impulse
第一音節にアクセントがあります。母音 /ɪ/ は日本語の「イ」よりも口を少し開き、短く発音します。「p」は唇を閉じてから勢いよく開く破裂音で、日本語の「プ」よりも息を強く出します。語尾の /ʌls/ は、/ʌ/ が曖昧母音であり、日本語の「ア」と「オ」の中間のような音です。/l/は舌先を上の歯茎につけて発音し、その後に/s/の音を続けます。
衝動
内側から湧き上がる、抑えきれない感情や欲求。深く考えずに何かをしてしまうような、突発的な心の動きを表す。買い物、発言、行動など、様々な場面で使われる。
She bought the cute bag on an impulse even though she didn't need it.
彼女は必要ないのに、衝動的にその可愛いバッグを買ってしまいました。
※ デパートやお店で「あ、可愛い!」と衝動的に物を買ってしまう、よくある場面です。`on an impulse` は「衝動的に、思わず」という意味で、この単語が最も典型的に使われる表現の一つです。特に「衝動買い」の文脈でよく耳にします。
He felt a sudden impulse to shout, but he controlled himself.
彼は突然叫びたい衝動に駆られましたが、なんとか自分を抑えました。
※ イライラしたり、感情的になったりして、思わず何か言いたくなったり、行動したくなったりする心の動きを描写しています。`feel an impulse to do...` で「~したい衝動を感じる」という形で使われることが多いです。ここでは、その衝動を「抑える(control himself)」という行動が対比されています。
On an impulse, she decided to travel to a new city by herself.
衝動的に、彼女は一人で新しい街へ旅行することに決めました。
※ 特に計画していたわけではないけれど、ふと心に浮かんだ思いつきで行動を決める場面です。`On an impulse, ...` と文頭に置くことで、「衝動的に、その場の思いつきで」という行動のきっかけを鮮やかに表現できます。計画的ではないけれど、ワクワクするような行動によく使われます。
勢い
何かが動き出す、または加速する力。物理的な運動だけでなく、社会的な変化や経済の発展など、抽象的な事柄の推進力としても用いられる。
I bought the cute cat mug on impulse at the store yesterday.
昨日、お店で可愛い猫のマグカップを衝動買いしてしまいました。
※ この例文は「on impulse」という、とてもよく使われるフレーズを含んでいます。これは「衝動的に」という意味で、何かを計画せずに、急に欲しくなって買ったり、行動したりする時に使います。お店で可愛いものを見つけて、つい買ってしまった、という経験は誰にでもありますよね!
His kind words gave me the impulse to try learning English again.
彼の優しい言葉が、もう一度英語学習を頑張ろうという勢い(きっかけ)をくれました。
※ ここでは「impulse」が、何かを始めるための「勢い」や「きっかけ」を意味します。「give someone the impulse to do something」という形で、「~するきっかけを与える」というニュアンスで使われます。誰かの言葉や行動が、あなたの背中を押してくれた経験はありませんか?
It was hard to resist the impulse to laugh during the serious meeting.
真剣な会議中に、笑いたい衝動を抑えるのが大変でした。
※ この例文は、「resist the impulse to do something」という形で使われています。「~したい衝動に抵抗する(抑える)」という意味です。真面目な状況で、つい笑ってしまいそうになったり、何か言いたくなったりする気持ち、よく分かりますよね。自分の感情や行動を抑えるのが難しい状況で使われます。
駆り立てる
強い感情や欲求によって、行動を起こさせること。受動態で「~に駆り立てられる」という形で使われることが多い。例えば、「好奇心に駆り立てられる」など。
His strong curiosity impulsed him to explore the old, dusty attic.
彼の強い好奇心が、彼を古くてほこりっぽい屋根裏部屋を探検するように駆り立てました。
※ この例文では、内側から湧き上がる「強い好奇心」が、主人公を未知の場所へと行動させる様子を描いています。このように、何らかの感情や衝動が人を特定の行動に「駆り立てる」時に 'impulse' が使われます。'impulse A to do B' の形で「AをBするように駆り立てる」と覚えると、使い方が分かりやすいでしょう。
Seeing the lost puppy, a sudden kindness impulsed her to pick it up.
