distant
第1音節にアクセントがあります。/ɪ/ は日本語の「イ」よりも口を少し開いて発音する短い母音です。/t/ は舌先を歯茎につけて発音する無声破裂音で、語尾の /t/ は破裂させずに終わることがあります(内破)。最後の /ənt/ の /ə/ は曖昧母音で、弱く短く発音します。全体として、各音をはっきりと発音しすぎないことが、より自然に聞こえるコツです。
遠い
物理的な距離だけでなく、時間的、心理的な距離を表す。例文:a distant star(遠い星), a distant memory(遠い記憶), a distant relative(遠い親戚)
That distant star twinkled softly in the dark night sky.
あの遠くの星が、暗い夜空でやさしくまたたいていた。
※ この例文は、夜空を見上げ、遠くの星の光が届く静かな情景を描いています。「distant star」は「遠くの星」という意味で、物理的な距離を表す「distant」の非常に典型的な使い方です。名詞(star)の前に置いて、そのものが「遠い」ことを説明する形容詞として使われることが多いです。
My grandmother lives in a distant village, so I don't see her often.
私の祖母は遠い村に住んでいるので、あまり頻繁には会えません。
※ この例文は、大切な人との物理的な距離が、会う機会に影響している状況を示しています。少し寂しい気持ちが伝わるかもしれません。「distant village(遠い村)」のように、特定の場所が遠いことを表す際によく使われます。「so」は「だから、そのため」という意味で、理由と結果をつなぐときに便利です。
From the top of the hill, we could see a distant ship on the ocean.
丘の頂上から、私たちは遠くの船が海上にいるのを見ることができました。
※ この例文は、丘の頂上から広がる景色を眺め、遠くまで見渡せる解放感のある場面を描いています。「distant ship(遠くの船)」のように、遠くに見える特定の物体を指す場合にも「distant」は使われます。「From the top of the hill」は「丘の頂上から」と場所を示す表現で、情景をより鮮明にします。
よそよそしい
感情的な距離感を表す。親しみがなく、冷たい印象を与える。例文:a distant manner(よそよそしい態度), He became distant after the argument.(彼は口論の後、よそよそしくなった)
The new girl in class seemed distant and never smiled at anyone.
クラスの新しい女の子はよそよそしい感じがして、誰にも笑顔を見せなかった。
※ 新しい環境に馴染めず、周りと距離を置いている人の様子を表す典型的な場面です。話しかけにくい雰囲気や、感情をあまり表に出さない様子から「distant」だと感じられる状況が目に浮かびますね。「seem distant」で「よそよそしい感じがする」という印象を伝えることができます。
My grandfather became distant after my grandmother passed away, often sitting alone.
祖母が亡くなってから、祖父はよそよそしくなり、よく一人で座っていた。
※ 悲しい出来事があった後、人が感情的に引きこもり、以前のような親しみがなくなる様子を描写しています。「became distant」は、以前はそうではなかった人が、ある出来事をきっかけに「よそよそしくなった」という変化を表すのにとても自然な表現です。行動の変化(一人で座る)が感情の変化を示しています。
He kept a distant look in his eyes when I asked about his plans for the project.
私がプロジェクトの計画について尋ねたとき、彼はよそよそしい目をしていた。
※ 相手が何か隠しているように見えたり、感情を表に出したがらないときに使われます。「a distant look」は「よそよそしい表情」や「冷たい視線」といった意味で、相手の目や表情から感じる感情的な距離を表すのに効果的です。ビジネスの場面や、何か秘密があるような状況で使われることがあります。
かけ離れた
現実や可能性から遠く離れていることを示す。例文:a distant possibility(かけ離れた可能性), a distant dream(かけ離れた夢)
From the mountaintop, the village looked like a distant dot.
