spare
"spare" の発音で注意すべきは、まず母音 /eə/ です。これは二重母音で、/e/ から /ə/ へとスムーズに変化します。日本語の『エ』よりも口を少し開き、曖昧母音へと移行するイメージです。また、語尾の 'r' は、アメリカ英語では明確に発音されますが、イギリス英語ではほとんど発音されません。どちらの発音を選ぶにせよ、舌の位置を意識し、特にアメリカ英語の場合は、舌を丸めるようにして発音するとよりネイティブらしい響きになります。
割く
時間やお金、労力などを、何か他の目的のために使う、または残しておくこと。 'Can you spare me a few minutes?'(少し時間を割いていただけますか?)のように使われる。
My busy boss always tries to spare a few minutes for new employees' questions.
私の忙しい上司は、いつも新入社員の質問のために数分を割こうとしてくれます。
※ この例文では、多忙な上司が、新人の疑問を解消するために貴重な時間を「割いて」くれる情景が目に浮かびます。「spare time/minutes」は、忙しい中でも時間を捻出するという、相手への配慮が感じられる典型的な使い方です。
My mom always spares no expense for healthy food for our family.
うちの母は、家族の健康的な食事のためなら、どんな出費も惜しみません。
※ 「spare no expense」は「費用を惜しまない、どんなお金でも割く」という意味の非常に自然な表現です。この例文からは、家族の健康を願うお母さんの強い愛情が伝わってきますね。「割く」という行為が、何かを惜しまず提供する、というニュアンスで使われています。
Could you spare me a hand with this heavy box for a moment?
この重い箱を運ぶのを、少しだけ手伝っていただけませんか?
※ 「spare a hand」で「手を貸す、手伝う」という意味になります。何か困っている人が、相手に少しだけ労力や時間を「割いて」助けてほしいと丁寧に依頼する場面でよく使われます。相手が忙しいかもしれないけれど、少しだけ助けてほしい、という気持ちが込められています。
予備の
通常の使用に加えて、追加で利用できる状態のこと。 'spare key'(スペアキー、合鍵)のように使われる。
Oh no, my bicycle tire is flat! Luckily, I always carry a spare tire with me.
ああ、自転車のタイヤがパンクしちゃった!幸い、いつも予備のタイヤを持ち歩いているんだ。
※ 突然のトラブルで困っている場面ですね。自転車のタイヤがパンクしてしまっても、予備のタイヤ(a spare tire)があれば安心、という状況が目に浮かびます。「予備の」という意味のspareは、このように何か問題が起きた時に備えて持っているものによく使われます。
I forgot my phone charger at home, but I have a spare one in my travel bag.
携帯の充電器を家に忘れちゃったけど、旅行カバンに予備のが入ってるよ。
※ 旅行先で「しまった!」と焦る気持ちと、予備の充電器(a spare one)を見つけた時のホッとした気持ちが伝わってきますね。ここではchargerの代わりにoneを使っています。旅行や出張の際に、メインのものが使えなくなった時に備えて持っていく「予備の」ものによく使われる表現です。
My pen ran out of ink during the meeting, so I quickly grabbed a spare one from my desk drawer.
会議中にペンがインク切れになったから、すぐに机の引き出しから予備のペンを取ったよ。
※ 会議中にペンが使えなくなるとちょっと困りますが、すぐに引き出しから予備のペン(a spare one / a spare pen)を取り出して、スムーズに作業を続けられた場面です。このように、日常のちょっとした場面で「予備の」ものが役立つ状況はたくさんあります。いざという時の備えとして「spare」はとても便利です。
余裕
余分にあるもの、または必要な量を超えているもの。特に時間やお金に関して使われることが多い。 'have some spare time'(いくらかの余暇がある)のように使われる。
I'm sorry, I have no spare time to help you today after work.
