bar
母音 /ɑː/ は日本語の「ア」よりも口を大きく開け、喉の奥から出すイメージです。日本語の「ア」と「オ」の中間のような音を意識すると良いでしょう。語尾の /r/ は、アメリカ英語では舌を丸める音、イギリス英語ではほとんど発音されないことがあります。ここでは便宜上「ル」と表記していますが、舌を丸めるか、あるいは発音しないかのいずれかで対応してください。日本語の「バー」のように伸ばしすぎないように注意しましょう。
専門的な内容に関するご注意
このページには、健康、金融、法律など、専門的な知識を必要とする内容が含まれている可能性があります。本サイトの情報は学習目的で提供されており、専門家による助言の代わりとなるものではありません。重要な判断を行う際には、必ず資格を持つ専門家にご相談ください。
仕切り
物理的な遮断物、または心理的な境界線を意味する。法廷の弁護士席、酒場のカウンター、障害物競走のハードルなど、隔てるものを指す。
The cashier placed a plastic bar between my groceries and the next customer's.
レジ係が、私の食料品と次の客の食料品の間にプラスチックの仕切り棒を置いた。
※ スーパーのレジでよく見る、前の人との商品を区切る棒のことです。店員さんがテキパキと棒を置く様子が目に浮かびますね。「bar」は、このように物理的な区切りや境界線となる棒状のものを指す、日常的で非常に一般的な使い方です。
A strong metal bar was installed to prevent children from falling off the balcony.
子どもたちがバルコニーから落ちないように、頑丈な金属の仕切り棒が設置されていた。
※ 公園や家のバルコニーなどで、危険な場所に近づかないように設置される「柵」や「手すり」のような棒状の仕切りをイメージしてください。子どもたちの安全を守るための、安心感のあるシーンが伝わりますね。ここでも「bar」は保護や障壁としての役割を持つ棒を指します。
He slid a heavy wooden bar across the door to secure his shop for the night.
彼は夜の間、店を安全にするため、重い木製の仕切り棒をドアに横に滑らせた。
※ 昔ながらの商店や倉庫などで、ドアを内側からしっかりと閉めるために使う、太い「かんぬき」のような棒を想像してみましょう。店主が店の安全を確保するために、重い棒を動かす様子が目に浮かびます。ここでは「bar」が、鍵の役割をする頑丈な仕切りとして使われています。
妨げ
目標達成を阻むもの。障壁、障害、あるいは法的規制など、行動を制限するものを指す。
A heavy metal bar blocked the road, preventing the car from passing.
重い金属製の棒が道を塞ぎ、車が通行するのを妨げていた。
※ 工事現場や事故現場で、道を物理的に遮る「棒状の障害物」が目に浮かびます。車がそれ以上進めず、困っているドライバーの様子が想像できますね。ここでの「bar」は、文字通り「横棒」や「柵」のような物理的な「妨げ」を指します。何かの進行を物理的に阻む状況で使われます。
Her shyness was a bar to making new friends at the party.
彼女の人見知りが、パーティーで新しい友達を作る上での妨げとなっていた。
※ パーティー会場で、周りの人々と話したいけれど、なかなか話しかけられずにいる女性の姿が目に浮かびます。「友達を作りたい」という気持ちと、「人見知り」という内面的な「妨げ」の葛藤が感じられます。「bar」は物理的なものだけでなく、「人見知り」や「言葉の壁」のように、目標達成を阻む抽象的な「障害」や「障壁」としてもよく使われます。「a bar to + 動名詞」の形で、「~することの妨げ」という意味になります。
The high entrance fee was a bar to many people enjoying the concert.
