martial
この単語は、第一音節にアクセントがあります。/ɑːr/ の部分は、日本語の「アー」よりも口を大きく開け、舌を少し奥に引いて発音します。/ʃ/ の音は「シュ」と発音しますが、舌先を上あごに近づけて息を摩擦させるように意識しましょう。最後の /əl/ は、曖昧母音で弱く発音します。全体として、リラックスして発音することがポイントです。
専門的な内容に関するご注意
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軍事的な
軍隊・戦争に関わる事柄を指す。力強く、組織的なイメージを伴う。平和的な状況とは対照的な文脈で使用される。
The soldiers marched proudly in the martial parade.
兵士たちは軍事パレードで誇らしげに行進しました。
※ この例文は、兵士たちが規律正しく行進し、観衆がその様子を見ている、活気ある「軍事パレード」の情景を描いています。`martial parade`は「軍事パレード」として非常によく使われる表現で、軍隊がその力や規律を公衆に示す典型的な場面です。ここでは`martial`が`parade`(パレード)という名詞を修飾し、「軍事的な」という意味を加えています。
After the crisis, the government declared martial law.
危機の後、政府は戒厳令を宣言しました。
※ この例文は、国が緊急事態に直面し、政府が秩序を回復するために異例の措置(戒厳令)を発表する、緊迫した瞬間を想像させます。`declare martial law`は「戒厳令を布告する」という決まった言い方で、ニュースなどで非常によく耳にする表現です。これは、国の非常事態における軍の役割を示す典型的な例であり、`martial law`で「戒厳令」という一つの固まりとして覚えると便利です。
The ancient city built strong martial defenses.
その古代都市は強力な軍事防衛を築きました。
※ この例文は、遠い昔の人々が、敵から自分たちの町を守るために、巨大な壁や砦(とりで)を力を合わせて築いている歴史的な情景を思い起こさせます。その堅固な建造物から、当時の強い決意が感じられるでしょう。`martial defenses`は「軍事的な防衛設備」という意味で、歴史や考古学の文脈で、要塞や城壁など軍事目的で作られたものについて語る際によく使われる自然な表現です。
勇ましい
戦士のように勇敢で、毅然とした態度を表す。困難に立ち向かう精神的な強さを強調する際に用いられる。
The young karate student showed a martial spirit in his practice.
その若い空手の生徒は、練習中に勇ましい気迫を見せた。
※ この例文は、若い空手家が稽古に励む真剣な姿を描いています。ここでは「martial spirit」という形で、「武道における勇ましく、引き締まった精神や気迫」を表しています。スポーツや訓練の場で、真剣に取り組む姿勢を表現するのにぴったりの使い方です。
Soldiers marched proudly to the powerful martial music.
兵士たちは、力強い勇ましい音楽に合わせて誇らしげに行進した。
※ 兵士たちが勇ましい行進曲に合わせて堂々と歩く情景が目に浮かびます。「martial music」は「軍歌」や「行進曲」など、軍事的な勇ましさを表現する音楽を指す、非常に一般的な表現です。このように「martial」は、軍事や戦いに関連するものを形容する際によく使われます。
The ancient warrior had a martial look in his eyes.
その古代の戦士は、目に勇ましい光を宿していた。
※ 物語に出てくるような、昔の戦士の強く決意に満ちた眼差しを描写しています。「martial look」は、武術家や軍人のような「勇ましく、引き締まった表情や眼差し」を表現するのに使われます。このように、人の態度や外見が「勇ましい」「武人のようだ」と形容される場合にも使われます。
規律正しい
軍隊のように厳格な規則や秩序に従うさま。自己管理能力が高く、統制が取れている状態を意味する。
The general expected a martial level of discipline from all his soldiers.
将軍はすべての兵士に、軍隊らしい規律のレベルを期待した。
※ 「martial」は「軍事の、戦争の」という意味が中心ですが、そこから「軍隊的な厳しさ」や「規律」を表すことがあります。この例文では、将軍が兵士に求める「軍隊ならではの、非常に厳格な規律」を「martial level of discipline」と表現しています。兵士たちが一糸乱れぬ動きを求められる情景が目に浮かびますね。
Even as a child, she showed a martial focus when practicing her karate moves.
