incentive
第2音節にアクセント(強勢)があります。母音 /ɪ/ は日本語の『イ』よりも口を少し開き、短く発音します。/tɪv/ の部分は、日本語の『ティ』よりも舌を上前歯の裏につけてから発音し、最後の /v/ は上の前歯を下唇に軽く当てて、息を摩擦させるように発音しましょう。日本語の『ブ』とは異なり、有声摩擦音である点に注意。
やる気のもと
行動や努力を促すような刺激、報酬、または利益。経済的なインセンティブ(ボーナス、昇給など)や、個人的な達成感、社会的な評価などが含まれる。何かを達成するために「駆り立てるもの」というニュアンス。
Playing games is a big incentive for him to finish his homework quickly.
ゲームをすることが、彼が宿題を早く終わらせるための大きな「やる気のもと」です。
※ この例文では、子供が宿題を頑張る「ご褒美」として「ゲーム」が使われています。子供が「早くゲームしたい!」という気持ちで、宿題に集中する様子が目に浮かびますね。このように、何かを達成するための「具体的な報酬」や「楽しみ」が『incentive』になる典型的な場面です。for him to finish... の形で「誰が〜するための」と説明しています。
The company offered a bonus as an incentive for employees to work harder.
会社は、従業員がもっと一生懸命働くための「やる気のもと」として、ボーナスを提示しました。
※ これはビジネスシーンで非常によく使われる例です。会社が従業員のモチベーションを高め、目標達成を促すために「ボーナス」という具体的な『incentive』を提供している状況です。社員たちが「ボーナス目指して頑張ろう!」と意気込んでいる様子が伝わります。as an incentive for... の形で「〜のためのインセンティブとして」と使われます。
Feeling healthy is a great incentive for me to exercise every day.
健康だと感じることが、毎日運動するための私にとっての素晴らしい「やる気のもと」です。
※ この例文は、外からの報酬ではなく、内面からくる「良い状態」が『incentive』になっている例です。運動を続けて体が軽くなったり、気分が良くなったりする感覚が、さらに運動を続ける原動力になっている様子が描かれています。これは、自分自身の行動を習慣化する上で大切な『incentive』を見つける良い例と言えます。
意欲的な
(法律や制度などが)人々の意欲を高めるように設計されている、という意味合い。例えば、「インセンティブ制度」は、従業員のモチベーションを高めるための制度を指す。
The company offered an incentive bonus to boost sales.
会社は売上を伸ばすために、意欲的なボーナスを提供しました。
※ これは、会社が社員のやる気を引き出すために、魅力的なボーナスを提示している場面です。「incentive bonus」で、「意欲をかき立てるようなボーナス」という意味になります。この「incentive」は、何かを「意欲的にさせる、やる気を引き出す」性質を持つことを表す形容詞として使われています。
Her teacher designed an incentive learning game for the kids.
先生は子供たちのために、意欲的な学習ゲームを考案しました。
※ 先生が子供たちが楽しく学べるように、工夫されたゲームを考案した場面です。「incentive learning game」で、「意欲的に学習させるようなゲーム」という意味になります。この単語は、人ではなく、物事の「やる気を引き出す性質」を説明する時に使われることが多いです。
They proposed an incentive plan to encourage more community volunteers.
