remember
最初の 'ri' は、日本語の『リ』よりも弱く、曖昧母音に近い音です。口を軽く開け、舌を少しだけ持ち上げて発音します。二番目の音節 'mem' にアクセントがあるので、そこを意識しましょう。最後の 'ber' は、'b' の後に曖昧母音があり、日本語の『バー』よりも弱く、口をあまり開けずに発音します。舌を丸めるように 'r' の音を出すとよりネイティブらしい発音になります。
覚えている
過去の経験や知識を心に留めている状態。単に知っているだけでなく、思い出すことができるニュアンスを含む。例文:I remember my childhood vividly.(子供の頃のことを鮮明に覚えている)
I still remember the sweet smell of fresh bread from my grandmother's kitchen.
おばあちゃんの台所から漂う焼きたてパンの甘い香りを、私は今でも覚えています。
※ この例文は、過去の温かい思い出を「覚えている」という、'remember'の最も中心的な使い方を示しています。おばあちゃんの台所で、焼きたてのパンの香りが広がり、心が満たされるような情景が目に浮かびますね。感情を伴う記憶を表現するのに最適です。
Please remember to turn off the lights when you leave the office.
オフィスを出る時は、必ず電気を消すのを忘れないでくださいね。
※ ここでは、「~するのを忘れないで」という、注意や依頼のニュアンスで'remember to do'の形が使われています。仕事終わりにオフィスを出る際、電気の消し忘れがないか確認する責任感や、節約を意識する場面が想像できます。日常でよく使われる、実用的な表現です。
Do you remember where we parked the car this morning at the mall?
今朝、ショッピングモールで車をどこに停めたか覚えていますか?
※ この例文は、特定の情報や場所を「覚えているか」を確認する疑問文です。広いショッピングモールの駐車場で、車が見つからず、少し困った顔で相手に尋ねる光景が目に浮かびます。日常会話で頻繁に登場する、非常に自然なシチュエーションです。
忘れずに〜する
何かをすることを忘れないように意識すること。義務や責任を伴うことが多い。例文:Remember to lock the door.(ドアに鍵をかけるのを忘れないで)
Please remember to turn off the lights when you leave the room.
部屋を出るときは、忘れずに電気を消してくださいね。
※ 【ミニ・シーン】誰かが部屋を出る時、別の誰かが「電気を消す」という習慣的な行動を忘れずに行うよう、優しく促している場面です。節約や安全への配慮が感じられます。 【なぜ典型的か】この文は、日常で「忘れずにやってね」とお願いする、最も自然で典型的な使い方です。「remember to + 動詞の原形」で「忘れずに〜する」という意味になります。 【ヒント】家を出る前や、お店で店員さんに何かを頼む時など、日常の様々な「うっかり忘れやすいこと」に対して使えます。
I need to remember to call my grandma on her birthday next week.
来週のおばあちゃんの誕生日に、忘れずに電話しなくちゃ。
※ 【ミニ・シーン】来週のおばあちゃんの誕生日を前に、自分が「電話をする」という大切な約束や行動を忘れないようにと、心に留めている場面です。おばあちゃんへの愛情や、優しい気持ちが伝わります。 【なぜ典型的か】個人的な大切な予定や、誰かとの約束を「忘れずに実行する」ことを自分に言い聞かせる時に、非常によく使われる表現です。 【ヒント】「I need to remember to...」は、「〜するのを忘れちゃいけない!」と自分にリマインドする時に便利です。例えば、「I need to remember to buy milk. (牛乳を買うのを忘れなきゃ)」のように使えます。
The doctor told me to remember to take my medicine every morning.