彼女は子供の頃から、空手の練習をする際に、武道家らしい規律ある集中力を見せた。
※ 「martial」は「武道の」という意味でも使われます。ここでは「martial focus」で「武道家が持つような、厳しく集中した態度」を表しています。幼い子が真剣に、まるで小さな武道家のように空手に取り組んでいる様子が伝わってきます。
His martial bearing suggested he had served in the army for many years.
彼の規律正しい立ち居振る舞いは、彼が長年軍隊に所属していたことを示唆していた。
※ 「martial bearing」は「軍人らしい、規律の取れた立ち居振る舞い」という決まった言い回しです。まるで背筋がピンと伸び、無駄のない動きをする人の姿が目に浮かびますね。「martial」は、軍隊や武道といった厳格な規律が求められる場面で、その「規律正しさ」を強調する際に使われることがあります。一般的な「規律正しい」には「disciplined」がよく使われます。
コロケーション
戒厳令
※ 「martial law」は、軍事力によって公共の秩序を維持する非常事態宣言です。平時の法制度が機能しない場合や、大規模な反乱、災害時などに発令されます。この状態下では、軍が警察の役割を担い、市民の権利が制限されることがあります。歴史的・政治的な文脈で頻繁に登場し、その発令は重大な意味を持ちます。例えば、デモを鎮圧するためにmartial lawが敷かれる、といった状況が考えられます。
武道、格闘技
※ 「martial arts」は、戦闘技術を体系化したものです。護身術、身体鍛錬、精神修養など、様々な目的で行われます。日本語の「武道」に相当し、剣道、柔道、空手、合気道などが含まれます。近年では、フィットネスや健康維持の手段としても人気があります。この場合の「martial」は「戦争の、軍隊の」という意味合いから派生し、「戦闘に関する技術」を指します。
武勇、勇ましい精神
※ 「martial spirit」は、戦いにおける勇敢さや、困難に立ち向かう強い精神力を指します。単なる暴力性ではなく、名誉や正義のために戦う姿勢を意味することが多いです。歴史的な英雄譚や、愛国心を鼓舞するスピーチなどで用いられることがあります。例えば、「武士道」のような概念を説明する際に使われることもあります。ただし、現代ではやや古風な表現です。
軍楽
※ 「martial music」は、軍隊で使用される音楽、特に行進曲やファンファーレなどを指します。兵士の士気を高めたり、式典を盛り上げたりする目的で使用されます。ジョン・フィリップ・スーザの作曲した行進曲などが有名です。映画やドキュメンタリーで、軍事的な場面を演出する際にも効果的に用いられます。この場合の「martial」は「軍隊の、戦争の」という意味合いが強く反映されています。
武術の腕前、武勇
※ 「martial prowess」は、戦闘における卓越した技能や勇気を指します。特に、個人が持つ武術の才能や、戦場での活躍を強調する際に用いられます。騎士道物語や、歴史上の武将を称える文脈でよく見られます。例えば、「彼のmartial prowessは敵を圧倒した」のように使われます。ややフォーマルな表現で、日常会話ではあまり使いません。
軍法会議
※ 「court-martial」は、軍人が軍法に違反した場合に開かれる裁判です。通常の刑事裁判とは異なり、軍隊内部で独自の法に基づいて裁かれます。映画や小説などで、軍事的な不正や内部告発を描く際に登場することがあります。例えば、「彼はcourt-martialにかけられた」のように使われます。法律用語であり、一般の人が日常的に使う言葉ではありません。
使用シーン
歴史学や政治学の研究論文で、特に軍事史や国際関係を扱う際に「martial law(戒厳令)」や「martial arts(武道)」といった複合語の一部として登場します。また、軍事戦略や紛争解決に関する議論でも使用されることがあります。文語的な表現です。
ビジネス文書や会議で直接的に「martial」が使われることは少ないですが、組織の規律やリーダーシップの厳格さを表現する際に、間接的に言及されることがあります。例えば、「厳格な組織文化 (a disciplined organizational culture)」を説明する際に、そのルーツとして歴史的な軍隊の規律(martial discipline)に触れる、といった文脈が考えられます。フォーマルな場面での使用が想定されます。
