let
母音 /e/ は日本語の『エ』よりも口を左右に開き、舌を少し下げて発音します。日本語のエとアの中間のような音を意識しましょう。語尾の /t/ は、息を止めるようにして破裂させず、軽く添える程度でOKです。強く発音すると不自然になるので注意。
許可する
何かをすることを認めたり、可能にしたりする。単に許可を与えるだけでなく、その行為を容認し、妨げないニュアンスを含む。"Let me..." の形で、提案や依頼の表現としても頻繁に使われる。
My mom let me eat ice cream after dinner.
お母さんが、夕食後にアイスクリームを食べるのを許してくれた。
※ 待ちに待った夕食後、お母さんが「よし、アイスクリームを食べていいよ」と許可してくれた、嬉しい瞬間が目に浮かびますね。このように「誰かに何かをするのを許可する」という場面で 'let' はよく使われます。特に 'let + 人 + 動詞の原形' の形で、「(人)に~させてあげる」という意味になります。
The kind security guard let me enter the museum early.
親切な警備員さんが、私が博物館に早く入るのを許可してくれた。
※ まだ開館時間前なのに、親切な警備員さんが特別に「どうぞ、先にお入りください」と許可してくれた場面です。通常は許されない行動を、特別に許可してもらう時にも 'let' が使われます。思いがけない親切に心が温まるような、具体的な情景が目に浮かびますね。
Please let me help you carry those heavy bags.
その重いカバンを運ぶのを手伝わせてください。
※ 誰かが重そうな荷物を持っているのを見て、「私に手伝わせてほしい」と申し出る、優しさあふれる場面です。この 'Please let me...' の形は、「私に~させてください」と相手に許可を求める、とても丁寧で自然な言い方です。日常生活で誰かを助けたい時に役立つ表現ですね。
手放す
物理的に何かを掴んでいた手を離す、あるいは、感情や考え方を解放する意味。過去の出来事や恨みを手放す(let go of)場合など、心理的な解放を表す際にも用いられる。
He caught a small fish, but he gently let it back into the water.
彼は小さな魚を捕まえたが、優しく水に戻してやった(放してやった)。
※ この例文は、釣りをしている少年が、捕まえた小さな魚を思いやりから水に「放してやる」場面を描写しています。「let」は、捕らえていたものを解放する、つまり「手放す」という中心的な意味で使われています。魚を「自由にしてあげる」というニュアンスがよく伝わります。
The little girl was holding a red balloon, but she accidentally let it fly away.
小さな女の子は赤い風船を握っていたが、うっかり手から離して飛ばしてしまった。
※ この例文は、小さな女の子が大事にしていた風船を、不注意で「手から離してしまった」悲しい瞬間を描いています。「let」は、意図せず握っていたものを「手放してしまう」状況を表現するのに使われます。'accidentally'(うっかり、誤って)という単語が、その非意図性を強調しています。
She opened the window and let the small bird fly out.
彼女は窓を開けて、その小さな鳥を外に飛ばしてやった(放してやった)。
※ この例文は、カゴなどに閉じ込められていた鳥を、窓から「放してやる」優しい場面を描写しています。「let」は、何かを拘束していた状態から「自由にする」「解放する」という意味で使われており、「手放す」の最も基本的で自然な使い方の一つです。鳥が大空へ羽ばたいていく情景が目に浮かびますね。
貸す
(主にアメリカ英語)家や部屋などを人に貸すこと。イギリス英語では "rent" が一般的。
We decided to let the empty room next door to a student.
私たちは隣の空いている部屋を学生に貸すことにしました。
※ ご自宅の空き部屋を有効活用し、収入を得るために学生に賃貸する、といった日常的な場面です。「let」は、特に家や部屋、土地などを「賃貸する」という意味で使われます。イギリス英語では、物件の賃貸表示に「To Let(入居者募集中)」と書かれているのをよく見かけます。
The company let its new office space to a small business.
