vicious
最初の音 /v/ は、上の歯を下唇に軽く当てて息を出す有声摩擦音です。日本語の『ヴァ』行を発音する時とほぼ同じ口の形ですが、より意識的に摩擦音を出すようにしましょう。また、アクセントは最初の音節にあります。最後の /əs/ は、曖昧母音で弱く発音されるため、強く発音しないように注意してください。
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悪質な
人や行動、噂などが、意地悪で残酷な性質を持つことを指す。単に悪いだけでなく、積極的に害を与えようとするニュアンスを含む。例:vicious rumor(悪質な噂), vicious attack(悪質な攻撃)
His vicious comments made everyone uncomfortable.
彼の悪質なコメントは、みんなを不快にさせた。
※ この例文は、誰かの言葉や態度が「意地悪で悪意に満ちている」ときに「vicious」が使われる典型的な場面を描いています。彼の言葉がその場の雰囲気を悪くし、周りの人を不快にさせている様子が目に浮かびますね。「vicious comments」のように、名詞を修飾する形容詞として使われています。
The dog was very vicious, so nobody wanted to go near it.
その犬はとても凶暴だったので、誰も近づきたがらなかった。
※ ここでは「vicious」が動物、特に犬が「凶暴な」「獰猛な」という意味で使われています。道を歩いていると、鎖につながれていても吠え続けているような、怖くて誰も近づけない凶暴な犬の様子が目に浮かびます。「vicious」はbe動詞の後に来て、主語(The dog)の状態を説明しています。
The vicious weather ruined our picnic plan.
その猛烈な悪天候が、私たちのピクニック計画を台無しにした。
※ この例文では、「vicious」が天候や状況が「非常に厳しく、あたかも悪意があるかのように人を苦しめる」様子を表しています。楽しみにしていたピクニックが、突然のひどい嵐や猛吹雪のような悪天候で中止になり、がっかりしている情景が想像できます。「vicious weather」のように、名詞を修飾する形容詞として使われます。
どう猛な
動物や人が、制御不能なほど攻撃的で危険な状態を指す。本能的な攻撃性や狂暴性を示唆する。例:vicious dog(どう猛な犬), vicious beast(どう猛な獣)
The dog was very vicious and always growled at strangers.
その犬はとてもどう猛で、いつも見知らぬ人にうなっていました。
※ 鎖につながれていても、近づく人すべてに唸り声をあげる、恐ろしい犬の姿が目に浮かびます。「vicious」は、動物が人に危害を加える可能性のある、凶暴な性質を表すときによく使われます。動詞の "growl" は「うなる」という意味で、動物の「どう猛さ」を具体的に描写しています。
He used vicious words to attack her feelings.
彼は彼女の気持ちを攻撃するために、意地の悪い言葉を使いました。
※ 誰かの心を深く傷つけるような、冷たくて残酷な言葉を吐いている場面です。「vicious」は、動物だけでなく、人の「言葉」や「行動」が非常に意地悪で、悪意に満ちている場合にも使われます。「vicious words」は「悪意のある言葉」「意地の悪い言葉」という意味で、人の心を傷つけるような発言を指します。
The police caught a vicious man who hurt many people.
警察は多くの人を傷つけた凶暴な男を捕まえました。
※ 多くの人に危害を加えた、危険な人物が逮捕される瞬間です。「vicious」は、人が暴力的で、他人を傷つけるような残酷な性質を持っていることを表すときに使われます。"who hurt many people" の部分は、どのような「vicious man」なのかを具体的に説明しており、英語で情報を加える際によく使われる表現です。
過酷な
状況や状態が、非常に厳しく、苦痛を伴うことを指す。容赦がなく、耐え難いニュアンスを含む。例:vicious cycle(悪循環), vicious winter(過酷な冬)
A vicious storm hit the coast last night, causing widespread damage.
昨夜、猛烈な嵐が海岸を襲い、広範囲にわたる被害をもたらしました。
※ この例文では、「vicious」が自然現象、特に嵐や寒さなどの天候が「非常に激しい」「猛烈な」といった「過酷な」状況であることを表しています。夜の海岸に嵐が打ち付け、家々が揺れるような激しい様子が目に浮かびます。嵐の威力が尋常ではないことを伝える、典型的な使い方です。
The competition in the tech industry is so vicious that only the strongest survive.
