contradiction
強勢は 'dik' の部分にあります。'con' の /ɒ/ は日本語の「ア」と「オ」の中間のような音で、口を大きく開けずに発音します。'diction' の 'tion' は、日本語の「ション」よりも少し弱く、曖昧な母音で終わるように意識しましょう。
矛盾
論理的に両立しない事柄や状態を指す。主張や行動、状況などが互いに食い違うことを表す。例:発言の矛盾、政策の矛盾。
His words about protecting the environment were a clear contradiction to his daily actions.
環境保護についての彼の言葉は、彼の日々の行動と明らかに矛盾していました。
※ この例文は、誰かの「言っていること」と「やっていること」が食い違っている状況を描写しています。例えば、友人が環境について熱く語るのに、使い捨ての物を平気で使うのを見て、あなたが少し「あれ?」と感じるような場面です。「A is a contradiction to B」で「AはBと矛盾している」という、とても典型的な使い方です。
The witness's statement had a big contradiction when compared with the evidence.
その目撃者の証言は、証拠と比べると大きな矛盾がありました。
※ この例文は、情報や事実が互いに食い違っている状況を示しています。例えば、警察官や弁護士が、ある人の話と目の前にある証拠を比べて、「これはおかしいぞ」と気づくような場面を想像してみてください。「have a contradiction」で「矛盾がある」という意味になります。「when compared with (something)」は「~と比べると」という意味で、何かと何かを比較して矛盾を指摘する際によく使われます。
I felt a contradiction in his logic when he tried to explain the problem.
彼がその問題を説明しようとした時、私は彼の論理に矛盾を感じました。
※ この例文は、ある人の説明や考え方に論理的な矛盾があると感じる、内面的な感覚を表しています。誰かが説明している内容が、どうも納得できない、筋が通っていないと感じる場面です。頭の中で「ん?」と疑問符が浮かぶような感覚を伴います。「feel a contradiction」で「矛盾を感じる」という、より個人的な感覚を表します。「in his logic」のように「何の中に矛盾があるのか」を明確にできます。
食い違い
意見、行動、事実などが一致しないこと。対立や不一致が生じている状況を指す。例:証言の食い違い、計画の食い違い。
His first story and his second story had a clear contradiction.
彼の最初の話と二番目の話には、明らかな食い違いがありました。
※ 友達が以前話してくれたことと、今日話している内容が食い違っていることに気づいた場面です。話の筋が通っていない、矛盾している状況が目に浮かびますね。「clear contradiction」で「明らかな食い違い」と強調できます。
We found a big contradiction between the report and the actual sales figures.
私たちは報告書と実際の売上数字の間に大きな食い違いを見つけました。
※ 会議で資料をチェックしている時、書いてある数字が実際のデータと合わない、というビジネスシーンを想像してください。データや事実が一致しない「矛盾点」を発見した、という状況が伝わります。「between A and B」で「AとBの間で食い違いがある」という形でよく使われます。
There was a sad contradiction between his words and his actions.
彼の言葉と行動の間には、悲しい食い違いがありました。
※ 誰かが「こうする」と言ったのに、実際には全く違うことをした、という場面です。例えば、「もう嘘はつかない」と言っていた人がまた嘘をついてしまった、といった、がっかりするような状況を表します。人の言動の不一致に焦点を当てた、感情が伝わる例文です。
否定する
(他者の言動や、過去の自分の言動など)と矛盾するような言動をすること。言外に相手を否定するようなニュアンスを含む。
She had to contradict his story because it wasn't true.
彼女は彼の話が事実ではなかったので、それを否定しなければなりませんでした。
※ この例文は、誰かの発言や話が真実ではないときに、それを「違う」とハッキリ否定する場面を描いています。例えば、友達が事実と異なることを話しているのを聞いて、「それは違うよ」と正すような状況です。日常生活で、相手の言っていることが間違っていると感じたときに使われる、とても自然な使い方です。
The lawyer tried to contradict the witness's statement in court.