山頂から見ると、村は遠い点のように見えた。
※ 物理的な距離が非常に離れていることを描写する典型的な使い方です。高い場所から見下ろすと、遠くのものがとても小さく見える、そんな広大な情景を思い浮かべてみてください。「遠く離れた」というニュアンスが、この単語の「かけ離れた」という核心的な意味によく表れています。
My childhood memories feel so distant now, like a dream.
私の子供の頃の記憶は、今では夢のようにとても遠く感じる。
※ 過去の出来事が現在から時間的に大きく隔たっている状態を表現しています。大人になって、子供の頃のことが「遠い昔のこと」と感じる、少し寂しいような、懐かしいような気持ちが伝わります。時間的な隔たりを示す「かけ離れた」の典型例です。
After the fight, my friend became distant and didn't talk much.
口論の後、私の友人はよそよそしくなり、あまり話さなくなった。
※ 人間関係において、心の距離が「かけ離れてしまった」状態を表します。以前は親しかったのに、何かのきっかけで冷たくなったり、話さなくなったりする状況で使われます。相手の態度が「よそよそしい」「冷たい」と感じる、切ない場面を想像できます。
コロケーション
遠い親戚、血縁の薄い親戚
※ 血縁関係が何世代も離れている親戚を指します。単に地理的に離れているだけでなく、親密さや関係の深さも薄いことを示唆します。例えば、「He's a distant relative on my mother's side.(彼は母方の遠い親戚です。)」のように使われます。家族の歴史や系図の話でよく登場する表現です。日本語の『遠縁』に相当します。
遠い記憶、昔の記憶
※ 過去の出来事で、時間的にも感情的にも遠く感じられる記憶を指します。単に古い記憶というだけでなく、鮮明さが薄れていたり、あまり重要でなくなっていたりするニュアンスを含みます。「It's a distant memory now, but I used to live in Paris.(今となっては遠い記憶ですが、昔パリに住んでいました。)」のように使われます。過去を振り返る際によく用いられる、やや感傷的な表現です。
遠い将来、遥か未来
※ 非常に遠い未来、または実現が不確かな未来を指します。具体的な年数を示すのではなく、漠然とした未来への展望を表す際に使われます。「In the distant future, maybe we'll all be living on Mars.(遠い将来には、もしかしたら私たちは皆火星に住んでいるかもしれません。)」のように使われます。SF的な文脈や、長期的な計画を語る際によく用いられます。ビジネスシーンでも、長期戦略について話す際に使われることがあります。
遠い土地、異国
※ 地理的に遠く離れた場所、特に異文化を持つ国や地域を指します。冒険や旅行、異文化への憧れといったイメージを伴うことが多いです。「He dreamed of traveling to distant lands.(彼は遠い土地への旅行を夢見ていました。)」のように使われます。文学作品や旅行記でよく見られる表現で、エキゾチックな雰囲気を強調する効果があります。
ぼんやりとした視線、遠くを見つめる目
※ 焦点が合っていない、または特定のものを見ているわけではない視線を指します。内省的であったり、考え事をしていたりする様子を表すことが多いです。「She had a distant gaze, lost in her thoughts.(彼女はぼんやりとした視線で、考えにふけっていました。)」のように使われます。小説や詩で、人物の心理描写に用いられることが多い表現です。
遠くのざわめき、かすかな音
※ 遠くから聞こえてくる、小さく不明瞭な音を指します。例えば、遠くの街の喧騒や、波の音などを表現する際に使われます。「We could hear a distant murmur of the city.(遠くから街のざわめきが聞こえてきた。)」のように使われます。情景描写に用いられ、静寂さや広がりを強調する効果があります。文学的な表現です。
遠い見込み、実現が難しい可能性
※ 実現する可能性はあるものの、時間的にも状況的にも不確実で、達成が難しい見込みを指します。「Gaining promotion is a distant prospect in the current climate.(現在の状況では、昇進は遠い見込みだ。)」のように使われます。ビジネスや政治の文脈で、目標達成の難易度を婉曲的に表現する際に用いられることがあります。