その会社は新しいオフィススペースを小さな企業に貸しました。
※ 大きな会社が所有する、余剰のオフィススペースを成長中の小さな企業に賃貸する、というビジネスシーンです。場所や施設を一時的または長期的に貸し出す際に「let」が使われます。お互いにとってメリットのある、前向きな状況が目に浮かびますね。
They let the hall for the weekend to the local community.
彼らは週末のためにホールを地域コミュニティに貸しました。
※ 地域のお祭りやイベントのために、人々が集まるホールを貸し出す場面です。ここでは「for the weekend(週末のために)」のように、賃貸する期間を明確に示しています。地域貢献や、皆でイベントを準備するような温かい雰囲気が伝わってきます。
コロケーション
(人を)窮地から救う、責任を免除する
※ 釣り針にかかった魚を逃がすイメージから来ており、誰かを困難な状況や責任から解放することを意味します。口語的な表現で、友人や同僚に対して使うことが多いです。例えば、遅刻した部下に対して「今回は見逃してやるよ」というニュアンスで使えます。単に"forgive"(許す)よりも、状況を考慮して特別に免除するというニュアンスが強いです。
事を荒立てない、触らぬ神に祟りなし
※ 眠っている犬を起こすと噛まれるかもしれない、ということわざ的な表現です。過去のトラブルや問題など、今は沈静化している事柄に再び触れて、状況を悪化させることを避けるべきだという忠告として使われます。ビジネスシーンでも、デリケートな問題について議論を避ける際に使われます。類似の表現に"leave well enough alone"(現状維持が最善)があります。
くつろぐ、リラックスする、打ち解ける
※ 昔、女性が公の場では髪をきちんと結っていたことから、髪を下ろす=リラックスした状態を意味するようになりました。パーティーや旅行など、普段の堅苦しい状況から解放されて、自由に楽しむ状況で使われます。ビジネスシーンでは、懇親会などで「今日はリラックスして楽しみましょう」というニュアンスで使えます。また、"let one's guard down"(警戒心を解く)と似た意味合いでも使われます。
自然に任せる、成り行きに任せる
※ 文字通り「自然がその道を進むのを許す」という意味で、人為的な介入をせずに、物事が自然な経過をたどるに任せることを意味します。病気や怪我の回復、あるいはプロジェクトの進行など、様々な状況で使われます。医療の現場で、積極的な治療をせずに自然治癒力に期待する場合などに使われます。"wait and see"(成り行きを見守る)と似たニュアンスですが、より積極的に干渉しないという意志が込められています。
秘密をうっかり漏らす、ばらす
※ 昔、市場で豚を売る際に、猫を袋に入れて豚と偽って売っていたという話に由来すると言われています。その袋から猫が出てきて、秘密が暴露される様子を表しています。うっかり秘密を漏らしてしまった状況で使われます。"spill the beans"(秘密をばらす)とほぼ同義ですが、より偶発的なニュアンスが強いです。
なるようになる、気にしない、放っておく
※ ビートルズの曲名としても有名なフレーズで、困難な状況や問題に対して、無理に解決しようとせずに、自然の流れに任せるという諦めや受容の気持ちを表します。ストレスを感じている人に対して「気にしないで」とアドバイスする際に使われます。"leave it alone"(放っておく)と似ていますが、より精神的な落ち着きや諦観を含んだニュアンスがあります。
使用シーン
学術論文や研究発表で頻繁に使われます。例えば、「Let us consider the following equation」(次の式を考察しよう)のように、議論や考察を開始する際に用いられます。また、「These findings let us conclude that…」(これらの発見から、〜という結論に至る)のように、結果を導き出す際にも使われます。文体はフォーマルで、客観性と論理性が求められる場面で多用されます。