ごめんなさい、今日の仕事の後だと、あなたを手伝う余裕が全くありません。
※ この例文は、仕事が終わってクタクタなのに、友人から頼み事をされてしまい、「もうこれ以上何もする時間がない」という状況を描写しています。「spare time」は「余暇」「空き時間」という意味で非常によく使われる表現です。忙しいときに「時間がない」と伝えるのにぴったりの、日常的なフレーズです。
Oh no, my phone battery is dead! Do you have a spare one?
あぁ、最悪、スマホの電池が切れた!予備の(電池)持ってる?
※ この例文は、外出先でスマホの電池が切れてしまい、大ピンチになっている場面を想像させます。「spare」は「予備の」「余分の」という意味で、電池やタイヤなど、いざという時のために用意しておくものを指す時によく使われます。「a spare one」の「one」は、前に出た「battery」の繰り返しを避けるために使われる言葉で、日常会話で頻繁に登場します。
This box is too big. Is there any spare room in the closet?
この箱、大きすぎるな。クローゼットの中に何か空いている空間ある?
※ この例文は、新しく買った大きな箱をしまいたいけれど、クローゼットがいっぱいで入らない、という困った状況を表しています。「spare room」は「余っている空間や場所」という意味で、物理的なスペースが十分にあるか尋ねる際によく使われます。ここで言う「room」は「部屋」という意味ではなく、数えられない「空間」「余地」という意味で使われています。
コロケーション
自由時間、余暇
※ 仕事や義務から解放された、自分のために使える時間を指します。 'free time' とほぼ同義ですが、'spare time' は「(何か他の目的のために)取っておいた時間」というニュアンスがやや強く、時間を有効活用することを示唆することがあります。例えば、 'I spend my spare time reading.'(私は自由時間を読書に費やします)のように使われます。ビジネスシーンでも、会議などで「もし時間が余れば」という意味で 'If we have spare time...' と切り出すことがあります。
(人のために)少し思いを馳せる、気にかける
※ 困難な状況にある人や、不幸に見舞われた人に対して、少しの間でも良いから同情や配慮の念を向けることを促す表現です。'Spare a thought for those less fortunate.'(恵まれない人々のことを少し考えてみてください)のように使われます。ややフォーマルな場面や、スピーチなどで聞かれることが多いです。単に 'think of' よりも、より感情的な共感や連帯感を表したい場合に適しています。
詳細を省く、詳しく話さなくて良い
※ 相手に何かを説明する際に、不快な情報や不要な情報を避けて欲しいときに使う表現です。例えば、事故や事件について話す際に、ショッキングな場面を避けて大まかな内容だけを伝えたい場合に 'Just spare me the details.'(詳細は省いてください)のように使います。口語的で直接的な表現なので、親しい間柄で使われることが多いです。類似表現に 'leave out the details' がありますが、'spare the details' の方がより強い拒否感や嫌悪感を示すニュアンスがあります。
人の感情を傷つけないように気遣う、配慮する
※ 相手の気持ちを害さないように、言葉や態度を選ぶことを意味します。例えば、相手に悪い知らせを伝える際に、できるだけ穏やかな言い方をしたり、嘘をついてでも相手を傷つけないようにする場合に使われます。'I didn't want to hurt her feelings, so I spared her feelings.'(彼女の気持ちを傷つけたくなかったので、彼女に配慮した)のように使います。 'protect someone's feelings' と似ていますが、'spare' の方がより積極的に相手の感情を慮るニュアンスがあります。
小銭、お釣り
※ ポケットや財布に入っている、あまり重要ではない小額のお金のことです。ホームレスの人に施しをするときや、自動販売機で飲み物を買うときなどに使われます。'Do you have any spare change?'(何か小銭を持っていますか?)のように使われます。 'loose change' とほぼ同義ですが、'spare change' は「余ったお金」というニュアンスがより強く、寄付や施しに使われることを想定していることが多いです。
