matter
母音 /æ/ は日本語の「ア」と「エ」の中間のような音で、口を大きめに開けて発音します。「タ」の後の/ər/は、日本語の「アー」よりも喉の奥で響かせるようなイメージで、舌を丸めて発音するとより近づきます。語尾の「r」は、アメリカ英語では比較的はっきり発音されますが、イギリス英語ではほとんど発音されないこともあります。
問題
重要であったり、議論や考慮に値する事柄を指す。しばしば、解決すべき課題や懸念事項を含むニュアンスがある。
Your face looks sad. Is anything the matter?
顔が悲しそうだよ。何か問題でもあったの?
※ 友達や家族が心配そうな顔をしているのを見て、優しく声をかけている場面を想像してください。「Is anything the matter?」は、相手の様子がおかしい時に「どうしたの?」「何かあったの?」と、その人が抱える「問題や困りごと」を尋ねる、とても自然で典型的な表現です。
We need to talk about this matter carefully to find a good solution.
良い解決策を見つけるために、この問題について慎重に話し合う必要があります。
※ オフィスや会議室で、チームのメンバーが難しい課題を前に、真剣な表情で話し合いを始めている場面です。仕事やプロジェクトで具体的な課題や議題を指すときに「this matter」(この問題)という言葉はよく使われます。解決策を見つけるという目的が加わることで、より具体的な「問題」のイメージがわきますね。
Don't worry, it's not a big matter. We can fix it easily.
心配しないで、大した問題じゃないよ。簡単に直せるから。
※ 誰かが小さな失敗をして落ち込んでいる時、親しい人が肩をポンと叩きながら、笑顔で安心させている場面です。「not a big matter」は「大した問題ではない」「たいしたことない」という意味で、相手を安心させるときによく使う表現です。すぐに解決できるというポジティブなメッセージが伝わります。
重要である
ある事柄が価値を持つ、影響力を持つ、または考慮に値することを意味する。単に存在するだけでなく、何らかの意味で影響を与えることを示す。
It doesn't matter what others think; your happiness matters most.
他人がどう思うかは重要じゃない。あなたの幸せが一番大切なんだ。
※ この文は、他人の意見よりも自分の心の声や幸せを優先することの重要性を伝えています。誰かに「自分の気持ちを大切にしてね」と励ますような、温かい場面を想像できます。「It doesn't matter what...」は「〜は重要ではない」という、日常会話で非常によく使われる表現です。
Being on time for the meeting really matters for our team.
会議に時間通りに来ることは、私たちのチームにとって本当に重要です。
※ これは、ビジネスやグループ活動において、時間厳守がいかに大切かを強調する場面です。チームの誰かが遅刻しがちな時や、大事な会議の前に注意を促すような状況が目に浮かびます。動詞のing形(動名詞)が主語になり、『〜すること』が重要であるという、実用的な文脈でよく使われます。
What you said yesterday really matters to me. I'm still thinking about it.
あなたが昨日言ったことが、私にとって本当に重要なんです。まだそれについて考えています。
※ 友達や大切な人が言った言葉が、深く心に響き、忘れられない、という感情が伝わる場面です。その言葉が、アドバイスだったり、励ましだったり、あるいはショックなことだったりするかもしれません。人の言葉や行動が自分に与える影響を表す際に、『What S V (主語が動詞すること)』の形で『matter to me (私にとって重要である)』と表現するのはとても自然です。
物質
物理的な存在を指し、具体的な触感や質量を持つものを意味する。抽象的な概念ではなく、五感で認識できるものを指す。
The child found a sticky, green matter on the ground and asked, 'What is this?'
子供は地面でベタベタした緑色の物質を見つけ、「これ何?」と尋ねました。
※ この文では、子供が好奇心いっぱいに、地面に落ちている「正体の分からない何か」を『物質』として捉えている情景が目に浮かびます。触感(sticky)や色(green)で、より鮮明にイメージできるでしょう。このように「matter」は、特に科学的な文脈や、未知のものを指す場合に「物質」という意味で使われます。
Plants absorb important matter from the soil to grow.