テクノロジー業界の競争は非常に過酷なので、最も強い者だけが生き残ります。
※ ここでは、「vicious」が、競争や環境が「非常に厳しい」「容赦ない」といった「過酷な」状況であることを表現しています。多くの企業や個人が激しい競争の中で、生き残るために必死に努力している様子が想像できます。ビジネスや社会の厳しさを強調する際に使われる、自然な文脈です。
She had to endure vicious criticism from her boss, but she never gave up.
彼女は上司からの過酷な批判に耐えなければなりませんでしたが、決して諦めませんでした。
※ この例文では、「vicious」が、精神的な負担やプレッシャー、あるいは言葉が「非常に重い」「耐え難い」「悪意のある」といった「過酷な」ものであることを示しています。主人公が、精神的に追い詰められながらも、強く立ち向かっている姿が目に浮かびます。感情や言葉の厳しさを伝えるのに有効な表現です。
コロケーション
負の連鎖、悪循環
※ ある問題が別の問題を引き起こし、それが最初の問題をさらに悪化させるという、抜け出せない状況を指します。例えば、「不況で失業者が増える→消費が落ち込む→企業業績が悪化する→さらに失業者が増える」という流れです。経済学や社会学の文脈でよく使われますが、個人的な状況(例えば、睡眠不足→体調不良→集中力低下→仕事のパフォーマンス低下→ストレス→さらに睡眠不足…)にも適用できます。'vicious circle' とも呼ばれます。
悪質な噂、根も葉もない噂
※ 誰かの評判を傷つけたり、中傷したりする目的で広められる、悪意のある噂を指します。単なるゴシップよりも悪質で、法的責任を問われる可能性もあります。名誉毀損に当たるケースも考えられます。報道やメディア関連の記事でよく見られる表現です。
凶悪な攻撃、悪質な攻撃
※ 肉体的または精神的に、相手に大きな危害を加えることを意図した攻撃を指します。物理的な暴力だけでなく、言葉による攻撃や、サイバー攻撃なども含まれます。ニュース記事や犯罪関連の報道で頻繁に使用される表現です。比喩的に、激しい批判や論争を指すこともあります。
獰猛な犬、狂犬
※ 人に危害を加える可能性のある、攻撃的な性質を持つ犬を指します。法律や保険の文脈で、犬の飼い主の責任を問う際に用いられることがあります。特定の犬種が「vicious」とみなされることもあります。
激しい気性、凶暴な気質
※ 非常に怒りやすく、攻撃的な性格を指します。単に「短気」なだけでなく、暴力的な行動に出る可能性を含むニュアンスがあります。文学作品や心理学関連の書籍で、登場人物の性格描写に用いられることがあります。
非情なゲーム、残酷な競争
※ 他人を蹴落とすことや、不正な手段を用いることが横行するような、倫理的に問題のある競争を指します。ビジネスの世界や政治の世界を批判的に表現する際に用いられることがあります。例えば、「政界は vicious game だ」のように使います。
悪意のある嘘、悪質な嘘
※ 誰かを傷つけたり、陥れたりする目的で意図的につかれる嘘を指します。単なる「嘘」よりも悪質で、深刻な結果をもたらす可能性があります。法廷や倫理に関する議論で用いられることがあります。
使用シーン
学術論文や専門書で、否定的な意味合いを強調する際に用いられます。例えば、心理学の研究で「悪循環(vicious cycle)」という概念を説明する時や、経済学で「過酷な競争(vicious competition)」について分析する際に使われます。文語的な表現が中心です。
ビジネス文書やプレゼンテーションで、問題点やリスクを強調する際に使用されます。例えば、「悪質なデマ(vicious rumor)」が広がるリスクや、「過酷な価格競争(vicious price war)」が業界全体に与える影響について議論する場面が考えられます。フォーマルな文脈で用いられることが多いです。
日常会話ではあまり使いませんが、ニュース記事やドキュメンタリーなどで、犯罪や事件の報道で「凶悪犯(vicious criminal)」や「残忍な事件(vicious crime)」といった表現で見かけることがあります。また、ペットの犬が人を噛んでしまった際に「うちの犬は普段はおとなしいけど、今日はどう猛だった(vicious)」のように、まれに使うこともあります。
関連語
類義語
『悪意のある』という意味で、意図的に他人を傷つけようとする行為や性質を表す。フォーマルな場面や、法的文脈でも用いられる。 【ニュアンスの違い】『vicious』は、必ずしも意図的でなくても、残酷で破壊的な性質を指すことがある。一方、『malicious』は、計画的で悪意に満ちた意図が強調される。 【混同しやすい点】『malicious』は人の性格や行為を修飾するが、『vicious cycle』のように、状況や状態を修飾することは少ない。
