tranche
最初の 'tr' は、日本語の『ト』よりも舌を丸めて発音し、息を強く出す破裂音です。母音 /ɑː/ は日本語の『アー』よりも口を大きく開けて発音します。最後の 'ʃ' は、日本語の『シュ』と同じ音ですが、口を少し前に突き出すように意識するとよりネイティブの発音に近づきます。'n' の音は、鼻に抜けるように意識しましょう。全体的に、強勢は最初の音節 /trɑːn/ に置かれます。
専門的な内容に関するご注意
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分割された一部
全体が分割されたうちの、特定のまとまりを指す。金融取引における債券やローンの分割単位、プロジェクトにおける段階的なフェーズなどを指すことが多い。全体の一部でありながら、独立して扱われるニュアンスがある。
Our startup company just received the first tranche of funding for our exciting new project.
私たちのスタートアップ企業は、わくわくする新しいプロジェクトのための資金の最初の分割分をちょうど受け取りました。
※ 新しい事業を立ち上げたばかりの会社が、計画通りに資金の一部を受け取って、ホッと一息ついている場面です。「tranche」は特に「資金」や「支払い」が複数回に分けられるときに非常によく使われる、ビジネスやニュースで頻繁に耳にする表現です。「first tranche」のように序数詞と組み合わせることで、何番目の分割かが明確になります。
For the advanced course, students were sorted into three tranches based on their research interests.
上級コースでは、学生たちは彼らの研究テーマに基づいて3つのグループ(分割)に分けられました。
※ 大学や専門学校で、生徒たちが自分の興味や専門分野によって、いくつかのグループに分けられている状況です。人や物を特定の基準で「分割してグループ化する」際にも「tranche」が使われます。少しフォーマルな場面でのグループ分けによく合います。「sorted into tranches」のように、「~に分けられる」という受動態で使われることが多いです。
The aid organization delivered the second tranche of food and water to the affected area.
その援助団体は、被災地域に食料と水の2回目の分割分を届けました。
※ 災害などで困っている地域へ、支援団体が食料や水などの物資を、一度にではなく、2回目として届けた場面です。物資の供給や配布が段階的に行われる際にも「tranche」は使われます。特に大規模な支援や計画的な供給の文脈で自然です。「deliver a tranche of X」のように「Xの一部を届ける」という形で使われます。
段階
プロジェクトや計画の進行における特定の段階やフェーズを指す。各段階は、目標達成に向けた一連の活動や成果物によって特徴づけられる。
The government released the first tranche of funds for the new school.
政府は新しい学校のための最初の段階の資金を放出しました。
※ これは、政府が新しい学校を建てるために、一度に全額を出すのではなく、まず第一弾の資金を支払った場面です。「tranche」は、特に大きな金額の資金やローンが、計画的に分割して支払われる際によく使われます。この文では、「最初の段階の資金」という意味で使われています。
Our team will launch the new app in several tranches.
私たちのチームは、新しいアプリをいくつかの段階に分けてリリースします。
※ これは、IT企業が新しいアプリを開発し、一度にすべての機能を公開するのではなく、少しずつ機能を増やしながら段階的にリリースしていく計画を話している場面です。「tranche」は、プロジェクトの進行や製品のリリースなどを、いくつかの区切りに分けて進める際にも使われます。「in several tranches」で「いくつかの段階に分けて」という意味になります。
The bank paid out the loan in two tranches.
