lost
母音 /ɔː/ は日本語の「オー」よりも口を大きく開け、喉の奥から出すような音です。日本語の「オ」の音で発音すると、ネイティブには別の単語に聞こえる可能性があります。また、語尾の /st/ は無声子音の連続で、息だけで発音するイメージです。/t/ は破裂音ですが、/s/ の影響で弱くなることがあります。
見失った
物理的に物を失った場合や、道に迷った場合など、文字通り所在が分からなくなった状態を指す。比喩的に、希望や自信を失った状態にも使う。
Oh no, I can't find my phone. I think it's lost.
ああ、大変だ、携帯が見つからない。なくしちゃったみたい。
※ 朝、家を出る前に携帯を探しているけれど、どこにも見当たらない、という焦りの場面です。「lost」は「見失った」「なくした」状態を表す形容詞です。ここでは「携帯が見つからない」という困った状況で使われています。「I think it's lost.」で「なくしちゃったみたいだ」という推測を表します。
We looked at the map, but we were completely lost in the city.
地図を見たのに、私たちは街で完全に道に迷ってしまった。
※ 初めての海外旅行で、大きな都市の複雑な道に戸惑いながら、地図を広げて途方に暮れている二人の場面です。「lost」は道に迷った状態を表すときにも非常によく使われます。「be lost」で「道に迷っている」という意味になります。「completely」は「完全に」という意味で、迷い具合を強調しています。
A small child cried loudly because he was lost in the big store.
小さな子どもが、大きな店で迷子になってしまい、大声で泣いていた。
※ 週末の賑やかなデパートで、親とはぐれてしまった小さな男の子が、不安と寂しさで大声で泣き出している場面です。「lost」は「迷子になった」という意味でも使われます。特に子どもが親と離れて見つけられなくなった状況でよく使われる表現で、「be lost」で「迷子になっている状態」を表します。
無駄になった
機会や時間、能力などが活用されず、有効に使われなかった状態。例えば、'lost time' は「無駄にした時間」を意味する。
She felt her whole afternoon was lost when the doctor's appointment was suddenly cancelled.
医師の予約が突然キャンセルされた時、彼女は午後全体が無駄になったと感じた。
※ 突然のキャンセルにがっかりし、計画が台無しになった女性の情景が目に浮かびますね。「lost」が時間に対して使われ、「無駄になった」という残念な感覚を表す典型的な例です。このように「(誰かの)時間や労力が無駄になる」という時に「(人称代名詞)'s time/effort is lost」という形でよく使われます。
All his hard work on the project felt lost when they decided to stop it.
プロジェクトを中止すると決まった時、彼のこれまでの努力はすべて無駄になったと感じた。
※ 頑張って取り組んでいたプロジェクトが中止になり、報われない努力に徒労感を感じている男性の気持ちが伝わってきますね。「hard work(努力)」という頑張りに対して「lost」が使われ、「報われない」「無駄になった」という気持ちを表しています。時間と同様に、努力や労力が無駄になったと感じる時にも「lost」は非常によく使われます。
He regretted that the chance to study abroad was lost because he didn't apply on time.
彼は、時間内に申し込まなかったために留学のチャンスが無駄になったことを後悔した。
※ せっかくの留学の機会を逃してしまい、後悔の念にかられている男性の姿が想像できます。「chance(チャンス)」や「opportunity(機会)」といったものが「lost」になることで、「失われた」「逃して無駄になった」という意味になります。何か良い機会を逃したことによる後悔や残念な気持ちを表す際によく使われる表現です。
負けた
競争や争いで勝利できなかった状態。試合やゲームだけでなく、議論や選挙など、広い意味での「負け」を指す。
My team lost the final game, and we all felt very sad.
私のチームは決勝戦で負けてしまい、みんなとても悲しかったです。
※ 一生懸命練習したチームが、最後の試合で負けてしまい、肩を落としている様子を想像してみてください。「lost」は「lose(負ける)」の過去形です。スポーツの試合や競争で「負ける」という、この単語の最も一般的で中心的な使い方です。
He lost the board game to me and looked a little upset.