スペアタイヤ
※ 自動車がパンクした際に交換するために用意されている予備のタイヤのことです。比喩的に、緊急時や予期せぬ事態に備えて用意されている代替手段や予備の計画を指すこともあります。例えば、仕事で失敗した場合に備えて、別の計画を用意しておくことを 'have a spare tire' と表現することがあります。物理的なタイヤだけでなく、抽象的な概念にも適用できる点が特徴です。
予備の寝室、客間
※ 普段は使われていない、来客用に用意された寝室のことです。親戚や友人が泊まりに来た際に使用される部屋を指します。'guest room' とほぼ同義ですが、'spare bedroom' は「(普段は)余っている部屋」というニュアンスが強く、必ずしも常に客用として準備されているとは限りません。例えば、普段は書斎として使っている部屋を、来客時に寝室として使う場合などに適しています。
使用シーン
学術論文や研究発表で、時間や資源を「割く」という意味で使われます。例:研究者が「追加の時間をデータ分析に割くことができた」と述べる場合や、論文で「この研究は、特定の理論に多くの紙面を割いている」と記述する場合など。
ビジネス文書や会議で、時間、予算、人員などを「割く」という意味で使用されます。例:プロジェクトマネージャーが「会議の冒頭15分を、進捗報告に割きましょう」と提案したり、予算編成会議で「予備費を、マーケティング活動に回す」といった議論がなされる場面など。
日常会話では「予備の」という意味で使われることが多いです。例:「予備の鍵を持っていますか?」と尋ねる場合や、「もし時間が余ったら、手伝ってくれませんか?」と頼む場合など。ただし、フォーマルな場面では「時間や労力を割く」という意味で使用されることもあります。
関連語
類義語
『取っておく』『確保する』という意味で、席、時間、資源などを特定の目的のために確保する際に使われます。ビジネスや旅行、イベントなど、計画的な場面でよく用いられます。 【ニュアンスの違い】『spare』が余分なものを分け与えるニュアンスがあるのに対し、『reserve』は最初から特定目的のために確保するというニュアンスが強いです。また、『reserve』はフォーマルな印象を与えます。 【混同しやすい点】『spare』は時間やお金など、余剰がある場合に『割く』という意味合いで使用されることが多いですが、『reserve』は計画的に『確保する』という意味合いが強いという点に注意が必要です。例えば、「時間をspareする」は、余った時間を活用するニュアンスですが、「席をreserveする」は、事前に席を確保するという意味になります。
『許可する』『許容する』という意味で、何かをすることを許可したり、ある範囲内での行動を認める際に使われます。法律、規則、親の許可など、権限を持つ者が許可する場合に用いられます。 【ニュアンスの違い】『spare』が『(時間などを)割く』という意味で使われる場合、『allow』は何かを許可するという意味合いが異なります。『spare』は自分のリソースを分け与えるニュアンスがありますが、『allow』は行動の自由を与えるニュアンスがあります。 【混同しやすい点】『spare』は時間や労力を提供する意味合いが強く、『allow』は許可や容認の意味合いが強いという点です。例えば、「時間をspareする」は自分の時間を相手に割くことですが、「外出をallowする」は外出を許可することです。
『(快楽などを)慎む』『諦める』という意味で、何かを意図的に避ける、または放棄する際に使われます。フォーマルな場面や文学的な表現で用いられることがあります。 【ニュアンスの違い】『spare』が『(苦痛などを)与えない』という意味で使われる場合、『forgo』は自分が何かを諦めるという意味合いが異なります。『spare someone the trouble』のように、他人に苦労させないというニュアンスと、『forgo』の自らが何かを諦めるというニュアンスの違いに注意が必要です。 【混同しやすい点】『spare』は他者への配慮や寛容さを示すことが多いのに対し、『forgo』は自己犠牲や禁欲的な意味合いが強いという点です。例えば、「苦労をspareする」は相手に苦労をかけないようにすることですが、「楽しみをforgoする」は自分の楽しみを我慢することです。