銀行はそのローンを2つの段階に分けて支払いました。
※ これは、銀行が住宅ローンなどを貸し出す際に、例えば建設の進捗に合わせて、一度に全額を渡すのではなく、2回に分けて支払った場面です。金融の分野では、貸付金や投資、債券などが分割される際に「tranche」が非常によく使われます。「in two tranches」は「2つの段階で」という意味で、具体的な回数を示すことができます。
コロケーション
最初のトランシェ(分割された資金や資産)
※ 金融取引やプロジェクトファイナンスにおいて、資金を段階的に供給する際の最初の部分を指します。投資リスクに応じてトランシェを分けることが多く、'first tranche'は最もリスクが低いとされることが多いです。例えば、不動産投資信託(REIT)などで、優先的に配当を受け取れる部分を指すことがあります。使用頻度は高く、ビジネスシーンでよく使われます。
劣後トランシェ
※ 複数のトランシェが存在する際に、弁済順位が低い(劣後する)トランシェを指します。リスクが高い分、リターンも高くなる可能性があります。債券やローン担保証券(CLO)などの金融商品でよく見られ、投資家がリスク許容度に応じて選択できます。'mezzanine tranche'(中間トランシェ)という表現も関連して覚えておくと良いでしょう。
優先トランシェ
※ 弁済順位が最も高いトランシェ。リスクが低く、安定したリターンが期待できます。債券市場などで、機関投資家が好んで投資することが多いです。'first-loss piece'(最初の損失を負担する部分)の対義語として理解すると、より構造が把握しやすいでしょう。ビジネスの専門用語として頻繁に用いられます。
トランシェを放出する、分割された資金を放出する
※ プロジェクトや投資に対して、段階的に資金を供給することを意味します。通常、事前に定められた条件(プロジェクトの進捗状況など)が満たされた場合に、次のトランシェが放出されます。例えば、ベンチャーキャピタルがスタートアップ企業に投資する際に、複数回に分けて資金を供給するケースなどが該当します。ビジネスシーンで頻繁に使われる動詞+名詞のコロケーションです。
トランシェを割り当てる
※ 特定の投資家やプロジェクトに対して、トランシェを割り当てることを意味します。資金調達や資産配分の文脈でよく使用されます。例えば、ヘッジファンドが異なるトランシェの債券をポートフォリオに組み込む際に、それぞれのトランシェに資金を割り当てる、といった状況が考えられます。ビジネスシーンで頻繁に使われる表現です。
新たなトランシェの~
※ 「~」の部分には、通常、債券、株式、投資などの名詞が入り、新しい段階の資金調達や投資ラウンドを指します。例えば、'a new tranche of bonds'(新たなトランシェの債券)は、追加で発行される債券の一部を意味します。金融業界や投資の世界で頻繁に使われる表現です。
最終トランシェ
※ 分割された資金供給の最後の段階を指します。プロジェクトの完了や資金調達の完了を示すことが多いです。例えば、不動産開発プロジェクトの最終段階で、残りの資金が'the final tranche'として放出されることがあります。ビジネスシーンでよく使われる表現です。
使用シーン
経済学や金融学の研究論文で、債券や証券化商品の「トランシェ」を説明する際に使われます。例えば、「シニア・トランシェはリスクが低い」といった文脈で登場します。また、統計学の分野で、データを「段階」に分けて分析する際に、「〜のトランシェにおける特徴」のように用いられることもあります。
金融業界の報告書や契約書で、投資ポートフォリオや融資案件の「トランシェ」構造を説明する際に頻繁に使われます。例えば、「この債券はAランクのトランシェに属する」のように用いられます。また、プロジェクト管理において、作業を「段階」に分けて進捗を管理する際に、「第一トランシェの完了」といった表現が用いられることがあります。
ニュース記事や経済関連のドキュメンタリー番組で、金融市場の動向を解説する際に、「トランシェ」という言葉が使われることがあります。ただし、一般の会話でこの単語が使われることは稀です。例えば、「この金融商品のトランシェがデフォルトした」というニュースを聞くことがあるかもしれません。
関連語
類義語
分割払い、割賦。債務や料金などを複数回に分けて支払う際に用いられる。ビジネスや金融の文脈で頻繁に使用される。 【ニュアンスの違い】"tranche"は、全体の一部を指すのに対し、"installment"は分割された支払いの一回分を指す。"installment"は支払い方法に焦点を当てている。 【混同しやすい点】"tranche"は債券やローンなどの発行における区分けを指すが、"installment"は支払い方法そのものを指すため、対象が異なる。
全体の一部、分け前、取り分。食べ物や資源、仕事などを分割したものを指す。日常会話からビジネスまで幅広く使用される。 【ニュアンスの違い】"tranche"は通常、事前に決められた計画に基づいて分割されたものを指すのに対し、"portion"は必ずしも計画的でなくても良い。また、"tranche"は金融や投資の世界で使われることが多い。 【混同しやすい点】"portion"は可算名詞としても不可算名詞としても使用できるが、"tranche"は通常、可算名詞として扱われる。また、"tranche"はより専門的な文脈で使用される。
区分、部分、断片。全体をいくつかの部分に分けたものを指す。市場調査やデータ分析、ビジネス戦略などでよく使われる。 【ニュアンスの違い】"tranche"は主に金融取引における分割された部分を指すのに対し、"segment"はより広い意味で、様々な分野における区分けを指す。また、"segment"は、特定の属性や特徴を持つグループを指す場合もある。 【混同しやすい点】"tranche"は通常、金融商品やローンのリスクやリターンのレベルに基づいて分割されるが、"segment"は必ずしもそうではない。"segment"は、例えば、顧客層を年齢や収入などで区分けする際にも使用される。