彼はボードゲームで私に負けて、少し悔しそうな顔をしました。
※ 友達同士でボードゲームをしていて、負けた方がちょっとだけ不機嫌になっている、そんな日常のワンシーンです。「lost to someone」で「〜に負ける」という形で、対戦相手を示す時によく使われます。身近なゲームや勝負で負ける場面で自然に使えます。
The company lost the big contract, but they started preparing for the next one.
その会社は大きな契約を逃しましたが、次の機会に向けて準備を始めました。
※ 重要なビジネスの競争に敗れたものの、前向きに次へと進もうとする企業の姿勢が描かれています。単に「試合」だけでなく、「契約やチャンスを勝ち取れずに負ける(失う)」といったビジネスの文脈でも「lost」は使われます。この場合、「契約を失った」つまり「契約を勝ち取れなかった」という意味になります。
コロケーション
勝ち目のない戦い、無駄な努力
※ 「失われた大義」という直訳から、もはや成功の見込みがない計画や取り組みを指します。歴史的な出来事や、個人的な人間関係など、様々な文脈で使用されます。特に、過去の過ちを正そうとする努力や、実現不可能な理想を追い求める状況に対して使われることが多いです。例えば、ビジネスシーンで「このプロジェクトはもはやlost causeだ」と言えば、中止を検討すべき状況であることを示唆します。
翻訳によって本来の意味やニュアンスが失われること
※ 言語間の文化的背景や微妙な表現の違いによって、正確な翻訳が困難な状況を表します。映画のタイトルとしても有名ですが、単に言語的な問題だけでなく、文化的な誤解やコミュニケーションの行き違い全般を指す場合もあります。例えば、ジョークや皮肉は特にlost in translationになりやすいです。ビジネスの国際会議や、文学作品の翻訳など、様々な場面で問題となることがあります。
(命令形で)失せろ、消えろ
※ 非常に強い拒絶や怒りを表す口語的な表現です。相手に対して不快感や敵意を露わにする際に使われます。丁寧な言葉遣いではないため、親しい間柄や、フォーマルではない状況でのみ使用すべきです。ビジネスシーンや公的な場では絶対に避けるべき表現です。類似の表現として"go away"がありますが、"get lost"の方がより強いニュアンスを持ちます。
途方に暮れる、見当がつかない
※ 文字通りには「海で迷う」という意味ですが、比喩的には、混乱してどうすれば良いかわからない状態を表します。特に、複雑な問題に直面したり、方向性を見失ったりした時に使われます。例えば、新しい仕事で右も左もわからない状況や、人生の目標を見失った時に「I feel lost at sea」のように表現できます。ビジネスシーンでは、プロジェクトの方向性が見えなくなった場合などに用いられます。
言葉を失う、言い表せない
※ 驚き、感動、悲しみなど、強い感情によって言葉が出てこない状態を表します。ポジティブな感情、ネガティブな感情のどちらにも使用できます。例えば、素晴らしい景色を見た時や、予期せぬプレゼントをもらった時に「I was lost for words」のように表現できます。フォーマルな場面でも使用できる、比較的汎用性の高い表現です。
考えにふける、物思いに沈む
※ 周囲の状況に気づかないほど、深く考え込んでいる状態を表します。瞑想や内省的な活動をしている時によく見られる状態です。例えば、公園でベンチに座ってぼんやりしている人に対して「He seems lost in thought」のように表現できます。文学作品や詩などでよく用いられる、ややロマンチックな表現です。
歴史から忘れ去られた、歴史に埋もれた
※ 過去の出来事や人物が、記録や記憶から失われてしまった状態を表します。重要な出来事であったにも関わらず、後世に伝わらなかった場合に用いられます。例えば、古代文明や、無名の英雄などに対して「lost to history」のように表現できます。歴史学や考古学などの分野でよく用いられる、学術的な表現です。
使用シーン
