pass over
第一音節の 'pass' は、日本語の『パス』よりも口を横に開いて短く『パァ』と発音し、無声音の 's' で終わります。続く 'over' は二音節語で、二つ目の音節 (ər) は弱く曖昧母音で発音します。全体として、第一音節に強勢があります。'over' の 'o' は二重母音 /oʊ/ で、日本語の『オ』から『ウ』へスムーズに変化するイメージです。
専門的な内容に関するご注意
このページには、健康、金融、法律など、専門的な知識を必要とする内容が含まれている可能性があります。本サイトの情報は学習目的で提供されており、専門家による助言の代わりとなるものではありません。重要な判断を行う際には、必ず資格を持つ専門家にご相談ください。
見過ごす
意図的ではなく、うっかり見逃してしまうニュアンス。注意不足や忙しさなどが原因であることが多い。例文:I passed over a mistake in your report.(報告書の誤りを見過ごしてしまった)
I was looking for my keys on the table, but I accidentally passed over them because they were under a book.
テーブルで鍵を探していたのですが、本の陰になっていたのでうっかり見過ごしてしまいました。
※ 探し物が見つからない時、目の前にあるのに気づかないという、誰もが経験する状況です。この例文では、鍵が「本の陰にあった」という具体的な状況が、なぜ見過ごしたのかを鮮明に伝えています。「accidentally(うっかり)」という言葉で、意図せず見過ごした様子がよくわかります。
The manager decided to pass over Sarah for the promotion, choosing someone with more experience.
部長はサラを昇進候補から外すことに決め、もっと経験のある人を選びました。
※ この例文は、ビジネスの場で「ある人を選ばない」「候補から外す」という状況を表しています。サラが昇進できなかったのは、彼女がダメだからではなく、もっと経験のある人が選ばれたという理由が加わることで、状況がよりリアルに感じられます。目標達成のために、敢えて特定の選択肢を「見過ごす」というニュアンスです。
During the family meeting, we decided to pass over the difficult topic of money and discuss it later.
家族会議の間、私たちは難しいお金の話題に触れないことに決め、後で話し合うことにしました。
※ 家族や友人との会話で、触れたくない、あるいは今は議論したくない話題を「飛ばす」「後回しにする」という状況を描写しています。誰もが経験するような、ちょっと気まずいけれど現実的な場面です。「difficult topic(難しい話題)」という表現が、その話題を「見過ごす」理由をはっきりと示しています。
昇進させない
昇進や昇格の機会を意図的に与えないこと。能力不足や人間関係などが理由となる。例文:He was passed over for promotion.(彼は昇進を見送られた)
He felt sad because they passed him over for the promotion again.
彼はまた昇進させられて、とてもがっかりした。
※ オフィスで、期待していた人が昇進リストに自分の名前がないのを見て、肩を落としている情景が目に浮かびますね。「again(また)」が入ることで、彼が何度も同じ経験をしている落胆が伝わります。ビジネスの場で、誰かが昇進の機会を逃した時に非常によく使われる表現です。
The company decided to pass her over for the manager position this year.
会社は今年、彼女をマネージャーのポストに昇進させないことに決めた。
※ これは、会社や上層部が「誰かを昇進させない」という決定を下した場面です。会議室で、責任者が人事について話しているような客観的な状況説明として使われます。'pass over' の後に「for + 役職/地位」が続くことで、どの役職への昇進が見送られたのかが明確になります。
She worked really hard, but they passed her over for the big promotion.
彼女は本当に一生懸命働いたのに、その大きな昇進からは外されてしまった。
※ これは、誰かの努力が報われず、昇進を見送られてしまった過去の出来事を話す場面です。友人がカフェで、昔の同僚の不遇について残念そうに話しているような情景が想像できますね。「big promotion(大きな昇進)」という言葉で、その昇進がどれほど重要だったかが伝わります。
無視する
相手の意見や要求を意図的に無視すること。軽視したり、反対したりする意図が含まれる。例文:The committee passed over my suggestion.(委員会は私の提案を無視した)
I worked so hard, but they passed over me for the new project.
