wipe
二重母音 /aɪ/ は「ア」と「イ」を繋げた音で、日本語の『アイ』よりも口を大きく開けて「ア」を意識すると自然になります。語尾の /p/ は息を止めてから破裂させる音ですが、日本語話者は弱くなりがちなので、意識的に唇を閉じてから勢いよく開いてください。語尾を強く発音することで、よりクリアに伝わります。
専門的な内容に関するご注意
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拭く
汚れや水分などを、布や紙などでこすって取り除く動作。表面を綺麗にすることに重点がある。
She quickly wiped the spilled milk off the table.
彼女はこぼれたミルクを素早くテーブルから拭き取った。
※ お子さんがミルクをこぼしてしまい、お母さんがサッと片付ける、日常でよくある場面ですね。「wipe A off B」で「BからAを拭き取る」という、この単語の典型的な使い方です。とっさの行動を表す「quickly(素早く)」もポイントです。
He gently wiped her tears with his handkerchief.
彼は優しく彼女の涙をハンカチで拭った。
※ 誰かの悲しみに寄り添い、優しく涙を拭いてあげる温かい場面です。「tears(涙)」を「wipe」するのも非常に一般的な使い方です。何かを使って拭くときは「with + 道具」と表現します。
She always wipes the desk clean after work.
彼女はいつも仕事の後、デスクを拭いてきれいにします。
※ 仕事終わりにデスクをきれいにする、丁寧な習慣が伝わる場面です。「wipe something clean」で「~を拭いてきれいにする」という意味になり、拭いた結果を強調できます。日々のルーティンを表す時にもよく使われます。
消し去る
物理的なものだけでなく、記憶や記録、感情などを完全に消去するニュアンス。erase, deleteよりも強い意味合いを持つ。
She gently wiped away her child's tears.
彼女は優しく子どもの涙を拭い去った。
※ 「wipe away」は「〜を拭いて取り除く」という意味で、涙や汚れなどを優しく拭う時に使われます。この例文では、泣いている子どもの涙を親がそっと拭いてあげる、愛情あふれる場面が目に浮かびますね。涙が「消え去る」様子が伝わります。
He quickly wiped the spilled coffee off the table.
彼は急いでこぼれたコーヒーをテーブルから拭き取った。
※ 「wipe off」は「〜を拭き取る、拭いて取り除く」という意味で、何かを表面から拭き取る時によく使われます。コーヒーをこぼして慌てて拭く、日常のちょっとしたハプニングが想像できますね。コーヒーがテーブルから「消え去る」ことで、きれいになる様子を表します。
Please wipe the board clean before the next class.
次の授業の前に、ボードをきれいに拭いてください。
※ 「wipe A clean」で「Aを拭いてきれいにする」という、非常によく使われる表現です。ここでは、先生が生徒に、あるいは同僚に、ホワイトボードをきれいにするよう指示しているような、学校や職場の場面が想像できますね。前の情報が「消し去られ」、新しい情報を書ける状態になる様子が伝わります。
一拭き
拭う行為そのもの、または拭うための道具(布、紙など)。動詞の動作を名詞化したもの。
She gave the kitchen table a quick wipe after dinner.
彼女は夕食後、キッチンのテーブルをサッと一拭きしました。
※ 食事が終わった後、テーブルをきれいに拭く、ごく日常的な場面です。「give A a B」は「AにBを与える」だけでなく、「AをBする」という意味で非常によく使われる表現です。ここでは「テーブルをサッと拭く」という行動を表しています。
With just one wipe, he cleaned up the spilled coffee.
たった一拭きで、彼はこぼれたコーヒーをきれいにしました。
※ 何かをこぼしてしまった時に、素早く、そして効率的に拭き取る様子が目に浮かびます。「with just one wipe」で、「たった一回の動作で」という迅速さや簡単さが伝わります。焦りから解放される瞬間のイメージです。
A single wipe was enough to remove the dust from the screen.