学術論文や研究発表で、データや情報が失われたり、見つからなくなったりした状況を説明する際に使われます。例:「先行研究の多くが、データの欠損により分析から除外された(Many previous studies were lost from the analysis due to missing data.)」。また、抽象的な意味で、機会や資源を失うことを示す場合にも使われます。例:「このアプローチの採用により、新たな発見の機会が失われた(This approach resulted in lost opportunities for new discoveries.)」。文体はフォーマルで、客観的な記述が求められます。
ビジネス文書や会議で、機会損失、紛失物、またはプロジェクトの失敗などを説明する際に使われます。例:「顧客からの信頼を失った(We lost the trust of our customers.)」、「重要な書類を紛失した(We lost important documents.)」、「市場シェアを失った(We lost market share.)」。報告書では、業績不振の原因分析などで使用されます。文体はフォーマルで、事実に基づいた記述が求められます。
日常会話で、物をなくしたり、道に迷ったり、試合に負けたりするなど、様々な状況で使用されます。例:「鍵をなくした(I lost my keys.)」、「道に迷った(I'm lost.)」、「試合に負けた(We lost the game.)」。感情的な表現を伴うことも多く、親しい間柄での会話でよく用いられます。また、「lost cause(見込みのないこと)」のようなイディオムも日常会話で使われます。
関連語
類義語
『見当たらない』『所在不明』という意味で、物や人がどこにあるべきか分からなくなった状態を表す。警察や報道でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『lost』よりも客観的な記述で、感情的なニュアンスは薄い。単に場所が分からないという事実を伝える。 【混同しやすい点】人に対して使う場合、『lost』は感情的な迷いや道に迷った状態、『missing』は行方不明というニュアンスの違いがある。例えば、迷子の子は『lost child』、行方不明者は『missing person』。
- gone
『どこかへ行ってしまった』『失われた』という意味で、存在していたものがなくなった状態を表す。日常会話で広く使われる。 【ニュアンスの違い】『lost』よりも完了形に近いニュアンスを持ち、取り戻せない、または戻ってこないという含みがある。 【混同しやすい点】『gone』は状態を表す形容詞的な用法も多く、『lost』が能動的な探索を想起させるのに対し、『gone』は諦念や喪失感を伴うことが多い。例えば、『gone missing』という表現もある。
- misplaced
『置き場所を間違えた』という意味で、一時的にどこに置いたか分からなくなった状態を表す。日常会話でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『lost』よりも一時的な状態であり、後で見つかる可能性が高いというニュアンスを含む。紛失というよりは、うっかり置き忘れたという状況。 【混同しやすい点】『misplaced』は他動詞の過去分詞形で、目的語が必要。例えば、『I misplaced my keys.』のように使う。『lost』は自動詞的な用法もあるため、使い分けに注意が必要。
『迷い込む』『はぐれる』という意味で、本来いるべき場所から離れてしまった状態を表す。動物や人が意図せず迷子になった状況で使われる。 【ニュアンスの違い】『lost』よりも偶発的な要素が強く、自らの意思とは関係なく道に迷ったというニュアンスを含む。特に動物に対して使われることが多い。 【混同しやすい点】『stray』は動詞としても形容詞としても使えるが、『lost』は形容詞が主。『stray dog』は『迷い犬』、『lost dog』は『失われた犬』というニュアンスの違いがある。
- vanished