日常会話で「martial」を耳にする機会はほとんどありません。ニュース報道やドキュメンタリー番組で、特定の国や地域の政治状況(戒厳令など)を説明する際に使われることがあります。あるいは、武道や格闘技に関する話題で「martial arts」という言葉が使われる程度でしょう。
関連語
類義語
軍隊、軍事に関する全般的な事柄を指す形容詞。軍隊の組織、兵器、戦略、軍事作戦など、広範囲な文脈で使用される。ビジネスシーンでも、軍事技術の応用や防衛産業について言及する際に使われる。 【ニュアンスの違い】"martial" は軍事的なものの中でも、特に戦闘や戦争に関連する、より直接的な意味合いを持つ。"military" はより中立的で、軍事組織や活動全体を指す。 "martial law"(戒厳令)のように、直接的な軍事支配や戦闘状態を表す場合は "martial" が適切。 【混同しやすい点】"military" は名詞としても形容詞としても使えるが、"martial" は基本的に形容詞としてのみ使われる。また、"martial arts"(武道)のように、特定の熟語で "martial" が使われることに注意。
- warlike
好戦的な、戦争好きなという意味合いを持つ形容詞。国家、民族、または個人の性格や行動を表現する際に用いられる。歴史、文学、政治学などの分野で使われることが多い。 【ニュアンスの違い】"martial" は軍事的な事柄そのものを指すのに対し、"warlike" は戦争を好み、戦争を引き起こそうとする性質を表す。 "warlike" はしばしば否定的な意味合いを伴い、平和を脅かす存在として描かれる。 【混同しやすい点】"warlike" は人の性質や行動を形容することが多いが、"martial" は法律や芸術など、より広範な対象を修飾できる点に注意。例えば、「好戦的な国家」は "warlike nation" と表現されるが、「軍事法廷」は "martial court" と表現される。
好戦的な、けんか腰のという意味合いを持つ形容詞。国家間の関係や、個人の態度を表現する際に使われる。外交、政治、心理学などの分野で用いられる。 【ニュアンスの違い】"martial" が軍事的な状況や事柄を客観的に描写するのに対し、"belligerent" はより主観的な感情や態度を表す。 "belligerent" はしばしば、敵意や攻撃性を示唆する。 【混同しやすい点】"belligerent" は主に、国家や個人の態度や行動を表現する際に用いられ、軍事的な制度や法律を指す "martial" とは使い方が異なる。例えば、「交戦国」は "belligerent nations" と表現されるが、「戒厳令」は "martial law" と表現される。
- combative
闘争的な、戦うことを好むという意味合いを持つ形容詞。スポーツ、ビジネス、政治など、競争的な状況で用いられる。人の性格や態度を表現することが多い。 【ニュアンスの違い】"martial" が軍事的な訓練や技術に関連するのに対し、"combative" はより一般的な闘争心や競争心を指す。 "combative" は必ずしも軍事的な文脈に限らず、幅広い状況で使用できる。 【混同しやすい点】"combative" は主に、人の性格や態度を表現する際に用いられ、軍事的な制度や法律を指す "martial" とは使い方が異なる。例えば、「闘争的な性格」は "combative personality" と表現されるが、「軍事法廷」は "martial court" と表現される。
- militaristic
軍国主義的なという意味合いを持つ形容詞。軍事力や軍事的な価値観を重視する思想や体制を指す。政治学、歴史学、社会学などの分野で用いられる。 【ニュアンスの違い】"martial" が軍事的な事柄そのものを指すのに対し、"militaristic" は軍事力を過度に重視する思想や体制を批判的に表現する際に用いられる。 "militaristic" はしばしば否定的な意味合いを伴う。 【混同しやすい点】"militaristic" は主に、国家や社会の思想や体制を表現する際に用いられ、軍事的な制度や法律を指す "martial" とは使い方が異なる。例えば、「軍国主義的な国家」は "militaristic nation" と表現されるが、「軍事法廷」は "martial court" と表現される。
- soldierly