弁護士は法廷で証人の証言を否定しようとしました。
※ この例文は、議論や討論といった少しフォーマルな場面で「contradict」が使われる典型例です。法廷で弁護士が証人の証言の信憑性を疑い、その内容を「否定する」ことで、自分の主張を裏付けようとする様子が目に浮かびます。自分の意見と異なる相手の主張を、論理的に「否定する」時に使われます。
His new statement seemed to contradict what he said last week.
彼の新しい発言は、先週彼が言ったことと矛盾しているように見えました。
※ ここでは、人の「発言」が、過去の「発言」と「矛盾する(=否定する)」状況を表しています。例えば、政治家や有名人が以前言ったことと違うことを話し、一貫性がないと指摘されるような場面です。「contradict」は、このように「AとBが食い違う、矛盾する」という意味でもよく使われ、結果的にAがBを、またはBがAを「否定する」というニュアンスになります。
コロケーション
完全な否定、真っ向からの矛盾
※ 「flat」はここでは「平坦な」という意味ではなく、「断固とした」「徹底的な」という意味合いで使われます。相手の発言や主張を完全に否定する際に用いられ、ビジネスシーンや議論の場で比較的フォーマルに使われることが多いです。例えば、契約条件の交渉で、相手の提案を「That's a flat contradiction of what we agreed upon.(それは我々が合意した内容と真っ向から矛盾します)」のように使います。類似表現として「direct contradiction」がありますが、「flat contradiction」の方がより強い否定のニュアンスを含みます。
目に余る矛盾、明らかな矛盾
※ 「glaring」は「ギラギラ光る」という意味から転じて、「非常に明白な」「目に余る」という意味になります。したがって、「a glaring contradiction」は、誰が見ても明らかな矛盾を指します。例えば、政治家の発言や企業の行動など、公の場で矛盾が露呈した場合に使われることが多いです。「There's a glaring contradiction between his words and his actions.(彼の言葉と行動の間には目に余る矛盾がある)」のように使います。この表現は、客観的に矛盾を指摘するニュアンスが強く、感情的な非難とは異なります。
内部矛盾、自己矛盾
※ あるシステム、理論、または人の思考の中に存在する矛盾を指します。哲学、論理学、社会科学などの分野でよく用いられる表現です。例えば、「The theory suffers from an internal contradiction.(その理論は内部矛盾を抱えている)」のように使います。日常会話よりも、学術的な文脈で使われることが多いでしょう。類似表現として「self-contradiction」がありますが、「internal contradiction」はより構造的な矛盾を指すニュアンスがあります。
論理的矛盾
※ 論理学における矛盾で、ある命題とその否定が同時に真である状態を指します。数式や哲学的な議論で厳密に定義されることが多いです。例えば、「The statement is a logical contradiction because it asserts both A and not A.(その記述は、AとAでないことを同時に主張しているため、論理的矛盾である)」のように使います。日常会話ではあまり使われませんが、論理的な思考を要する場面で重要な概念となります。
矛盾を解消する、矛盾を解決する
※ 対立する要素や意見の不一致を解決し、調和させることを意味します。問題解決や交渉の場面でよく使われます。「We need to find a way to resolve this contradiction.(我々はこの矛盾を解消する方法を見つける必要がある)」のように使います。この表現は、単に矛盾を指摘するだけでなく、積極的に解決を目指す姿勢を示します。類似表現として「reconcile a contradiction」がありますが、「resolve」の方がより具体的な解決策を見出すニュアンスが強いです。
矛盾を指摘する
※ 相手の発言や行動、あるいは文書などに含まれる矛盾を指摘することを意味します。議論や討論の場でよく使われます。「I would like to point out a contradiction in your argument.(あなたの議論の矛盾点を指摘したいと思います)」のように使います。この表現は、相手の論理の誤りを指摘する際に用いられ、建設的な議論を促す効果があります。ただし、指摘の仕方によっては相手を不快にさせる可能性もあるため、注意が必要です。
矛盾に満ちている