『跡形もなく消え去った』という意味で、完全に姿を消してしまった状態を表す。文学作品やミステリー小説でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『lost』よりも劇的で、不可解な消滅というニュアンスが強い。日常会話よりも、やや大げさな表現。 【混同しやすい点】『vanished』は自動詞であり、他動詞として使えない。また、『lost』が物理的な紛失だけでなく、感情的な喪失も表すのに対し、『vanished』は物理的な消失に限定されることが多い。
『道に迷って』『誤った道へ』という意味で、物理的な道だけでなく、比喩的な意味でも使われる。道徳的な逸脱や誤った方向へ進むことを表す。 【ニュアンスの違い】『lost』よりも方向性の誤りや逸脱というニュアンスが強く、道徳的な含みを持つことがある。 【混同しやすい点】『astray』は副詞として使われることが多く、動詞を修飾する。『lead someone astray』(人を惑わす) のように使う。また、『go astray』で「道に迷う」「堕落する」という意味になる。
派生語
『失う』という意味の動詞。『lost』はその過去形・過去分詞。元々は『解き放つ』という意味があり、そこから『手放す』『失う』へと意味が変化。日常会話で頻繁に使われる基本語彙。
『損失』『紛失』を意味する名詞。『lose』から派生し、失うという行為やその結果を指す。ビジネスシーン(損益計算書など)や、悲しみ・喪失を表す文脈で使われる。抽象的な意味合いも持つ。
『敗者』『負け犬』という意味の名詞。『lose』に人を表す接尾辞『-er』が付いた形。競争社会における勝敗や、目標を達成できなかった人を指す。ネガティブな意味合いが強い。
- lost and found
『遺失物取扱所』という意味の名詞句。『lost』と『found』(findの過去・過去分詞)を組み合わせたもので、失われた物と見つかった物を扱う場所を指す。空港や駅など公共の場所でよく見かける。
反意語
『見つけた』という意味の動詞findの過去形・過去分詞。『lost』が失われた状態であるのに対し、『found』は見つかった状態を表す。物理的な物だけでなく、情報や解決策など抽象的なものにも使える。
- kept
『保った』という意味の動詞keepの過去形・過去分詞。『lost』が手元から離れた状態であるのに対し、『kept』は維持・保持された状態を示す。特に、秘密や約束などを『kept』する場合は、『lost』とは対照的な意味合いを持つ。
- recovered
『回復した』という意味の動詞recoverの過去形・過去分詞。失われた物や状態を取り戻した場合に使われる。『lost』が一時的な喪失を示唆するのに対し、『recovered』は喪失からの回復を強調する。病気からの回復などにも用いられる。
語源
"lost"は「失う」を意味する動詞 "lose" の過去分詞形です。"lose" の語源は、古英語の "losian"(失う、失われる)に遡ります。さらに遡ると、ゲルマン祖語の "*lausan"(分ける、切り離す)にたどり着きます。この「分ける、切り離す」という概念が、「手放す」や「失う」という意味に発展したと考えられます。日本語で考えると、「手放す」という行為は、何かを「分ける」行為であり、結果としてそれを「失う」ことにつながります。このように、"lost" は、何かを手放し、自分から切り離された状態を表す言葉として、長い時間をかけて意味を深めてきた単語と言えるでしょう。
暗記法
「lost」は単なる紛失ではない。自己喪失、道徳的迷い、社会からの疎外…西洋文化における喪失の根源的テーマを象徴する言葉だ。『失楽園』のアダムとイブ、第一次大戦後の「失われた世代」…文学はアイデンティティの危機や精神的彷徨を描き出す。現代では自分探しの肯定や情報過多による本質の見失いも。「道徳的に迷う」という表現も重要だ。彷徨える魂を映す鏡、それが「lost」。
混同しやすい単語
発音が /luːs/ と似ており、特に語尾の 's' の有無に注意が必要です。スペルも 'lost' と 'loose' は 'o' の数が違うだけなので、視覚的にも混同しやすいです。『loose』は『ゆるい』という意味で、動詞としても使われます。日本人学習者は、発音記号を確認し、語尾の 's' を意識して発音練習すると良いでしょう。また、『loose』は『解放する』という意味の『release』と語源的に関連があります。