薄切り、一片。ケーキやパンなどを薄く切ったものを指す。また、比喩的に、全体の一部を指すこともある。日常会話でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"tranche"は金融用語であり、よりフォーマルな文脈で使用されるのに対し、"slice"は日常的な表現であり、よりカジュアルな文脈で使用される。また、"tranche"は計画的な分割を意味するが、"slice"は必ずしもそうではない。 【混同しやすい点】"slice"は物理的なものを切った一片を指すことが多いが、"tranche"は金融商品やローンの分割された部分を指すため、対象が異なる。
分け前、分担、割り当て。何かを共有したり、分配したりする際に用いられる。株式の意味もある。日常会話からビジネスまで幅広く使用される。 【ニュアンスの違い】"tranche"は、特に金融取引における分割された部分を指すのに対し、"share"はより一般的な意味で、何かを分けることを指す。また、"share"は、株式や所有権を意味する場合もある。 【混同しやすい点】"tranche"は通常、リスクやリターンのレベルに基づいて分割されるが、"share"は必ずしもそうではない。また、"share"は動詞としても名詞としても使用されるが、"tranche"は通常、名詞として使用される。
配分、割り当て。資源や資金などを特定の目的や場所に割り当てることを指す。予算編成やプロジェクト管理などでよく使われる。 【ニュアンスの違い】"tranche"は金融取引における分割された部分を指すのに対し、"allocation"は資源や資金などを割り当てる行為そのものを指す。"allocation"は、より広い意味で使用される。 【混同しやすい点】"tranche"は名詞として、分割された部分そのものを指すが、"allocation"は名詞としても動詞としても使用される。また、"allocation"は、より計画的で組織的な配分を意味することが多い。
派生語
- entrench
『塹壕(ざんごう)に入れる』が原義で、そこから『(意見・習慣などを)確固たるものにする、深く根付かせる』という意味の他動詞になった。軍事用語から派生し、比喩的にビジネスや政治の文脈で、既存勢力や考え方を容易に覆せない状態を表す際に用いられる。例文:The company is trying to entrench its position in the market.(会社は市場での地位を確立しようとしている)。
『溝、堀、塹壕(ざんごう)』を意味する名詞。フランス語の『trancher(切る)』に由来し、土地を切り開いて作る溝を指す。軍事用語として、あるいは地質学で海底の深い溝を指す場合にも用いられる。比喩的に、社会的な隔たりや困難な状況を指すこともある。例文:the deep sea trench(深海海溝)。
- retrench
接頭辞『re-(再び)』と『trench』が組み合わさり、『再び溝を掘る』が原義。そこから『(費用などを)削減する、切り詰める』という意味の動詞になった。ビジネスや経済の文脈で、人員削減や経費削減などのリストラ策を指すことが多い。例文:The company had to retrench to survive.(会社は生き残るために人員削減をしなければならなかった)。
反意語
『全体、全部』を意味する名詞または形容詞。『tranche』が分割された一部分を指すのに対し、『whole』は分割されていない完全な状態を表す。金融の文脈で、『tranche』が分割された債権の一部であるのに対し、『whole loan』は分割されていない債権全体を指す。例文:the whole pie(ホールケーキ)、 the whole amount(全額)。
『総計、合計』を意味する名詞または動詞。『tranche』が分割された個々の部分を指すのに対し、『aggregate』はそれらを合計した全体を表す。経済学や統計学の文脈で、個々のデータを集計して全体像を把握する際に用いられる。例文:aggregate demand(総需要)。
- entirety
『全体、全部』を意味する名詞。『tranche』が分割された一部分であるのに対し、『entirety』は分割されていない完全な状態を指す。法律文書や契約書などで、完全性や網羅性を強調する際に用いられる。例文:the entire agreement(契約書全体)。
語源
"Tranche"は、フランス語の"tranche"(スライス、一片)に由来します。これはさらに、古フランス語の"tranchier"(切る)から来ており、最終的にはラテン語の"truncare"(切り落とす、切り詰める)にたどり着きます。つまり、もともとは何かを切り分けた「一片」や「スライス」を意味していました。金融の世界で「トランシェ」が使われる場合、債券やローンなどをリスクや満期などの特性によって分割した「一部分」を指します。例えば、ケーキを切り分けるように、全体のリスクを異なる部分に分割し、それぞれを異なる投資家に提供するイメージです。このように、語源から「分割された一部」という意味が、現代の金融用語としての意味合いにも繋がっています。
暗記法
「tranche」は金融におけるリスクの区分。巨大チーズを切り分けるように、金融商品を細分化し投資家層を広げた。1980年代の金融自由化で多用されたが、リーマンショックで負のイメージも。「段階」という比喩的用法もあるが、根底にはリスク管理の視点が。美しく飾られたケーキに毒が仕込まれているかのように、金融市場の複雑さとリスクを常に意識する必要がある。
混同しやすい単語
『tranche』と『trench』は、スペルが非常によく似ており、発音も母音部分がわずかに異なるだけなので混同しやすいです。『tranche』は金融用語で「(分割された)トランシェ」を意味しますが、『trench』は「溝、塹壕」という意味の名詞です。また、『trench coat(トレンチコート)』のように日常会話にも登場するため、意味の混同にも注意が必要です。発音記号で確認し、/æ/ と /ɛ/ の違いを意識しましょう。