彼らは、より多くの地域ボランティアを奨励するために意欲的な計画を提案しました。
※ 地域の集会で、ボランティア活動への参加を促すために、人々が「これなら参加してみようかな」と思えるような魅力的な計画が提案されている場面です。「incentive plan」で、「意欲をかき立てるような計画」という意味になります。このように「incentive」は、名詞を修飾して「〜を奨励する、やる気を出すための」というニュアンスで使われます。
コロケーション
金銭的インセンティブ、報酬金
※ 最も直接的なコロケーションの一つで、文字通り「お金」という動機付け要因を指します。給与、ボーナス、歩合制、報奨金などが該当します。ビジネスシーンで従業員のパフォーマンス向上や特定の行動を促すために頻繁に使用されます。例えば、『sales representatives are offered financial incentives to exceed their quotas』(営業担当者には、ノルマ超過に対する金銭的インセンティブが与えられます)。『financial reward』も類似表現ですが、『incentive』はより戦略的な意味合いが強く、特定の目標達成を促すニュアンスがあります。
税制上の優遇措置、税制上のインセンティブ
※ 政府や地方自治体が特定の産業や活動を奨励するために提供する税制上の優遇措置です。企業の投資促進、再生可能エネルギーの普及、地域活性化などを目的として用いられます。例えば、『The government provides tax incentives for companies that invest in research and development』(政府は研究開発に投資する企業に税制上のインセンティブを提供します)。『tax break』も同様の意味で使われますが、『incentive』はより積極的な奨励策というニュアンスを含みます。
インセンティブを提供する、動機付けを与える
※ 「provide」という動詞と組み合わせることで、「インセンティブを提供する」という行為を表現します。企業が従業員に対して、政府が企業や個人に対してインセンティブを提供するなど、幅広い場面で使用されます。例えば、『The company provides incentives for employees to improve their skills』(会社は従業員のスキル向上を促すインセンティブを提供しています)。類似表現として『offer an incentive』がありますが、『provide』はより公式な、制度的なニュアンスを持つことが多いです。
インセンティブを作り出す、創出する
※ 新しいインセンティブ制度や仕組みを導入する際に用いられる表現です。既存の制度を改善するだけでなく、全く新しい動機付けの仕組みを構築するニュアンスが含まれます。例えば、『The new policy creates an incentive for sustainable practices』(新しい政策は持続可能な慣行を促すインセンティブを生み出します)。『develop an incentive』も同様の意味で使えますが、『create』はより革新的な、ゼロから作り出すイメージが強いです。
インセンティブがない、動機付けを欠く
※ 特定の行動や努力をする理由や動機がない状態を表します。従業員が仕事に意欲を感じない、企業が投資に消極的であるなど、ネガティブな状況を表す際に使用されます。例えば、『Employees lack the incentive to work harder without proper recognition』(適切な評価がなければ、従業員はより努力するインセンティブを欠いています)。『have no incentive』も同様の意味ですが、『lack』はより根本的な欠如を示唆するニュアンスがあります。
インセンティブ制度
※ 企業や組織が、従業員の業績向上や特定の行動を促すために設計した体系的な制度を指します。給与、ボーナス、昇進、表彰など、様々な要素が含まれます。例えば、『The company introduced a new incentive scheme to boost sales』(会社は売上を伸ばすために新しいインセンティブ制度を導入しました)。『incentive program』も同様の意味で使われますが、『scheme』はより計画的で組織的なニュアンスを持ちます。
強力なインセンティブ
※ 行動を強く促す、非常に効果的な動機付け要因を指します。高額な報酬、昇進の機会、社会的評価など、人々の行動を大きく変える可能性のあるインセンティブを強調する際に使用されます。例えば、『The prospect of a large bonus is a powerful incentive for employees』(高額なボーナスの見込みは、従業員にとって強力なインセンティブとなります)。『strong incentive』も同様の意味ですが、『powerful』はより影響力が大きいことを強調するニュアンスがあります。
使用シーン
学術論文や研究発表で、動機付け要因や誘因について議論する際に用いられます。例えば、教育心理学の研究で「学習意欲を高めるためのincentive(動機付け)として、どのような方法が有効か」といった文脈で使用されます。
ビジネスシーンでは、従業員のパフォーマンス向上や目標達成のための動機付け策として頻繁に用いられます。例えば、営業成績優秀者への報酬制度を説明する際に「売上目標達成へのincentive(インセンティブ)として、特別ボーナスを支給する」といった形で使われます。会議、プレゼンテーション、人事評価など、幅広い場面で登場します。
