
突然の停電は、私たちの家族が緊急キットを準備するきっかけとなりました。
※ この例文は、予期せぬ出来事が、その後の具体的な行動や準備につながる「きっかけ」となる場面を描いています。何か問題が起きた時に「これは良い教訓になった」と感じるような状況で 'become the prompt for 〜' を使うと自然です。ネガティブな出来事がポジティブな変化をもたらすきっかけになることもあります。
His kind question served as the prompt for me to share my true feelings.
彼の優しい質問が、私が本当の気持ちを打ち明けるきっかけとなりました。
※ ここでは、何気ない言葉や行動が、相手の心を開かせたり、特定の感情や行動を引き出したりする「きっかけ」となる様子を表しています。'serve as the prompt for 〜' は「〜のきっかけとして機能する」「〜のきっかけとなる」という意味で、特に物事が何かの役割を果たす場合に自然に使われます。会話の中で、相手が話し始めるきっかけを探しているような場面で想像してみてください。
即時の
迅速に対応する意味合い。ITの分野で、応答が早いことを指す場合に使われる。例:'prompt response'(即時応答)
The kind waiter gave us a prompt response to our order.
優しいウェイターさんが、私たちの注文に即座に対応してくれました。
※ この例文では、カフェやレストランで注文した際、ウェイターがすぐに、待たせることなく対応してくれる様子が描かれています。「prompt response」は、サービス業などでお客様の要望に「素早く応じる」という意味で非常によく使われる表現です。親切なウェイターさんのテキパキとした動きが目に浮かびますね。
The doctor made a prompt decision to save the patient's life.
医師は患者の命を救うため、即座に決断を下しました。
※ この例文は、病院の緊急事態を想像させます。医師が患者さんの命がかかった状況で、迷うことなく迅速に、そして適切な判断を下す緊迫した場面です。「make a prompt decision」は、「即座に決断を下す」という重要な行動を表す際によく使われます。特に、時間的な猶予がない状況で使われることが多いです。
This new app gives a prompt response to my touch.
この新しいアプリは、私のタッチに即座に反応します。
※ 新しいスマートフォンアプリを使ったときの快適な体験を表しています。指で画面を触ると、遅れることなくすぐに画面が反応する様子が目に浮かびますね。「prompt response」は、コンピューターやスマートフォンなどのデジタル機器が、ユーザーの操作に素早く反応する(レスポンスが良い)ことを説明する際にも頻繁に使われます。使っていてストレスがない、という良い印象を伝える表現です。
コロケーション
迅速な返答、即座の対応
※ ビジネスシーンで非常によく使われる表現です。顧客からの問い合わせや上司からの指示に対して、迅速に対応することを約束する際に用いられます。単に"fast response"と言うよりも、"prompt"を使うことで、よりプロフェッショナルで効率的な印象を与えます。例えば、"We appreciate your prompt response to our inquiry."(お問い合わせに迅速にご対応いただきありがとうございます。)のように使います。形容詞+名詞の組み合わせで、改まった場面で特に有効です。
迅速な支払い、滞りない支払い
※ こちらもビジネスシーンで頻繁に使われる表現で、請求書や契約書に記載されることが多いです。支払いを遅らせることなく、期日通りにきちんと支払うことを意味します。"Please ensure prompt payment of your invoice."(請求書の迅速な支払いをお願いいたします。)のように使います。遅延によるペナルティを避けるために、契約条件として明記されることもあります。形容詞+名詞の組み合わせで、契約関連のフォーマルな文脈でよく見られます。
迅速な行動、即時の措置
※ 問題や緊急事態が発生した際に、ためらわずにすぐに行動することを指します。例えば、"Prompt action is required to prevent further damage."(さらなる損害を防ぐためには迅速な行動が必要です。)のように使われます。災害時や事故発生時など、緊急性の高い状況で特に重要となる概念です。形容詞+名詞の組み合わせで、危機管理や緊急対応のマニュアルなどにも頻出します。
反応を引き起こす、きっかけとなる