『許す』『大目に見る』という意味で、過ちや失敗を許容する際に使われます。日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われます。 【ニュアンスの違い】『spare』が『(罰などを)与えない』という意味で使われる場合、『excuse』は過ちを許すという意味合いが異なります。『spare someone the punishment』のように罰を与えないというニュアンスと、『excuse a mistake』のように過ちを許すというニュアンスの違いに注意が必要です。 【混同しやすい点】『spare』は罰や苦痛を免除する意味合いが強く、『excuse』は過ちや失礼を許す意味合いが強いという点です。例えば、「罰をspareする」は罰を与えないことですが、「遅刻をexcuseする」は遅刻を許すことです。
『与える』という意味で、物、情報、感情などを誰かに渡す際に使われます。日常会話で非常によく使われる基本的な動詞です。 【ニュアンスの違い】『spare』が時間や労力、お金などを『割く』という意味合いで使用される場合、『give』はより広い意味での『与える』という意味になります。感情や情報など、形のないものも『give』の対象になります。 【混同しやすい点】『spare』は通常、余剰があるものを分け与えるニュアンスがありますが、『give』は必ずしも余剰があるとは限りません。例えば、「時間をspareする」は余った時間を活用するニュアンスですが、「アドバイスをgiveする」は必ずしも余ったアドバイスとは限りません。
『(時間、お金、余裕などを)持つ余裕がある』という意味で、何かをするための資源や能力があることを示します。特に否定文や疑問文でよく使われます。 【ニュアンスの違い】『spare』が時間やお金を『割く』という意味合いで使用される場合、『afford』はそれをする『余裕がある』という意味になります。『spare』はある程度意図的な行為であるのに対し、『afford』は客観的な状況を指すことが多いです。 【混同しやすい点】『spare』は能動的に何かを分け与えるニュアンスがありますが、『afford』は客観的に余裕がある状態を指すという点です。例えば、「時間をspareする」は意図的に時間を作る行為ですが、「時間をaffordできない」は客観的に時間がない状態を指します。
派生語
- sparely
『控えめに』、『乏しく』という意味の副詞。『spare』に副詞化の接尾辞『-ly』がついた形。資源や時間などを節約して使う様子を表し、ビジネス文書や経済に関する記事などで見られる。例えば、「sparely furnished room(殺風景な部屋)」のように使われる。
- sparing
『控えめな』、『寛大な』という意味の形容詞。『spare』が現在分詞化した形だが、単に『〜している』という意味ではなく、『〜を惜しむ』というニュアンスから転じて、『控えめな』という意味を持つ。また、『寛大な』という意味も持ち、例えば「sparing of criticism(批判を控える)」のように使われる。ビジネスや人間関係に関する文脈で用いられる。
- spareness
『乏しさ』、『簡素さ』という意味の名詞。『spare』に名詞化の接尾辞『-ness』がついた形。物質的な豊かさの欠如や、装飾の少なさを表す。例えば、「the spareness of the design(デザインの簡素さ)」のように使われる。デザイン、建築、経済など幅広い分野で用いられる。
反意語
『浪費する』、『無駄にする』という意味の動詞。『spare』(余分にとっておく)とは対照的に、資源や時間などを無駄に使うことを表す。日常会話からビジネス、環境問題に関する議論まで幅広く用いられる。例えば、「waste time(時間を無駄にする)」のように使われる。
『ため込む』、『貯蔵する』という意味の動詞。『spare』(分け与える余裕がある)とは対照的に、必要以上に物を集めて蓄えることを表す。しばしば否定的なニュアンスを持ち、強欲さや不安感を伴う行動として描写される。例えば、「hoard gold(金をため込む)」のように使われる。
『浪費する』、『浪費癖がある』という意味の動詞。『spare』(節約する)とは対照的に、お金、時間、機会などを軽率に無駄にすることを表す。特に貴重なものを無駄にするニュアンスが強い。例えば、「squander inheritance(遺産を浪費する)」のように使われる。
語源