一拭きで、画面のほこりは十分に取り除かれました。
※ スマートフォンやパソコンの画面など、少しのほこりが気になる時に、サッと拭いたらすぐきれいになった、という場面です。「a single wipe」は「たった一回の一拭き」という意味で、その動作の簡単さや効果の大きさを表します。
コロケーション
涙を拭う
※ 悲しみや感動で流れる涙を拭き取る行為を表します。物理的に涙を拭うだけでなく、比喩的に『過去の悲しみを乗り越える』という意味合いも含まれます。文学作品や感動的な場面でよく用いられ、共感や慰めの気持ちを伝える際に適しています。類似表現に 'dry tears' がありますが、'wipe away' の方がより感情的なニュアンスが強いです。
過去を清算する、仕切り直す
※ 昔、石板(slate)に文字を書いて、それを拭いて(wipe)再利用したことに由来する表現です。『過去の過ちや借金を帳消しにして、新たなスタートを切る』という意味合いで使われます。ビジネスシーンや人間関係の修復など、様々な場面で用いられます。類似表現に 'start with a clean slate' がありますが、'wipe the slate clean' はより能動的に過去を清算するニュアンスがあります。
(比喩的に)何かを完全に消滅させる、抹殺する
※ 文字通りには地図から何かを消し去ることを意味しますが、比喩的には『組織、場所、考え方などを完全に消滅させる』という意味で使われます。戦争や災害、経済的な破綻など、大規模な破壊や消滅を伴う状況で用いられることが多いです。例えば、「その小さな村は地震で地図から消された(The small village was wiped off the map by the earthquake.)」のように使います。口語的でやや誇張された表現です。
種を絶滅させる
※ ある生物種を地球上から完全に消滅させることを意味します。環境問題や生物多様性の危機といった文脈でよく用いられ、人間の活動が原因で種が絶滅する状況を批判的に表現する際に使われます。科学的な議論や報道で用いられることが多く、感情的なニュアンスよりも客観的な事実を伝えることを重視します。類義語に 'extinct' がありますが、'wipe out' はより能動的な行為によって絶滅させられるニュアンスがあります。
表面を拭いてきれいにする
※ テーブル、カウンター、床などの表面を布やウェットティッシュなどで拭いて汚れを取り除くことを意味します。日常的な家事や清掃活動でよく用いられる表現で、特に衛生的な状態を保つために表面を拭く場合に適しています。例えば、「食事の前にテーブルを拭いてください(Please wipe down the table before eating.)」のように使います。口語的な表現で、フォーマルな場面では 'clean' を使う方が適切です。
(競争などで)相手を打ち負かす、圧倒する
※ 文字通りには床を拭くように、相手を徹底的に打ち負かすことを意味する比喩表現です。スポーツ、議論、試験など、競争的な状況で用いられ、相手を完全に打ち負かして優位に立つことを強調します。例えば、「彼は議論で相手をやり込めた(He wiped the floor with his opponent in the debate.)」のように使います。口語的でやや攻撃的なニュアンスを含むため、使用する場面には注意が必要です。
相手の笑顔を消す、得意な気分を台無しにする
※ 相手の笑顔を文字通り消すだけでなく、比喩的に『相手の得意な気分を台無しにする』という意味合いで使われます。悪い知らせを伝えたり、相手の計画を邪魔したりすることで、相手の喜びや満足感を奪う状況を表します。例えば、「悪い知らせを聞いて、彼の顔から笑顔が消えた(The bad news wiped the smile off his face.)」のように使います。口語的でやや意地悪なニュアンスを含むため、親しい間柄での使用が適切です。
使用シーン
学術論文やレポートで、データや結果を分析・説明する際に使われます。例えば、実験結果のノイズを「除去する (wipe away)」という文脈や、統計データから特定の要素を「取り除く (wipe out)」といった意味合いで使用されます。文体はフォーマルで、客観的な記述が求められます。
ビジネス文書やプレゼンテーションで、記録媒体のデータを「消去する (wipe)」場合や、プロジェクトの遅延による損失を「帳消しにする (wipe out)」といった意味で使われることがあります。日常的な業務連絡よりも、やや専門的な文脈や報告書などで見られます。話者の立場としては、プロジェクトマネージャーや情報システム担当者などが考えられます。
日常会話では、汚れを「拭く (wipe)」という意味で最も頻繁に使われます。例えば、テーブルを拭いたり、子供の顔を拭いたりする場面で「wipe the table」「wipe your face」のように使います。また、比喩的に、記憶を「消す (wipe)」といった意味合いで使われることもあります。「wipe away tears(涙を拭う)」のような表現は、感情的な場面でよく用いられます。