※ "prompt"が動詞として使われる場合のコロケーションです。ある出来事や発言が、人々の感情や行動を引き出すことを意味します。例えば、"The news prompted a strong reaction from the public."(そのニュースは国民から強い反感を買った。)のように使われます。間接的に影響を与えるニュアンスがあり、直接的な原因とは区別されます。動詞+名詞の組み合わせで、ニュース報道や社会現象の分析などでよく用いられます。
議論を促す、討論のきっかけとなる
※ あるテーマや問題提起が、人々の間で議論や意見交換を活発化させることを意味します。"The article prompted a heated discussion about education reform."(その記事は教育改革に関する熱い議論を巻き起こした。)のように使われます。単に"start a discussion"と言うよりも、"prompt"を使うことで、より深い議論や多角的な視点の交換を促すニュアンスが含まれます。動詞+名詞の組み合わせで、学術的な論文や政策提言などでよく見られます。
時間きっかりに、即座に(合図と同時に)
※ 演劇や舞台などで、合図(通常はキュー出し)と同時に何かを開始することを意味します。例えば、"The actors started their performance at the prompt."(俳優たちは合図と同時に演技を始めた。)のように使われます。比喩的に、指示や命令が出されたらすぐに実行するという意味でも使われます。前置詞+名詞の組み合わせで、舞台芸術や軍事訓練など、正確さが求められる状況で用いられます。
使用シーン
学術論文や研究発表において、実験や調査の「きっかけ」や「刺激」として頻繁に用いられます。例えば、心理学の研究で被験者に与える視覚的な刺激を指して "visual prompt" と表現したり、ディスカッションの「お題」として "discussion prompt" が提示されたりします。また、プログラミング分野では、AIモデルへの指示や入力として "prompt engineering" という言葉も使われます。
ビジネスシーンでは、会議での議論を「促す」ための資料や、顧客からの問い合わせに対する迅速な「対応」を促すシステムなど、行動を喚起する意味合いで使われます。例えば、"prompt reply" (迅速な返信) や "prompt action" (迅速な行動) のように用いられます。また、プロジェクト管理において、タスクの遅延を検知し、関係者に「注意を促す」ためにアラート機能を "prompt" と呼ぶこともあります。
日常会話ではあまり使いませんが、スマートフォンの音声アシスタントやチャットボットの応答を「促す」メッセージとして目にすることがあります。例えば、"What's your prompt?" (どのような指示をしますか?) のように表示されたり、ニュース記事で、AI技術に関する説明の中で「プロンプト」という言葉が使われたりするのを見かけることがあります。
関連語
類義語
『(説得や影響力によって)~させる、~する気にさせる』という意味。主に好ましくない事態や行動を引き起こす場合に使われることが多い。学術的な文脈や、ややフォーマルな状況で使用される傾向がある。 【ニュアンスの違い】『prompt』よりも間接的な影響や、より強い説得のニュアンスを含む。また、『prompt』が必ずしもネガティブな結果を伴わないのに対し、『induce』はネガティブな結果を伴うことが多い。 【混同しやすい点】『induce』は、科学的な文脈で『帰納する』という意味でも使われるため、文脈によって意味を判断する必要がある。また、『prompt』よりもフォーマルな響きを持つため、日常会話では不自然に聞こえる場合がある。
『(人)に動機を与える、やる気にさせる』という意味。行動を促すという点では『prompt』と共通するが、内発的な動機づけに焦点を当てている点が異なる。ビジネスや教育の場面でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『prompt』が外部からの刺激によって行動を促すのに対し、『motivate』は内部からの欲求や目標によって行動を促す。したがって、『motivate』はよりポジティブで持続的な行動を促すニュアンスがある。 【混同しやすい点】『motivate』は通常、人を対象とするが、『prompt』は人だけでなく、システムやイベントなど、より広い範囲のものを対象とすることができる。また、『motivate』は自動詞としても他動詞としても使用できるが、『prompt』は主に他動詞として使用される。