『lost』は『失う』という動詞『lose』の過去形・過去分詞ですが、『loss』は名詞で『損失』や『紛失』という意味です。発音も /lɔːs/ と /lɔːst/ で母音と語尾の子音が異なります。スペルも似ているため、文脈で品詞と意味を判断する必要があります。例えば、『損失を被った』は 'suffered a loss' と表現します。
『lost』と『last』は、どちらも4文字で始まりの文字が 'l' であるため、スペルが似ていると感じやすいです。しかし、発音は /læst/ と /lɔːst/ で大きく異なります。『last』は『最後の』という意味で、時間的な概念を表すことが多いです。日本人学習者は、発音を区別するために、それぞれの単語を意識的に発音練習すると良いでしょう。語源的には、『last』は『痕跡』を意味する言葉に由来し、それが『最後』という意味に発展しました。
『lust』は『強い欲望』や『性欲』という意味で、発音は /lʌst/ と『lost』の /lɔːst/ に母音の音の違いがあります。スペルも似ているため、文脈によっては誤解を招く可能性があります。特に、フォーマルな場面では使用を避けるべき単語です。心理学や文学作品でよく登場します。
『list』は『リスト』という意味で、発音は /lɪst/ と『lost』の /lɔːst/ で母音と語尾の子音が異なります。スペルも似ているため、特に聞き取りの際に混同しやすいです。例えば、買い物リストは 'shopping list' と表現します。日本人学習者は、発音記号を確認し、それぞれの単語を意識的に発音練習すると良いでしょう。
『lot』は『たくさん』や『運』という意味で、発音は /lɒt/ と『lost』の /lɔːst/ で母音と語尾の子音が異なります。スペルも似ているため、特に会話の中で混同しやすいです。例えば、『たくさんの』は 'a lot of' と表現します。日本人学習者は、発音記号を確認し、それぞれの単語を意識的に発音練習すると良いでしょう。また、'lottery'(宝くじ)のように、『運』に関連する単語としても使われます。
誤用例
日本語の『顔を失う』を直訳した結果、文法的に正しいものの、意味が通じにくい表現になる典型例です。英語の慣用句『lose face』は、文字通り顔を失うのではなく、『面目を失う』『恥をかく』という意味を持ちます。日本語では『顔』という言葉が名誉や体面を象徴しますが、英語でも同様の概念が存在し、それが『face』という単語に凝縮されています。冠詞『my』をつけてしまうと、文字通り自分の顔の一部を失ったと解釈されかねません。
『I'm lost.』は文法的に正しいですが、状況によってはぶっきらぼうに聞こえることがあります。特に、道に迷って人に尋ねる場合など、相手に手間をかけさせているという意識を示すために、丁寧な表現が好まれます。『I'm afraid I'm lost.』とすることで、『道に迷ってしまって申し訳ないのですが』というニュアンスが加わり、より丁寧で控えめな印象を与えます。これは、直接的な表現を避け、相手への配慮を示す日本的なコミュニケーションスタイルと対照的です。英語圏では、特に見知らぬ人に話しかける際には、このように婉曲的な表現を用いることで、円滑なコミュニケーションを心がけることが重要です。
『The game was lost.』は『試合は負けた』という意味で正しいですが、『lost』の持つ『見込みがない』というニュアンスを強調したい場合、『The game was a lost cause.』という表現がより適切です。これは、試合がもはや勝利の見込みがない、どうしようもない状況だったことを示唆します。日本語の『負け戦』に近いニュアンスです。この表現は、単に試合の結果を述べるだけでなく、状況の絶望感や諦めといった感情を含んでいます。ビジネスシーンなどでも、プロジェクトや交渉が失敗に終わったことを表現する際に用いられます。日本語では『万事休す』といった表現が近いでしょう。
文化的背景