迷子の仔犬を見て、急な優しさが彼女にそれを拾い上げるよう駆り立てました。
※ ここでは、迷子の仔犬を見た瞬間に感じた「急な優しさ」という感情が、彼女に即座に仔犬を助ける行動を促しています。心に強く働きかける感情が、衝動的に行動を起こさせるイメージです。日常で誰かを助けたいと感じる時など、感情が行動の引き金になる場面で使えます。
The dream of becoming a great artist impulsed him to practice every day.
偉大な芸術家になるという夢が、彼を毎日練習するように駆り立てました。
※ この例文では、「偉大な芸術家になる」という大きな夢や目標が、主人公を日々の地道な努力へと「駆り立てる」原動力となっている様子を描いています。目標達成のために努力を続けるための強い動機付けとして、'impulse' が使われる典型的な例です。夢や目標が人を動かす力となるイメージです。
コロケーション
突然の衝動
※ これは非常に基本的なコロケーションですが、"sudden"という形容詞が、impulseの持つ「予期しない、突発的な」性質を強調します。計画性や熟慮の欠如を示唆し、後先考えない行動につながる可能性を含んでいます。口語、ビジネス、学術など、あらゆる場面で使用されますが、行動の理由を説明する際によく用いられます。
衝動的に、思わず
※ 前置詞 "on" または "an" と共に使われることで、「計画や熟考なしに、その瞬間の感情や欲求に突き動かされて」という意味合いを表します。例えば、"I bought it on impulse."(衝動買いしてしまった)のように使います。日常会話で頻繁に使われ、特に後悔や言い訳のニュアンスを伴うことが多いです。
衝動を抑える、衝動に抵抗する
※ "resist" は「抵抗する、我慢する」という意味の動詞で、人間の意志の力や自制心を強調します。例えば、「甘いものを食べたい衝動を抑える」「怒りの衝動を抑える」といった具体的な状況で使用されます。自己制御や倫理観と関連付けられることが多く、道徳的な文脈や心理学的な議論でも見られます。
創造的な衝動、創作意欲
※ "creative" は「創造的な」という意味で、impulseが単なる感情や欲求だけでなく、芸術的な活動や新しいアイデアを生み出す原動力となることを示します。このコロケーションは、アーティストやクリエイターが自身のインスピレーションの源を説明する際に用いられます。文学、音楽、美術などの分野で頻繁に登場し、創造性の本質を探求する文脈で重要です。
寛大な衝動、気前の良い気持ち
※ "generous" は「寛大な、気前の良い」という意味で、impulseが利他的な行動や他人への思いやりにつながることを示します。例えば、「困っている人にお金をあげたいという衝動」のように、無私無欲な行動の動機を表す際に用いられます。社会的な文脈や慈善活動に関連して使われることが多いです。
衝動的に行動する
※ これは、"on (an) impulse"と似ていますが、動詞"act"を伴うことで、感情や欲求が具体的な行動に結びついた結果を強調します。「よく考えずに、その場の勢いで行動する」という意味合いが強く、しばしば後悔や反省を伴います。口語で頻繁に使われ、特に軽率な行動や失敗談を語る際に用いられます。
自分の衝動を抑制する
※ "govern" は「統制する、制御する」という意味であり、"resist"よりも強い意志力や自己管理能力を示唆します。これは、単に衝動に抵抗するだけでなく、衝動そのものをコントロールしようとする意識的な努力を意味します。自己啓発や精神的な鍛錬に関連する文脈で用いられ、よりフォーマルな響きを持ちます。
使用シーン
学術論文や心理学、経済学などの講義で、「衝動的な行動」や「市場の勢い」といった概念を説明する際に用いられます。例:『消費者の購買行動における衝動買いの要因分析』のような研究タイトルや、行動経済学の授業で「ナッジ」の理論を説明する際などに使われます。
ビジネスシーンでは、市場調査レポートや経営戦略会議などで、市場の動向や顧客の購買意欲を分析する際に使われることがあります。例:『新製品発売後の初期衝動的な売れ行き』や『市場の勢いを維持するための戦略』といった文脈で使用されます。日常的な業務メールやプレゼンテーションでは、より平易な表現が好まれる傾向があります。