植物は成長するために、土壌から大切な物質を吸収します。
※ 畑や庭で、植物が土から栄養を吸い上げてすくすく育つ様子を想像してみてください。この例文は、自然界の基本的な仕組みに触れており、「matter」が生物学や化学といった科学的な文脈で「物質」として使われる典型的な例です。植物の成長という身近な現象を通して、物質の役割を理解できますね。
The children mixed different kinds of matter, like sand and water, to build a castle.
子供たちは、砂や水のような様々な物質を混ぜて、お城を作りました。
※ 砂場で子供たちが無邪気に遊んでいる場面を思い浮かべてみましょう。砂や水、泥など、身の回りにある様々なものが「matter(物質)」として捉えられています。「kinds of matter」という表現は、「様々な種類の物質」という意味で、日常会話でもよく使われます。遊びを通して、身近なものが全て物質であることを感覚的に理解できる例文です。
コロケーション
意見の分かれる問題、主観的な問題
※ 事実に基づいた客観的なものではなく、個人の考えや好みによって判断が異なる事柄を指します。文法的には 'matter' が名詞として使われ、'of' が所有や関係を表す前置詞として機能しています。例えば、'Whether this painting is beautiful is a matter of opinion.'(この絵が美しいかどうかは意見が分かれるところです。)のように使われます。ビジネスシーンよりも、日常会話や議論でよく用いられます。
笑い事ではない、深刻な問題
※ 'laughing matter'(笑い事)を否定することで、事態の深刻さや重要性を強調する表現です。文法的には、'laughing' が動名詞として 'matter' を修飾しています。例えば、'The company's financial troubles are no laughing matter.'(会社の財政難は笑い事ではない。)のように使われます。フォーマルな場面でもインフォーマルな場面でも使用できます。
実を言うと、実際のところ
※ 相手の発言を訂正したり、自分の主張を強調したりする際に用いられる挿入句です。文法的には、'as' が前置詞として 'a matter of fact' を導き、文全体を修飾する副詞句として機能します。例えば、'I thought he was rich, but as a matter of fact, he's deeply in debt.'(彼は金持ちだと思っていたが、実を言うと、彼はひどい借金を抱えている。)のように使われます。口語的で、親しい間柄での会話でよく使われます。
デリケートな問題、扱いに注意が必要な問題
※ 'sensitive'(敏感な、デリケートな)という形容詞が 'matter' を修飾し、議論や取り扱いに注意が必要な事柄を指します。例えば、'Employee salaries are often a sensitive matter.'(従業員の給与はしばしばデリケートな問題です。)のように使われます。ビジネスシーンや報道などで頻繁に使われます。
問題を追及する、事態を追求する
※ 'press'(強く求める、追及する)という動詞が 'matter' を目的語として取り、ある問題についてさらに深く掘り下げたり、解決を迫ったりする行為を表します。例えば、'The lawyer decided to press the matter in court.'(弁護士は法廷で問題を追及することを決めた。)のように使われます。法的な文脈やビジネスシーンでよく用いられます。
緊急の事態、差し迫った問題
※ 'urgent'(緊急の、差し迫った)という形容詞が 'matter' を修飾し、迅速な対応が必要な事柄を指します。例えば、'I have an urgent matter to discuss with you.'(あなたと話し合わなければならない緊急の事態があります。)のように使われます。ビジネスシーンや日常生活で広く使われます。
簡単なこと、容易な問題