※ 人、状況、または文書などが多くの矛盾を抱えている状態を表します。人の性格や社会現象などを批判的に評価する際に使われることが多いです。「His speech was full of contradictions.(彼の演説は矛盾に満ちていた)」のように使います。この表現は、単に矛盾が存在するだけでなく、その矛盾が顕著であることを強調します。文学作品や社会評論などでよく用いられる表現です。
使用シーン
学術論文やディスカッションで頻繁に使用される。例えば、ある理論と実験結果の間に矛盾が見られる場合に「There is a contradiction between the theory and the experimental data. 理論と実験データの間には矛盾が存在する」のように記述される。哲学、論理学、社会科学など、様々な分野で批判的思考や議論を展開する際に重要な語彙となる。
ビジネス文書や会議において、戦略の矛盾やデータ分析の結果の矛盾を指摘する際に用いられる。例えば、「There is a contradiction in our sales strategy. 我々の販売戦略には矛盾がある」のように、問題点を明確にするために使用される。また、契約書などの法的文書においても、条項間の矛盾を避けるために注意深く検討されるべき語彙である。
日常会話ではあまり使われないが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、政治家の発言の矛盾や社会問題の矛盾を指摘する際に用いられることがある。例えば、「The politician's statement was full of contradictions. その政治家の発言は矛盾に満ちていた」のように、批判的なニュアンスを含むことが多い。一般的には、より平易な言葉(e.g., inconsistency, conflict)が用いられる傾向がある。
関連語
類義語
- inconsistency
一貫性がないこと、矛盾、むら。論理的な矛盾だけでなく、行動や性格における一貫性の欠如も指す。ビジネス、日常会話、学術分野で広く使用される。 【ニュアンスの違い】"contradiction"が二つの明確な事柄の間の対立を指すのに対し、"inconsistency"は全体的な一貫性の欠如、あるいは複数の要素間の不調和を指す。より広い意味を持つ。 【混同しやすい点】"contradiction"は具体的な矛盾を指摘する際に使いやすく、"inconsistency"は抽象的な一貫性のなさを指摘する際に適している。例えば、「彼の証言には矛盾がある」は"There is a contradiction in his testimony."、「彼の行動は一貫性がない」は "His behavior shows inconsistency."。
逆説。一見すると矛盾しているように見えるが、よく考えると真実を含んでいるような文や状況を指す。文学、哲学、議論などで用いられる。 【ニュアンスの違い】"contradiction"は単なる矛盾を指すが、"paradox"はより深く、思考を刺激する矛盾を意味する。パラドックスは解決策や真実が隠されていることが多い。 【混同しやすい点】"contradiction"は誤りや欠陥を示すことが多いが、"paradox"は深い洞察や真実を表現するために意図的に用いられる。例えば、「少ないほど豊かだ」はパラドックスの例。
- dichotomy
二分法、対立。二つの相互に排他的なカテゴリーに分けること、またはその二つのカテゴリー自体を指す。学術的な文脈や分析的な議論でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"contradiction"は事柄の対立を指すが、"dichotomy"は二つの明確に区別されたカテゴリーの存在を強調する。必ずしも対立しているとは限らない。 【混同しやすい点】"contradiction"は具体的な対立点に焦点を当てるが、"dichotomy"は概念的な分類や区別に焦点を当てる。「善と悪の二分法」は"the dichotomy between good and evil"。
食い違い、不一致。二つ以上の情報、事実、数値などが一致しない状態を指す。ビジネス、科学、調査などで用いられる。 【ニュアンスの違い】"contradiction"は論理的な矛盾を指すことが多いが、"discrepancy"は事実やデータの不一致を指す。より客観的な意味合いが強い。 【混同しやすい点】"contradiction"は意見や主張の対立を示すのに対し、"discrepancy"は数値やデータなどの客観的な情報の不一致を示す。「報告書に食い違いがある」は"There is a discrepancy in the report."