日常会話ではあまり使われませんが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、社会現象や個人の行動心理を解説する際に使われることがあります。例:『若者の間で衝動的な海外旅行が流行している』や『衝動を抑えられない性格』といった文脈で見聞きすることがあります。普段の生活では「勢い」という意味で使われることは稀です。
関連語
類義語
『強い衝動』という意味で、何かをしたいという内的な圧力や欲求を表す。しばしば、抑えがたい感情や行動に駆り立てられる状況で使用される。日常会話、心理学、文学などで用いられる。 【ニュアンスの違い】『impulse』よりも意識的な欲求や願望に近いニュアンスを持つ。より個人的で内面的な感情を伴うことが多い。また、『urge』は他人に何かを強く勧める意味合いも持つ。 【混同しやすい点】『urge』は名詞としても動詞としても使えるが、『impulse』は主に名詞として使われる。動詞として使いたい場合は『impel』という単語を使う必要がある。『urge』は『~するように促す』という意味でも使われるため、文脈によって意味が異なる点に注意。
- whim
『気まぐれ』という意味で、突然湧き起こる、計画性のない欲求や行動を表す。一時的で予測不可能な行動を指すことが多い。日常会話でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『impulse』よりもさらに突発的で、理由や目的が薄いニュアンスを持つ。真剣さや重要性は低く、軽い気持ちで行動する際に用いられる。計画性のなさが強調される。 【混同しやすい点】『whim』は通常、否定的な意味合いを持たないが、状況によっては軽率さや無責任さを暗示することがある。『impulse』は必ずしも否定的な意味を持たないが、『whim』よりも深刻な結果を招く可能性を示唆することがある。また、『on a whim(気まぐれで)』というフレーズでよく使われる。
『願望』や『欲求』という意味で、何かを強く望む気持ちを表す。目標達成や満足感を得るための動機となることが多い。日常会話からビジネス、学術的な文脈まで幅広く使われる。 【ニュアンスの違い】『impulse』よりも意識的で持続的な欲求を表す。計画や努力を伴うことが多く、感情的な高ぶりよりも合理的な判断に基づくことが多い。長期的な目標に関連することが多い。 【混同しやすい点】『desire』は名詞としても動詞としても使えるが、『impulse』は主に名詞として使われる。『desire』は具体的な対象(例:お金、成功)を持つことが多いが、『impulse』は具体的な対象を持たない場合もある。また、『desire』は倫理的な判断を伴う場合がある(例:不当な利益をdesireする)。
『渇望』や『切望』という意味で、何かを強く、切実に求める気持ちを表す。特に、中毒性のあるものや、満たされない欲求に対して使われることが多い。日常会話、医学、心理学などで用いられる。 【ニュアンスの違い】『impulse』よりも強烈で、コントロールが難しい欲求を表す。生理的な欲求や依存症に関連することが多く、精神的な苦痛を伴うことが多い。しばしば、悪い結果を招く可能性がある。 【混同しやすい点】『craving』は通常、否定的な意味合いを持ち、依存症や中毒症状に関連して使われることが多い。『impulse』は必ずしも否定的な意味を持たないが、『craving』よりも深刻な問題を示唆することがある。また、『craving』は具体的な対象(例:タバコ、アルコール)を持つことが多い。
『熱望』や『強い願望』という意味で、何かを強く望む気持ちを表す。特に、アメリカ英語のスラングとして使われることが多い。日常会話で使われる。 【ニュアンスの違い】『impulse』よりもカジュアルで、口語的な表現。『desire』よりも軽いニュアンスで、深刻さや切実さは低い。一時的な欲求や気まぐれな願望を表すことが多い。 【混同しやすい点】『yen』はアメリカ英語のスラングであり、フォーマルな場面やビジネスシーンでは不適切。また、日本語の『円』と同じスペルであるため、文脈によって意味が異なる点に注意。使用頻度は他の類義語よりも低い。