「spare」の語源は古英語の「sparian(惜しむ、控える)」に遡ります。これはゲルマン祖語の*sparojan(節約する、保護する)に由来し、さらに遡ると印欧祖語の*(s)per-(散らす、まく)に関連すると考えられています。元々は「惜しんで使わない」という意味合いが強く、そこから「余分な」「予備の」という意味へと発展しました。例えば、家計で「spare money(へそくり)」を「取っておく」イメージです。また、「割く」という意味では、「時間をspare(割く)」のように、本来他のことに使うはずだったものを、何か特定のために「惜しんで使う」というニュアンスを含んでいます。このように、「惜しむ」という核となる意味から、現代の多様な用法が生まれたと考えられます。
暗記法
「spare」は単なる余剰ではない。中世の領主が農民に与えた余暇は慈悲の象徴であり、資源分配や倫理観と深く結びついていた。「可愛い子には旅をさせよ」の諺では、体罰を「控える」意味合いを持つ。現代では環境保護の文脈で資源浪費を避ける意味も。そして「時間を割く」というように、感情的な余裕や心のゆとりをも示唆する。物質的な豊かさだけでなく、あらゆる種類の余裕が「spare」には込められている。
混同しやすい単語
『spare』とスペルが似ており、特に語尾の『-are』と『-ere』は間違えやすい。発音も若干似ているため、注意が必要。『sphere』は『球体』という意味の名詞であり、品詞も意味も異なる。
『spare』と発音が似ており、特に母音部分が曖昧になりやすい。また、子音の数も同じであるため、聞き間違いやすい。『scar』は『傷跡』という意味の名詞であり、意味も全く異なる。文脈で判断することが重要。
『spare』とスペルが非常に似ており、一文字違いであるため、タイプミスやスペルチェックで見落としやすい。『spar』は『(船のマストなどの)丸太』や『(ボクシングなどの)スパーリング』といった意味があり、文脈によって意味が大きく異なる。特に、英作文の際には注意が必要。
『spare』と語頭の『sp-』が共通しているため、発音時に混同しやすい。特に、早口で話す際には聞き取りにくい。『spree』は『浮かれ騒ぎ』という意味の名詞であり、意味も全く異なる。例えば、『shopping spree(買い物三昧)』のように使われる。
『spare』とスペルが似ており、母音の配置が入れ替わっているため、視覚的に混同しやすい。発音も若干似ているため、注意が必要。『spear』は『槍』という意味の名詞であり、品詞も意味も異なる。中世の騎士や狩猟のイメージを思い浮かべると覚えやすい。
『spare』とスペルが一部共通しており、特に『-are』の部分が共通しているため、混同しやすい。『despair』は『絶望』という意味の名詞または動詞であり、意味が大きく異なる。語源的には『hope(希望)』の反対であるため、対比して覚えると良い。
誤用例
日本人が『spare』を『割く』という日本語に引きずられて使う誤用です。意見や情報など、抽象的なものを『割く』という発想は、英語では不自然です。『spare』は時間やお金など、貴重な資源を譲るニュアンスが強く、意見のような無形のものを求める場合は『share(共有する)』が適切です。英語では、意見は『共有』するものという感覚が強く、日本語の『割く』というニュアンスとは異なります。また、日本語の『お忙しいところ恐縮ですが』のようなニュアンスを英語で表現したい場合は、'I would appreciate your input'など、より直接的な表現が好まれます。
ここでの『spare』は、名詞として『余裕』を表そうとした誤用です。確かに『spare time』という表現はありますが、単に『時間がない』という状況を伝えるには、より一般的な『time』を使う方が自然です。日本人が『spare』を選んでしまう背景には、『予備の』『余分な』といった意味から、『余裕』を連想しやすいという言語的な近さがあります。しかし、英語では『spare』はあくまで『(何かを差し引いて)余った』というニュアンスであり、単に時間がない状況には適しません。また、ビジネスシーンなどフォーマルな場では、'I am unable to attend'のように、より丁寧な表現を用いることも検討しましょう。
『spare』は『(不快なことなどを)避ける』という意味で使われますが、この例文では少し不自然です。通常、『spare someone something』の構文では、避ける対象が不快、退屈、または不要な情報であることが前提となります。手術の詳細を伝えること自体は必ずしも悪いことではないため、『gory details(生々しい詳細)』のような形容詞を加えて、避けるべき対象を明確にする必要があります。日本人がこの誤用をする原因として、『遠慮する』という日本語のニュアンスをそのまま英語に当てはめようとする傾向が考えられます。英語では、単に情報を伝えないことを『spare』とは言わず、何か不快な事柄を避ける場合に限定されることを理解する必要があります。