対立、衝突。意見、利害、目標などが相容れない状態を指す。日常会話、ビジネス、政治など幅広い場面で用いられる。 【ニュアンスの違い】"contradiction"は論理的な矛盾を指すことが多いが、"conflict"はより広範な対立や衝突を指す。感情的な要素を含むことが多い。 【混同しやすい点】"contradiction"は理論的な矛盾を指すのに対し、"conflict"は人間関係や社会的な対立を示す。「意見の衝突」は"a conflict of opinions"。
反対、対立。ある意見や行動に反対すること、またはその反対勢力を指す。政治、議論、スポーツなどで用いられる。 【ニュアンスの違い】"contradiction"は論理的な矛盾を指すことが多いが、"opposition"はある立場や意見に対する明確な反対を指す。行動や意思決定に関連することが多い。 【混同しやすい点】"contradiction"は理論的な矛盾を指摘するのに対し、"opposition"は具体的な行動や政策に対する反対を示す。「野党」は"the opposition party"。
派生語
『反論する』『矛盾する』という意味の動詞。『contra-(反対)』+『dict(言う)』という語源から成り立ち、『反対のことを言う』という文字通りの意味。日常会話から学術論文まで幅広く使われる。
『矛盾した』『反対の』という意味の形容詞。『contradict』に形容詞化接尾辞『-ory』が付加され、性質や状態を表す。学術的な議論や分析で、矛盾する意見やデータを示す際によく用いられる。
- contradiction in terms
名詞句で、『自己矛盾』や『自家撞着』という意味を表す。これは、二つの語句が互いに矛盾し、論理的に成立しない状態を指す。例えば、『丸い四角』は『contradiction in terms』である。哲学や論理学の議論でよく使われる。
反意語
『確認』『裏付け』という意味の名詞。『contradiction』が否定や反論であるのに対し、『confirmation』は事実や主張が正しいことを立証する行為を指す。科学的な実験結果や証拠の提示など、客観的な根拠に基づいて何かを確かめる文脈で使われる。
『同意』『合意』という意味の名詞。『contradiction』が意見や主張の対立を表すのに対し、『agreement』は複数の人が同じ意見や結論に至ることを意味する。ビジネス交渉や国際的な外交など、関係者間での一致を重視する状況で頻繁に使われる。
『一貫性』という意味の名詞。『contradiction』が内部の不整合や矛盾を指すのに対し、『consistency』は論理や行動に矛盾がなく、首尾一貫している状態を指す。計画の実行やデータの分析など、一貫性が求められる文脈で重要となる。
語源
"contradiction」は、ラテン語の「contra-(反対に)」と「dicere(言う)」という2つの要素から構成されています。「contra-」は英語の「against」に相当し、「dicere」は「言う、述べる」という意味です。したがって、「contradiction」は直訳すると「反対のことを言うこと」となります。日本語の「矛盾」という言葉は、「矛盾」という故事成句が示すように、盾と矛が両立しない状態を表しますが、「contradiction」も同様に、互いに相容れない主張や行動が同時に存在することを意味します。例えば、「彼は昨日の発言と今日の行動がcontradictionしている(矛盾している)」のように使われます。この単語は、単に言葉の衝突だけでなく、論理的な整合性の欠如や、行動と思考の不一致など、より広範な意味合いで使用されます。
暗記法
西洋における「矛盾」は、理性と現実のギャップを映す鏡。アリストテレスは矛盾律を唱え、ヘーゲルは矛盾を原動力と見なした。文学ではハムレットの苦悩、『1984年』の欺瞞を象徴。現代社会もまた、矛盾に満ちている。環境保護と大量消費、平和への願いと軍拡、平等と格差…。「矛盾」は、私たちが直面する課題の本質を照らし出す灯台なのだ。
混同しやすい単語
『contradiction』と『contradictory』は、語尾が異なるだけでスペルも発音も非常に似ています。しかし、『contradiction』が名詞(矛盾)であるのに対し、『contradictory』は形容詞(矛盾した)です。英文中で名詞が必要な箇所に形容詞を置いてしまったり、その逆を起こしたりするミスが頻発します。品詞を意識して使い分けることが重要です。