『傾向』や『好み』という意味で、特定の行動や考え方に向かう自然な性質を表す。性格や習慣に関連することが多い。学術的な文脈やフォーマルな場面で使われる。 【ニュアンスの違い】『impulse』よりも穏やかで、意識的な選択に近いニュアンスを持つ。感情的な高ぶりよりも、理性的な判断や経験に基づくことが多い。長期的な行動パターンに関連することが多い。 【混同しやすい点】『inclination』は必ずしも強い感情を伴わず、単なる好みや傾向を表すことが多い。『impulse』は感情的な高ぶりを伴うことが多い。『inclination』は『〜する傾向がある』という意味で使われることが多く、具体的な行動を指す。
派生語
『衝動的な』という意味の形容詞。『impulse』に性質を表す接尾辞『-ive』が付加され、名詞の持つ『衝動』という性質を強調する。日常会話で人の性格を表す際や、心理学的な文脈で行動特性を説明する際に用いられる。ビジネスシーンでは、計画性のない行動を批判する際に使われることもある。
- impulsivity
『衝動性』という意味の名詞。『impulsive』に名詞化の接尾辞『-ity』が付加された抽象名詞。心理学や精神医学の分野で、行動特性や精神状態を表す専門用語として用いられることが多い。日常会話ではあまり使われないが、学術論文や専門書では頻繁に登場する。
『駆り立てる』という意味の動詞。接頭辞『im-(内へ)』と『pel-(押す)』が組み合わさり、『内側から押す』というイメージから、『衝動的に行動させる』という意味合いを持つ。日常会話よりも、やや硬い文章や文学作品で、感情や欲求が人を強く動かす様子を表現する際に用いられる。ビジネスシーンでは、目標達成への強い動機づけを表す際に使われることもある。
反意語
『抑制』『自制』という意味の名詞。『impulse』が内発的な衝動であるのに対し、『restraint』はそれを抑え込む力や行為を指す。日常会話では感情や行動の抑制、ビジネスシーンではリスク管理や予算抑制、学術的な文脈では行動制御のメカニズムなど、幅広い場面で用いられる。衝動を肯定的に捉えるか、否定的に捉えるかによって、どちらの語が適切かが変わる。
- deliberation
『熟慮』『審議』という意味の名詞。『impulse』が即時的な行動を促すのに対し、『deliberation』は時間をかけて慎重に検討することを意味する。ビジネスシーンでは重要な意思決定のプロセス、政治や法律の分野では政策決定の過程を指すことが多い。日常会話では、何かを決める際にじっくり考える様子を表す際に用いられる。
- premeditation
『計画性』『予謀』という意味の名詞。『impulse』が突発的な行動であるのに対し、『premeditation』は事前に計画された行動を指す。法律用語として、犯罪の計画性を強調する際に用いられることが多い。日常会話ではあまり使われないが、犯罪ドラマやニュースなどで見かけることがある。
語源
"impulse」は、ラテン語の「impellere」(押し出す、突き動かす)に由来します。これは、「in-」(〜の中へ、〜に向かって)と「pellere」(押す、打つ)という二つの要素から構成されています。つまり、元々は「内側から押し出す力」や「何かを始めるための推進力」といった意味合いを持っていました。日本語で例えるなら、「心の奥底から湧き上がる衝動」や「背中を押されるような感覚」に近いでしょう。この「押し出す力」という根本的な意味から、名詞としては「衝動」「勢い」、動詞としては「駆り立てる」といった意味に発展していきました。何かを開始させる、あるいは行動を促すような内的な力をイメージすると、この単語の成り立ちが理解しやすいでしょう。
暗記法
「衝動」は、理性では抑えきれない心の叫び。ロマン主義の時代には、社会への反抗や感情の奔流として文学に描かれました。フロイトは無意識の表れと解釈し、芸術運動にも影響を与えました。現代では衝動買いのように消費を刺激する一方で、創造性の源泉にもなりえます。理性と感情の間で揺れ動く、人間らしさそのものを表す言葉と言えるでしょう。
混同しやすい単語
発音が似ており、特に語尾の 'ply' の部分が共通しているため混同しやすい。意味は『ほのめかす』『暗示する』であり、名詞の『衝動』である 'impulse' と品詞も意味も異なる。'imply' は動詞であり、間接的に何かを伝える行為を指す。'impulse' は、突然の強い感情や行動の原動力となるものを指すため、文脈で判断する必要がある。