使用シーン
学術論文や研究発表で、物理的な距離だけでなく、概念的な距離や隔たりを表現する際に用いられます。例えば、歴史学の研究で「過去の出来事との心理的な距離」を議論したり、社会学で「社会階層間の隔たり」を分析したりする際に使われます。文語的な表現が中心です。
ビジネスシーンでは、直接的なコミュニケーションよりも、報告書やプレゼンテーション資料など、よりフォーマルな文脈で使われることがあります。例えば、市場調査の結果を報告する際に、「競合他社とのブランドイメージの隔たり」を説明したり、プロジェクトの進捗状況を報告する際に、「目標達成までの距離」を定量的に示すような場面が考えられます。やや硬い印象を与えるため、口語ではあまり使いません。
日常会話ではあまり頻繁には使いませんが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、比喩的な意味合いで使われることがあります。例えば、「被災地への支援の遅れ」を批判する際に、「被災地の現状と私たちの生活との隔たり」を強調したり、国際情勢を解説する際に、「紛争地域と平和な国々との距離」を表現したりする場面が考えられます。フォーマルな響きがあるため、親しい間柄の会話では別の表現が好まれます。
関連語
類義語
物理的な距離が遠い、または関係性が希薄であることを表す。地理的な場所、時間、可能性、感情など、幅広い対象に使用可能。ビジネスシーンや技術的な文脈でも用いられる。 【ニュアンスの違い】"distant"と比べて、より客観的で中立的な印象を与える。感情的な距離感よりも、物理的・抽象的な隔たりを強調する傾向がある。フォーマルな響きを持つ。 【混同しやすい点】"remote"は、物理的な距離だけでなく、可能性や関係性の希薄さを表す場合にも使われる。一方、"distant"は、感情的な距離感を含むことが多い。例えば、"remote possibility"(可能性が低い)という表現は適切だが、"distant possibility"は不自然。
よそよそしい、打ち解けない、冷淡な態度を表す。人物の性格や態度を形容する際に用いられる。日常会話で使われることが多い。 【ニュアンスの違い】"distant"が物理的または心理的な距離を表すのに対し、"aloof"は、相手に対して意図的に距離を置くような、冷淡でよそよそしい態度を強調する。主観的な感情が込められている。 【混同しやすい点】"aloof"は人の態度を表す形容詞であり、場所や時間的な距離には使えない。一方、"distant"は、場所、時間、感情など、幅広い対象に使える。例えば、"a distant memory"は適切だが、"an aloof memory"は不自然。
感情を表に出さない、控えめな態度を表す。人の性格や行動を形容する際に用いられる。フォーマルな場面でも使用可能。 【ニュアンスの違い】"distant"が心理的な距離を表すのに対し、"reserved"は、感情を抑制し、控えめな態度をとることを意味する。必ずしも相手を拒絶しているわけではなく、内向的な性格や慎重さを表す場合もある。 【混同しやすい点】"reserved"は、人の性格や態度を表す言葉であり、物理的な距離には使えない。また、"distant"が必ずしもネガティブな意味を持たないのに対し、"reserved"は、控えめであることを意味し、ネガティブな意味合いは薄い。
客観的で冷静な態度、または(物理的に)分離している状態を表す。学術的な文脈や報道などで使用されることがある。 【ニュアンスの違い】"distant"が感情的な距離感を含むのに対し、"detached"は感情的な関与を避け、客観的に物事を捉える態度を強調する。感情的な距離感というより、むしろ冷静さを表す。 【混同しやすい点】"detached"は、感情的な距離感だけでなく、物理的に分離している状態も表す。例えば、"a detached house"(一戸建ての家)のように使う。一方、"distant house"は、単に距離的に遠い家を意味する。
- estranged