軍人らしい、勇敢な、規律正しいという意味合いを持つ形容詞。軍人の資質や行動を褒め称える際に用いられる。文学、歴史、伝記などの分野で使われることがある。 【ニュアンスの違い】"martial" が軍事的な事柄全般を指すのに対し、"soldierly" は特に軍人の持つべき美徳や行動様式を強調する。 "soldierly" はしばしば肯定的な意味合いを伴う。 【混同しやすい点】"soldierly" は主に、軍人の資質や行動を表現する際に用いられ、軍事的な制度や法律を指す "martial" とは使い方が異なる。例えば、「軍人らしい振る舞い」は "soldierly conduct" と表現されるが、「戒厳令」は "martial law" と表現される。
派生語
- marshal
元来は『馬の世話をする人』を意味し、そこから『軍隊を指揮する人』、最終的には『元帥』という意味に発展。中世ヨーロッパの宮廷における役職に由来し、軍事的な意味合いが強まった。現代英語では、儀仗隊の隊長や、イベントの整理役など、権威を持って人々を統率する役割を指す場合もある。ビジネスシーンでもプロジェクトを主導する人を指すことがある。
- martial law
『戒厳令』を意味する。軍隊が治安維持のために一般市民を統制する状態を指す。平時の法制度が機能しなくなった非常事態に適用されることが多く、憲法上の権利が制限される場合もある。ニュースや歴史的な文脈でよく用いられる。
- martial arts
『武道』を意味する。武術や格闘技全般を指し、護身術や精神修養の手段として世界中で行われている。身体的な鍛錬だけでなく、礼儀作法や精神的な鍛錬も重視される。スポーツ、文化、健康といった幅広い文脈で使用される。
反意語
『市民の』『民間の』という意味。martialが軍事や戦闘に関連するのに対し、civilは一般市民や社会生活に関連する。例えば、martial law(戒厳令)に対して, civil law(民法)のように対比される。また、civilian(民間人)はmilitary(軍人)と対比される。
『平和な』という意味。martialが戦争や戦闘を連想させるのに対し、peacefulは争いのない状態を表す。紛争解決や国際関係において重要な概念であり、日常会話から学術論文まで幅広く用いられる。
『友好的な』という意味。紛争や対立がなく、友好的な関係を表す。martialが力や武力を行使するニュアンスを含むのに対し、amicableは対話や協力によって問題を解決しようとする姿勢を示す。ビジネス交渉や外交など、人間関係が重要な場面でよく用いられる。
語源
"martial"は「軍事的な」という意味ですが、その語源はローマ神話の軍神「マルス(Mars)」に由来します。ラテン語の"Martialis"(マルスの、マルスに属する)が、古フランス語を経由して英語に入ってきました。マルスは戦いの神であり、その名にちなんだ"martial"は、軍事、戦争、戦闘に関連する事柄を指すようになりました。たとえば、"martial arts"(武道)は、マルスの神に捧げられた技、つまり戦いの技術という意味合いを含んでいます。このように、神話に登場する神の名前が、現代の英語にも影響を与えている好例と言えるでしょう。また、マルスは勇敢さや規律正しさも象徴するため、"martial"には「勇ましい」「規律正しい」といった意味も含まれるようになりました。
暗記法
「martial」は軍神マルスに由来し、単なる軍事を超えた意味を持つ。古代ローマでは、軍事は国家の根幹であり、マルスはその象徴だった。文学では勇ましさの象徴となり、シェイクスピア作品にも登場する。現代では「戒厳令」のように、権力や支配のニュアンスも含む。この言葉の背景には、ローマ帝国の隆盛、人々の精神、そして社会のあり方が深く刻まれている。
混同しやすい単語
『martial』と発音が非常に似ており、スペルも'a'と'i'の違いだけなので、混同しやすい単語です。『marital』は『結婚の』という意味で、形容詞です。例えば、『marital status(婚姻状況)』のように使われます。日本人学習者は、発音を意識して区別するとともに、文脈から判断するようにしましょう。語源的には、'marital'は結婚の女神Marsとは関係ありません。ラテン語の'maritus'(夫)に由来します。
発音は似ていますが、アクセントの位置が異なります(『martial』は第1音節、『marshal』は第1音節にアクセント)。スペルも似ているため、注意が必要です。『marshal』は名詞としては『元帥』『保安官』、動詞としては『整列させる』『指揮する』などの意味があります。文脈が大きく異なるため、意味の違いを意識することが重要です。語源的には、古フランク語の'marhskalk'(馬の世話をする人)に由来し、そこから高位の役職を指すようになりました。