『刺激する、活気づける』という意味。肉体的、精神的な刺激を与える場合に使われる。医学、経済、科学など幅広い分野で使用される。 【ニュアンスの違い】『prompt』よりも強い、直接的な刺激を与えるニュアンスがある。また、『prompt』が特定の行動を引き出すことを目的とするのに対し、『stimulate』は一般的な活性化を目的とする。 【混同しやすい点】『stimulate』は、必ずしも具体的な行動を促すわけではない。例えば、『経済を刺激する』は、経済活動全体を活発にすることを意味し、特定の行動を促すわけではない。『prompt』は、特定の行動を促す場合にのみ使用される。
『合図、きっかけ』という意味。演劇や舞台などで、次の行動やセリフの合図として使われることが多い。また、比喩的に、何かの始まりやきっかけとなるものを指す場合にも使われる。 【ニュアンスの違い】『prompt』よりも直接的で具体的な合図を意味する。また、『prompt』が行動を促す一般的な言葉であるのに対し、『cue』は特定の行動や反応を期待するニュアンスがある。 【混同しやすい点】『cue』は名詞としても動詞としても使用できるが、『prompt』は主に動詞として使用される。『cue』は、特定の文脈(例えば、演劇)で非常に頻繁に使用されるが、日常会話では『prompt』の方が一般的である。
『(感情・反応などを)引き起こす、挑発する』という意味。怒りや反感など、ネガティブな感情を引き起こす場合によく使われる。政治的な文脈や、議論の場面で使われることが多い。 【ニュアンスの違い】『prompt』よりも強い感情や反応を引き起こすニュアンスがある。また、『prompt』が中立的な意味合いで使われるのに対し、『provoke』はネガティブな意味合いで使われることが多い。 【混同しやすい点】『provoke』は、意図的に相手を怒らせたり、反感を買うような行動を指す場合がある。『prompt』は、そのような意図を含まないため、注意が必要である。また、『provoke』はしばしば受動態で使用され、『be provoked』の形で『挑発される』という意味になる。
『(情報・反応などを)引き出す、誘い出す』という意味。質問や調査などによって、隠された情報や感情を引き出す場合に使われる。フォーマルな文脈や、学術的な文脈で使用されることが多い。 【ニュアンスの違い】『prompt』よりも間接的な方法で、隠された情報や感情を引き出すニュアンスがある。また、『prompt』が行動を促すのに対し、『elicit』は情報や感情を引き出すことに焦点を当てている。 【混同しやすい点】『elicit』は、主に情報や感情など、抽象的なものを対象とする。『prompt』は、人やシステムなど、より具体的なものを対象とすることができる。また、『elicit』はフォーマルな響きを持つため、日常会話では不自然に聞こえる場合がある。
派生語
『即座に』という意味の副詞。『prompt』に副詞化の接尾辞『-ly』が付いた形。ビジネスシーンで、迅速な行動や対応を求めるときによく用いられる。例:『Please reply promptly(迅速にご返信ください)』。
- prompter
『促す人』『(演劇の)プロンプター』という意味の名詞。『prompt』に人を表す接尾辞『-er』が付いた形。演劇の文脈では、役者にセリフを教える人を指す。比喩的に、誰かの行動を促す人を指すこともある。
- prompting
動名詞または現在分詞。『促すこと』という意味。プログラミングの分野では、ユーザーに指示や入力を促すメッセージを指すことが多い。例:『The prompting was unclear.(プロンプトが不明確だった)』。
反意語
『遅らせる』という意味の動詞。promptが『即座に』行動を促すのに対し、delayは行動を先延ばしにすることを意味する。日常会話、ビジネス、学術論文など、幅広い文脈で使用される。例:『The flight was delayed.(フライトが遅延した)』。
『妨げる』『邪魔する』という意味の動詞。promptが行動を促すのに対し、hinderは行動を妨げるという点で対立する。特に、目標達成や進捗を遅らせるニュアンスが強い。例:『The rain hindered our progress.(雨が私たちの進行を妨げた)』。
『落胆させる』『思いとどまらせる』という意味の動詞。promptが行動を促すのに対し、discourageは行動を抑制する。接頭辞『dis-』は否定的な意味合いを付加する。人の意欲や計画をくじく場合に用いられる。例:『The bad news discouraged him.(その悪い知らせは彼を落胆させた)』。
語源