高額な入場料が、多くの人々がコンサートを楽しむ上での妨げとなっていた。
※ コンサート会場の入り口で、料金表を見て「高いな…」と諦めて引き返す人々の姿が目に浮かびます。「本当は行きたかったけれど、費用がネックで断念する」という、経済的な「妨げ」が具体的に想像できます。この例文では、「お金」がコンサートを楽しむための「障壁」になっています。このように、「bar」は「経済的な問題」や「ルール」など、何かを達成したり、楽しんだりするのを阻む要因全般を指すことができます。
阻止する
何かを妨げる、または禁止する行為。計画や行動の進行を止めるニュアンス。
The guard stood firm to bar visitors from entering the restricted area.
警備員は、立ち入り禁止区域に訪問者が入るのを阻止するために、しっかりと立ちはだかりました。
※ この例文は、警備員が物理的に人々を「阻止する」様子を描いています。強い意志を持って何かを妨げる場面でよく使われます。'bar A from B'(AがBするのを阻止する)という形で覚えると、とても便利です。
Her age unfortunately barred her from joining the special club.
残念ながら、彼女の年齢がその特別なクラブへの参加を阻止してしまいました。
※ ここでは、年齢という「条件」が、誰かの行動や参加を「阻止する」状況を示しています。物理的な障害だけでなく、規則や条件によって何かを妨げる場合にも'bar'が使われます。'unfortunately'(残念ながら)が、彼女の気持ちを表していますね。
A sudden strong storm barred the ship from leaving the harbor.
突然の強い嵐が、船が港を出るのを阻止しました。
※ 自然現象(嵐)が、船の出港という行動を「阻止する」場面です。このように、意図せず何かの行動や計画が妨げられる場合にも'bar'が使われます。船が足止めされている情景が目に浮かびますね。
コロケーション
(人)が(何かをするの)を禁止する、妨げる
※ 「bar」はもともと「障害物」や「柵」を意味し、そこから「物理的に、あるいは規則によって何かを妨げる」という意味に発展しました。この構文は、規則や法律、権限などによって、誰かが特定の場所への立ち入りや行動をすることを禁じる際に使われます。例えば、"He was barred from entering the country."(彼はその国への入国を禁止された)のように使われます。日常会話よりも、ややフォーマルな場面や報道などでよく見られます。 "prohibit" や "ban" と似た意味ですが、"bar" はより直接的な妨害のニュアンスを含みます。
刑務所に入っている、服役中である
※ 文字通りには「柵の後ろ」という意味で、刑務所の独房を連想させます。この表現は、人が刑務所に収監されている状態を指すイディオムとして広く使われます。"He's behind bars for robbery."(彼は強盗で服役中だ)のように使われます。ニュース記事や犯罪に関する話題で頻繁に登場します。"in prison" とほぼ同義ですが、"behind bars" はより比喩的で、刑務所の物理的なイメージを喚起します。
例外なく、誰一人として~ない
※ "bar" はここでは「例外」という意味で使われています。"none" と組み合わせることで、「例外は一つもない」という強い否定を意味します。例えば、"That was the best performance, bar none."(あれは最高のパフォーマンスだった、誰にも負けない)のように使われます。やや古風な響きがあり、日常会話よりも、演説や文学的な表現で見かけることがあります。"without exception" と同様の意味ですが、"bar none" はより強調的なニュアンスを持ちます。
チョコレートバー、板チョコ
※ 「bar」はここでは「棒状のもの」という意味で、チョコレートが棒状に成形されていることから「チョコレートバー」を意味します。スーパーやコンビニで売られている一般的な板チョコを指します。"candy bar"(キャンディバー)も同様の構造を持つ表現です。単に "chocolate" と言うよりも、具体的な形状を意識した言い方です。
(ハードルを)高く/低く設定する、基準を設ける