『contradiction』と『construction』は、接頭辞(contra/con)と語尾(-tion)が共通しており、スペルが似ているため、視覚的に混同しやすいです。『construction』は『建設』や『構造』という意味の名詞で、意味も文脈も大きく異なります。注意深くスペルを確認し、文脈から意味を判断することが重要です。
『contradiction』の後半部分である『diction』は、単独でも『言葉遣い』や『発音』という意味を持つ英単語です。発音の一部が共通しているため、耳で聞いたときに混同する可能性があります。また、『contradiction』の意味を理解する際に、『diction』の意味が想起されてしまい、誤った解釈をしてしまう可能性もあります。単語全体を見て意味を捉えるようにしましょう。
『contradiction』と『introduction』は、語尾が『-duction』で共通しており、スペルの一部が似ています。また、どちらも抽象的な概念を表す名詞であるため、文脈によっては意味を取り違えてしまう可能性があります。『introduction』は『導入』や『紹介』という意味です。スペルと意味の両方を意識して区別することが重要です。
『contradiction』と『prediction』は、語尾が『-diction』で共通しており、スペルも似ています。意味も連想ゲームのように関連付けられなくもありません。『prediction』は『予測』という意味です。それぞれの単語が持つ固有の意味をしっかりと理解し、文脈に合わせて適切に使い分けることが大切です。
『contradiction』と『condition』は、語尾の '-tion' が共通しており、発音も一部似ています。また、どちらも抽象的な概念を表す名詞であるため、文脈によっては混同する可能性があります。『condition』は『状態』や『条件』という意味です。スペルと意味の両方を意識して区別することが重要です。
誤用例
日本語の『〜に対する矛盾』という表現に引きずられ、『contradiction to』という形にしてしまう誤りです。英語では『contradict』が他動詞として働き、『〜と矛盾する』という意味を直接表します。名詞の『contradiction』を使う場合は、『in contradiction to』のように前置詞句を伴う必要がありますが、動詞を使う方がより自然で簡潔です。日本人が陥りやすいのは、日本語の助詞『に』を安易に前置詞『to』に置き換えてしまうパターンです。英語では、動詞が持つ意味と文法的な働きを理解し、適切な形を選ぶことが重要です。また、よりフォーマルな場面では、"His statement is in contradiction with the facts."も適切です。
『contradiction』は、論理的に両立しない主張や行為が**明確に**存在する場合に使われます。この例では、単に『一貫性がない』とか『矛盾点がある』という程度の意味で使いたい場合、『inconsistency』の方が適切です。日本人は、言葉の持つ意味の強さ(語感)を意識せずに、字面が似ている単語を選んでしまいがちです。この背景には、日本語の曖昧さを許容する文化があり、英語のような厳密な論理展開に慣れていないという側面もあります。英語では、言葉のニュアンスを理解し、文脈に合った適切な単語を選ぶことが、意図を正確に伝える上で不可欠です。また、政治家の発言における矛盾を指摘する場合、"The politician's speech was self-contradictory..."のように形容詞形で表現することもできます。
『contradiction』は文字通り『矛盾』を指し、論理的な整合性の欠如を意味します。一方、『paradox』は、一見矛盾しているように見えるが、よく考えると真実を含んでいるような状況を指します。この例では、平和を愛すると言いながら軍事費を支持するという行為は、必ずしも論理的な矛盾ではなく、価値観の対立や複雑な政治的判断の結果である可能性があります。したがって、『paradoxical(逆説的)』を使う方が適切です。日本人は、表面的な意味だけで判断し、言葉の背後にある文化的・思想的な背景を考慮せずに単語を選んでしまうことがあります。英語を学ぶ際には、言葉の持つ文化的ニュアンスを理解し、文脈に合った適切な表現を選ぶことが大切です。
文化的背景
「矛盾(contradiction)」は、西洋文化において、一貫性や合理性を重んじる思想と、現実世界の複雑さや不条理さとの間で生じる緊張を象徴する言葉です。特に、理性と感情、理想と現実、言行不一致など、人間の内面や社会構造に潜む二律背反を浮き彫りにする際に、その重要性が際立ちます。