※ 'simple'(単純な、簡単な)という形容詞が 'matter' を修飾し、容易に解決できる事柄を指します。例えば、'Getting a driver's license is a simple matter.'(運転免許を取得することは簡単なことです。)のように使われます。日常会話でよく使われます。
使用シーン
学術論文や研究発表で頻繁に使用されます。特に、研究対象や議論の核心となる「問題」や「課題」を指す場合、または「重要である」という意味で使用されます。例:"The matter of climate change is of paramount importance."(気候変動の問題は極めて重要である。)研究分野を問わず、客観的な分析や議論において必要不可欠な語彙です。
ビジネス文書や会議で、議題や検討事項、または何かを重要視する際に使用されます。フォーマルな場面での使用が中心です。例:"This matter requires urgent attention."(この件は早急な対応が必要です。)プロジェクトの進捗報告や問題解決の場面でよく見られます。上司や同僚とのコミュニケーションにおいて、論点を明確にするために役立ちます。
日常会話でも使用されますが、フォーマルなニュアンスを含むため、くだけた会話では他の表現が好まれることもあります。「問題」や「事柄」を指す場合や、「重要である」という意味で使用されます。例:"What's the matter?"(どうしたの?)、 "It doesn't matter."(気にしないで。)ニュースやドキュメンタリーなど、やや硬めのトピックを扱うメディアでよく耳にする表現です。
関連語
類義語
『問題』『論点』という意味で、議論や解決を必要とする事柄を指す。ビジネス、政治、社会問題など、幅広い分野で使用される。 【ニュアンスの違い】『matter』よりも重要度が高い、または議論の対象となるニュアンスが強い。『matter』が漠然とした重要性を示すのに対し、『issue』は具体的な問題点や争点を示す。 【混同しやすい点】『issue』は可算名詞であり、複数形(issues)で使われることが多い。また、『take issue with』というイディオムで『~に異議を唱える』という意味になる。
『心配事』『懸念』という意味で、人の不安や関心を引く事柄を指す。また、『関心事』という意味合いもある。ビジネス、日常会話、ニュースなどで使用される。 【ニュアンスの違い】『matter』よりも個人的な感情や主観的な視点が含まれる。『matter』が客観的な重要性を示すのに対し、『concern』は誰かが気にしているというニュアンスが強い。 【混同しやすい点】『concern』は動詞としても名詞としても使われる。動詞の場合は『~を心配させる』という意味になる。また、『as far as ... is concerned』というフレーズで『~に関する限り』という意味になる。
『事件』『事柄』という意味で、特定の出来事や状況を指す。ニュース記事や歴史的な記述、個人的な問題など、様々な文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】『matter』よりも具体的な出来事や事件に焦点を当てている。『matter』が抽象的な事柄を指すのに対し、『affair』は具体的な事件や出来事を指すことが多い。また、しばしば秘密めいた、あるいはスキャンダラスなニュアンスを伴う。 【混同しやすい点】『affair』はしばしば複数形(affairs)で使われ、『情勢』や『事務』という意味になる。また、『love affair』という表現は『不倫』という意味になる。
『仕事』『用件』という意味で、商業活動や個人的な目的を指す。ビジネスシーンや日常会話で頻繁に使用される。 【ニュアンスの違い】『matter』よりも具体的な活動や取引に焦点を当てている。『matter』が抽象的な事柄を指すのに対し、『business』は具体的な仕事や用件を指す。 【混同しやすい点】『business』は不可算名詞として『事業』という意味で使われることが多いが、可算名詞として『用件』という意味でも使われる。また、『mind your own business』という表現は『おせっかいを焼くな』という意味になる。