文化的背景
「spare」という言葉は、単に「余分」や「予備」を意味するだけでなく、しばしば「余裕」や「寛容さ」といった、社会的な豊かさや倫理観と深く結びついた概念を表します。中世ヨーロッパの封建制度において、領主が農民に「spare time(余暇)」を与えることは、単なる労働時間の短縮以上の意味を持ち、農民の生活の質を向上させ、領主の慈悲深さを示す象徴的な行為でした。
「spare」の概念は、資源の分配や倫理的な判断と密接に関連しています。例えば、「spare the rod and spoil the child(可愛い子には旅をさせよ)」という諺は、体罰を控えることが子供を甘やかすことにつながるという戒めですが、ここには「spare」が「控える」「惜しむ」という意味合いで使われています。この諺は、厳格な教育と愛情の間でバランスを取ることの難しさを示唆しており、「spare」という言葉が単なる物質的な余剰だけでなく、感情や行動の抑制といった倫理的な領域にも及ぶことを示しています。
また、現代社会においては、「spare」は環境保護や資源の持続可能性といった文脈で重要な意味を持ちます。「spare the environment(環境を保護する)」という表現は、資源の浪費を避け、環境への負荷を軽減することを意味します。これは、過去の「spare」が個人の倫理観や社会的な関係性において重要であったのに対し、現代においては地球規模の課題に対する責任感と結びついていることを示しています。企業が「spare parts(交換部品)」を供給することは、製品の寿命を延ばし、廃棄物を減らすための取り組みであり、持続可能な社会の実現に貢献する行為と見なされます。
さらに、「spare」は、感情的な余裕や心のゆとりの重要性も示唆します。「Can you spare a moment?(少しお時間よろしいですか?)」という表現は、相手に時間的な余裕があるかどうかを尋ねるだけでなく、精神的な余裕や傾聴する意思があるかどうかを暗に尋ねています。忙しい現代社会において、「spare time」を持つことは贅沢であり、心の平穏を保つための重要な要素となっています。「spare」という言葉は、単なる物質的な豊かさだけでなく、時間、感情、資源といった、あらゆる種類の余裕を持つことの重要性を私たちに教えてくれます。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解
- 頻度と級・パート: 準1級・1級で頻出。2級でも稀に出題。
- 文脈・例題の特徴: 幅広い話題で使われる。形容詞/動詞の使い分け、特に「割く」「惜しむ」の意味が問われやすい。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「spare time」「spare parts」など、複合語での意味を覚える。形容詞・動詞で意味が異なる点に注意。
- 出題形式: Part 5 (短文穴埋め), Part 7 (長文読解)
- 頻度と級・パート: 頻出。特にPart 5で語彙問題として問われることが多い。
- 文脈・例題の特徴: ビジネス関連の文脈で、時間や資源を「割く」「節約する」といった意味で使われることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「spare no effort」「spare the details」のようなイディオムを覚える。類似語の「save」との違いを理解する。
- 出題形式: リーディングセクション(長文読解)
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻出。特に科学、歴史、社会科学分野。
- 文脈・例題の特徴: 抽象的な概念を説明する際に、リソースや時間を「割く」「提供する」という意味で使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: アカデミックな文脈での用法に慣れる。類義語とのニュアンスの違いを理解する(e.g., allocate, reserve)。
- 出題形式: 長文読解、語彙問題(空欄補充)
- 頻度と級・パート: 難関大学で頻出。標準的な大学でも出題される可能性あり。
- 文脈・例題の特徴: 幅広いテーマで登場。文脈から意味を推測する能力が重要。
- 学習者への注意点・アドバイス: 多義語であるため、文脈に応じた適切な意味を判断できるようにする。過去問で様々な用例を確認する。