※ もともとは陸上競技の棒高跳びで、バーの高さを設定することから来た表現です。比喩的に、目標や基準、期待値を設定することを意味します。"They set the bar very high for future performances."(彼らは今後のパフォーマンスのために非常に高い基準を設定した)のように使われます。ビジネスシーンや教育現場でよく使われる表現です。"establish a standard" と似た意味ですが、"set the bar" は具体的な目標設定のイメージを持ちます。
法曹界、弁護士会
※ "bar" は、法廷で裁判官と弁護士の間を区切る柵を指すことから、転じて法曹界、特に弁護士全体を指す言葉として使われます。"He was admitted to the legal bar."(彼は法曹界に認められた=弁護士資格を得た)のように使われます。法律関係のニュースやドキュメンタリーなどで見かけることがあります。"the legal profession" とほぼ同義ですが、"the bar" はより専門的なニュアンスを持ちます。
使用シーン
学術論文や研究発表で、データや結果を視覚的に表現する際に「棒グラフ (bar graph)」として頻繁に登場します。統計学や経済学の分野では、データの比較や傾向を示すために用いられます。例えば、「The bar graph shows the correlation between X and Y.(棒グラフはXとYの相関関係を示している。)」のように使われます。
ビジネスシーンでは、進捗状況や業績を「妨げるもの」という意味で使われることがあります。例えば、「Lack of resources is a bar to progress.(資源不足は進捗の妨げになる。)」のように、課題や障害を指摘する際に用いられます。また、会議やプレゼンテーションでグラフを用いて業績を示す際にも使われます。
日常会話では、物理的な「仕切り」や「バー」を指す場合に使われます。例えば、レストランやカフェのカウンター席を指して「Let's sit at the bar.(バーに座ろう。)」のように使われます。また、法律や規則などの「障壁」を指す場合もありますが、フォーマルな文脈で使われることが多いです。
関連語
類義語
『障害物』や『妨げ』という意味で、目標達成を阻む物理的、抽象的なものを指す。ビジネス、政治、日常生活など幅広い文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】"bar"が具体的な柵や仕切りを意味するのに対し、"obstacle"はより抽象的で、乗り越えるべき困難や課題というニュアンスが強い。フォーマルな場面や、問題解決の文脈でよく用いられる。 【混同しやすい点】"bar"は可算名詞として具体的なものを指すことが多いが、"obstacle"は問題そのものを指すため、抽象的な意味合いが強い。また、"bar"は動詞としても使われるが、"obstacle"は通常名詞として用いられる。
『障壁』や『妨害物』という意味で、物理的または抽象的な境界や制限を指す。外交、科学、ビジネスなど、幅広い分野で使用される。 【ニュアンスの違い】"bar"が一時的な制限や区切りを意味するのに対し、"barrier"はより恒久的で、乗り越えるのが難しい障壁というニュアンスが強い。心理的な壁や制度的な障壁など、目に見えないものにも使われる。 【混同しやすい点】"bar"は可算名詞として具体的なものを指す場合もあるが、"barrier"は抽象的な意味合いが強く、比喩的な表現で用いられることが多い。また、"barrier"は、コミュニケーションの障壁や文化的な障壁など、人間関係や社会的な文脈でよく使用される。
『妨げる』や『阻止する』という意味で、物事の進行や達成を遅らせる、または妨害する行為を指す。ビジネス、法律、科学など、フォーマルな文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】"bar"が物理的な遮断や制限を意味するのに対し、"impede"はより間接的で、進行を遅らせる、または妨げる行為に焦点を当てる。フォーマルな場面や、原因と結果を分析する文脈でよく用いられる。 【混同しやすい点】"bar"は名詞としても動詞としても使われるが、"impede"は主に動詞として用いられる。また、"bar"は具体的な対象を妨げる場合にも使われるが、"impede"は抽象的なプロセスや計画を妨げる場合に適している。