(家族や友人などと)仲たがいしている、疎遠になっている状態を表す。感情的な距離感が強調される。文学作品やニュース記事などで用いられる。 【ニュアンスの違い】"distant"が一般的な距離を表すのに対し、"estranged"は、過去には親密な関係だった人が、何らかの理由で関係が悪化し、疎遠になった状態を指す。より深刻な感情的な隔たりを示す。 【混同しやすい点】"estranged"は、人との関係性にのみ使われ、物理的な距離には使えない。また、"estranged"は、過去に親密な関係があったことが前提となる。例えば、"estranged wife"(仲たがいしている妻)のように使う。
物理的な距離が遠いことを指す最も一般的な語。時間的な距離や抽象的な概念にも使える。日常会話で頻繁に使われる。 【ニュアンスの違い】"distant"よりも直接的で、感情的なニュアンスは薄い。単に距離が離れているという事実を伝える。 【混同しやすい点】"far"は程度を表す副詞としても使われる(例: far better)。"distant"は形容詞として距離を表すのが主な用法であり、程度を表す副詞としては使われない。
派生語
名詞で「距離」「隔たり」。形容詞'distant'から派生し、物理的な距離だけでなく、人間関係や時間的な隔たりなど、抽象的な意味合いでも広く使われる。日常会話からビジネス、学術論文まで頻出。
- distantly
副詞で「遠くに」「よそよそしく」。'distant'に副詞化の接尾辞'-ly'が付いた形。物理的な距離を表す他、態度や感情の隔たりを表す比喩的な用法もある。フォーマルな場面や文学作品でよく見られる。
- distancing
動詞'distance'の現在分詞/動名詞形。「距離を置くこと」「隔離」。社会学や心理学の文脈で、人間関係における距離の取り方や、感情的な距離を置く行為を指す専門用語として用いられることが多い。近年、ソーシャルディスタンシングという言葉で広く知られるようになった。
反意語
「近い」という意味の基本的な形容詞。物理的な距離が近いことを表す。'distant'が物理的・精神的な距離の両方を表すのに対し、'near'はより直接的な近さを意味することが多い。日常会話で頻繁に使われる。
「近い」という意味の形容詞だが、'near'よりも親密さや関係性の近さを強調するニュアンスがある。人間関係や心理的な距離が近いことを表す場合に使われ、'distant'が示す隔絶とは対照的な、親密な関係性を示す。
「隣接した」という意味の形容詞。物理的にすぐ隣にある状態を表す。'distant'が隔たっている状態を示すのに対し、'adjacent'は直接的な接触や近接性を示す。ビジネス文書や技術文書で、場所や位置関係を明確に示したい場合に用いられる。
語源
"distant"は、ラテン語の"distare"(距離を置く、離れている)に由来します。この"distare"は、"dis-"(分離、離れて)と"stare"(立つ、存在する)という二つの要素から構成されています。つまり、文字通りには「離れて立つ」という意味合いです。この基本的な意味が、物理的な距離だけでなく、時間的な隔たりや、関係性の希薄さといった抽象的な意味へと発展しました。例えば、遠い親戚を「distant relative」と表現するように、心理的な距離感を表す際にも用いられます。日本語で例えるなら、「一線を画す」という表現に近いニュアンスかもしれません。何かと何かとの間に明確な区切りを設け、隔たりを作るイメージです。
暗記法
「distant」は単なる距離ではない。イギリス文学では、身分違いの恋や階級間の壁を象徴し、登場人物の孤独や絶望を深めます。現代では、テクノロジーが距離を縮める一方で、人間関係の希薄化を映し出す言葉に。「distant friend(疎遠な友人)」という言葉が示すように、物理的な繋がりはあっても、心の距離は遠ざかる。理想や目標との隔たりも表し、「distant dream(遠い夢)」は、手の届かない憧憬を象徴する。社会の陰影を映す、奥行きのある言葉なのです。
混同しやすい単語
『distant』と『distinct』は、どちらも似たような音の並びを持ち、特に語尾の -inct と -ant の部分が曖昧になりやすいです。『distinct』は『明確な』『異なった』という意味で、性質や種類がはっきり区別できることを指します。日本人学習者は、/t/の音の有無を意識し、文脈から意味を判断する練習が必要です。語源的には、ラテン語の『distinguere(区別する)』に由来し、『distant』とは異なる語源を持つ点も覚えておくと良いでしょう。