スペルが似ており、特に 'imp' の部分が共通しているため、視覚的に混同しやすい。意味は『衝撃』『影響』であり、名詞としても動詞としても使われる。'impulse' が内的な衝動であるのに対し、'impact' は外的な影響や衝撃を意味することが多い。語源的には、'impact' はラテン語の 'impingere' (打ち付ける)に由来し、物理的な衝突をイメージすると区別しやすい。
スペルが似ており、語尾の 'pulse' が共通しているため混同しやすい。意味は『反発する』『拒絶する』であり、動詞として使われる。'impulse' が内側から湧き上がる衝動であるのに対し、'repulse' は外からの力に対して拒否反応を示すことを意味する。接頭辞 're-' (再び、反対に)が『押し返す』イメージを想起させると、意味の区別がつきやすい。
スペルが長く、'pulse' の部分が共通しているため、視覚的に混同しやすい。意味は『強制的な』『義務的な』であり、形容詞として使われる。'impulse' が自発的な衝動であるのに対し、'compulsory' は外部からの強制力を意味する。語源的には、'compulsory' はラテン語の 'compellere' (強制する)に由来し、外部からの圧力というニュアンスを意識すると良い。
'impulse' の一部である 'pulse' は、単独でも『脈拍』や『鼓動』という意味を持つため、意味の関連性から混同しやすい。'impulse' が感情や行動の原動力となる『衝動』を指すのに対し、'pulse' は身体的なリズムや周期的な振動を意味する。医学的な文脈や心臓に関連する話題では 'pulse' が使われることが多い。
スペルの一部('sul')が似ていることと、語感の強さから混同されることがある。意味は『侮辱』であり、名詞としても動詞としても使われる。'impulse' が内的な衝動であるのに対し、'insult' は相手を傷つける言葉や行為を意味する。文脈が全く異なるため、注意が必要。'insult' の語源はラテン語の 'insultare' (飛びかかる)であり、攻撃的なイメージを持つと覚えやすい。
誤用例
「impulse」は「衝動」と訳されますが、日本語の「衝動買い」のような軽いニュアンスとは異なり、より強く、抑えがたい感情や行動を指します。高価な時計を買う程度の欲求には「tempted(心が揺さぶられた)」がより適切です。日本人が「衝動」という言葉を安易に使う傾向から、この誤用が生まれます。英語では、日常的な誘惑や欲求には「temptation」や「urge」を使う方が自然です。
この誤用は「原動力」という意味で「impulse」を使おうとした場合に起こりがちです。「impulse」は、あくまで「瞬間的な、突発的な力」を意味し、持続的な推進力には使いません。ここでは「driven by(〜によって突き動かされた)」が適切です。日本人は「衝動」という言葉に「原動力」のようなニュアンスを含ませて使うことがありますが、英語の「impulse」にはその意味合いは含まれていません。英語では、継続的なエネルギー源には「drive」、「motivation」、「passion」などが用いられます。
日本語の「衝動的に」という言葉は、必ずしもネガティブな意味合いを持ちませんが、英語の「impulse」は、しばしば無謀さや後悔を伴う行動を指すことがあります。感情を告白するという行為は、必ずしも悪いことではないため、「whim(気まぐれ)」を使う方が適切です。「impulse」を使うと、告白があまり考えずに、突発的に行われたというニュアンスが強くなります。日本人が「衝動」という言葉を比較的ポジティブ、または中立的な意味で使うことから、このような誤用が生まれます。英語では、ポジティブな行動や軽い気持ちでの行動には「whim」や「spur of the moment」が適しています。
文化的背景
「impulse(衝動)」は、理性や熟慮を伴わない、内なる力に突き動かされる人間の本質的な側面を象徴します。特に近現代以降、個人の内面世界への関心の高まりとともに、社会規範や道徳からの逸脱、創造性の源泉、あるいは自己破壊的な行為といった多面的な意味合いを帯びるようになりました。