『防ぐ』や『予防する』という意味で、悪いことや好ましくない事態が起こるのを未然に防ぐ行為を指す。医療、安全、法律など、幅広い分野で使用される。 【ニュアンスの違い】"bar"が特定の場所や状況への立ち入りを制限するのに対し、"prevent"は事態の発生そのものを阻止することに焦点を当てる。事故、犯罪、病気など、ネガティブな出来事の発生を防ぐ文脈でよく用いられる。 【混同しやすい点】"bar"は名詞としても動詞としても使われるが、"prevent"は主に動詞として用いられる。また、"bar"は物理的な制限を意味することが多いが、"prevent"はより広範な意味で、抽象的な事態の発生を防ぐ場合にも使われる。
『除外する』や『締め出す』という意味で、特定のグループや個人をある場所、活動、または機会から意図的に排除する行為を指す。社会、政治、ビジネスなど、様々な文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】"bar"が特定の場所への立ち入りを制限するのに対し、"exclude"はあるグループや個人を全体から意図的に排除するニュアンスが強い。差別、選別、選考など、人間関係や社会的な文脈でよく用いられる。 【混同しやすい点】"bar"は物理的な制限を意味することが多いが、"exclude"は社会的な排除を意味する。また、"bar"は一時的な制限を意味することもあるが、"exclude"はより恒久的な排除を意味することが多い。
『禁止する』という意味で、法律や規則によって特定の行為を公式に禁じることを指す。法律、政府、公式な規則など、フォーマルな文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】"bar"が物理的な障壁や制限によって行動を制限するのに対し、"prohibit"は法律や規則によって行動を公式に禁止するニュアンスが強い。公的な場や、正式な文書でよく用いられる。 【混同しやすい点】"bar"は名詞としても動詞としても使われるが、"prohibit"は主に動詞として用いられる。また、"bar"は物理的な制限を意味することが多いが、"prohibit"は法律や規則による禁止を意味する。
派生語
『障壁』『妨げ』を意味する名詞。『bar』が物理的な遮断物から転じて、抽象的な障害を指すようになった。日常会話からビジネス、政治的な議論まで幅広く使われる。特に『言語の壁(language barrier)』のような表現は頻出。
『弾幕』『集中砲火』を意味する名詞。元々は軍事用語で、文字通り『bar』を張り巡らせるイメージ。比喩的に『質問の集中砲火』のように使われる。ニュースや報道でよく見られる。
『恥ずかしい思いをさせる』という動詞。『em-(中へ)』+『barrass』で、『bar(妨げる)』で囲んで動きを封じるイメージ。相手を窮地に陥れるニュアンスがある。日常会話でよく使う。
反意語
『許可する』という意味の動詞。『per-(通して)』+『mittere(送る)』という語源で、『bar(妨げる)』の反対に、何かを通す、許可するという意味合い。フォーマルな場面や法律関係でよく用いられる。
『許可する』という意味の動詞。『a-(〜へ)』+『llow(認める)』という語源で、相手の行動を妨げずに受け入れるイメージ。『bar』が禁止するのとは対照的。日常会話で頻繁に使われる。
『可能にする』という意味の動詞。『en-(〜にする)』+『able(できる)』という語構成で、何かが起こるのを妨げる『bar』を取り除き、実現可能にするという意味合い。ビジネスやテクノロジー関連の文脈でよく使われる。
語源
「bar」の語源は、中世ラテン語の「barra(棒、障害物)」に遡ります。これはさらに、俗ラテン語の「*barra(棒)」に由来すると考えられています。この「棒」という基本的な意味合いが、仕切りや柵といった物理的な意味での「bar」へと発展し、そこから転じて、抽象的な意味での「妨げ」「阻止するもの」という意味合いを持つようになりました。たとえば、法廷における「bar」は、裁判官席と傍聴席を区切る柵を指し、そこから派生して法律家全体を指す言葉としても使われます。日本語の「関所」のようなイメージで、文字通り、あるいは比喩的に、何かを遮る、制限するという概念が「bar」という単語に込められていると理解できます。
暗記法