『distant』と『instance』は、語頭と語尾の母音の響きが類似しており、特に早口で発音される場合に混同される可能性があります。『instance』は『例』『実例』という意味で、具体的な事例を指す名詞です。発音記号を確認し、アクセントの位置が異なることを意識しましょう。また、文脈から名詞か形容詞かを判断することも重要です。
『distant』と『resident』は、語尾の -ent の部分が共通しており、発音の際に曖昧になりやすいです。『resident』は『居住者』という意味で、ある場所に住んでいる人を指す名詞です。意味が全く異なるため、文脈から判断する必要があります。また、アクセントの位置が異なることにも注意しましょう。resident は re にアクセントがあります。
『distant』と『distance』は、語源的に関連があり、綴りも非常に似ています。『distant』は形容詞で『遠い』という意味ですが、『distance』は名詞で『距離』という意味です。文脈によって品詞が異なるため、注意が必要です。例えば、『a distant star(遠い星)』と『the distance between A and B(AとBの間の距離)』のように使い分けます。語源はラテン語の『distare(離れている)』に由来します。
『distant』と『descent』は、語頭の音と母音の響きがわずかに似ているため、特にリスニング時に混同される可能性があります。『descent』は『下降』『家系』という意味で、物理的な下降や血統を表す名詞です。発音記号を確認し、/s/と/t/の音の違いを意識しましょう。また、語源的にはラテン語の『descendere(降りる)』に由来し、『distant』とは異なる語源を持ちます。
『distant』と『instant』は、語尾の -ant の部分が共通しており、発音が曖昧になりやすいです。『instant』は『即時の』『瞬間』という意味で、時間的な概念を表します。発音記号を確認し、/æ/と/ɪ/の音の違いを意識しましょう。また、『instant coffee(インスタントコーヒー)』のように、日常的によく使われる表現も覚えておくと良いでしょう。
誤用例
日本語の「〜に距離を感じる」という表現を直訳すると、つい 'to' を使ってしまいがちですが、'distant' は通常 'from' と組み合わせて「〜から(心理的に)離れている」という意味を表します。英語では、物理的な距離だけでなく、心理的な距離や隔たりを表す場合にも 'from' を用いることが一般的です。この誤用は、日本語の格助詞「に」に引きずられた結果と言えるでしょう。英語の 'distant from' は、単なる位置関係だけでなく、関係性の希薄さや共感の欠如を示唆するニュアンスがあります。
'distant' は、物理的な距離や時間的な隔たりを指すだけでなく、人の性格を表す場合もありますが、この場合は『よそよそしい』『打ち解けない』といったニュアンスが強くなります。相手が何を考えているかわからない、という文脈では、より適切には 'reserved'(控えめ、内気)を使うべきです。'distant' を人の性格に使うと、冷たい印象を与えかねないため、注意が必要です。日本人が英語を話す際、相手との適切な距離感を測る上で、こうした語彙の選択は非常に重要になります。'distant' を使う場合は、相手との間に物理的・心理的な隔たりがあることを強調する意図がある場合に限るべきでしょう。
'distant' は時間的な距離を表すこともできますが、この場合は、漠然とした『遠い将来』というよりも、『(過去の出来事から)遠い』というニュアンスが強くなります。より自然な英語としては、'far-off future' が適切です。日本語の『遠い将来』という表現をそのまま 'distant future' と訳してしまうと、ネイティブスピーカーには少し不自然に聞こえることがあります。英語では、時間的な距離を表す場合、単に 'distant' だけでなく、'far-off', 'remote' などの語彙を使い分けることで、より細やかなニュアンスを表現することができます。
文化的背景
「distant」は、物理的な距離だけでなく、心理的な隔たりや疎遠さを表す言葉として、西洋文化において重要な意味を持ちます。特に、人間関係における感情的な距離感や、社会的な階層間の隔絶を表現する際に、そのニュアンスが際立ちます。