語尾の '-tial' が共通しているため、スペルを見たときに混同しやすい可能性があります。『partial』は『部分的な』『不公平な』という意味の形容詞です。例えば、『partial view(一部しか見えない景色)』や『partial to chocolate(チョコレートが好き)』のように使われます。『martial』とは意味が全く異なるため、文脈から判断することが重要です。語源的には、ラテン語の'pars'(部分)に由来します。
最初の2文字 'mor-' が 'mar-' に似ているため、スペルをざっと見たときに混同する可能性があります。発音も母音の響きが似ています。『mortal』は『死ぬ運命にある』『致命的な』という意味の形容詞です。例えば、『mortal man(死すべき人間)』や『mortal wound(致命傷)』のように使われます。意味が全く異なるため、文脈をよく理解することが重要です。語源的には、ラテン語の'mors'(死)に由来します。
最初の2文字 'mat-' が 'mar-' に似ており、スペルを間違えやすい可能性があります。また、カタカナ英語で「マター」という言葉を使うため、意味の連想から誤用する可能性もあります。『matter』は『問題』『物質』『重要である』などの意味を持つ名詞・動詞です。『martial』とは意味が大きく異なるため、文脈から判断することが重要です。語源的には、ラテン語の'materia'(物質)に由来します。
'martial'と'Martian'は、最初の数文字が同じであり、どちらも「火星」に関連する単語であるため、意味の混同を引き起こしやすいです。 'Martian'は「火星の」「火星人」という意味の名詞または形容詞です。'martial law(戒厳令)'のように使われる'martial'とは意味が大きく異なります。学習者は、火星に関連する文脈では'Martian'、軍事や戦争に関連する文脈では'martial'を使用するように注意する必要があります。'Martian'は、ローマ神話の軍神Mars(マーズ、火星)に由来します。
誤用例
『martial』は軍事的な文脈、または戦争や戦闘に関連する状況を表す際に使用するのが適切です。交渉の場で『martial attitude(軍事的な態度)』を使うと、文字通りに解釈され、相手を威圧するような、あるいは実際に武力行使も辞さないようなニュアンスになり、不適切です。ビジネスの場では、より穏やかな『aggressive』(積極的に)や『assertive』(主張を曲げない)といった単語が適切です。日本人が『断固とした』態度を表現しようとして『martial』を選んでしまう背景には、日本語の『武』という言葉が持つイメージ(強さ、意志の強さ)が影響していると考えられますが、英語の『martial』は、より限定的な意味合いを持つ点に注意が必要です。
この文自体は文法的に正しいですが、会社が従業員の健康のために武道プログラムを開発するという文脈は、欧米ではややステレオタイプなイメージを持たれる可能性があります。自己防衛術やチームビルディングの要素を取り入れたプログラムであれば受け入れられやすいですが、東洋的な精神修養を強調すると、文化的背景が異なる従業員には唐突に感じられるかもしれません。例えば、『self-defense training』(自己防衛訓練)や『team-building activities incorporating martial arts elements』(武道の要素を取り入れたチームビルディング活動)のように、より具体的な表現を用いることで、誤解を避けることができます。日本人が『martial arts』をそのまま使うことに違和感がないのは、武道が文化の一部として根付いているためですが、英語圏では、その文化的背景を考慮する必要があるでしょう。
『martial』は、美しさの形容には通常用いられません。日本語で『凛々しい』や『勇ましい』といったニュアンスを伝えたい場合でも、『martial』を使うと、文字通り『軍事的な美しさ』、例えば戦士のようなイメージを想起させてしまい、不自然です。代わりに、『striking』(際立った)、『powerful』(力強い)、『regal』(威厳のある)といった形容詞を使う方が、意図したニュアンスをより正確に伝えることができます。日本人が『武』という言葉の持つ力強さや美しさを『martial』で表現しようとするのは、日本語の美的感覚が英語にそのまま適用できない良い例です。英語では、美しさの形容には、より繊細で多様な表現が存在することを意識する必要があります。
文化的背景
「martial」は、古代ローマの軍神マルス(Mars)に由来し、勇猛さ、戦争、軍事といった概念を象徴する言葉です。単に軍事的な事柄を指すだけでなく、勇気や闘争心といった精神的な側面、さらには権力や支配といった社会的な意味合いも内包します。