お医者さんは、毎朝忘れずに薬を飲むようにと私に言いました。
※ 【ミニ・シーン】病院で、お医者さんが患者さんに対して、健康のために「薬を飲む」という重要な指示を丁寧に与え、患者さんがそれをしっかりと心に留めている場面です。健康への責任感が伝わります。 【なぜ典型的か】誰かから大切な指示やアドバイスを受け、それを「忘れずに実行する」必要がある時に使われる、典型的な状況です。特に健康や安全に関わる文脈で頻繁に登場します。 【ヒント】「(誰か)told me to remember to...」は、「〜するのを忘れずに、と(誰か)が私に言った」という形で、他者からの指示を伝える際によく使われます。
記念する
人や出来事を特別な方法で思い起こし、敬意を表する。例文:We remember the victims of the tragedy.(私たちはその悲劇の犠牲者を追悼する)
We always remember Grandma with her favorite flowers on her birthday.
私たちは、おばあちゃんの誕生日に、いつも彼女が好きだった花を供えて偲びます。
※ この例文は、家族が亡くなったおばあちゃんを温かく偲んでいる情景を描いています。「remember」は、故人を「偲ぶ」「追悼する」という意味でよく使われます。ここでは「おばあちゃんの好きだった花を供える」という具体的な行動で、愛情を込めて記念している様子が伝わりますね。「always」は、それが毎年行われる習慣であることを示しています。
The town built a monument to remember the soldiers.
その町は、兵士たちを記念するために記念碑を建てました。
※ この例文は、ある町が、国のために戦った兵士たちの功績を忘れずに、後世に伝えるために記念碑を建てた厳かな場面です。「remember」は、歴史上の人物や重要な出来事を永く記憶にとどめるために、記念碑を建てたり、式典を行ったりする際によく使われます。「to remember」は「~するために」という目的を表し、具体的な行動(記念碑を建てる)と結びついて「記念する」という意味合いがより明確になります。
They went to a nice restaurant to remember their wedding day.
彼らは、結婚記念日を祝うために素敵なレストランへ行きました。
※ この例文は、夫婦が自分たちの結婚記念日を特別な方法で祝っている、喜びにあふれた場面です。「remember」は、個人的な記念日や大切な出来事を「心に留めて祝う」「記念する」という意味でも自然に使われます。ここでは「素敵なレストランに行く」という行動が、その日を大切にしている気持ちを表していますね。これも「to remember」で目的を示しています。
コロケーション
はっきりと覚えている、鮮明に記憶している
※ 「distinctly」は『明確に、はっきりと』という意味の副詞で、rememberを修飾することで記憶の鮮明さを強調します。単に「remember」と言うよりも、より確信を持って覚えていることを伝えたい場合に適しています。例えば、重要な会議の内容や、過去の感動的な出来事など、細部まで覚えている状況で使われます。フォーマルな場面でも使用可能です。
ぼんやりと覚えている、うろ覚えである
※ 「vaguely」は『曖昧に、ぼんやりと』という意味の副詞で、rememberを修飾して記憶の曖昧さを示します。詳細までは覚えていないけれど、大まかな内容は覚えているというニュアンスです。例えば、「I vaguely remember meeting him at a party.(パーティーで彼に会ったことをぼんやり覚えている)」のように使います。日常会話でよく用いられる表現です。
~したことを覚えている
※ 動名詞(doing)を伴う場合、「過去にした行為」を覚えていることを意味します。これは「remember to do something(これから~することを覚えている)」と混同しやすいので注意が必要です。たとえば、「I remember locking the door.(ドアに鍵をかけたことを覚えている)」は、過去に鍵をかけた行為を覚えていることを意味します。日常会話で頻繁に使われます。
誰かを懐かしく思う、愛情を込めて覚えている
※ 「fondly」は『愛情を込めて、懐かしく』という意味の副詞で、rememberを修飾することで、良い感情を伴って誰かを覚えていることを表します。亡くなった人や、遠く離れた友人などを思い出す際に使われることが多いです。手紙やスピーチなど、ややフォーマルな場面でも使用されます。
その時の状況を覚えている