『要点』『論点』という意味で、議論や説明の中心となる部分を指す。会議、プレゼンテーション、学術論文などで使用される。 【ニュアンスの違い】『matter』よりも議論や説明における特定の焦点や強調点を示す。『matter』が広範な事柄を指すのに対し、『point』は特定の論点を指す。 【混同しやすい点】『point』は可算名詞であり、特定の視点や意見を指すことが多い。また、『get to the point』という表現は『要点を言う』という意味になる。
『物事』『事柄』という意味で、非常に一般的な言葉。具体的な物から抽象的な概念まで、あらゆるものを指すことができる。日常会話で頻繁に使用される。 【ニュアンスの違い】『matter』よりも曖昧で、重要性や深刻さが低いことが多い。『matter』がより重要または深刻な事柄を指すのに対し、『thing』はより一般的で中立的な事柄を指す。 【混同しやすい点】『thing』は非常に広範な意味を持つため、具体的な言葉の代わりによく使用される。しかし、フォーマルな場面や正確な表現が必要な場合には、『matter』などのより適切な言葉を選ぶべきである。
派生語
『物質的な』『重要な』という意味の形容詞。『matter(物質)』から派生し、具体的な物質だけでなく、抽象的な重要性も表すようになった。日常会話からビジネス、学術論文まで幅広く使用される。名詞としては『材料』という意味になり、さらに意味が広がっている。
- immaterial
『重要でない』『非物質的な』という意味の形容詞。接頭辞『im-(否定)』がつき、『matter』の重要性や物質性という側面を否定する。日常会話では『大したことない』、哲学的な文脈では『非物質的』という意味で使われる。
- matter-of-fact
『事実に基づいた』『事務的な』という意味の形容詞。『matter』が持つ『事実』という意味合いを強調し、『感情に左右されない』というニュアンスを加える。ビジネスシーンや報道などで、客観性を重視する文脈で使われる。
反意語
- immateriality
『非物質性』『重要でないこと』という意味の名詞。『matter』の物質性や重要性という概念を否定する。哲学や宗教的な文脈で、精神性や霊的な概念を強調する際に用いられる。日常会話よりも学術的な文脈での使用頻度が高い。
『精神』『魂』という意味の名詞。『matter(物質)』と対比される概念で、非物質的な存在や生命力を指す。哲学、宗教、文学などで、物質世界を超越した概念を表す際に用いられる。比喩的に『気概』『意気込み』といった意味でも使われる。
『形』『形態』という意味の名詞。『matter(素材)』が持つ『形のない素材』という意味合いに対し、『form』は具体的な形状や構造を持つことを意味する。哲学的な文脈では、アリストテレスの形相(form)と質料(matter)の対比として知られる。
語源
「matter」は、ラテン語の「materia(材料、物質)」に由来します。この「materia」は、「mater(母)」という語と関連があり、「母なるもの」つまり、何かを生み出す源となる素材、根源的なものを意味していました。この概念が、後に「物質」という意味へと発展しました。さらに、「物質」から派生して、「問題」や「重要である」という意味も持つようになりました。なぜなら、問題や重要な事柄は、議論や行動の「材料」となるからです。日本語で例えるなら、「種(たね)」という言葉が、文字通りの植物の種から、「問題の種」のように比喩的な意味に広がるのと似ています。つまり、「matter」は、根源的な「物質」から、そこから派生する「問題」や「重要性」へと意味を広げていったのです。
暗記法
「matter」は、単なる物質を超え、時代と共に意味を深めてきた言葉です。中世の錬金術では変容の可能性を秘めた存在として捉えられ、近代科学では探求の対象となりました。デカルトの二元論では精神と対立する概念にも。現代では「Black Lives Matter」運動に見られるように、人としての尊厳や社会正義を訴える象徴としても使われます。物質以上の、深い意味を持つ言葉なのです。
混同しやすい単語
『matter』は名詞として『問題』『事柄』、動詞として『重要である』という意味ですが、名詞の『mater』(古語、母)とスペルが似ているため、特にリーディング時に混同しやすいかもしれません。発音も非常に似通っています。文脈で判断することが重要です。また、ラテン語の『materia』(材料、物質)が語源であり、物質的な『問題』や『事柄』というニュアンスにつながっていることを意識すると理解が深まります。