日常会話では、何かを促すための誘因やきっかけについて話す際に使われることがあります。例えば、「早起きするincentive(動機)として、美味しい朝食を用意する」といったように、自分自身や他者の行動を促す理由を説明する際に用いられます。ニュースや記事でもたまに見かけることがあります。
関連語
類義語
動機、刺激、意欲という意味。人の内面から湧き出る欲求や願望を指すことが多い。心理学、教育、自己啓発などの分野でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"Incentive"は外部からの刺激によって生まれる動機を指すことが多いのに対し、"motivation"は内発的な動機を指すことが多い。 "Incentive"は具体的な報酬や目標と結びつきやすいが、"motivation"はより抽象的な目標や価値観と結びつきやすい。 【混同しやすい点】"Motivation"は不可算名詞として使われることが多いが、"incentive"は可算名詞として使われることが多い。また、"motivation"は人の内面に焦点を当てるのに対し、"incentive"は外部環境に焦点を当てることが多い。
誘因、動機付け、勧誘という意味。人を特定の行動へと誘うもの、あるいはその行為自体を指す。法律、経済、ビジネスなどの分野で使われる。 【ニュアンスの違い】"Incentive"と同様に外部からの刺激を意味するが、"inducement"はより公式な、あるいは意図的なニュアンスが強い。また、"incentive"よりも、相手に何かをさせるための「おとり」のような、ややネガティブな響きを持つ場合もある。 【混同しやすい点】"Inducement"は、しばしば不正な行為や不道徳な行為を誘うものとして使われることがある。 "Incentive"は一般的にポジティブな目的で使用されるため、この点が大きな違い。
報酬、褒美、報いという意味。良い行いや努力に対する見返りとして与えられるものを指す。ビジネス、教育、日常会話など、幅広い場面で使われる。 【ニュアンスの違い】"Incentive"は将来の行動を促すために事前に提示されることが多いが、"reward"は過去の行動に対する事後の評価として与えられることが多い。 "Reward"は必ずしも金銭的なものである必要はない。 【混同しやすい点】"Reward"は、具体的な行動の結果として与えられるものなので、行動と報酬の間に直接的な因果関係がある。「参加賞」のように、努力や成果に関わらず与えられるものは"reward"とは言えない。
刺激、誘因、景気刺激策という意味。生物学、心理学、経済学など、幅広い分野で使われる。何らかの反応や活動を引き起こすものを指す。 【ニュアンスの違い】"Incentive"は特定の行動を促すための意図的な刺激であるのに対し、"stimulus"はより一般的な刺激を指す。 "Stimulus"は必ずしも人を対象とするものではなく、経済や市場など、様々なものに対して使われる。 【混同しやすい点】"Stimulus"は、必ずしもポジティブなものではない。例えば、痛みや不快感も"stimulus"になりうる。 "Incentive"は基本的にポジティブな行動を促すために用いられる。
刺激、拍車、励みという意味。人を奮い立たせたり、行動を加速させたりするものを指す。ビジネス、スポーツ、政治など、競争的な状況でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"Incentive"は比較的穏やかな動機付けであるのに対し、"spur"はより強い、緊急性の高い動機付けを意味する。 "Spur"は、しばしば競争心や危機感を煽るような形で用いられる。 【混同しやすい点】"Spur"は名詞としても動詞としても使われる。動詞として使う場合は、「〜を駆り立てる」という意味になる。また、"spur"はしばしば「拍車をかける」という比喩表現で使われる。
ニンジン。比喩的に、人を動機付けるための報酬や誘因を指す。特に、「アメとムチ」という表現で、ムチ(罰)と対比されることが多い。 【ニュアンスの違い】"Incentive"のカジュアルな表現。直接的な金銭的報酬だけでなく、昇進、表彰、自由時間など、様々なものが含まれる。 "Carrot"は、しばしば相手を操るようなニュアンスを含むことがある。 【混同しやすい点】"Carrot"は、単独で使われるよりも、「carrot and stick」(アメとムチ)というイディオムで使われることが多い。また、フォーマルな場面では"incentive"を使う方が適切。
派生語
- incentivize
『〜に動機を与える』という意味の動詞。名詞の『incentive』に動詞化の接尾辞『-ize』が付加され、具体的な働きかけを表す。ビジネスや政策の文脈で、行動を促すために使われることが多い。
- incentivization
『動機付け』という意味の名詞。『incentivize』に名詞化の接尾辞『-ation』が付いた形。制度設計や人事戦略など、抽象的な概念を議論する際に、学術論文やビジネス文書で用いられる。
『(人を)扇動する』『(感情を)かき立てる』という意味の動詞。『in-(中に)』+『cite(刺激する)』という語源から、『内側から刺激して行動を促す』というニュアンスを持つ。しばしばネガティブな文脈で使用される。