※ 「occasion」は『特別な出来事、機会』という意味で、rememberと組み合わさることで、特定のイベントや出来事の内容や雰囲気を覚えていることを指します。「Do you remember the occasion when we first met?(私たちが初めて会った時のことを覚えていますか?)」のように使われます。フォーマルな場面でもカジュアルな場面でも使用可能です。
もし私の記憶が正しければ
※ 自分の記憶が確かかどうか自信がないときに、発言を控えめにしたり、確認を促したりする際に使われるフレーズです。ビジネスシーンやフォーマルな会話でも使用されます。「If I remember correctly, the meeting is scheduled for tomorrow.(もし私の記憶が正しければ、会議は明日の予定です)」のように使います。
即座に思い出せる
※ "offhand"は「即座に」「すぐに」という意味の副詞で、rememberを修飾することで、特に考えなくてもすぐに思い出せることを表します。例えば、「I don't remember offhand where I put my keys. (鍵をどこに置いたか、すぐに思い出せない)」のように使われます。日常会話でよく用いられる表現です。
使用シーン
学術論文や研究発表で頻繁に使用されます。特に、過去の研究や先行事例を引用する際、「As researchers have remembered, the effect is significant.(研究者たちが記憶しているように、その効果は重要である)」のように使われます。また、実験方法を説明する際、「Participants were asked to remember a list of words.(参加者は単語リストを記憶するように求められた)」のように使用されます。
ビジネスシーンでは、会議の議事録や報告書で、過去の決定事項や議論の内容を振り返る際に使用されます。例えば、「Please remember to submit your expense reports by the end of the month.(月末までに経費報告書を提出することを忘れないでください)」や、「As you may remember, we discussed this issue last week.(ご記憶かと思いますが、先週この問題について議論しました)」のように使われます。フォーマルな文脈で、リマインダーや確認の意味合いで使用されることが多いです。
日常会話で非常に頻繁に使用されます。過去の出来事を思い出したり、人に何かを思い出させたりする際に、「Do you remember that time we went to the beach?(あの時、海に行ったのを覚えてる?)」や、「Remember to buy milk on your way home.(帰りに牛乳を買うのを忘れないでね)」のように使われます。親しい間柄での会話や、家族間の連絡などでよく用いられます。
関連語
類義語
意識的に過去の出来事や情報を思い出すこと。フォーマルな場面や、詳細な記憶を想起する場合に使われることが多い。学術的な文脈や、証言などでも用いられる。 【ニュアンスの違い】"remember"よりも意図的な想起のニュアンスが強く、努力して思い出すイメージ。また、感情的なニュアンスは薄い。 【混同しやすい点】"recall"は他動詞であり、目的語が必要。また、製品のリコール(回収)の意味もあるため、文脈によっては誤解を招く可能性がある。
"recall"とほぼ同義だが、より丁寧でフォーマルな印象を与える。文学作品や、改まった会話で用いられることが多い。 【ニュアンスの違い】"remember"よりも過去の出来事を熟考し、吟味しながら思い出すニュアンス。感情的な側面よりも、事実の正確さを重視する。 【混同しやすい点】やや古風な言い回しであり、日常会話ではあまり使われない。"remember"や"recall"の方が一般的。
誰かまたは何かが、何かを思い出させること。他動詞として使われ、間接目的語と直接目的語を取る。 【ニュアンスの違い】"remember"が自分で思い出すのに対し、"remind"は外部からの刺激によって思い出す。受動態で使われることも多い。(例:I was reminded of…) 【混同しやすい点】"remind"は「〜を思い出させる」という意味であり、自分が思い出すという意味ではない。"Remember to…"(〜することを覚えておく)と"Remind me to…"(〜することを私に思い出させて)の違いに注意。