私は一生懸命頑張ったのに、新しいプロジェクトには選ばれませんでした。
※ 会社で新しいプロジェクトのメンバー発表があり、あなたは選ばれると信じていたのに、自分の名前が呼ばれず、がっかりしている様子です。「pass over」は、選考や昇進などで「候補から外される」「見送られる」という文脈で非常によく使われます。努力が報われず、残念な気持ちを表す時にぴったりです。
During the meeting, they passed over my important suggestion.
会議中、彼らは私の重要な提案を無視しました。
※ あなたが会議で勇気を出して出した良い提案が、誰にも真剣に検討されず、次の議題に移ってしまった瞬間です。少し悔しい気持ちが伝わります。ここでは「pass over」が「議論せずに飛ばす」「意図的に触れない」という意味で使われています。特に、重要であるはずのものが無視される状況で使われることが多いです。
I often pass over the long introductions in thick books.
分厚い本の長い導入部分は、よく読み飛ばします。
※ あなたは分厚い本を読んでいますが、まだ本題に入らない長い「はじめに」の部分を、さっとページをめくって読み進めているところです。この「pass over」は、本や文章の中で「興味のない部分や不要な部分を飛ばして読む」という意味で使われます。「skip」と似たニュアンスですが、「pass over」はより意識的に「見送る」感じが出ます。
コロケーション
昇進の機会を誰かに与えずに見送る
※ この表現は、会社や組織内で、ある人が昇進の候補者であったにもかかわらず、昇進させずに他の人を選んだ状況を指します。単に「昇進させない」だけでなく、「昇進の順番を飛ばされた」「期待されていたのに裏切られた」というニュアンスを含みます。ビジネスシーンでよく使われ、人事評価やキャリア形成において重要な意味を持ちます。例えば、「He was passed over for promotion despite his excellent performance.(彼は優秀な成績にもかかわらず昇進を見送られた)」のように使います。
沈黙のうちにやり過ごす、触れずに済ませる
※ このフレーズは、不都合な事実、議論を呼びそうな話題、あるいは恥ずかしい出来事などについて、あえて言及せずに、黙ってやり過ごすことを意味します。意図的に無視することで、事態の悪化を防いだり、関係者の感情に配慮したりする目的があります。たとえば、会議で問題点が指摘された際に、上司が「Let's pass over this in silence.(この件は触れないでおきましょう)」と言うことで、議論を打ち切るような場面で使われます。形式ばった文脈や、繊細な状況で用いられることが多いです。
間違いを見過ごす、大目に見る
※ この表現は、誰かが犯した小さなミスや過ちを、厳しく咎めずに許容することを意味します。単に「見逃す」だけでなく、「寛大な心で受け入れる」「あえて問題にしない」というニュアンスが含まれます。たとえば、上司が部下の些細なミスに対して「I'll pass over this mistake this time.(今回はこの間違いを見過ごしましょう)」と言うことで、部下の成長を促したり、職場の雰囲気を良くしたりする効果が期待できます。日常会話やビジネスシーンで使われます。
詳細を省略する、細部を省く
※ このフレーズは、説明や報告などで、細かい部分や重要度の低い情報を省いて、要点だけを伝えることを意味します。時間がない場合や、相手が詳細な情報を必要としていない場合に有効です。たとえば、プレゼンテーションで「I'll pass over the details and focus on the main points.(詳細は省略して、要点に絞って説明します)」と言うことで、聴衆の理解を助け、時間を有効活用することができます。ビジネスシーンや学術的な文脈でよく用いられます。
法律を無視する、法律を適用しない
※ この表現は、特定の法律や規則を、意図的に無視したり、適用しなかったりすることを意味します。通常は、法律の執行機関や裁判所が、特定の状況下で法律を適用しない場合に用いられます。たとえば、裁判官が情状酌量の余地があるとして、法律の厳格な適用を避けるような場合です。法的な文脈や、倫理的な議論の中で用いられることが多いです。
~の頭越しに(~を無視して)行動する