『残酷な』という意味で、他人を苦しめることを楽しむ、または無関心である様子を示す。日常会話から文学まで幅広く使われる。 【ニュアンスの違い】『vicious』は、残酷であることに加え、激しさや容赦のなさを含むことがある。『cruel』は、感情的な冷酷さが強調される。 【混同しやすい点】『cruel』は感情や行動の性質を指すことが多いが、『vicious』は人、動物、行為、状況など、より広い範囲を修飾できる。
『残忍な』という意味で、非常に暴力的で容赦のない行為や状況を指す。ニュース報道や歴史的な文脈でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『vicious』は、精神的な残酷さや悪意を含むことがあるが、『brutal』は、肉体的または精神的な暴力の激しさに焦点が当てられる。 【混同しやすい点】『brutal』は、行為や状況の描写に用いられることが多く、人の性格を直接的に表す場合は、『cruel』の方が一般的。
『どう猛な』という意味で、動物や人の激しい攻撃性や荒々しさを表す。主に動物の行動や、比喩的に人の激しい怒りを表現する際に使われる。 【ニュアンスの違い】『vicious』は、悪意や破壊的な性質を伴うことがあるが、『ferocious』は、本能的な攻撃性や激しさに重点が置かれる。 【混同しやすい点】『ferocious』は、主に動物や、動物的な激しさを持つ人を指す場合に用いられ、抽象的な概念や状況には適用しにくい。
『野蛮な』という意味で、文明化されていない、または非常に残酷な行為や人々を指す。歴史的な文脈や、未開社会を描写する際に用いられる。 【ニュアンスの違い】『vicious』は、道徳的な非難を含むことがあるが、『savage』は、文明化されていない状態や、本能的な残酷さを強調する。文化的背景を考慮する必要がある。 【混同しやすい点】『savage』は、現代社会においては、人種差別的な意味合いを含む可能性があるため、使用には注意が必要。また、特定の文化や社会を非難する文脈で使われることが多い。
- atrocious
『極悪な』という意味で、非常に悪質で不快な行為や状況を指す。フォーマルな場面や、強い非難の意を込めて使われる。 【ニュアンスの違い】『vicious』は、残酷さや激しさを伴うことがあるが、『atrocious』は、道徳的な悪質さや、許容できないほどのひどさを強調する。 【混同しやすい点】『atrocious』は、主に行為や状況の質を評価する際に用いられ、人の性格を直接的に表す場合は、『malicious』や『cruel』の方が適切。
派生語
『悪意をもって』『残酷に』という意味の副詞。『vicious』に副詞化の接尾辞『-ly』が付いた形。行動や発言の様子を強調する際に用いられ、ニュース記事や物語などで見られる。元々の形容詞の意味を強く反映している。
- viciousness
『悪意』『残酷さ』という意味の名詞。『vicious』に名詞化の接尾辞『-ness』が付いた形。抽象的な概念を表し、犯罪に関する報道や社会問題を議論する文脈で使われることが多い。形容詞の持つ性質を名詞として捉え直したもの。
- vitiate
『堕落させる』『損なう』という意味の動詞。『vicious』と語源を共有し、元々は『欠陥がある状態にする』という意味合いを持つ。契約や計画などを無効にしたり、質を低下させたりする際に用いられ、法律やビジネスの文書で比較的よく見られる。
反意語
『徳の高い』『高潔な』という意味の形容詞。『vicious』が道徳的に堕落している状態を指すのに対し、こちらは道徳的に優れている状態を表す。倫理的な議論や文学作品で用いられ、『vicious cycle(悪循環)』に対する『virtuous cycle(好循環)』のように対比的な表現で使われることもある。
『良性の』『穏やかな』という意味の形容詞。『vicious』が有害で破壊的な性質を持つことを示すのに対し、こちらは無害で好ましい性質を持つことを示す。医学的な文脈(良性腫瘍など)や、気候や人柄を表す際に用いられる。比喩的には、悪意のない、害のない状態を指す。
『穏やかな』『優しい』という意味の形容詞。『vicious』が激しさや残酷さを含むのに対し、こちらは穏やかさや優しさを示す。人の性格や態度、自然現象などを描写する際に用いられ、日常会話でも頻繁に使われる。比喩的には、手加減をする、厳しくないという意味合いも含む。
語源