情報を保持し続けること。記憶だけでなく、物理的な保持も意味する。ビジネスや法律、学術的な文脈でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"remember"が能動的な想起であるのに対し、"retain"は受動的な保持。長期的な記憶や、記録された情報の保持を指すことが多い。 【混同しやすい点】"retain"は「保持する」という意味合いが強く、「覚えている」という意味合いは"remember"ほど強くない。文脈によっては不自然になる場合がある。
意図的に何かを記憶すること。暗記することを指す。試験勉強やスピーチの練習など、特定の情報を正確に記憶する必要がある場合に使われる。 【ニュアンスの違い】"remember"が一般的な記憶を指すのに対し、"memorize"は意識的な努力を伴う暗記を意味する。感情的なニュアンスは薄い。 【混同しやすい点】"memorize"は、単に「覚えている」状態ではなく、「暗記している」状態を指す。日常会話で「覚えてるよ」の意味で"memorize"を使うと不自然。
- bethink
古風な表現で、自分自身に思い出させる、または気づくこと。文学作品や歴史的な文脈で見られる。 【ニュアンスの違い】"remember"よりも内省的なニュアンスが強く、熟考して何かを思い出すイメージ。現代英語ではほとんど使われない。 【混同しやすい点】非常に古い言い方であり、現代の日常会話やビジネスシーンで使用すると不自然。誤用を避けるため、使用は控えるべき。
派生語
『記憶』『思い出』を意味する名詞。『remember』する行為や、記憶されている内容そのものを指す。日常会話から、詩や文学作品など、幅広い文脈で使用される。特にフォーマルな場面や、故人を偲ぶ追悼式などで用いられることが多い。
『思い出させるもの』『注意を促すもの』を意味する名詞。タスク管理アプリのリマインダー機能のように、何かを忘れないようにするための手段を指すことが多い。ビジネスシーンでも、メールの件名や会議のアジェンダなどで頻繁に使われる。
『記憶に残る』『忘れられない』という意味の形容詞。『memory(記憶)』に『-able(〜できる)』が付いた形。良い意味でも悪い意味でも、強烈な印象を与える出来事や経験を表現する際に用いられる。旅行記や回顧録などでよく見られる。
反意語
『忘れる』という直接的な反意語。日常会話で最も頻繁に使われる基本的な動詞。remember が意図的に記憶しようとするニュアンスを含むのに対し、forget は単に記憶から抜け落ちることを意味する。例: "I forgot my keys."(鍵を忘れた)
- disremember
『覚えていない』『思い出せない』という意味の動詞。『dis-(否定)』の接頭辞が付いているが、forget よりも使用頻度は低い。やや古風な印象を与える場合もある。特に、意図的に忘却しようとするニュアンスは含まれない。主にアメリカ南部の方言で使用される傾向がある。
- oblivion
『忘却』『忘れ去られた状態』を意味する名詞。個人の記憶からだけでなく、歴史や社会全体から完全に忘れ去られることを指す、より抽象的な概念。学術的な文脈や文学作品で用いられることが多い。例: "His name has faded into oblivion."(彼の名前は忘却の彼方に消え去った)
語源
"Remember」は、中英語の"remembren"に由来し、さらに古フランス語の"remembrer"(再び心に留める)から来ています。これは、ラテン語の"rememorari"(再び思い出す、記憶を呼び起こす)に遡ります。"re-"は「再び」を意味する接頭辞で、"memorari"は「心に留める、記憶する」という意味です。"memorari"自体は、"memor"(記憶している、心の奥底に刻まれた)という形容詞から派生しています。つまり、"remember"は、文字通りには「再び心に留める」ことを意味し、過去の経験や情報を再び意識の中に呼び起こす行為を示しています。日本語で例えるなら、「記憶の引き出しを再び開ける」ようなイメージです。"remember"は単に「覚えている」だけでなく、「忘れずに〜する」や「記念する」という意味も持ちますが、これらは全て「心に留める」という核となる概念から派生しています。
暗記法
Rememberは単なる想起を超え、西洋文化では愛や喪失、繋がりを象徴します。文学では過ぎ去った日々への郷愁、戦没者追悼の詩に刻まれ、過去の犠牲への責任と未来への誓いとして響きます。家族の記憶はアイデンティティを育み、年中行事で絆を再確認。しかし記憶は時に歪められ、美化もされる。ホロコースト等の歴史をRememberすることは、過ちを繰り返さぬ教訓。Rememberは感情、責任、倫理観を繋ぐ、文化理解の鍵なのです。
混同しやすい単語