語源
"Incentive」は、ラテン語の「incantare(歌いかける、魔法をかける)」に由来します。さらに遡ると、「canere(歌う)」という語根があり、これはもともと呪文や魔法の言葉を唱えることを意味していました。中世ラテン語では、「incentivum」という言葉が「刺激するもの」「動機づけするもの」という意味で使用されるようになり、これが英語の「incentive」へと発展しました。つまり、もともとは「魔法の言葉で人を動かす」というイメージから、「人の意欲を刺激し、行動を促すもの」という意味に変化してきたのです。現代では、ボーナスや昇進など、目標達成のための動機づけとなるものを指すことが多いですが、その根底には「心を捉え、行動を駆り立てる力」という古い意味合いが残っています。例えば、子供の頃に親から褒められることが「incentive」となり、勉強を頑張る原動力になった経験は、まさに魔法の言葉がけに近い効果と言えるでしょう。
暗記法
インセンティブは、社会の価値観を映す鏡。中世ギルドの職人昇進は技術向上だけでなく誇りも刺激し、ルネサンスのパトロンは芸術家の創造性を開花させた。現代では、企業のボーナス制度から政治家の政策決定まで影響。環境問題への取り組みも、支持率というインセンティブに左右される。金銭だけでなく、賞賛や自己実現も強力な動機に。人間の内なる欲求と社会構造が絡み合い、行動を導く奥深さを知る。
混同しやすい単語
『incentive』と語尾が非常に似ており、発音も似通っているため混同しやすい。特に、語尾の 'tive' の部分が曖昧になりやすい。意味は『主導権』、『率先』、『自発性』など、行動の開始や積極性を指す名詞であり、『刺激』や『動機』を意味する『incentive』とは意味が異なる。日本人学習者は、文脈からどちらの単語が適切かを判断する必要がある。語源的には、'initiative'は『始める』という意味のラテン語 'initium' に由来し、'incentive'は『歌を歌わせる』という意味のラテン語 'incentivus' に由来する。
『incentive』とスペルが一部似ており、特に 'ins-' の部分が共通しているため、視覚的に混同しやすい。発音も似ている部分がある。意味は『感覚がない』、『意識がない』、『無神経な』など、感情や感覚の欠如を表す形容詞であり、『刺激』や『動機』を意味する『incentive』とは全く異なる。日本人学習者は、接頭辞 'in-' が否定の意味を持つことを覚えておくと区別しやすい。また、'sensible'(賢明な、分別のある)という単語も合わせて覚えておくと、より理解が深まる。
『incentive』と語尾の '-tion' が共通しており、名詞形である点が共通しているため、混同しやすい。発音も似ている部分がある。意味は『発明』であり、新しいものを創造することを指し、『刺激』や『動機』を意味する『incentive』とは異なる。日本人学習者は、文脈からどちらの単語が適切かを判断する必要がある。語源的には、'invention'は『見つける』という意味のラテン語 'invenire' に由来し、'incentive'とは異なる。
『incentive』と語尾が '-tive' で共通しており、スペルも似ているため、混同しやすい。発音も似ている部分がある。意味は『集中的な』、『徹底的な』という意味の形容詞であり、『刺激』や『動機』を意味する『incentive』とは異なる。日本人学習者は、'intensive care'(集中治療)などのフレーズでよく使われる単語であることを覚えておくと区別しやすい。また、'intense'(強烈な、激しい)という単語も合わせて覚えておくと、より理解が深まる。
『incentive』と語頭の 'in-' が共通しており、スペルも一部似ているため、視覚的に混同しやすい。発音も若干似ている部分がある。意味は『本能』であり、生まれつき備わっている行動パターンを指し、『刺激』や『動機』を意味する『incentive』とは異なる。日本人学習者は、'instinct'が名詞であることを覚えておくと区別しやすい。語源的には、'instinct'は『駆り立てる』という意味のラテン語 'instinguere' に由来し、'incentive'とは異なる。
『incentive』と意味が近く、どちらも「誘因」「動機」といった意味を持つため、意味の面で混同しやすい。ただし、『inducement』はより「誘う」「説得する」といったニュアンスが強く、人を何か特定の行動へと導くような場合に用いられることが多い。発音やスペルは大きく異なるため、文脈と意味の微妙な違いを理解することが重要。
誤用例
日本語の『インセンティブ』は、文脈によっては『ノルマ』や『強制』といったニュアンスを含むことがあります。しかし、英語の『incentive』は本来、自発的な行動を促すための『動機付け』や『刺激』を意味し、ポジティブな意味合いが強い単語です。この誤用は、日本語の曖昧な使用法に引きずられた結果、英語の『incentive』が持つ自発性や報酬というニュアンスが薄れてしまっていることが原因です。より適切な表現としては、『bonus(ボーナス)』や『reward(報酬)』を用いることで、ポジティブな意味合いを明確に伝えることができます。また、この文脈では『offer』を使うことで、会社側からの提案というニュアンスを出すことができます。