西洋哲学の歴史を紐解くと、「矛盾」は古くから重要な概念として扱われてきました。アリストテレスは矛盾律を論理学の基礎として確立し、「AはAであり、同時にAでないことはない」という原則を提唱しました。しかし、ヘーゲルは弁証法を通じて、矛盾こそが発展の原動力であると主張し、正・反・合のプロセスを通じてより高次の概念が生まれると説きました。このヘーゲルの思想は、マルクス主義にも影響を与え、資本主義社会における階級闘争を矛盾の概念を用いて説明しました。このように、「矛盾」は単なる論理的な誤りではなく、社会や歴史を動かす力として捉えられてきたのです。
文学作品においても、「矛盾」は登場人物の内面や物語の展開を深く掘り下げるための重要な要素として用いられます。例えば、シェイクスピアのハムレットは、「生きるべきか死ぬべきか」という有名な台詞に代表されるように、自己の存在意義や復讐の是非について葛藤し、矛盾に満ちた感情を抱えています。また、ジョージ・オーウェルの『1984年』では、「戦争は平和である、自由は隷従である、無知は力である」というスローガンが、全体主義国家の矛盾を象徴的に表現しています。これらの作品を通して、「矛盾」は人間の複雑な心理や社会の欺瞞を明らかにし、読者に深い洞察を与えます。
現代社会においても、「矛盾」は様々な場面で顔を出します。例えば、環境保護を訴えながら大量消費を続けるライフスタイル、平和を願いながら軍事力を増強する国家、平等な社会を目指しながら格差が拡大する経済システムなど、私たちは多くの矛盾を抱えながら生きています。これらの矛盾を認識し、解決に向けて努力することこそが、より良い社会を築くための第一歩であると言えるでしょう。「矛盾」という言葉は、私たちが直面する課題の本質を理解し、より深く思考するための重要な手がかりとなるのです。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、語彙問題。稀にリスニングでも出現。
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。特に1級の長文読解でよく見られる。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、科学技術などアカデミックなテーマで、「矛盾」が議論のポイントとなる場合に多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 名詞 (contradiction) だけでなく、動詞 (contradict) や形容詞 (contradictory) の形も覚えておくこと。類義語の paradox との使い分けも意識。
- 出題形式: 主に長文読解 (Part 7)。語彙問題 (Part 5) で問われることもある。
- 頻度と級・パート: 比較的まれだが、Part 7のビジネス関連文書で時々見られる。
- 文脈・例題の特徴: 契約書、報告書などで「矛盾点」を指摘する文脈が多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: ビジネスシーンでの使用例を把握しておくこと。同義語の inconsistency も覚えておくと役立つ。
- 出題形式: 主に長文読解。エッセイライティングでも使用可能。
- 頻度と級・パート: リーディングセクションで頻出。ライティングでも論理展開で役立つ。
- 文脈・例題の特徴: 学術論文、研究発表などアカデミックな文脈で、理論や主張の「矛盾」を議論する際に用いられる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 抽象的な概念を表すため、文脈理解が重要。動詞、名詞の形を正確に理解し、使いこなせるようにする。
- 出題形式: 主に長文読解。和訳問題、内容説明問題でも問われる。
- 頻度と級・パート: 難関大学の入試で頻出。標準的な大学でも時々見られる。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、哲学、歴史など、論理的な思考を要するテーマで登場する。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から意味を推測する練習が重要。関連語句 (e.g., paradox, inconsistency, conflict) との違いを理解しておくこと。