「martial」が持つ文化的な背景を考える上で、古代ローマにおける軍事の重要性は欠かせません。ローマ帝国は、軍事力によって領土を拡大し、その広大な版図を維持しました。そのため、軍事力は国家の繁栄と安定を支える根幹であり、軍人は社会的に高い地位を与えられました。マルスは、そのようなローマの軍事力を象徴する神であり、「martial」という言葉は、ローマ帝国の隆盛と深く結びついています。
文学作品においても、「martial」はしばしば力強さや勇気の象徴として登場します。例えば、シェイクスピアの戯曲『ヘンリー五世』では、王の勇敢な演説が兵士たちの闘争心を掻き立て、フランス軍との戦いを勝利に導きます。この場面において、「martial」は、単なる軍事的な準備だけでなく、兵士たちの精神的な高揚や団結力を表現する言葉として用いられています。また、映画やゲームにおいても、「martial arts(武道)」という言葉が示すように、肉体的・精神的な鍛錬を通じて強さを追求する姿勢を表す言葉として広く用いられています。
現代社会においても、「martial law(戒厳令)」という言葉に代表されるように、「martial」は権力や支配といった意味合いを持ち続けています。戒厳令は、非常事態において軍が治安維持を行うことを指し、市民の自由が制限される場合があります。このように、「martial」は、時として抑圧的な力として作用することもあり、その使用には慎重さが求められます。言葉の背後にある歴史的、社会的な文脈を理解することで、「martial」という言葉の多面的な意味をより深く理解することができます。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、語彙問題(同意語選択、空所補充)。稀にライティング(エッセイ)で関連語句の知識が間接的に問われる可能性あり。
- 頻度と級・パート: 準1級以上で出題される可能性あり。1級でより頻出。
- 文脈・例題の特徴: 歴史、政治、社会問題など、やや硬めの文脈で登場することが多い。「軍事的な」「武道の」といった意味で使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 「軍事的な」という意味が基本だが、「武道の」という意味もあることを覚えておく。関連語の「martial arts」(武道)と合わせて学習すると効果的。発音にも注意(/ˈmɑːrʃəl/)。
- 出題形式: Part 5 (短文穴埋め問題) で稀に出題される可能性あり。Part 7 (長文読解) でも文脈理解を問う形で出題される可能性は低いが存在する。
- 頻度と級・パート: TOEIC全体での出題頻度は低い。
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンでは稀に「(紛争解決などのための)軍事的な」という意味で使われることがあるかもしれないが、非常に稀。
- 学習者への注意点・アドバイス: TOEIC対策としては優先順位は低い。他の重要な語彙を優先的に学習すべき。もし出題された場合は、文脈から意味を推測するしかない。
- 出題形式: リーディングセクションで出題される可能性あり。主に長文読解の中で、語彙の意味を推測させる問題や、文章全体の理解を深めるために使われる。
- 頻度と級・パート: TOEFL iBT であれば、出題される可能性は中程度。
- 文脈・例題の特徴: 歴史、政治、社会学など、アカデミックな文脈で登場することが多い。「軍事的な」という意味合いで、紛争、戦争、国家安全保障などのテーマで使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: アカデミックな文章で頻出する語彙なので、TOEFL対策としては重要な単語。文脈から正確な意味を把握できるように、類義語や反意語も合わせて学習すると効果的。
- 出題形式: 主に長文読解問題で出題。文脈から意味を推測させる問題や、内容一致問題で問われる。
- 頻度と級・パート: 難関大学の入試問題で出題される可能性がある。標準的な語彙集には掲載されていない場合もある。
- 文脈・例題の特徴: 社会科学系のテーマ(歴史、政治、国際関係など)で扱われることが多い。軍事、戦争、紛争といったキーワードと関連して登場する。
- 学習者への注意点・アドバイス: やや難易度の高い語彙なので、難関大学を目指す場合は覚えておきたい単語。文脈の中で意味を理解することが重要。派生語(martial law: 戒厳令)も覚えておくと役立つ。