『remember』と『remind』は、どちらも記憶に関わる動詞ですが、意味が異なります。『remember』は「思い出す」という能動的な意味合いが強いのに対し、『remind』は「思い出させる」という使役的な意味合いを持ちます。発音も似ていますが、アクセントの位置が異なるため注意が必要です。スペルも似ており、rem-という接頭辞が共通しているため、混同しやすいです。日本人学習者は、remind は「誰か」または「何か」が主語になることが多い点を意識すると良いでしょう。
接頭辞 dis- が付くことで意味が大きく変わります。『dismember』は「手足などを切断する」という意味になり、『remember』とは全く異なる意味を持ちます。スペルは似ていますが、dis- の有無で意味が大きく変わることを意識しましょう。音声的にも、ストレスの位置が異なるため、注意が必要です。
『resemble』は「似ている」という意味の動詞で、スペルの一部が似ているため、視覚的に混同しやすいです。発音も最初の音が似ていますが、意味は全く異なります。Remember は記憶に関する動詞ですが、resemble は外見や特徴が似ていることを表します。語源的には、re- (再び) + semble (似る) という構成であり、remember とは異なる成り立ちです。
『remember』と『number』は、スペルの一部(-mber)が共通しているため、視覚的に混同されることがあります。発音も、最初の音を除けば似ています。意味は全く異なり、『number』は「数」や「番号」を意味する名詞または「番号を付ける」という意味の動詞です。文脈が全く異なるため、混同しないように注意が必要です。
『ember』は「残り火」という意味で、スペルの一部(-ember)が共通しているため、視覚的に混同されることがあります。発音も、最初の音を除けば似ています。意味は全く異なり、『ember』は火が消えかけた状態を表します。比喩的に「過ぎ去った感情の名残」のような意味で使われることもあります。語源的には古英語の『æmyrge』に由来し、remember とは異なる語源を持ちます。
『remover』は「除去するもの、取り除く人」という意味の名詞で、スペルの一部(remov-)が共通しているため、視覚的に混同されることがあります。発音も最初の音が似ていますが、意味は全く異なります。Remember は記憶に関する動詞ですが、remover は物理的に何かを取り除くものを指します。例えば、nail polish remover(除光液)のように使われます。
誤用例
日本語の『覚えている』は、知識として知っている場合と、記憶している場合の両方に使われます。英語では、電話番号のように知識として知っている場合は『know』を使い、『remember』は過去の経験や出来事を思い出すニュアンスが強くなります。日本人がつい『覚えている』をそのまま『remember』と訳してしまうのは、母語干渉による典型的な誤りです。英語では、知識と記憶を区別する意識がより強く、使い分けが必要です。
『remember to do』と『remember doing』は意味が異なります。『remember to do』は『〜することを覚えている』、つまり『〜することを忘れない』という意味で、未来の行動について使います。この例文では『ドアに鍵をかけることを忘れないようにする』という意味になってしまい、文脈に合いません。『remember doing』は『〜したことを覚えている』という意味で、過去の行動について使います。ドアに鍵をかけたことを思い出す、つまり『鍵をかけたかどうか覚えている』という意味にするには『remembered doing』が適切です。日本人は『〜することを覚えている』という表現を未来の行動だけでなく、過去の行動の確認にも使いがちですが、英語では明確に区別されます。
『remember』は基本的に他動詞として使い、直接目的語を取りますが、『人に恩を覚えている』という日本語を直訳して『remember 人 favor』のような形にすることはできません。この場合、『I owe you a favor.(あなたに恩がある)』という表現が適切です。日本語の『覚えている』は抽象的な感情や義務感に対しても使えますが、英語の『remember』はより具体的な記憶や想起に関連する意味合いが強いため、注意が必要です。背景には、日本的な『恩』の概念を英語で表現する難しさがあります。英語圏では、恩義はより直接的な債務として認識される傾向があります。
文化的背景
「remember」は、単なる過去の想起を超え、愛、喪失、そしてアイデンティティを繋ぎ止める文化的紐帯として、西洋社会において特別な意味を持ちます。記憶は個人的な宝物であると同時に、社会全体の共有財産であり、「remember」という言葉はその両側面を象徴的に内包しています。