ビジネスの現場では、会議やプレゼンテーションで、提案や許可を求める際に使われます。例えば、「Let's discuss the budget allocation」(予算配分について議論しましょう)のように、協調的な雰囲気で議論を促す際に使用されます。また、「Let me know if you have any questions」(何か質問があればお知らせください)のように、相手にアクションを促す際にも用いられます。メールや報告書では、より丁寧な表現が好まれる場合もありますが、口頭でのコミュニケーションでは頻繁に使われます。
日常会話で非常に頻繁に使われます。例えば、「Let's go to the movies」(映画に行こう)のように、提案や誘いをするときによく使われます。また、「Let me see」(ええと、ちょっと考えさせて)のように、間を持たせるためにも使われます。「Let it be」(なるようになるさ)のようなイディオムもよく使われ、リラックスした雰囲気で使われます。家族や友人とのカジュアルな会話で特に多く使われます。
関連語
類義語
許可するという意味で、規則や権限に基づいて行動を許可する場面で使われる。ビジネス、法律、フォーマルな会話でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"let"よりもフォーマルで、より公式な許可や容認のニュアンスが強い。権限を持つ者が許可を与える状況で使われることが多い。 【混同しやすい点】"let"はより一般的でカジュアルな許可を表すのに対し、"allow"は規則やルールに基づいた許可というニュアンスが強いため、カジュアルな場面で"allow"を使うと不自然に聞こえることがある。
許可するという意味だが、"allow"よりもさらにフォーマルで、公的な許可や免許を与える場面で使われる。法令、契約書、公式文書などでよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"let"や"allow"よりも厳格で、公式な許可証や許可を得るというニュアンスが強い。日常会話ではあまり使われない。 【混同しやすい点】"permit"は名詞としても使われ、「許可証」という意味になる。動詞として使う場合も、フォーマルな文脈に限られるため、日常会話で安易に使うと場違いになることがある。
可能にする、できるようにするという意味で、能力や機会を与える場面で使われる。技術的な文脈や、人の成長を促す文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"let"が単に許可するのに対し、"enable"は何かを達成するための手段や能力を与えるというニュアンスが強い。単に許可するだけでなく、その後の行動を支援する意味合いを含む。 【混同しやすい点】"let"は行動を許可するのに対し、"enable"は行動を可能にする条件を整えるという点で意味が異なる。例えば、「親が子供にゲームをさせる(let)」と「新しいソフトウェアがユーザーに高度な編集を可能にする(enable)」のように使い分ける。
権限を与える、正式に許可するという意味で、組織や上司が部下に行動の権限を与える場面で使われる。ビジネス、法律、軍事などの文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"let"や"allow"よりも強い権限の委譲を意味し、行動の責任も伴うことが多い。公式な承認や委任状を伴うニュアンスが強い。 【混同しやすい点】"authorize"は、単に許可するだけでなく、その行動が組織や法律によって認められていることを示す。例えば、「上司が部下にプロジェクトを遂行する権限を与える(authorize)」のように、責任と権限がセットで与えられる場合に用いられる。
賃貸する、貸し出すという意味で、不動産や設備などを一定期間貸す場面で使われる。不動産、ビジネス、法律などの文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"let"が一般的な許可を表すのに対し、"lease"は契約に基づいて財産を貸し出すという具体的な行為を指す。金銭の授受が発生し、契約期間や条件が明確に定められている。 【混同しやすい点】"let"は一時的な許可や容認であるのに対し、"lease"は長期的な契約に基づく貸借関係を意味する。例えば、「部屋を人に貸す(lease)」と「子供にゲームをさせる(let)」のように、契約の有無で使い分ける。