『branch』はスペルの一部が共通しており、特に 'an' の部分が似ています。発音も、最初の音が /tr/ か /br/ かの違いで、後の部分は似ています。『branch』は「枝、支店」という意味で、金融機関の文脈では「支店」として登場する可能性もあり、文脈によっては意味の混同も起こりえます。語源的には、古フランス語の branche(枝)に由来し、ラテン語の branca(足)に関連します。treeのbranchをイメージすると覚えやすいでしょう。
『ranch』もスペルの一部('anch')が共通しており、発音も最初の音が /tr/ か /r/ かの違いで、後の部分は似ています。『ranch』は「牧場」という意味で、金融用語の『tranche』とは全く異なる意味を持ちます。アメリカ英語では一般的な単語で、『ranch dressing(ランチドレッシング)』のように、日常会話にも登場します。発音記号で確認し、/tr/ と /r/ の違いを意識しましょう。
『launch』はスペルの一部('aunch')が共通しており、発音も最後の音が似ています。『launch』は「開始する、打ち上げる」という意味の動詞で、ロケットの打ち上げや新製品の発売など、様々な文脈で使用されます。ビジネスシーンでも頻繁に使われる単語なので、『tranche』との混同を避けるためには、文脈をよく理解し、発音を正確に覚えることが重要です。語源的には、古フランス語の lancer(投げる)に由来します。
『French』は、スペルの中に 'r', 'a', 'n' が含まれており、視覚的に類似性があります。発音も、最初の音が /fr/ である点が異なりますが、後の音は似ています。『French』は「フランス語、フランスの」という意味で、形容詞または名詞として使用されます。金融の文脈で『French』が登場することは少ないですが、例えば「フランスの銀行が発行するトランシェ」のように、文脈によっては関連する可能性があります。発音記号を確認して/frentʃ/であることを確認しましょう。
『entrench』は、スペルの一部('rench')が共通しており、特に語尾が似ています。また、接頭辞 'en-' が付いているため、意味も「(地位などを)強固にする、深く根付かせる」という意味になり、『trench(塹壕)』と関連付けやすく、意味の混同を招く可能性があります。発音も、最初の音が /ɪn/ である点が異なりますが、後の音は似ています。ビジネスシーンでは「既得権益を守る」のような意味合いで使われることもあります。発音記号で確認し、/ɪnˈtrentʃ/であることを意識しましょう。
誤用例
The verb 'tranche out' is not a standard usage. While 'tranche' refers to a portion or segment, especially of a financial deal, using it as a verb meaning 'to distribute' is incorrect. A more appropriate verb in this context would be 'disburse' or 'allocate.' Japanese speakers might mistakenly create 'tranche out' by directly translating the idea of '分割して配る (bunkatsu shite kubaru)' into English, applying the noun 'tranche' as a verb, which doesn't align with common English usage. The error arises from assuming a direct equivalence between Japanese and English grammatical structures, a common pitfall in language learning.
While 'tranche' can technically refer to a portion of something non-financial, it's primarily used in financial contexts. Using it to describe a portion of an apology sounds unnatural and overly formal. A more natural and impactful phrasing would be to expect a 'full and complete' apology. The error stems from a misunderstanding of the word's register and common usage. Japanese speakers might be drawn to 'tranche' because they want to convey a structured or phased approach, perhaps mirroring the Japanese concept of '段階的な (dankaiteki na)' which emphasizes steps or phases. However, in English, directly applying 'tranche' to something like an apology sounds awkward and misses the nuance of genuine remorse. It's crucial to recognize that not all structured concepts translate directly across languages.