※ このフレーズは、組織や階層構造において、上位の承認や許可を得ずに、または上位の存在を無視して、直接行動することを意味します。しばしば、組織のルールや慣習に反する行為であり、問題を引き起こす可能性があります。たとえば、部下が上司の許可を得ずに、さらに上の上司に直接報告するような場合です。ビジネスシーンや政治的な文脈で用いられることが多いです。 "He passed over the heads of his immediate supervisors to get the project approved." (彼は直属の上司を飛び越えてプロジェクトの承認を得た。)
使用シーン
学術論文や研究発表で、データや先行研究における特定の要素や事例を「見過ごす」「考慮しない」という意味で使用されます。例えば、統計分析において外れ値を「pass over(無視する)」、あるいは先行研究の特定の側面を「pass over(見過ごす)」といった場合に使われます。文体はフォーマルで、客観性と正確性が求められる文脈です。
ビジネスシーンでは、人事評価やプロジェクト管理において、昇進を見送る、提案を却下する、あるいは特定の課題を一時的に無視するといった意味で使用されます。例えば、「He was passed over for promotion(彼は昇進を見送られた)」や「We decided to pass over that issue for now(その問題はとりあえず保留にした)」のように使われます。報告書や会議での発言など、比較的フォーマルな文脈で用いられます。
日常会話では、ニュース記事の内容を要約して説明したり、ドキュメンタリーの内容を説明する際に、稀に「見過ごす」「無視する」という意味で使用されることがあります。例えば、「The news report passed over the details of the scandal(ニュース報道はそのスキャンダルの詳細を無視した)」のように使われます。ただし、より口語的な表現(例:ignore, overlook)が好まれる傾向にあります。
関連語
類義語
『見落とす』『見過ごす』という意味。物理的に何かを見落とす場合と、注意を払わずに見過ごす(軽視する)場合の両方に使われる。ビジネスシーンでは、ミスや欠点を見過ごす、という意味でも使われる。 【ニュアンスの違い】『pass over』が『無視する』に近い意味合いを持つ場合、意図的なニュアンスを含むのに対し、『overlook』は不注意による見落としというニュアンスが強い。また、『overlook』は物理的な見落としにも使える。 【混同しやすい点】『overlook』は、景色などが『見晴らせる』という意味も持つため、文脈によって意味を判断する必要がある。また、人事において昇進を見送る意味では、pass overの方がより直接的。
『無視する』という意味。意図的に注意を払わない、または相手にしないという強い意志を示す。日常会話、ビジネス、学術など、幅広い場面で使用される。 【ニュアンスの違い】『pass over』が(人事などで)『選ばない』という意味合いを含むのに対し、『ignore』は完全に『無視する』というニュアンスが強い。感情的な拒絶や、問題の放置といった意味合いも含む。 【混同しやすい点】『ignore』は、相手の存在や発言そのものを無視するニュアンスが強い。一方、『pass over』は、候補者として検討はしたが、最終的に選ばなかった、というニュアンスを含む。
『迂回する』『回避する』という意味。物理的な迂回だけでなく、規則や手続きなどを回避する意味でも使われる。技術的な文脈や、ビジネスシーンでよく用いられる。 【ニュアンスの違い】『pass over』が(人事などで)『選ばない』という意味合いを含むのに対し、『bypass』は何かを『迂回して通り過ぎる』というニュアンスが強い。障害や困難を避けるという意味合いが強い。 【混同しやすい点】『bypass』は、システムやプロセスの一部を意図的にスキップするという意味合いが強い。人事においては、『pass over』が候補者を評価した上で選ばないのに対し、『bypass』はそもそも評価の対象としない、というニュアンスを含む場合がある。
『無視する』『軽視する』という意味。重要性や価値を認めず、注意を払わないというニュアンス。フォーマルな場面や、批判的な文脈で用いられることが多い。 【ニュアンスの違い】『ignore』よりもフォーマルな表現で、客観的な判断に基づいて無視するというニュアンスを含む。『pass over』が特定の対象を選ばないのに対し、『disregard』は普遍的な価値やルールを無視するニュアンスがある。 【混同しやすい点】『disregard』は、規則や警告などを無視する場合によく使われる。道徳的な非難や、法的な責任を問う文脈で用いられることが多い。人事においては、『pass over』が個人の能力や適性を評価した結果であるのに対し、『disregard』は組織全体のルールや方針に反する行動を無視する、というニュアンスを含む場合がある。