(ある状態のまま)にしておく、という意味で、放置する、または委ねるという場面で使われる。日常会話から文学まで幅広く使われる。 【ニュアンスの違い】"let"が許可を表すのに対し、"leave"はある状態を維持することを意味する。意図的に放置する場合もあれば、自然に委ねる場合もある。 【混同しやすい点】"let"は能動的な許可であるのに対し、"leave"は受動的な放置や委ねるというニュアンスが強い。例えば、「子供に好きなようにさせる(let)」と「問題を未解決のままにしておく(leave)」のように、意図的な行為か、状態の維持かで使い分ける。
派生語
- letting
『賃貸(すること)』または『賃貸物件』を意味する名詞。動詞『let』に名詞化の接尾辞『-ing』が付加され、行為やその対象を表す。不動産業界や日常会話で、物件の貸し借りを指す際に用いられる。動詞の『let』が『許可する』から転じて、『(物件などを)人に委ねる』という意味合いを持つ点が語源的なつながりを示す。
『出口』、『販路』、『(感情などの)はけ口』などを意味する名詞。古英語の『utletan(外へ出す)』に由来し、『let(出す、放つ)』の概念が含まれる。日常会話からビジネス、学術論文まで幅広く用いられ、物理的な出口だけでなく、抽象的な意味でも使われる。感情を外に『出す』場所、商品を市場に『出す』経路というように、語源の『let』が持つ『出す』という意味が拡張されている。
『(一枚ものの)チラシ』を意味する名詞。『leaf(葉)』と『-let(小さいもの)』の組み合わせで、元々は『小さな葉』を意味していた。印刷技術の発展とともに、情報を伝えるための小さな紙片を指すようになった。マーケティングや広告の分野で頻繁に使用され、情報を『放つ』という意味合いで『let』との関連性が見られる。語源的には『leaf』だが、情報を『let out(外に出す)』というイメージで捉えると理解しやすい。
反意語
『妨げる』、『阻止する』を意味する動詞。接頭辞『pre-(前もって)』と語根『vent(来る)』から成り、『事前に来て妨げる』というイメージ。許可を与える『let』とは対照的に、何かを阻止する意味を持つ。日常会話からビジネス、学術論文まで幅広く使用され、特に事故や犯罪の防止など、ネガティブな事態を防ぐ文脈で用いられる。『let』が『自由にする』のに対し、『prevent』は『自由を奪う』という対比構造を持つ。
『禁止する』を意味する動詞。接頭辞『pro-(前もって)』と語根『hibit(持つ、保つ)』から成り、『前もって(何かを)持っておく=禁止する』というニュアンス。規則や法律によって行動を制限する際に用いられ、『let』が許可するのとは反対に、行動を『許さない』という強い意味合いを持つ。公的な文書やニュース記事などでよく見られ、『let』が個人的な許可を表すのに対し、『prohibit』は社会的な制約を表す。
『抑制する』、『抑える』を意味する動詞。接頭辞『re-(再び)』と語根『strain(引っ張る、縛る)』から成り、『再び引っ張って抑える』というイメージ。感情や行動を制限する際に用いられ、『let』が解放するのとは対照的に、何かを『自由にさせない』という意味を持つ。心理学や社会学の分野で、感情の抑制や行動の制限について議論する際に使用される。『let』が『流れに任せる』のに対し、『restrain』は『流れを止める』という対比構造を持つ。
語源
"let"の語源は古英語の"lætan"に遡り、「残す」「許可する」「貸す」といった意味を持っていました。これはさらにゲルマン祖語の*lētanan(緩める、手放す)に由来します。この語根は、現代英語の"late"(遅い)や"leisure"(余暇)とも関連があります。なぜなら、時間を「手放す」こと、つまり何もしないで時間を過ごすことが「遅い」や「余暇」といった概念につながるからです。"let"が「許可する」という意味を持つのは、「行動を制限しない」「自由にする」という原義が発展した結果です。日本語で例えるなら、「放っておく」という言葉が、文字通りに何かを放置する意味と、相手の行動を許可する意味の両方を持つことに似ています。このように、"let"は「手放す」という根本的なイメージから、多様な意味へと展開していったのです。