「prompt」は、ラテン語の「promptus」(準備ができている、用意された、敏速な)に由来します。これは、「pro-」(前に)と「emere」(取り出す、買う)という二つの要素から構成されています。文字通りには「前に取り出された」という意味合いを持ち、何かがすぐに利用できる状態、つまり「準備万端」であることを示唆します。この語源から、「促す」という意味合いが派生したのは、準備が整っている状態から、行動を促す、あるいは即座に行動に移すというイメージが連想されるためです。例えば、料理番組で材料がすべて「prompt」な状態(すぐに使えるように準備されている)であれば、シェフは視聴者に対して調理を「prompt」(促す)ことができます。また、緊急時において「prompt」(即時の)対応が求められるのも、この語源的な意味合いと深く結びついています。
暗記法
「prompt」は舞台袖の助言から生まれた言葉。役者の忘れかけた台詞をそっと教えるように、創造性や行動のきっかけを与える存在です。それはまるで、人生という舞台で迷う私たちを導く、内なる声のよう。心理学では潜在意識からのメッセージ、AIの世界では眠れる能力を引き出す指示として、常に私たちを刺激し、新たな舞台へと誘うのです。
混同しやすい単語
『prompt』と発音が似ており、特に語尾の子音の発音が曖昧になると混同しやすい。意味は『昇進させる』『促進する』で、品詞は動詞。スペルも似ているため、文脈で判断する必要がある。prefix(接頭辞)のpro-は『前へ』という意味があり、promoteは『前へ進める』イメージ。
『prompt』と語感が似ており、特に早口で発音されると区別が難しい。意味は『約束』で、名詞または動詞として使用される。スペルも一部共通しているため、注意が必要。語源的には『前もって送る』という意味合いがあり、未来への確約を示す。
『prompt』の派生語であるため、意味とスペルが似ているのは当然だが、品詞が異なる。『promptly』は副詞で、『即座に』『迅速に』という意味を持つ。文中で動詞を修飾する役割に注意。
発音がわずかに似ており、特にネイティブの発音を聞き慣れていない場合、混同する可能性がある。意味は『(ポンプで)くみ上げた』『興奮した』で、文脈が全く異なる。スペルも異なるため、注意深く区別する必要がある。
『prompt』の最初の部分と発音が似ており、特にイギリス英語の発音では混同しやすい。『pram』は『乳母車』を意味するイギリス英語のスラングであり、アメリカ英語ではあまり使われない。意味もスペルも大きく異なるため、文脈で判断することが重要。
発音が似ており、特に母音の発音が曖昧になると混同しやすい。意味は『ふっくらした』『丸々とした』で、形容詞として使われることが多い。スペルも似ているため、注意が必要。語源的には『塊』のようなイメージがあり、ふっくらした形を連想させる。
誤用例
日本語の『促す』という言葉に引きずられ、安易に"prompt"を使ってしまう例です。確かに"prompt"も『促す』という意味を持ちますが、より具体的な行動や発言のきっかけを与えるニュアンスが強く、契約のような重要な事柄に対しては不自然です。"prompt"は、例えば役者がセリフを忘れた際に『促す』、あるいはシステムがユーザーに何らかの入力を『促す』といった状況でより適切です。契約締結のような場合は、"encourage"(励ます、勧める)や "urge"(強く勧める)を使う方が、相手への敬意や状況の重要性を伝えることができます。日本人が『促す』という言葉を、相手の自発的な行動を促す意味合いで広く使うため、この誤用が起こりやすいと考えられます。
前半の"prompt"は『引き起こす』という意味で正しく使われていますが、後半の"prompt help"は不自然です。"prompt"は、何かの行動や反応を『引き出す』という意味合いが強く、ここでは政府が積極的に『助けを引き出す』というニュアンスになってしまい、文脈に合いません。政府が『助けを提供する』という意味で"offer"を使うのが適切です。この誤用は、"prompt"を『促す』という意味でしか覚えていない場合に起こりやすいと考えられます。また、日本語の『〜を促す』という表現に引っ張られ、"prompt"を他動詞として使うことに慣れていないことも原因の一つです。英語では、政府の役割は"offer"(提供)や"provide"(供給)といった言葉で表現されることが多いことを覚えておきましょう。
"prompt"は、自発的な行動を促すニュアンスが強い単語です。スキャンダル後の辞任のように、外部からの圧力や強制力が働いた状況では不適切です。この場合、"force"(強制する)や"compel"(強制する)を使う方が、状況のニュアンスを正確に伝えることができます。日本人は、責任を取らせる文脈で「辞任を促す」という表現を使いがちですが、英語では、責任を取らせるような状況はより直接的に表現されることが多いです。また、"prompt"を『促す』という意味で覚えていると、受動態で『促された』と表現することに違和感を覚えにくいことも、この誤用の原因の一つと考えられます。