『省略する』『除外する』という意味。リストや文章などから、意図的に何かを省く場合に用いられる。フォーマルな場面や、文書作成などでよく使われる。 【ニュアンスの違い】『pass over』が(人事などで)『選ばない』という意味合いを含むのに対し、『omit』は単に『リストから除外する』というニュアンスが強い。評価や選考のプロセスを経たかどうかは問わない。 【混同しやすい点】『omit』は、情報や要素を意図的に省く場合に用いられる。人事においては、『pass over』が候補者を評価した上で選ばないのに対し、『omit』は応募書類の不備などで選考対象から外す、というニュアンスを含む場合がある。
『飛ばす』『スキップする』という意味。順番を飛ばしたり、一部を省略したりする際に用いられる。日常会話でカジュアルに使われることが多い。 【ニュアンスの違い】『pass over』が(人事などで)『選ばない』という意味合いを含むのに対し、『skip』は単に『飛ばす』というニュアンスが強い。選考のプロセスを意図的に飛ばす、あるいは、評価の対象としない、というニュアンスを含む。 【混同しやすい点】『skip』は、重要でないと判断したものを飛ばす場合によく使われる。人事においては、『pass over』が候補者を評価した上で選ばないのに対し、『skip』は書類選考などで条件を満たさない候補者を飛ばす、というニュアンスを含む場合がある。非常にカジュアルな表現なので、ビジネスシーンでは避けるべき。
派生語
- overpass
『立体交差(橋)』。前置詞『over(〜の上を)』と動詞『pass(通る)』が組み合わさり、『〜の上を通る』構造物を指す名詞。主に道路や鉄道などのインフラ関連で使用され、技術文書やニュース記事で頻繁に見られる。比喩的に『乗り越える』という意味合いを持つこともある。
『通過』『一節』。動詞『pass』から派生した名詞で、場所・時間・文章などの『通過』や『経過』を表す。日常会話から学術論文まで幅広く使用され、文脈によって意味合いが変化する(例:a passage of time, a passage in a book)。抽象的な概念を表すため、pass overよりもフォーマルな印象を与える。
- passing
『一時的な』『通り過ぎる』。動詞『pass』の現在分詞が形容詞化したもので、『一時的な』『通り過ぎる』という意味を持つ。人の死を婉曲的に表現する際にも用いられる(例:passing of a loved one)。日常会話やニュース記事などで見られ、pass overと同様に、何かを『通り過ぎる』イメージを含む。
反意語
『含む』。接頭辞『in-(中に)』と語根『clude(閉じる)』からなり、『中に閉じ込める』というイメージから『含む』という意味になる。pass overが『除外する』という意味合いを持つ文脈(例:昇進を見送る)では、includeは『含める』という意味で対立する。日常会話やビジネスシーンで頻繁に使用される。
『考慮する』。pass overが『無視する』『考慮しない』という意味で使われる場合、『consider』は『熟慮する』という意味で対義語となる。ビジネスや学術的な文脈で、何かを決定する前に詳細に検討するニュアンスで使用される。単に含めるだけでなく、注意を払って検討するという点で、pass overの持つ『無視』のニュアンスと対照的。
『強調する』。pass overが『軽視する』『重要視しない』という意味合いを持つ場合、『emphasize』は『重要視する』という意味で対立する。プレゼンテーションや論文などで、特定のポイントを際立たせる際に用いられる。pass overが意図的に無視するニュアンスを含む場合、emphasizeは積極的に注目を集めるという点で対照的。
語源
"pass over」は、文字通り「通り過ぎる」という意味から派生した表現です。 "pass"は古フランス語の"passer"(歩く、通り過ぎる)に由来し、さらに遡るとラテン語の"passare"(歩む、渡る)にたどり着きます。これは"pes"(足)という単語と関連があります。つまり、「足を使って進む」というイメージです。"over"は「~の上を」という意味で、ここでは「何かを飛び越える」ニュアンスを加えます。この組み合わせにより、「見過ごす」「昇進させない」「無視する」といった意味合いが生まれます。例えば、川を「渡る(pass over)」ように、何かを「乗り越えて先へ進む」ことで、結果的に「見過ごす」ことになる、というイメージを持つと理解しやすいでしょう。昇進の文脈では、候補者を「飛び越えて」次の人に決定するという意味合いになります。
暗記法