暗記法
「let」は許可の裏に、相手に委ねる、成り行きに任せるというニュアンスが。「彼を解放しろ」には、自由を与え、その後の運命を見守る意味合いが込められます。シェイクスピアでは、運命に身を委ねる人間の姿が描かれ、現代では「Let's do it!」に自主性が、「Let it be」には諦念が宿ります。ビートルズの歌詞のように、社会の空気や価値観を映す言葉。自由意志と運命観が交錯する、奥深い文化的背景を持つ単語なのです。
混同しやすい単語
『let』の過去形・過去分詞であり、発音が非常に似ています。文脈から時制を判断する必要があります。また、『鉛』という意味の名詞(発音は/led/)も存在するため注意が必要です。動詞の活用形であるか、名詞であるかを意識しましょう。
『let』と母音が異なり、語尾に無声歯摩擦音/θ/が加わりますが、短い単語であるため発音時に混同しやすいです。『遅い』という意味の形容詞、または『遅れて』という意味の副詞です。発音記号を確認し、意識的に区別しましょう。
母音が短母音の/ɪ/であり、『let』の/e/とは異なりますが、どちらも日本語の『エ』に近い音であるため、日本人学習者には区別が難しい場合があります。『light』の過去形・過去分詞であり、『火をつけた』『照らされた』という意味です。発音練習で区別を意識しましょう。
発音上は『デット』に近く、母音は異なりますが、綴り字に注意が必要です。'b'が黙字になっているため、発音とスペルの関係が直感的ではありません。『借金』という意味の名詞です。語源的にはラテン語の『debitum』に由来し、元々は'b'を発音していました。
『leap』(跳ぶ)の過去形・過去分詞です。発音は/lept/となり、『let』とは母音が異なりますが、語尾の consonant cluster (子音連結)が難しく、発音が曖昧になりやすいです。規則動詞の過去形『leaped』も存在します。
これは人名(姓)です。発音は 'let' と同じですが、意味が全く異なります。文脈によって判断する必要があります。固有名詞は大文字で始まるため、文頭以外では区別できます。
誤用例
「Let me think about that.」は文法的に誤りではありませんが、ビジネスシーンやフォーマルな場面では、ややカジュアルすぎます。日本語の『ちょっと考えさせてください』を直訳するとそうなってしまいがちですが、より丁寧な印象を与えるには「I'll need some time to consider that.」のように、回りくどい表現を用いるのが適切です。英語では、直接的な表現を避け、遠回しに伝えることで丁寧さや敬意を示すことがよくあります。
「Let's」は提案や勧誘の意味合いが強く、「〜しましょう」というニュアンスを持ちます。相手の努力に感謝する文脈では、「Let's」を使うと、まるでこちらが相手に感謝することを提案しているかのような印象を与えてしまい、不自然です。ストレートに「We appreciate your effort.(あなたの努力に感謝します)」と言う方が、感謝の気持ちがより直接的に伝わります。日本語の『〜に感謝しましょう』という表現を直訳すると誤用しやすいパターンです。
謙譲語の文化を持つ日本人が、自分の家を紹介する際に「Let me introduce my poor home.(私の貧しい家を紹介します)」と言ってしまうのはよくある誤りです。英語圏では、自分のものを謙遜して表現する習慣は一般的ではありません。むしろ、自信を持って「Let me show you around.(ご案内します)」と言う方が、相手に好印象を与えます。また、相手が家を訪問してくれたことに対する感謝の気持ちが伝わるようなフレーズ(例: "Thank you for coming.")を添えるのも良いでしょう。
文化的背景
「let」は単なる許可の言葉ではなく、相手に委ねる、あるいは成り行きに任せるというニュアンスを含み、自由意志と運命観が交錯する文化的な奥行きを持っています。この言葉は、時に諦念や無関心、あるいは寛容さや信頼といった、相反する感情や態度を映し出す鏡となるのです。