「bar」は柵から酒場のカウンターへ、そして社会の境界線へ。無法者の集う酒場も、正義が試される法廷も、そこには常に「bar」が存在します。それは隔たりであり、基準であり、超えるべき壁。私達は時にその内側に守られ、時に外側で立ち尽くす。目に見えぬ「bar」は、社会の縮図であり、人間関係の機微を映し出す鏡なのです。
混同しやすい単語
発音が /ber/ と非常に似ており、文脈によっては聞き分けが難しいことがあります。 'bear' は『クマ』または『耐える』という意味の動詞ですが、 'bar' は『棒』『法廷』『妨げる』など、意味が大きく異なります。特に、動詞としての『耐える』は 'bar' の『妨げる』と意味が対立するので注意が必要です。スペルも似ているため、文脈をよく読んで判断する必要があります。
発音は /ber/ で 'bear' と同じですが、意味が異なります。 'bare' は『むき出しの』『飾りのない』という意味の形容詞です。 'bar' と 'bare' は、どちらも母音が同じで、語尾の音が異なるため、発音練習で意識的に区別する必要があります。例えば、『bare necessities(必要最低限のもの)』という表現はよく使われます。
発音記号は /bɜːr/ で、『巻き舌音を伴う r』が入ります。これは、地域によっては 'bar' と似たように聞こえる可能性があります。『いが』や『バリ』といった意味があり、工具のバリ取りなどでも使われます。スペルも似ていますが、 'u' が入ることで発音が少し変わります。アメリカ英語では 'r' を発音するので、より 'bar' と似た発音になる場合があります。
発音は /brɑː/ で、'bar' と母音が異なりますが、語感が似ているため、特に早口で話されると聞き間違える可能性があります。『ブラジャー』の略称として一般的に使われます。スペルは 'b' と 'r' が共通していますが、母音が違うことを意識しましょう。
発音は /baɪər/ で、二重母音が入ります。意味は『牛舎』で、日常会話ではあまり使われませんが、文学作品などに出てくることがあります。 'bar' とはスペルも発音も異なりますが、文字の並びが似ているため、視覚的に混同する可能性があります。古英語起源の単語で、農業に関連する語彙を学ぶ際に一緒に覚えると良いでしょう。
発音は /bɑːm/ または /bɑːlm/ で、'l' は発音されないことが多いです。『香油』『軟膏』という意味で、精神的な癒しを指すこともあります。'bar' とはスペルも発音も異なりますが、'ba-' という出だしが似ているため、特に発音があいまいな場合に混同する可能性があります。語源はラテン語の 'balsamum' で、香りの強い樹脂を意味します。
誤用例
日本人が『bar』を『障害(物)』という意味で使う場合、物理的な柵や仕切りだけでなく、抽象的な妨げも意味すると誤解しがちです。しかし、抽象的な『障害』には『barrier』がより適切です。『bar』は物理的な柵、または法律や規則による禁止を指すことが多いです。例えば、弁護士資格を失うことを 'disbarred' と言います。日本語の『バリア』という言葉が、英語の『barrier』の抽象的な意味を理解する上で役立つでしょう。
『bar』はアメリカ英語では一般的な表現ですが、イギリス英語では『pub』の方が自然です。特に、イギリス英語圏で英語を練習したいという意図がある場合、『bar』を使うと、お酒を飲むことが主な目的であると誤解される可能性があります。『pub』は、より社交的な雰囲気で、食事や会話を楽しむ場所というニュアンスがあります。また、イギリスのパブ文化は、地域社会の交流の場としての役割も担っており、単に英語を練習するだけでなく、文化体験としても『pub』を選ぶ方が適切です。日本語の『飲み屋』という言葉から想像されるイメージとは異なる点に注意が必要です。
『set the bar high』という表現も間違いではありませんが、より一般的な表現は『raise the bar』です。これは、競争や達成目標のレベルを上げるという意味で使われます。『set』も間違いではありませんが、より直接的な意味合いが強く、比喩的な表現としては『raise』の方が洗練されています。この表現は、オリンピックの棒高跳びでバーの高さを上げるイメージから来ており、『raise』の方がよりダイナミックな印象を与えます。日本語の『ハードルを上げる』という表現を直訳しようとすると『set the hurdle high』となりがちですが、英語では『raise the bar』が一般的です。
文化的背景