関連語
類義語
『汚れを取り除く』という意味で、一般的に広範囲の清掃や清潔さを保つ行為を指す。日常会話、ビジネス、学術など幅広い場面で使用される。 【ニュアンスの違い】"wipe"は特定の表面を拭く行為に焦点を当てるが、"clean"はより広範で徹底的な清掃を意味する。"clean"は状態を表す形容詞としても使われる。 【混同しやすい点】"clean"は動詞としても形容詞としても使用可能だが、"wipe"は主に動詞として使われる。"clean"は抽象的な意味合いでも使われる(例:clean energy)。
- mop
『モップで拭く』という意味で、主に床を掃除する際に使われる。日常会話でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"wipe"は様々な物を拭く行為を指すが、"mop"は床を水や洗剤で濡らして拭くことに限定される。"mop"は名詞としても使用される。 【混同しやすい点】"mop"は名詞(モップ)としても動詞(モップで拭く)としても使える。"wipe"はモップ以外のもの、例えば布巾などでも拭くことができる。
『こする』という意味で、力を入れて表面を摩擦する行為を指す。日常会話や物理的な行為を説明する際に使われる。 【ニュアンスの違い】"wipe"は表面の汚れや液体を取り除くために軽く拭くが、"rub"は摩擦によって何かを移動させたり、磨いたりするニュアンスがある。"rub"はマッサージなどにも使われる。 【混同しやすい点】"rub"は必ずしも清掃を目的としない。"wipe"は一方向に動かすことが多いが、"rub"は円を描くように動かすこともある。
『消す』という意味で、書かれたものや記録を消去する際に使われる。主にビジネスや教育の場面で使用される。 【ニュアンスの違い】"wipe"は物理的な汚れを拭き取るのに対し、"erase"は情報や痕跡を消去する。デジタルデータや記憶を消去する際にも使われる。 【混同しやすい点】"erase"は物理的な拭き取りを意味しない。例えば、黒板の文字を消す場合は"erase"が適切だが、テーブルの汚れを拭き取る場合は"wipe"が適切である。
『スポンジで拭く』という意味で、液体を吸収させながら表面を清掃する際に使われる。日常会話でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"wipe"は布などで拭く場合も含むが、"sponge"はスポンジを使うことに限定される。"sponge"は名詞としても使用される。 【混同しやすい点】"sponge"は名詞(スポンジ)としても動詞(スポンジで拭く)としても使える。また、"sponge off (someone)"で「~からお金を巻き上げる」というイディオムになる。
『ほこりを払う』という意味で、表面に積もったほこりを取り除く際に使われる。日常会話でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"wipe"は液体や汚れを拭き取るのに対し、"dust"は主に乾いたほこりを取り除く。"dust"は名詞としても使用される。 【混同しやすい点】"dust"は液体を拭き取る場合には不適切。例えば、テーブルの上のほこりを払う場合は"dust"が適切だが、こぼれたジュースを拭き取る場合は"wipe"が適切である。
派生語
- wipe out
句動詞で「全滅させる」「消し去る」という意味。物理的な除去だけでなく、比喩的に組織や感情などを根絶やしにする場合にも使われる。日常会話からニュース記事まで幅広く登場する。
- wiper
「拭く人」「拭くもの」を意味する名詞。自動車のフロントガラスのワイパーや、窓拭き職人のように具体的なものを指す。日常会話で頻繁に使われる。
- wipes
「(ウェット)ティッシュ」を意味する名詞の複数形。何かを拭き取るための、湿った小さな布や紙を指す。衛生用品として日常的に使用され、広告や商品の説明文でよく見かける。
反意語
「汚す」という意味の動詞。wipeが「きれいに取り除く」のに対し、dirtyは「汚れを付着させる」という反対の行為を表す。日常的な文脈で、物理的な汚れに対して使われる。
「塗りつける」「広げる」という意味の動詞。wipeが拭き取って除去するのに対し、smearは意図的に、あるいは不注意に何かを表面に広げる。絵画や食品、化粧品など、具体的な物質に対して使われることが多い。
「汚す」「汚染する」という意味の動詞。wipeが比較的軽い汚れを取り除くのに対し、soilはより深刻な、または広範囲な汚染を意味することが多い。環境問題や倫理的な問題など、抽象的な文脈でも使用される。
語源