19世紀のイギリス文学では、「distant」はしばしば階級社会における身分違いの恋や、富裕層と貧困層の間に存在する見えない壁を象徴的に表現するために用いられました。例えば、ジェーン・オースティンの作品では、主人公たちが「distant relatives(遠い親戚)」という言葉を使って、血縁関係はあっても社会的な地位が異なるために交流が少ない人々を婉曲的に表現することがあります。これは、単なる物理的な距離だけでなく、社会的なヒエラルキーが人々の関係性に及ぼす影響を示唆しています。また、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』では、主人公ヒースクリフがキャサリンとの身分違いの恋に苦しみ、社会から疎外されていく様子が、「distant」という言葉を通して、彼の孤独感や絶望感をより深く表現しています。
現代においても、「distant」は、テクノロジーの発達によって物理的な距離が縮まった一方で、人間関係が希薄化している状況を反映する言葉として使われます。ソーシャルメディアを通じて世界中の人々と繋がることができるようになった反面、直接的なコミュニケーションの機会が減少し、人々はより「distant」な関係を築きやすくなっています。例えば、「distant friend(疎遠な友人)」という言葉は、かつては親しかったものの、時間や環境の変化によって連絡を取らなくなった友人関係を表します。また、企業においては、「distant management(遠隔管理)」という言葉が、リモートワークの普及によって従業員とのコミュニケーションが取りづらくなった状況を表すことがあります。このように、「distant」は、現代社会における人間関係の変化や、コミュニケーションのあり方を考える上で重要なキーワードとなっています。
さらに、「distant」は、理想や目標との隔たりを表す際にも用いられます。例えば、「distant dream(遠い夢)」という言葉は、実現が難しい夢や目標を指し、人々に希望と同時に、現実の厳しさを認識させます。また、政治の世界では、「distant promise(遠い約束)」という言葉が、実現される可能性が低い政策や公約を批判的に表現するために使われることがあります。このように、「distant」は、単なる距離を表すだけでなく、人間の願望や期待、そして社会の現実とのギャップを表現する多層的な意味を持つ言葉として、私たちの文化に深く根付いているのです。
試験傾向
- 出題形式: 語彙問題、長文読解、リスニング
- 頻度と級・パート: 準1級・1級で頻出。2級でも長文読解で稀に出題
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場。場所、時間、人間関係など、様々な「距離」を表す
- 学習者への注意点・アドバイス: 物理的な距離だけでなく、心理的な距離を表す場合もある点に注意。派生語(distance, distantly)も合わせて学習。
- 出題形式: Part 5 (短文穴埋め)、Part 7 (長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 7で比較的頻出。Part 5でも稀に出題
- 文脈・例題の特徴: ビジネス関連の長文で、地理的な距離、時間的な隔たり、関係性の希薄さなどを表す
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から意味を推測する練習が重要。紛らわしい単語(e.g., distinct)との識別。
- 出題形式: リーディング
- 頻度と級・パート: リーディングセクションで頻出
- 文脈・例題の特徴: アカデミックな内容の長文で、抽象的な概念の隔たりや、時代・文化的な隔たりを表す
- 学習者への注意点・アドバイス: 比喩的な意味合いで使われることが多い。文脈全体から正確な意味を把握する必要がある。類義語(remote, faraway)とのニュアンスの違いを理解。
- 出題形式: 長文読解、語彙問題
- 頻度と級・パート: 難関大学の長文読解で頻出
- 文脈・例題の特徴: 評論文や物語文など、幅広いジャンルで登場。比喩表現として使われることも多い
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から意味を判断する能力が求められる。類義語や反意語も合わせて学習。