"vicious」は、ラテン語の「vitiosus」(欠点のある、不道徳な)に由来します。さらに遡ると、「vitium」(欠点、悪徳、傷)という単語から派生しています。「vitium」は、もともと「損なわれた状態」や「不完全さ」を意味し、それが道徳的な欠陥や悪意へと意味が拡張していきました。日本語で例えるなら、「瑕疵(かし)」という言葉が近いかもしれません。建物や商品に欠陥がある状態を指す「瑕疵」が、人の性格や行動の悪質さを表す「vicious」へと繋がったと考えると、理解しやすいでしょう。つまり、「vicious」は、本質的に何か「欠けている」状態から、道徳的な「悪」へと意味が発展した単語なのです。
暗記法
「vicious」は単なる悪を超え、制御不能な悪意や自己破壊的な残酷さを表す言葉。中世道徳では、七つの大罪に象徴される人間の堕落と結びつき、ダンテの『神曲』にもその影が。シェイクスピア作品では、リチャード三世のような「vicious ambition(邪悪な野心)」に取り憑かれた人物が登場。「vicious circle(悪循環)」は貧困や依存症といった社会問題、個人の精神疾患さえも説明する。現代ではネット上の誹謗中傷など、負の連鎖を表現する言葉として使われる。
混同しやすい単語
『vicious』とスペルが似ており、特に語頭の『vi-』が共通しているため、視覚的に混同しやすい。意味は正反対で、『virtuous』は『徳の高い』『高潔な』という意味を持つ。品詞はどちらも形容詞。日本人学習者は、文脈から判断する必要がある。語源的には、『virtue』(美徳)と関連付ければ覚えやすい。
発音が似ており、特に母音部分が曖昧になりやすい。スペルも似ているため、注意が必要。『viscous』は『粘性のある』という意味で、液体や物質の状態を表す。品詞は形容詞。発音記号を確認し、母音の違いを意識して発音練習することが重要。イメージとしては、蜂蜜やオイルのような粘り気を連想すると良い。
語頭の『vic-』が共通しているため、スペルの一部が似ており、混同しやすい。『victim』は『犠牲者』という意味の名詞。品詞が異なるため、文法的な構造から区別することも可能。また、関連語として『victimize』(~を犠牲にする)を一緒に覚えると、『vicious』との意味の違いがより明確になる。
『vicious』とスペルが似ており、特に語頭が共通しているため、混同しやすい。『vices』は『悪徳』『悪癖』という意味の名詞で、『vice』の複数形。意味がネガティブな点では共通するが、品詞と意味が異なる。『vicious circle』(悪循環)のように、関連するイディオムを一緒に覚えると区別しやすくなる。
スペルの一部(-cious)が似ているため、視覚的に混同しやすい。『conscious』は『意識的な』『自覚している』という意味の形容詞。発音も異なるため、注意が必要。語源的には、『science』(科学、知識)と関連があり、『知識を持っている』→『意識がある』というイメージで捉えると覚えやすい。
語尾の『-cious』が共通しているため、スペルが似ており、混同しやすい。『delicious』は『美味しい』という意味の形容詞。発音も異なるため、注意が必要。語源的には、『delight』(喜び)と関連があり、『喜びをもたらすもの』→『美味しい』というイメージで捉えると覚えやすい。
誤用例
『vicious』は『悪意のある』『残酷な』という意味合いが強く、天気に対して使うと、まるで天気が意図的に人間を苦しめているかのようなニュアンスになります。日本語の『ひどい天気』を直訳するとこうなりがちですが、天気の場合は『atrocious』『terrible』『awful』などを使うのが自然です。英語では、無生物主語の文でも、その対象に意志や感情があるかのように表現することがありますが、『vicious』は特に強い悪意を示すため、天候に使うのは不適切です。天候の『ひどさ』は、客観的な状況を述べるに留めるのが一般的です。
『vicious cycle』は確かに『悪循環』と訳せますが、『vicious』は道徳的な悪意や残酷さを伴うニュアンスがあります。そのため、単に『働いて体調を崩す』という状況に使うと、病気になること自体に倫理的な問題があるかのように聞こえてしまいます。『debilitating cycle(衰弱させるサイクル)』のように、より中立的な言葉を選ぶ方が適切です。日本語の『悪循環』は、必ずしも道徳的な悪を意味しないため、英語に直訳する際には注意が必要です。英語では、道徳的な判断と客観的な状況を区別して表現することが求められます。