「pass over」は、聖書の「過越」に由来し、神の災いを「過ぎ越す」特別な加護を意味します。これが転じて、社会では昇進の機会を「見送られる」状況を指すように。単なる見過ごしではなく、選別や運命、背後にある力関係が暗示される、重みのある言葉です。政治的な文脈では、法案が「見送られる」際に、社会の不均衡が反映されることも。
混同しやすい単語
『pass over』と語順が逆なだけでなく、意味も関連があるため、非常に混同しやすい。overpass は『陸橋』や『高架道路』を意味する名詞で、pass over は動詞句で『見過ごす』『無視する』などの意味を持つ。文脈で品詞と意味を判断することが重要。
『pass』が含まれており、意味も『通り過ぎる人』であるため、関連性が高く混同しやすい。pass over は動詞句だが、passerby は名詞である。また、passerby は単数形で、複数形は passersby となる点も注意が必要。
発音が似ており、特にアメリカ英語では 'oo' の音が 'u' に近くなるため、混同しやすい。prove は『証明する』という意味の動詞で、pass over とは意味が全く異なる。また、綴りも似ているため、注意が必要。
語頭が 'pro-' で始まり、音の響きが似ているため、混同しやすい。prosper は『繁栄する』という意味の動詞で、pass over とは意味が全く異なる。特に、発音の際に 'o' の音を意識することで区別できる。
『pass』を含む句動詞であり、意味も文脈によっては『意識を失う』など、何かが過ぎ去るようなニュアンスがあるため、混同しやすい。pass over と同様に句動詞だが、意味が大きく異なるため、文脈で判断する必要がある。また、pass out は自動詞としても他動詞としても使える。
スペルと意味の両方で混同しやすい。pause over は「~の上で一時停止する」「~を熟考する」という意味で、pass over と意味が重なる部分がある。pause over は通常、何か特定の対象に意識を向けている状態を表すのに対し、pass over は見過ごす、無視するというニュアンスが強い。
誤用例
「pass over」は「(昇進などを)見送る」「無視する」という意味合いが強く、単に「見落とす」という意味で使うと不自然です。日本人が「〜を渡す」という日本語に引きずられ、「over」を「〜を越えて」と捉え、書類を『見ていない』状態を表現しようとする際に起こりやすい誤用です。しかし、英語では「overlook」が意図せず見落とす場合に適しています。「pass over」は、意図的に何かを無視したり、昇進候補から外したりするニュアンスを含みます。例えば、誰かの貢献を『pass over』することは、その人の努力を認めていないという強いメッセージになります。
この誤用は、「機会を見送る」という日本語を直訳しようとした際に起こりがちです。「pass over」は、昇進や機会を『誰かに与えない』という意味合いが強く、自分自身が機会を辞退する場合には適していません。英語では、自分から辞退する場合は「decline」や「turn down」を使うのが自然です。日本人は、主語を明確にしない曖昧な表現を好む傾向がありますが、英語では誰が主体的に行動しているかを明確にすることが重要です。この場合、「彼」が機会を辞退したという主体性を明確にする必要があります。
「pass over」は「〜の上を通過する」という意味合いが強く、雨などの自然現象が『通り過ぎる』という意味で使うと不自然です。日本人が「上を通過する」というイメージから「over」を選んでしまうことがありますが、英語では単に「通り過ぎる」場合は「pass by」を使うのが一般的です。また、「pass over」は、例えば「飛行機が町の上を通過する(The plane passed over the town)」のように、具体的な場所の上を通過する場合に使われます。抽象的な状況や現象に対しては「pass by」がより適切です。
文化的背景
「Pass over」は、見過ごしや無視といった意味合いに加え、特に宗教的な文脈において、重要な出来事や人物を「素通りする」という、選択的な免除や回避のニュアンスを強く帯びます。この語句は、古代からの信仰や儀式、そして社会的な階層意識と深く結びついており、単なる通過以上の意味を含んでいます。
旧約聖書の出エジプト記に登場する「過越(Passover)」の祭りが、この語句の文化的背景を理解する上で最も重要な要素です。神がエジプト全土の初子を打ち殺す際、戸口に子羊の血を塗ったイスラエル人の家は「過ぎ越され」、災いを免れました。この出来事は、神の選択的な救済と慈悲を象徴し、「pass over」が単なる通過ではなく、特別な恩恵や選別の意味合いを含むようになった起源と言えるでしょう。つまり、「pass over」は、神の意志による選別という、非常に重い意味を背負っているのです。