「wipe」の語源は古英語の「wīpan」に遡ります。これはゲルマン祖語の「*wīpaną」(拭う、包む)に由来すると考えられています。さらに遡ると、インド・ヨーロッパ祖語の語根「*weip-」(ねじる、回る、包む)に行き着きます。この語根が持つ「包む」「覆う」というイメージが、「拭う」という行為、つまり表面を何かで覆い、汚れなどを取り除くという行為につながっていると考えられます。日本語で例えるなら、「雑巾で拭く」という行為は、雑巾という布で表面を覆い、汚れを「包み込む」イメージに近いかもしれません。このように、古代の言葉のイメージが、現代の「wipe」という単語に息づいているのです。
暗記法
「wipe」は拭き取る行為を超え、罪や恥を消し去る願望を象徴します。中世では、贖罪の儀式が魂の汚れを「wipe」すると信じられ、写字室では誤字を物理的に消去しました。現代では、心の傷の克服から国家の不正清算までを意味し、データ消去や「白紙に戻す」という慣用句にも。破滅を表す「wipe out」まで、罪、赦し、再生、喪失といった人間の根源的な感情が込められています。
混同しやすい単語
『wipe』と『wife』は発音が非常に似ており、特に語尾の子音 /p/ と /f/ の区別が難しい日本人学習者にとっては混同しやすい単語です。意味はそれぞれ『拭く』と『妻』で全く異なります。文脈で判断する必要がありますが、発音練習をしっかり行うことが重要です。英語では、/f/ の音は上の歯を下唇に軽く当てて発音しますが、日本語にはない発音なので意識的な練習が必要です。
『wipe』と『wide』は、発音が似ているだけでなく、スペルも 'wi-' の部分が共通しているため、視覚的にも混同しやすい単語です。意味は『拭く』と『広い』で異なります。発音記号を意識すると、wipeは/waɪp/、wideは/waɪd/となり、語尾の子音が異なります。また、母音の長さもわずかに異なるため、注意して聞き分ける必要があります。
『wipe』と『pipe』は、どちらもCVC(子音-母音-子音)の構造を持つ単語であり、語尾の音が /p/ で共通しているため、発音練習の初期段階では混同しやすいことがあります。意味は『拭く』と『パイプ』で全く異なります。pipeは、古フランス語のpipe(笛)に由来し、そこから管状のものを指すようになったとされています。語源を知ることで、単語のイメージがつきやすくなるでしょう。
『wipe』と『hype』は、母音の発音が /aɪ/ と共通しており、特に早口で話されると聞き分けが難しい場合があります。また、どちらもスラングとして使われることがあるため、文脈によっては意味の誤解が生じる可能性もあります。hypeは、『誇大宣伝』という意味で使われます。語源的には、注射針を意味する『hypodermic』が短縮されたものという説があり、誇張された情報を注入するというイメージにつながります。
『wipe』と『whine』は、スペルが似ており、どちらも動詞として使われるため、文脈によっては混同しやすい単語です。whineは、『泣き言を言う』という意味で、不満や苦痛を訴える様子を表します。発音は/waɪn/で、wipeとは語尾の子音が異なります。whineの語源は古英語のhwīnan(音を立てる)に由来し、犬などが悲しげに鳴く様子を表す言葉から派生したとされています。
『wipe』と『wire』は、スペルが似ており、特に手書きの場合など、視覚的に混同しやすいことがあります。wireは『針金』や『電線』という意味で、電気や通信の分野でよく使われます。発音は/ˈwaɪər/で、wipeとは語尾の音が異なります。wireは、古英語のwīrに由来し、金属製の細い糸を意味する言葉から派生したとされています。電気通信の分野で使われるようになったのは、19世紀以降のことです。
誤用例
日本語の『(過ちなどを)〜に詫びる』という表現を直訳すると、つい『wipe +人』という形にしてしまいがちですが、英語の『wipe』は物理的に何かを拭き取る意味合いが強く、謝罪の文脈では不適切です。この誤用は、日本語の『拭う』という言葉が、比喩的に『罪を拭う』のように使われることにも影響を受けていると考えられます。英語では、謝罪の意を伝えるには 'apologize to' を使うのが一般的です。文化的な背景として、英語圏では直接的な表現が好まれる傾向があり、曖昧な表現を避けることが重要です。
『wipe』は、データなどを消去する意味でも使われますが、この単語が持つイメージは、文字通り『拭き取る』ように、表面的なものを消すニュアンスです。例えば、ホワイトボードの文字を消す、あるいは、ハードディスクを完全に初期化(データを完全に抹消)するような場合に適しています。一方、単にファイルを削除する、という意味で『wipe』を使うと、やや大げさな印象を与えたり、本当に完全に消去するのか?という誤解を生む可能性があります。日常的なデータの削除には 'delete' を使う方が適切です。これは、日本語の『消去』が持つニュアンスを、英語のどの単語で表現するか、という問題でもあります。日本語の『消去』は、文脈によって『delete』と『wipe』を使い分ける必要があることを理解しましょう。