『vicious look』は、文字通りには『悪意に満ちた表情』となりますが、日常会話では大げさで不自然に聞こえることがあります。相手を非難する、軽蔑するような視線を表現したい場合は、『scathing look(痛烈な視線)』や『withering look(人を萎縮させるような視線)』を使う方が、より洗練された印象を与えます。日本語の『睨みつける』のような強い表現を、安易に『vicious』で表現しようとすると、過剰な表現になることがあります。英語では、感情の強さを表現する際に、相手に与える印象や状況を考慮して、適切な言葉を選ぶことが重要です。
文化的背景
「vicious」は、単に「邪悪な」という意味を超え、制御不能な悪意や、自己破壊的なまでの残酷さを表す言葉として、西洋文化において深い影を落としてきました。それは、繰り返される負の連鎖や、抜け出すことのできない悪循環といった概念と結びつき、人間の本性に対する根源的な問いを投げかけます。
中世のキリスト教道徳においては、「vicious」は、七つの大罪に代表される人間の堕落した性質と深く結びついていました。例えば、ダンテの『神曲』地獄篇では、罪人たちはそれぞれの「vicious」な行いに応じた苦しみを受けています。この文脈において、「vicious」は、個人の道徳的欠陥が、社会全体に波及する悪影響を象徴するものとして捉えられていました。シェイクスピアの作品にも、「vicious」な登場人物は数多く、リチャード三世のように、権力欲に取り憑かれ、目的のためには手段を選ばない人物は、「vicious ambition(邪悪な野心)」の典型例と言えるでしょう。
さらに、「vicious circle(悪循環)」という表現は、社会問題や個人の心理状態を説明する際にも頻繁に用いられます。貧困、犯罪、薬物依存といった問題は、しばしば「vicious circle」として語られ、その構造的な複雑さと、解決の難しさを示唆します。また、心理学においては、ネガティブな思考パターンや行動が、自己肯定感を低下させ、さらなるネガティブな思考を招くという「vicious cycle」が、うつ病などの精神疾患のメカニズムを説明するために用いられます。このように、「vicious」は、単なる悪意を超え、自己増殖的な負の連鎖を強調するニュアンスを持っています。
現代社会においても、「vicious」は、ネット上の誹謗中傷や、政治的な中傷合戦など、匿名性や集団心理が助長する悪意の連鎖を表現するために用いられます。特に、ソーシャルメディア上での「vicious attack(悪質な攻撃)」は、個人を精神的に追い詰め、社会全体に不信感を蔓延させる要因となっています。このように、「vicious」は、時代や社会の変化とともに、その意味合いを変化させながらも、人間の持つ負の側面を鋭く表現する言葉として、現代においても重要な役割を果たしています。
試験傾向
1. 出題形式: 語彙問題、長文読解。2. 頻度と級・パート: 準1級・1級で比較的頻出。3. 文脈・例題の特徴: 社会問題、環境問題など、やや硬めのテーマで登場しやすい。4. 学習者への注意点・アドバイス: 「悪意のある」「残酷な」といったネガティブな意味合いを理解し、文脈に合った訳語を選ぶこと。名詞形 'viciousness' も覚えておくと役立つ。
1. 出題形式: Part 5 (語彙問題), Part 7 (長文読解)。2. 頻度と級・パート: TOEIC全体では中程度の頻度。3. 文脈・例題の特徴: 契約、顧客対応、競合他社に関する記述など、ビジネスシーンで使われることが多い。4. 学習者への注意点・アドバイス: 'vicious cycle'(悪循環)のような複合語での使われ方も覚えておくと有利。類似語とのニュアンスの違いを意識すること。
1. 出題形式: リーディングセクション。2. 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻出。3. 文脈・例題の特徴: 歴史、社会学、心理学など、学術的なテーマで使われることが多い。4. 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から意味を推測する練習が重要。類義語の 'malicious', 'cruel' との違いを理解しておくこと。抽象的な概念を説明する際に用いられることが多い。
1. 出題形式: 長文読解、内容一致問題、空所補充問題。2. 頻度と級・パート: 難関大学で頻出。3. 文脈・例題の特徴: 社会問題、倫理、哲学など、論理的な文章で登場しやすい。4. 学習者への注意点・アドバイス: 文脈全体を理解し、筆者の主張を把握することが重要。単語の意味だけでなく、文章全体の流れの中でどのように機能しているかを意識すること。