この宗教的な背景から、「pass over」は、社会的な文脈においても、昇進や評価の機会を「見送られる」「飛ばされる」といった意味で使われるようになりました。例えば、企業の人事において、ある従業員が昇進候補から外された場合、「He was passed over for promotion.(彼は昇進を見送られた)」というように表現されます。ここには、単なる能力不足だけでなく、上層部の意向や政治的な駆け引き、あるいは運命的な要素までもが暗示されている可能性があります。昇進を見送られることは、聖書の過越の出来事とは異なり、恩恵を受ける機会を逃すという、ネガティブな意味合いを帯びるのです。
現代においては、この語句は、政治的な文脈においても頻繁に用いられます。例えば、法案が議会で否決されたり、提案が見送られたりする場合にも「passed over」が使われます。この場合、単に「却下された」という事実だけでなく、その背後にある政治的な力関係や、議論の過程で無視された意見、あるいは社会的な不公平感までもが暗示されることがあります。「Pass over」は、単なる通過や見過ごしという表面的な意味を超えて、選別、免除、機会の喪失、そして社会的な不均衡といった、複雑な文化的背景を反映した語句なのです。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題(短文空所補充)や長文読解で出題される可能性があります。リスニングでの出題は比較的少ないです。
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。1級でも出題される可能性があります。具体的なパートは語彙問題、長文読解です。
- 文脈・例題の特徴: フォーマルな文章、ニュース記事、エッセイなど、幅広い文脈で登場します。ビジネスシーンやアカデミックな内容も含まれます。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「見過ごす」「無視する」「昇進させない」など複数の意味があるので、文脈から判断することが重要です。類似の句動詞(overlook, disregard)との使い分けに注意しましょう。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め問題)、Part 6(長文穴埋め問題)、Part 7(長文読解問題)で出題される可能性があります。リスニングでの出題は比較的少ないです。
- 頻度と級・パート: TOEIC L&R Test全体で中程度の頻度で出題されます。Part 5,6,7で特に注意が必要です。
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーン(人事、プロジェクト、会議など)でよく使われます。メール、報告書、記事などの形式で登場します。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「昇進させない」「考慮しない」という意味でよく使われます。人事に関する文脈で頻出します。類義語のignore, neglect, skipなどとのニュアンスの違いを理解しておきましょう。
- 出題形式: 主にリーディングセクションで出題されます。ライティングセクションで使うことも可能です。
- 頻度と級・パート: TOEFL iBTのリーディングセクションで中程度の頻度で出題されます。
- 文脈・例題の特徴: アカデミックな文章(歴史、科学、社会科学など)でよく使われます。論文、教科書などの形式で登場します。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「無視する」「見過ごす」という意味で使われることが多いです。アカデミックな文脈では、重要な情報を見過ごさないように注意しましょう。類義語のdisregard, ignoreとのニュアンスの違いを理解しておきましょう。
- 出題形式: 長文読解問題で頻出。文脈から意味を推測する問題や、同意語・反意語を選ぶ問題で問われることがあります。
- 頻度と級・パート: 難関大学の入試問題で頻出。標準的なレベルの大学でも出題される可能性があります。
- 文脈・例題の特徴: 評論文、物語文、説明文など、様々なジャンルの文章で登場します。社会問題、科学技術、文化など、幅広いテーマで使われます。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈によって意味が異なるため、前後の文脈から正確に意味を把握することが重要です。「見過ごす」「無視する」「昇進させない」などの意味を区別できるようにしましょう。類義語(ignore, overlook)との使い分けも意識しましょう。