『incentive』は、経済的な動機付けを指すことが多いですが、少子化対策のように、価値観やライフスタイルに関わる問題に対して使うと、やや直接的で押し付けがましい印象を与える可能性があります。これは、英語圏の文化では、個人の選択や価値観を尊重する傾向が強いためです。より婉曲的な表現として、『tax breaks(税制優遇)』や『subsidies(補助金)』を使用し、『encourage(奨励する)』という動詞を用いることで、政府の意図をよりソフトに伝えることができます。また、日本語の『〜してもらう』という依頼形のニュアンスを英語に直訳しようとすると、不自然な表現になることがあります。ここでは、『to encourage people to have more children』のように、目的を表すto不定詞を用いることで、より自然な英語表現になります。
『incentive』は、行動を促す外部からの刺激や動機付けを指すことが多いですが、個人的な理由や目標に対して使うと、やや大げさで不自然な印象を与えることがあります。これは、英語の『incentive』が、ビジネスや政策など、より公式な場面で使われることが多い単語であるためです。より自然な表現としては、『reason(理由)』を用いることで、個人的な目標や目的をより適切に伝えることができます。また、この誤用は、日本語の『〜が必要だ』という表現を英語に直訳しようとした結果、不自然な表現になってしまったことが原因と考えられます。英語では、状況に応じて、より具体的な表現を選ぶことが重要です。例えば、『I need a good reason』のように、形容詞を加えて具体的な理由を示すことで、より自然な英語表現になります。
文化的背景
「インセンティブ(incentive)」は、単なる「刺激」や「動機」を超え、しばしば社会全体の価値観や目標を反映する鏡として機能します。それは、個人の行動を特定の方向に導くだけでなく、社会が何を重視し、どのような未来を目指しているのかを映し出すのです。
歴史を振り返ると、インセンティブは常に社会構造と密接に結びついてきました。中世ヨーロッパのギルド制度では、熟練した職人への昇進というインセンティブが、技術の向上と品質の維持に貢献しました。これは、単に賃金が上がるという経済的な動機だけでなく、職人としての誇りや社会的な地位の向上といった要素を含んでいました。また、ルネサンス期には、芸術家へのパトロンによる支援が、創造性を刺激し、数々の傑作を生み出すインセンティブとなりました。これらの例は、インセンティブが単なる報酬ではなく、個人の才能を開花させ、社会全体の文化的な発展に貢献する力を持っていることを示しています。
現代社会においては、インセンティブはより複雑な様相を呈しています。企業におけるボーナス制度や成果主義は、従業員のパフォーマンス向上を促す一方で、過度な競争や短期的な利益追求といった問題を引き起こす可能性も指摘されています。また、政治の世界では、選挙での勝利というインセンティブが、政治家の政策決定に影響を与えることがあります。例えば、環境問題に対する取り組みが、支持率の向上につながるというインセンティブがあれば、政治家はより積極的に環境保護政策を推進するでしょう。しかし、逆に、経済成長を優先する有権者の支持を得るために、環境規制を緩和するというインセンティブが働くこともありえます。このように、インセンティブは社会の価値観や政治的な状況によって、その効果や方向性が大きく左右されるのです。
さらに、インセンティブは人間の感情や価値観とも深く結びついています。金銭的な報酬だけでなく、賞賛や感謝の言葉、自己実現の機会なども、強力なインセンティブとなりえます。例えば、ボランティア活動に参加する人々は、金銭的な報酬を期待するのではなく、社会貢献や自己成長といった内発的な動機によって行動しています。また、芸術家や研究者は、名声や評価といった社会的な認知を求めて、創造的な活動や研究に取り組むことがあります。これらの例は、インセンティブが単なる外部からの刺激ではなく、人間の内面的な欲求や価値観と深く結びついていることを示しています。インセンティブを理解することは、単に経済的な動機を理解するだけでなく、人間の行動や社会のあり方を深く理解することにつながるのです。
試験傾向
準1級、1級の語彙問題で出題される可能性が高いです。長文読解でも、内容理解を深める上で重要な単語として登場することがあります。特に、ビジネスや社会問題に関するテーマで出やすい傾向があります。類義語との使い分けや、具体的な文脈における意味の把握が重要です。
Part 5(短文穴埋め問題)、Part 7(長文読解問題)で頻出です。特に、ビジネスシーンにおける従業員のモチベーション向上策、販売促進キャンペーン、顧客ロイヤリティプログラムなどに関連する文脈でよく見られます。incentiveの後に続く前置詞(for, toなど)や、incentiveと相性の良い動詞(provide, offerなど)に注意して学習しましょう。
リーディングセクションで、アカデミックな文章中によく登場します。経済学、心理学、社会学などの分野で、行動を促す要因としての「インセンティブ」が議論される際に用いられます。文脈から正確な意味を推測する能力が求められます。また、同意語・反意語を把握しておくことも有効です。
難関大学の長文読解問題で出題される可能性があります。経済、社会、心理学など、幅広いテーマで使われるため、文脈に応じた意味の理解が必要です。同義語(motivation, stimulusなど)や反意語(disincentive)も覚えておくと、読解の助けになります。また、incentiveに関連する動詞(incentivize)も合わせて学習しておきましょう。