「bar」という単語は、物理的な遮断物としてだけでなく、社会的な境界線や心理的な障壁をも象徴します。酒場という具体的な場所から、法廷の弁護士席、さらには抽象的な「基準」や「妨げ」まで、その意味の広がりは、人間社会における区切りや制限という概念がいかに根深いかを示しています。
中世ヨーロッパにおいて、barは文字通り、侵入者や家畜から身を守るための柵や門を意味しました。これが転じて、酒場におけるカウンター、つまり客とバーテンダーを隔てる物理的な仕切りを指すようになります。酒場は、社会階層を超えた人々が集い、一時的に身分を忘れ、酒を酌み交わす場所でしたが、同時に、カウンターというbarは、客と店員、そして客同士の間に一定の距離感を保つ役割も果たしていました。この空間は、しばしば男性社会の縮図であり、友情や連帯感、時には暴力や不和が交錯する舞台となりました。文学作品や映画では、barはしばしば、主人公が孤独を癒やしたり、重要な決断を迫られたりする場所として描かれます。例えば、西部劇では、barは無法者が集う危険な場所であり、同時に、正義を貫くヒーローが立ち寄る休息の場所でもあります。
法廷におけるbarは、弁護士が立つ場所を指し、一般の人々とは区別された特別な空間です。これは、法廷が単なる事実の検証の場ではなく、厳格な手続きと専門知識が求められる、ある種の儀式の場であることを示しています。弁護士は、このbarの内側で、依頼人の権利を守り、法の正義を実現するために戦います。この意味でのbarは、法という名の目に見えない障壁を象徴し、それを乗り越えるための専門家の存在を必要とします。また、資格試験に「合格する(pass the bar)」という表現は、この障壁を突破し、専門家としての地位を獲得することを意味します。
さらに、「a bar to something」という表現は、何かを妨げる障害物や基準を意味します。これは、物理的なbarから派生した抽象的な概念であり、目標達成を阻む困難や、行動を制限する規範を指します。例えば、「language barrier(言葉の壁)」は、コミュニケーションを妨げる障壁であり、「moral bar(道徳的基準)」は、社会的に許容される行動の境界線を示します。このように、barは、目に見えるものから見えないものまで、さまざまな形で私たちの社会生活を区切り、制限し、方向付けているのです。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解、稀にリスニング
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。2級でも長文読解で登場する可能性あり
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場。フォーマルな文章が多い
- 学習者への注意点・アドバイス: 「妨げる」「バー(酒場)」など複数の意味を理解。動詞、名詞としての用法を区別。同音異義語(bear)との混同に注意
- 出題形式: 主にPart 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)
- 頻度と級・パート: 頻出。特にPart 7のビジネス関連文書でよく見られる
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーン(会議、交渉、契約など)での利用が多い
- 学習者への注意点・アドバイス: 「妨げる」の意味で、ビジネス上の障害や障壁を表す場合が多い。類義語(hinder, obstruct)との使い分けを意識
- 出題形式: リーディングセクションが中心
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻出
- 文脈・例題の特徴: 学術的な内容(歴史、科学、社会科学など)で、抽象的な概念を説明する際に使われる
- 学習者への注意点・アドバイス: 「妨げる」「禁止する」の意味で使われることが多い。グラフの「棒グラフ」の意味も重要。抽象的な内容を理解する文脈力も必要
- 出題形式: 主に長文読解
- 頻度と級・パート: 難関大学ほど頻出
- 文脈・例題の特徴: 評論文、物語文など多様な文章で登場
- 学習者への注意点・アドバイス: 比喩的な意味合いで使われることが多い。「~を妨げる」「~を禁止する」などの基本的な意味に加え、文脈から意味を推測する力が必要。イディオム(bar from)も覚えておくと有利