While 'tranche' refers to a portion or segment, it typically applies to things that are divided or released in stages over time, such as financial instruments or funding. Releasing a single 'tranche' of information doesn't quite make sense unless there's an expectation of future releases. 'Set' or 'batch' would be more appropriate. The error arises from a subtle misunderstanding of the temporal aspect inherent in the word 'tranche'. Japanese speakers may see 'tranche' as simply meaning '一部 (ichibu)' or '一部分 (ichibubun)' (a part or portion), without fully grasping that it implies a sequential release. This highlights the importance of understanding not just the denotation but also the connotation and typical usage patterns of a word. Consider the underlying cultural difference: the Japanese emphasis on gradualism and phased implementation might lead to a natural inclination to see things in 'tranches,' even when that concept isn't naturally expressed in English.
文化的背景
「tranche」は金融の世界で、リスクや満期などの特性が異なる「一区切り」「一塊」を意味する言葉として定着していますが、その背景には、複雑な金融取引を理解しやすく分割し、投資家層を広げるという意図があります。まるで、巨大なチーズを切り分けて、それぞれ異なる味わいや熟成度を楽しむように、金融商品も細分化され、異なるリスク許容度を持つ投資家に提供されるのです。
この言葉が頻繁に使われるようになったのは、1980年代以降の金融自由化と金融工学の発展が背景にあります。住宅ローンを担保とした証券化商品(MBS)などがその典型例で、様々なリスクの「tranche」に分けられ、格付け機関によって評価されました。しかし、2008年のリーマンショックでは、リスクの高い「tranche」に大量の不良債権が潜んでいたことが明らかになり、「tranche」という言葉は、複雑で不透明な金融商品の代名詞として、負のイメージを帯びるようになりました。
「tranche」は、単なる金融用語を超え、現代金融システムの光と影を象徴する言葉と言えるでしょう。金融商品は、リスクを細分化し、多様な投資家ニーズに応えることで、経済成長を支えてきました。しかし、その複雑さゆえに、リスクが隠蔽され、金融危機を引き起こす可能性も孕んでいます。まるで、美しく飾られたケーキの中に、毒が仕込まれているかのように。投資家は、「tranche」という言葉の背後にある、金融市場の複雑さとリスクを常に意識する必要があるのです。
さらに、この言葉は比喩的に、プロジェクトや計画の「段階」「フェーズ」を意味することもあります。たとえば、資金調達を複数の「tranche」に分けて行う場合、各段階の進捗状況に応じて資金を投入することで、リスクを分散することができます。この用法は、金融に限らず、ビジネス全般で用いられるようになり、「tranche」という言葉は、計画的な分割と段階的な進捗を意味する、汎用性の高い言葉として、その意味を広げつつあります。しかし、その根底には、金融の世界で培われた、リスク管理という視点があることを忘れてはなりません。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、稀に語彙問題
- 頻度と級・パート: 準1級以上で稀に出題
- 文脈・例題の特徴: 経済、金融関連のニュース記事を扱った長文で登場する可能性あり
- 学習者への注意点・アドバイス: 金融用語としての意味を理解しておく。分割されたもの、一区切りといったニュアンスを掴む。
- 出題形式: Part 7 (長文読解)
- 頻度と級・パート: TOEIC L&R Test 800点以上を目指す場合に重要な語彙
- 文脈・例題の特徴: 金融、投資関連の記事やビジネスメールで使われる
- 学習者への注意点・アドバイス: 分割された資金、段階的な投資といった意味合いで使われることが多い。関連語(installment, portion)との区別を意識。
- 出題形式: リーディングセクション
- 頻度と級・パート: 高頻度ではないが、アカデミックな文章で登場する可能性あり
- 文脈・例題の特徴: 経済学、社会学などの分野で、統計やデータ分析の結果を説明する際に使われる
- 学習者への注意点・アドバイス: 抽象的な概念を説明する文脈で使われることが多い。文脈から意味を推測する練習が必要。
- 出題形式: 長文読解
- 頻度と級・パート: 難関大学で出題される可能性あり
- 文脈・例題の特徴: 経済、国際関係などのテーマで登場する可能性あり
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から意味を推測する能力が重要。難しい単語だが、意味を推測できれば正答できる可能性も。