文化的背景
「prompt」は、単に「促す」だけでなく、「舞台袖からの助言」に由来し、創造性や行動のきっかけを与える、演劇的・心理的なニュアンスを帯びた言葉です。この語は、人が自らの内なる舞台で演じる人生という劇において、隠れた支援者、あるいは良心の声として機能するイメージを喚起します。
演劇の世界において、「prompt」は、役者が台詞を忘れたり詰まったりした際に、舞台袖から正しい台詞を教える役割を指します。この「prompt」の語源は、まさに舞台芸術の裏方から生まれたものであり、表舞台に立つ役者を支え、物語を円滑に進めるための不可欠な存在でした。転じて、日常生活においては、誰かの行動や思考を促す、あるいは記憶を呼び覚ますような刺激やきっかけを意味するようになりました。たとえば、ある風景を見たことがきっかけで、過去の記憶が鮮やかに蘇るような経験は、「prompted by the scenery」と表現できます。
また、「prompt」は、心理学的な文脈においても重要な意味を持ちます。人間の潜在意識は、まるで舞台袖に控えるプロンプターのように、常に意識の表舞台に現れるべき情報を準備しています。夢や連想といった現象は、潜在意識からの「prompt」と解釈できるでしょう。セラピーやカウンセリングの現場では、セラピストがクライアントの自己理解を深めるために、様々な質問や課題を「prompt」として提示します。これらの「prompt」は、クライアントが自身の内面を探求し、新たな気づきを得るためのきっかけとなるのです。
現代では、AI技術の分野で「プロンプト」という言葉が頻繁に使われるようになりました。これは、AIモデルに対して、特定のタスクを実行させるための指示や質問を指します。しかし、この用法もまた、「prompt」が持つ本質的な意味合い、つまり「創造性や行動のきっかけを与える」という点を引き継いでいます。AIプロンプトは、AIの潜在能力を引き出し、人間とAIが協調して新たな価値を創造するための重要なツールとなっています。このように、「prompt」は、舞台芸術から心理学、そしてAI技術へと、時代とともにその意味合いを広げながら、常に人間の創造性と行動を支える言葉として存在し続けています。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解
- 頻度と級・パート: 準1級、1級で頻出。2級でも稀に出題
- 文脈・例題の特徴: 学術的な内容から、社会問題、環境問題まで幅広い。長文読解では内容一致問題で問われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 動詞としての「促す」「引き起こす」、形容詞としての「即座の」「迅速な」の意味を区別することが重要。名詞形(prompting)も覚えておくと良い。
- 出題形式: Part 5 (短文穴埋め)、Part 7 (長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 5で時々出題。Part 7でも稀に出題される。
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンでの使用が中心。「迅速な対応」や「促進する」といった意味合いで登場する。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「prompt payment(即時払い)」のようなコロケーションを覚えておくと役立つ。同義語である「immediate」「encourage」などとの使い分けを意識する。
- 出題形式: リーディングセクション
- 頻度と級・パート: 頻出単語
- 文脈・例題の特徴: アカデミックな文章で、原因と結果、行動の動機などを説明する文脈で使われることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 名詞、動詞の両方の用法を理解しておくこと。類義語である induce, stimulate, triggerなどとのニュアンスの違いを理解しておくと、より正確な読解につながる。
- 出題形式: 長文読解、和訳問題、英作文
- 頻度と級・パート: 難関大学で頻出
- 文脈・例題の特徴: 評論や物語など、多様な文脈で登場する。文脈から意味を推測する力が求められる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 多義語であるため、文脈に応じた適切な意味を判断する必要がある。英作文では、動詞として「促す」「刺激する」の意味で使うことができる。