『wipe』は、涙や汗を拭う場合にも使えますが、ゴシゴシと拭くような、やや粗雑なイメージがあります。繊細なシルクのハンカチで涙を拭う、という状況には、そっと当てるように拭う『dab』の方が適しています。この誤用は、日本語の『拭う』という言葉が持つ幅広い意味を、英語の『wipe』だけで表現しようとするために起こりがちです。英語では、涙を拭う動作にも、感情や状況に応じた適切な表現を選ぶことが重要です。特に、教養のある大人の英語としては、細かいニュアンスの違いに気を配る必要があります。
文化的背景
「wipe」は単に物を拭き取る動作を表すだけでなく、過去の過ちや記憶を消し去りたいという願望、あるいは社会的な汚名を拭い去りたいという強い意志を象徴することがあります。この言葉は、文字通りに汚れを拭き取る行為から派生し、比喩的に、罪悪感、恥辱、あるいは不快な出来事の痕跡を消し去ることを意味するようになりました。
中世ヨーロッパにおいて、罪を告白し、赦しを請う儀式は、魂の汚れを「wipe」する行為と捉えられていました。贖罪の儀式を通じて、過去の過ちを水で洗い流し、新しい人生を歩むことができると信じられていたのです。また、中世の写字室では、羊皮紙に誤って書かれた文字をナイフで削り取る作業があり、これもまた物理的に「wipe」することで、記録から誤りを消し去る行為でした。この行為は、後の時代において、歴史の改竄や記憶の操作といった、より複雑な意味合いを帯びるようになります。
現代社会においては、「wipe」は、個人レベルでの心の傷の克服から、国家レベルでの過去の不正の清算まで、幅広い文脈で使用されます。例えば、コンピューター用語としての「wipe」は、ハードディスクのデータを完全に消去することを意味し、個人情報の保護や機密保持の観点から非常に重要な概念となっています。また、「wipe the slate clean(白紙に戻す)」という慣用句は、過去の失敗や人間関係の軋轢を乗り越え、新たなスタートを切ることを意味します。この表現は、個人の成長や再生の願望を強く反映しており、自己啓発の文脈で頻繁に用いられます。
さらに、「wipe out」という句動詞は、全滅や破滅といった、より劇的な状況を表すために用いられます。この表現は、自然災害や戦争、あるいは経済的な破綻など、個人や社会全体に甚大な影響を与える出来事を描写する際に使用されます。例えば、ある企業が競争に敗れ、市場から「wiped out(駆逐された)」という場合、それは単なるビジネスの失敗以上の、より深い喪失感や絶望感を伴います。このように、「wipe」という言葉は、物理的な清掃から、精神的な浄化、そして破滅的な破壊まで、多様な意味合いを含んでおり、その背後には、人間の罪、赦し、再生、そして喪失といった、根源的な感情や経験が潜んでいるのです。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解、稀にリスニング
- 頻度と級・パート: 準1級・1級で頻出。2級でも長文読解で登場する可能性あり
- 文脈・例題の特徴: 環境問題、科学技術、社会問題など幅広いトピックで登場。フォーマルな文脈が多い
- 学習者への注意点・アドバイス: 「拭く」「消す」「取り除く」など複数の意味を理解し、文脈に応じて使い分けられるようにする。wipe out (絶滅させる)のような句動詞も重要
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 5, 7で中頻度。ビジネス関連の文書で登場しやすい
- 文脈・例題の特徴: オフィス、清掃、契約解除、データ消去など、ビジネスシーンでの使用例が多い
- 学習者への注意点・アドバイス: 「拭く」という意味だけでなく、「消去する」「帳消しにする」といった比喩的な意味も押さえておく。類義語のerase, deleteなどとの使い分けも意識する
- 出題形式: リーディングセクション
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で中頻度。専門的な内容で使われることが多い
- 文脈・例題の特徴: 科学論文、歴史的記述、社会科学系の文章など、学術的な文脈で使われる
- 学習者への注意点・アドバイス: 抽象的な意味合いで使用されることが多い。「(記録などを)消し去る」「(影響などを)払拭する」といった意味を理解しておく。学術的な文章における論理展開の中で、wipeがどのような役割を果たしているかを意識する
- 出題形式: 長文読解、和訳問題、英作文
- 頻度と級・パート: 難関大学の長文読解で頻出。標準的なレベルの大学でも出題される可能性あり
- 文脈・例題の特徴: 評論文、物語文など、幅広いジャンルの文章で登場。文脈理解が重要
- 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な「拭く」という意味に加え、「消す」「一掃する」といった比喩的な意味も理解しておく。文脈から適切な意味を判断できるように、多くの英文に触れることが重要。wipe away (~を拭い去る)のような句動詞も覚えておくと役立つ