中世英語の時代から使われている「let」は、元来「妨げない」「許可する」という意味合いを持ち、その根底には、上位者が下位者に対して自由を与えるという封建的な社会構造が反映されています。例えば、領主が農民に土地を「let」することは、単なる許可ではなく、農民の生活をある程度委ねるという責任も伴っていました。このニュアンスは、現代英語の「let」にも残っており、「Let him go.(彼を解放しろ)」という命令には、単に自由を与えるだけでなく、その後の成り行きを見守るという含みが感じられます。シェイクスピアの作品には、「let」が運命や偶然に身を委ねる人間の姿を描写する場面が散見されます。登場人物たちは、「let fate decide(運命に委ねよう)」と語り、自らの意志ではどうにもならない状況を受け入れる姿勢を示します。これは、ルネサンス期の人間中心主義的な考え方と、キリスト教的な運命観が混ざり合った複雑な精神性を反映していると言えるでしょう。
現代社会においても、「let」は様々な文化的文脈で使用されます。ビジネスシーンでは、「Let's do it!(さあ、やろう!)」というように、積極的な提案や協調を促す言葉として用いられますが、その裏には、参加者それぞれの自主性や判断に委ねるというニュアンスが含まれています。また、子育てにおいては、「Let him learn from his mistakes.(彼に失敗から学ばせよう)」というように、子供の成長を信じて見守るという親の愛情が表現されます。しかし、一方で、「Let it be.(なるようになるさ)」という言葉には、諦めや無力感といった感情が込められていることもあります。ビートルズの同名曲は、困難な状況を受け入れ、流れに身を任せることの重要性を歌い上げていますが、その背景には、ベトナム戦争や公民権運動など、社会の混乱や不安がありました。「let」は、個人の感情だけでなく、社会全体の空気や価値観を反映する言葉でもあるのです。
「let」という言葉は、単なる許可や提案を超えて、人間の自由意志、運命、そして社会との関わり方を映し出す鏡のような存在です。この言葉を理解することは、英語の語彙を豊かにするだけでなく、英語圏の文化や価値観に対する理解を深めることにも繋がるでしょう。次に「let」という言葉に触れるとき、その背後にある文化的背景に思いを馳せてみてください。きっと、新たな発見があるはずです。
試験傾向
1. 出題形式: 語彙問題、長文読解、ライティング(自由英作文)。2. 頻度と級・パート: 2級以上で頻出。準1級、1級では語彙の難易度が上がる。3. 文脈・例題の特徴: 日常会話、ニュース記事、エッセイなど幅広い。4. 学習者への注意点・アドバイス: 「~させる」という意味の使役動詞として基本を理解。let me see(ええと)のような口語表現も重要。類似の使役動詞(make, have)との違いも押さえる。
1. 出題形式: Part 5 (短文穴埋め)、Part 6 (長文穴埋め)、Part 7 (長文読解)。2. 頻度と級・パート: 全パートで登場する可能性あり。Part 5, 6では語彙・文法知識、Part 7では文脈理解が問われる。3. 文脈・例題の特徴: ビジネスシーン(会議、メール、報告書など)での使用が多い。4. 学習者への注意点・アドバイス: 使役動詞としての用法に加え、「許可する」「賃貸する」などビジネスで頻出の意味も覚える。letting agent(不動産業者)のような複合語も重要。
1. 出題形式: リーディング、リスニング。2. 頻度と級・パート: アカデミックな内容のリーディングで頻出。リスニングでは講義や会話の中で使われる。3. 文脈・例題の特徴: 学術論文、教科書、講義など。抽象的な概念や理論を説明する文脈が多い。4. 学習者への注意点・アドバイス: 使役動詞としての用法に加え、「考慮に入れる」「参加させる」などの意味も重要。let A be B(AをBと仮定する)のような構文も頻出。
1. 出題形式: 長文読解、文法・語彙問題、英作文。2. 頻度と級・パート: 難関大学ほど頻出。長文読解では文脈理解、英作文では語彙力と文法力が問われる。3. 文脈・例題の特徴: 論説文、物語文、評論文など幅広い。4. 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な意味に加え、イディオム(let alone, let go of など)を覚える。文脈から意味を推測する練習も重要。