「lost」は、単に物を失うだけでなく、自己喪失や道徳的迷い、社会からの疎外といった、より深い精神的、文化的意味合いを帯びる言葉です。彷徨う魂、見失われた世代、失われた楽園など、喪失は西洋文化において根源的なテーマであり、「lost」はその感情を象徴的に表現します。
文学作品における「lost」の用法は、登場人物のアイデンティティの危機や、社会からの疎外感を浮き彫りにします。例えば、ミルトンの『失楽園』(Paradise Lost)は、アダムとイブが楽園を追放される物語であり、人類の原罪と、そこから生じる喪失感を描いています。この作品における「lost」は、神との繋がりを失い、罪深き世界へと追放された人間の悲哀を象徴しています。また、ヘミングウェイの『日はまた昇る』(The Sun Also Rises)に登場する「失われた世代」(Lost Generation)という言葉は、第一次世界大戦後の価値観の崩壊と、未来への希望を失った若者たちの姿を表現しました。彼らは戦後の混乱の中で、目的を見失い、人生の方向性を見定められずに彷徨いました。このように、「lost」は、特定の時代や社会における精神的な喪失を象徴する言葉として用いられることがあります。
現代社会においては、「lost」は自己啓発や精神世界を探求する文脈でも頻繁に用いられます。自分らしさを見失ったと感じる人々は、「自分探しの旅」(finding yourself)に出かけたり、「道に迷うこと」(getting lost)を肯定的に捉え、予期せぬ発見や成長の機会と捉えたりします。これは、物質的な豊かさとは裏腹に、精神的な充足感を求める現代人の心理を反映しています。また、インターネットやSNSの普及により、情報過多の時代においては、本当に大切なものを見失いがちです。そのため、「lost」は、情報に溺れ、本質を見失った状態を指す言葉としても使われます。
さらに、「lost」は道徳的な迷いを表すこともあります。「道徳的に迷う」(morally lost)という表現は、善悪の判断がつかなくなり、誤った道に進んでしまうことを意味します。これは、社会規範や倫理観が揺らぐ現代において、ますます重要な意味を持つようになっています。このように、「lost」は、単なる物理的な喪失だけでなく、精神的な彷徨、道徳的な迷い、社会からの疎外など、多岐にわたる意味合いを持つ言葉として、私たちの文化に深く根付いているのです。
試験傾向
- 出題形式: 語彙問題、長文読解、リスニング
- 頻度と級・パート: 準1級、1級で頻出。2級でも稀に出題。リスニングは全級
- 文脈・例題の特徴: 幅広い文脈で登場。物語、ニュース記事、エッセイなど
- 学習者への注意点・アドバイス: 「失われた」「道に迷った」「途方に暮れた」など複数の意味を理解。過去分詞、形容詞としての用法を区別。be lost in ~ (~に夢中になる) のようなイディオムも重要
- 出題形式: Part 5 (短文穴埋め)、Part 7 (長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 5, 7で頻出
- 文脈・例題の特徴: ビジネス関連の文書(メール、報告書、広告など)。機会損失、紛失物などの文脈
- 学習者への注意点・アドバイス: 「失われた」「紛失した」の意味で使われることが多い。機会損失 (lost opportunity) などの複合語に注意。文脈から適切な意味を判断する。
- 出題形式: リーディング
- 頻度と級・パート: リーディングセクションで頻出
- 文脈・例題の特徴: アカデミックな文章(科学、歴史、社会科学など)。抽象的な概念を説明する文脈で使われる
- 学習者への注意点・アドバイス: 「失われた」「見失われた」の意味合いで、抽象的な概念(例えば、失われた文明、失われた機会)に使われることが多い。文脈理解が重要。
- 出題形式: 長文読解、語彙問題
- 頻度と級・パート: 難関大学で頻出
- 文脈・例題の特徴: 幅広いテーマの文章(評論、物語、科学記事など)。抽象的な内容や比喩表現を含む場合もある
- 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な意味に加え、文脈に応じた柔軟な解釈が必要。「見失う」「途方に暮れる」などの意味合いも重要。比喩的な用法にも注意。