『madder』は植物の『茜(あかね)』、または茜色を指します。発音は非常に似ていますが、アクセントの位置がわずかに異なります(matterは第1音節、madderも通常は第1音節)。スペルも一文字違いなので注意が必要です。語源的には、茜の根から赤い染料が取れることに由来し、色彩に関する単語です。文脈が全く異なるため、混同しないようにしましょう。
『latter』は『後者の』という意味で、『former and latter』という形でよく使われます。発音が似ており、特に語尾の 'er' の部分が曖昧母音化すると区別が難しくなります。スペルも 'ma' と 'la' の違いだけなので、注意が必要です。語源的には、late(遅い)から派生しており、『後』という意味につながっています。
『batter』は『(野球などで)打つ』『(料理などで)どろどろの生地』という意味があります。発音が似ており、特にアメリカ英語では 'tt' がフラップ音化しやすいため、matterとの区別がより難しくなります。スペルも 'ma' と 'ba' の違いだけなので、注意が必要です。野球のバッターをイメージすると覚えやすいでしょう。
『mortar』は『モルタル』や『乳鉢』という意味です。発音が似ていますが、'or' の部分がやや異なります。スペルも 'ar' と 'or' の違いなので、注意が必要です。建築用語や料理用語として使われることが多く、文脈が異なります。語源的には、ラテン語の『mortarium』(すり鉢)に由来し、粉砕するという意味合いがあります。
『Marauder』は『略奪者、侵略者』という意味です。発音はmatterとは異なりますが、カタカナで表記すると「マローダー」となり、先頭の「マ」の音でmatterと混同する可能性があります。スペルも似ている部分があり、注意が必要です。歴史やファンタジー作品に登場することが多く、文脈も異なります。
誤用例
『matter』は重要性や深刻さを表す言葉ですが、この文脈では少し大げさな印象を与えます。昇進できなかったとしても『大したことではない』というニュアンスを伝えたい場合、『not a big deal』や『no biggie』のような、よりカジュアルで控えめな表現が適切です。日本人は『matter』を『問題』と直訳しがちですが、英語では問題の深刻度合いに応じて表現を使い分ける必要があります。特に、謙遜や控えめな態度が美徳とされる日本では、過度に深刻ぶった表現は不自然に聞こえることがあります。
『What's the matter with you?』は、相手に直接的な非難や不快感を含む可能性があります。『今日はどうしたの?』と心配する意図で使いたい場合でも、相手が何か問題を抱えていることを前提とした尋問のような印象を与えかねません。より丁寧で相手に配慮した表現としては、『Is something the matter?』や『Are you alright?』が適切です。日本人は『あなたに何が問題なの?』という直訳的な発想でこのフレーズを使いがちですが、英語では相手の感情や立場を考慮した表現を選ぶことが重要です。特にビジネスシーンやフォーマルな場面では、より丁寧な表現を心がけるべきです。
『matter』は重要であることを伝える言葉ですが、少しフォーマルで客観的な響きがあります。個人的な感情や熱意を強く伝えたい場合には、『important』や『significant』の方が適しています。特に、自分の決意や情熱を表明する場面では、『important』を使うことで、より直接的で感情的なニュアンスを伝えることができます。日本人は『matter』を『問題』や『事柄』と捉えがちですが、英語では文脈に応じて、より感情的なニュアンスを持つ言葉を選ぶことで、より自然で説得力のある表現ができます。自己主張が控えめな文化を持つ日本では、意識的に感情を込めた表現を使うことで、相手に自分の気持ちをより強く伝えることができます。
文化的背景
「matter」は、単なる物質や事柄を指すだけでなく、「重要性」や「本質」といった、人間存在や社会構造に関わる根源的な意味合いを帯びてきました。この言葉は、中世の哲学や錬金術の世界から、近代の科学革命、そして現代の社会運動に至るまで、人々の価値観や世界観を映し出す鏡のような役割を果たしてきたのです。