18世紀のロマン主義運動は、理性偏重の啓蒙思想への反発から、感情や直感、そして「衝動」を重視しました。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』に代表される作品群は、社会の束縛の中で苦悩し、衝動的な行動に走る主人公を描き出し、当時の若者たちの共感を呼びました。ウェルテルの自殺は、理性では制御できない感情の奔流、すなわち「衝動」の強烈さを象徴しており、文学作品における「impulse」のネガティブな側面を強く印象付けました。
一方、20世紀に入ると、精神分析学の登場によって「衝動」は抑圧された無意識の表れとして解釈されるようになります。フロイトは、人間の行動は無意識的な欲動(Trieb、英語ではdriveやimpulseと訳される)に突き動かされると考え、衝動を理解することが人間の心理を解き明かす鍵であるとしました。この考え方は、芸術や文学にも大きな影響を与え、ダダイスムやシュルレアリスムといった芸術運動は、理性的な思考を否定し、無意識的な衝動を表現することを目指しました。例えば、自動筆記と呼ばれる手法は、意識的な思考を排除し、衝動の赴くままに言葉やイメージを書き出すことで、人間の内なる創造性を引き出そうとする試みでした。
現代社会においては、「衝動買い(impulse buying)」のように、マーケティング戦略によって意図的に喚起される消費行動としても「impulse」は捉えられます。これは、理性的な判断を鈍らせ、感情に訴えかけることで、消費者の購買意欲を刺激する手法であり、現代社会における「衝動」の商業的な側面を象徴しています。しかし、その一方で、衝動的な行動は、時に創造的なアイデアや革新的な発見につながることもあります。そのため、「impulse」は、現代社会においても、依然として複雑で多面的な意味を持つ言葉として存在し続けていると言えるでしょう。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解。まれにリスニング。
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。特に1級で問われる可能性が高い。
- 文脈・例題の特徴: 学術的な内容、社会問題、科学技術など幅広い分野で使われる。文脈から意味を推測する必要がある。
- 学習者への注意点・アドバイス: 名詞(衝動、 импульс)、動詞(衝動的に~する)の両方の用法を理解する。派生語(impulsive: 衝動的な)も重要。
- 出題形式: 主にPart 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)。
- 頻度と級・パート: Part 5で時々出題。Part 7では、広告や記事など、ビジネス関連の長文で登場する可能性がある。
- 文脈・例題の特徴: マーケティング、広告、経営戦略など、ビジネスシーンに関連する文脈で登場しやすい。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「衝動買い」といった表現で使われることが多い。類義語 (urge, drive) とのニュアンスの違いを理解しておくと有利。
- 出題形式: リーディングセクションで頻出。
- 頻度と級・パート: アカデミックな内容の文章で頻繁に登場する。
- 文脈・例題の特徴: 心理学、社会学、経済学などの分野で、人間の行動や社会現象を説明する際に用いられることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 抽象的な概念を表すことが多いので、文脈全体を把握することが重要。名詞としての用法を特に意識する。
- 出題形式: 長文読解、文法・語彙問題。
- 頻度と級・パート: 難関大学で頻出。標準的なレベルの大学でも、社会科学系のテーマで出題される可能性がある。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、科学技術、心理学など幅広いテーマで登場する。評論やエッセイ形式の文章でよく見られる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈の中で意味を正確に捉える練習が必要。比喩的な意味で使われることもあるので注意。関連語(impulsive, impetus)も覚えておくと役立つ。