文学の世界では、「remember」はしばしば過ぎ去った愛しい日々への郷愁、あるいは失われた大切な人々への追憶の念を表現するために用いられます。例えば、第一次世界大戦の戦没者を追悼する際に朗読される詩、「In Flanders Fields(フランダースの野に)」の一節、「If ye break faith with us who die, We shall not sleep, though poppies grow In Flanders fields.(もし汝ら、死せる我らとの誓いを破らば、たとえフランダースの野にポピー咲き誇るとも、我らは眠ることを得ざらん)」は、「死せる者たちをrememberせよ」という強いメッセージを伝えています。ここでは、「remember」は単なる記憶の保持ではなく、過去の犠牲に対する責任、そして未来への誓いとして機能しています。
また、「remember」は、個人のアイデンティティ形成と深く結びついています。私たちは、過去の経験、思い出、そして他者との関係を通じて自己を認識し、自己物語を紡ぎ出します。特に、家族やコミュニティにおける共有された記憶は、世代を超えて受け継がれる価値観や伝統を支え、個人の帰属意識を育みます。クリスマスや感謝祭などの年中行事は、家族や親族が集まり、過去の出来事を語り合う機会を提供し、「remember」を通じて家族の絆を再確認する場となります。しかし、記憶は常に客観的な真実を反映するとは限りません。過去の出来事は、個人の解釈や感情によって歪められ、美化されたり、あるいは抑圧されたりすることもあります。したがって、「remember」は、単なる事実の想起ではなく、過去との対話、そして自己認識のプロセスでもあると言えるでしょう。
現代社会においては、「remember」は政治的な文脈においても重要な意味を持ちます。歴史的な出来事、特に悲劇的な出来事を「remember」することは、過ちを繰り返さないための教訓となり、社会の倫理観や価値観を形成する上で不可欠です。ホロコーストや奴隷制度などの負の遺産を「remember」することは、人権意識を高め、差別や偏見と闘うための原動力となります。ただし、「remember」は常に善意に基づくとは限りません。政治的な目的のために過去の出来事が歪曲されたり、利用されたりすることもあります。したがって、「remember」は、常に批判的な視点を持って吟味する必要があるのです。このように、「remember」は、個人的な感情から社会的な責任まで、多岐にわたる意味を内包し、私たちの文化や社会を深く理解するための鍵となる言葉と言えるでしょう。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、語彙問題。稀にリスニング。
- 頻度と級・パート: 2級以上で頻出。特に準1級、1級の長文読解や語彙問題で重要。
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場。フォーマルな文章から、日常会話に近いものまで。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「remember + to do」と「remember + doing」の違いを理解すること。類似語の「remind」との区別も重要。
- 出題形式: Part 5, 6, 7 (読解) で頻出。稀にPart 2 (応答問題) で登場。
- 頻度と級・パート: TOEIC L&R全体で頻出。特に長文読解で重要。
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンが中心。会議の議事録、メール、報告書など。
- 学習者への注意点・アドバイス: ビジネスシーン特有の言い回しを覚えること。文脈から意味を推測する練習も重要。
- 出題形式: 主にリーディングセクション。ライティングセクションでも使用する可能性がある。
- 頻度と級・パート: TOEFL iBTで頻出。アカデミックな文章でよく使われる。
- 文脈・例題の特徴: 学術的な内容(歴史、科学、社会科学など)。
- 学習者への注意点・アドバイス: アカデミックな文脈での使われ方を理解すること。類義語とのニュアンスの違いも把握しておくこと。
- 出題形式: 長文読解、語彙問題、英作文。
- 頻度と級・パート: 難関大学ほど頻出。標準的なレベルの大学でも重要な語彙。
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピック(社会問題、科学技術、文化など)。論説文、物語文など。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈の中で意味を理解する練習が重要。派生語(remembering, rememberedなど)も覚えておくこと。