中世においては、「matter」はしばしば「hyle(質料)」と関連付けられ、形而上学的な議論の対象となりました。アリストテレス哲学の影響下、物質は受動的な存在とみなされ、形(form)によってその存在が定義されると考えられました。しかし、錬金術師たちは、「matter」の中に秘められた変容の可能性を追求し、卑金属を金に変えることを夢見ました。彼らにとって「matter」は、単なる無価値なものではなく、潜在的な価値を秘めた神秘的な存在だったのです。この思想は、後の科学革命における物質観の転換へと繋がっていきます。
近代に入ると、「matter」は科学的な探求の対象となり、ニュートン力学によってその法則性が解明されていきました。しかし、同時に、「matter」は人間精神や感情とは対立する存在としても認識されるようになります。デカルトの心身二元論は、この対立を鮮明に描き出し、物質世界と精神世界を明確に分離しました。このような二元論的な思考は、現代社会においても根強く残っており、「matter」を単なる物質的な存在として捉える傾向を生み出しています。しかし、文学や芸術の世界では、「matter」はしばしば人間の内面や感情を象徴するものとして描かれます。例えば、シェイクスピアの戯曲では、「matter」はしばしば人間の欲望や野心、そして死すべき運命を象徴する言葉として用いられます。
現代社会においては、「matter」は環境問題や社会正義といった、より広範な文脈で用いられるようになっています。「Black Lives Matter」運動は、「matter」という言葉に新たな意味を付与し、人種差別や社会的不公正に対する抵抗の象徴として、世界中に広まりました。この運動は、「matter」が単なる物質的な存在だけでなく、人間の尊厳や価値を意味する言葉としても用いられることを示しています。このように、「matter」は時代とともにその意味を変えながら、常に人間の価値観や社会構造を反映する言葉として、私たちの社会に深く根ざしているのです。
試験傾向
- 出題形式: 語彙問題、長文読解、リスニング
- 頻度と級・パート: 準1級・1級で頻出。2級でも長文読解で登場する可能性あり
- 文脈・例題の特徴: アカデミックな話題から日常会話まで幅広い。長文読解では、筆者の主張や意見を理解する上で重要なキーワードとなることが多い
- 学習者への注意点・アドバイス: 名詞(事柄、問題、物質)、動詞(重要である)の両方の意味を理解する必要がある。特に「as a matter of fact(実際のところ)」などのイディオムは頻出。形容詞形(material)との区別も重要。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 5, 7で比較的頻出
- 文脈・例題の特徴: ビジネス関連の文書(メール、報告書、記事など)でよく使われる。品質、顧客対応、市場動向など、重要な事柄を扱う文脈で登場しやすい
- 学習者への注意点・アドバイス: 名詞としての意味(事柄、問題)と、動詞としての意味(重要である)の両方を把握しておくこと。文脈から適切な意味を判断する必要がある。関連語の「material」との区別も重要。
- 出題形式: リーディング、ライティング
- 頻度と級・パート: リーディングセクションで頻出
- 文脈・例題の特徴: アカデミックな内容(科学、歴史、社会科学など)の文章でよく用いられる。抽象的な概念や議論、問題点などを説明する際に登場することが多い
- 学習者への注意点・アドバイス: 名詞としての意味(事柄、問題、物質)と、動詞としての意味(重要である)の両方を正確に理解する必要がある。特に、抽象的な概念を扱う文脈での意味を把握しておくことが重要。ライティングセクションでも使用できると高評価につながる。
- 出題形式: 長文読解、英作文
- 頻度と級・パート: 難関大学ほど頻出
- 文脈・例題の特徴: 評論文、物語文など幅広いジャンルで登場する。社会問題、環境問題、科学技術など、現代社会に関わるテーマの文章でよく見られる
- 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な意味(事柄、問題)に加えて、「重要である」という意味での用法を理解しておくことが重要。文脈から適切な意味を判断する練習が必要。イディオムや句動詞(e.g., What's the matter?)も覚えておくと役立つ。