its
母音 /ɪ/ は日本語の「イ」よりも口を少し開き、短く発音します。語尾の /ts/ は、日本語の「ツ」に近いですが、無声音で、息を強く出すように意識するとよりネイティブに近い発音になります。所有格の "its" と、"it is" の短縮形 "it's" は発音が同じなので、文脈で区別しましょう。
それの
所有格の代名詞で、人以外のもの(動物、物、場所、アイデアなど)を指します。文脈から何について話しているかが明らかな場合に用いられ、漠然と『それ』と訳すよりも、対象を具体的にイメージしやすいように『それの』としました。例:The dog wagged its tail.(その犬は自分の尻尾を振った。)
A small puppy wagged its tail happily when it saw me.
小さな子犬は私を見ると、嬉しそうにしっぽを振った。
※ この文では、小さな子犬があなたを見て喜んでいる、微笑ましい瞬間が描かれています。「its」は「それの」という意味で、ここでは「子犬のしっぽ」のように、動物の持ち物や体の一部を表すときによく使われます。子犬が感情を表現する自然な行動なので、イメージしやすいですね。
The old clock stopped its hands exactly at midnight.
その古い時計は真夜中ちょうどに針を止めた。
※ 真夜中に時を刻むのをやめた古い時計の、少し神秘的な情景が目に浮かびます。「its」は「時計の針」のように、動物だけでなく、物の一部や持ち物を指すときにも使われます。ここでは「clock(時計)」が「its」で指し示されています。
The company launched its new product with great excitement.
その会社は大きな期待を込めて新製品を発表した。
※ 新製品の発表会で、会社の人々がワクワクしている様子が伝わってきます。「its」は、会社や組織といった「それ(it)」で表される団体が所有するものや、関連するものを指す場合にも使われます。ここでは「company(会社)」が「its」で指し示され、「会社の新しい製品」という意味になります。
コロケーション
本質的に、根本的に
※ 物事の中核、最も重要な部分を指す表現です。例えば、"At its core, the problem is a lack of funding."(根本的に、問題は資金不足だ)のように使います。ビジネスシーンやアカデミックな文脈で、複雑な問題をシンプルに言い表したい場合に便利です。単に"essentially"と言うよりも、問題の核心に迫るニュアンスが伝わります。
〜の結果として、〜の後を追って
※ 船が航行した後にできる航跡(wake)から派生した表現で、ある出来事や行動が引き起こした結果や影響を表します。例えば、"The storm left devastation in its wake."(嵐はその後、荒廃をもたらした)のように使います。しばしば負の結果を伴う事柄に使われますが、中立的な意味でも使用可能です。"Following"や"as a result of"よりも、比喩的で印象的な表現です。文学的な文章や報道記事でよく見られます。
初期段階で、始まったばかりで
※ 文字通りには「その初期段階において」という意味ですが、比喩的に、ある活動、技術、プロジェクトなどがまだ始まったばかりで、発展途上であることを指します。"The technology is still in its infancy."(その技術はまだ初期段階にある)のように使います。ビジネスシーンで、新しい事業や技術の可能性を語る際によく用いられます。"Early stages"よりも、将来への期待感が込められた表現です。
その価値に基づいて、実力本位で
※ 物事を判断する際に、その本質的な価値や長所に基づいて評価することを意味します。"The proposal will be judged on its merits."(その提案は、その価値に基づいて判断されるだろう)のように使います。政治、ビジネス、法律など、客観的な評価が求められる場面でよく用いられます。偏見や個人的な感情を排除し、公平に評価するというニュアンスが含まれます。
〜は評価されるべきだ、〜は立派だ
※ 誰か(または何か)が良い行いをしたこと、称賛に値することを認める際に使われます。"To its credit, the company donated a large sum to charity."(評価すべきことに、その会社は多額の寄付を慈善団体に行った)のように使います。しばしば、意外な良い行いに対して使われ、その行動を強調する効果があります。皮肉として使われることもあります。
最盛期に、絶頂期に
※ 物事が最も発展し、成功した時期を指します。"The Roman Empire was at its height in the 2nd century AD."(ローマ帝国は西暦2世紀に最盛期を迎えた)のように使います。歴史、芸術、スポーツなど、さまざまな分野で使われます。単に"peak"と言うよりも、長期にわたる繁栄や発展の頂点を指すニュアンスがあります。
使用シーン
学術論文や教科書で、客観的な事実や研究結果を説明する際に使用されます。例えば、「その研究は、その限界にもかかわらず、独自の貢献をしている (Despite its limitations, the study makes a unique contribution)」のように、特定のものや概念が持つ属性や性質を示す文脈でよく見られます。論文では、先行研究の弱点や限界を指摘する際にも使われます。
ビジネス文書やプレゼンテーションで、企業やプロジェクトの特性、進捗状況、または市場動向などを説明する際に用いられます。たとえば、「そのプロジェクトは、その初期段階においていくつかの課題に直面した (The project faced several challenges in its initial stages)」のように、組織や事業が持つ側面を客観的に記述する際に適切です。報告書や提案書など、フォーマルな文体で使われることが多いです。
日常会話では、所有者を明確にする必要がない場合に、物や動物などを指して使われることがあります。例えば、ペットについて話す際に「その犬は、おもちゃが大好きだ (The dog loves its toys)」のように使われます。しかし、人に対して使う場合は、性別が不明な赤ちゃんなど、特殊な状況に限られます。一般的には、he/she/his/her を使う方が自然です。ニュース記事やドキュメンタリーなど、ややフォーマルな文体で見かけることがあります。
関連語
類義語
男性が所有または関連するものを指す所有代名詞または所有限定詞。性別が男性である個人や動物、または男性として擬人化された物事を指す際に使用される。 【ニュアンスの違い】"its"は中性的な所有を表すのに対し、"his"は明らかに男性の所有や関連を示す。"his"は人間(特に男性)にのみ使用され、無生物や動物には通常使用されない。 【混同しやすい点】"its"は所有格でアポストロフィは不要だが、"it's"は"it is"の短縮形であるのに対し、"his"は所有格であり、短縮形は存在しない。性別の区別を意識する必要がある。
女性が所有または関連するものを指す所有代名詞または所有限定詞。性別が女性である個人や動物、または女性として擬人化された物事を指す際に使用される。 【ニュアンスの違い】"its"が中性的な所有を示すのに対し、"her"は女性の所有や関連を示す。"her"は人間(特に女性)にのみ使用され、無生物や動物には通常使用されない。 【混同しやすい点】"its"と"her"は所有格の使い分けであり、対象の性別によって使い分ける必要がある。"her"は目的格としても使用される点も"its"とは異なる。
複数の人、動物、または物を指す所有代名詞または所有限定詞。集団の所有または関連を示す。 【ニュアンスの違い】"its"が単数の中性的な名詞を指すのに対し、"their"は複数の名詞を指す。"their"は人間、動物、無生物など、あらゆる種類の複数形に使用できる。 【混同しやすい点】"its"と"their"は単数形と複数形の違いである。"there"(場所を表す副詞)や"they're"("they are"の短縮形)との混同に注意。
- of it
"it"に関連する何かを説明する際に使用される前置詞句。所有や関連を間接的に表現する。 【ニュアンスの違い】"its"が直接的な所有を示すのに対し、"of it"はより間接的で、関係性や一部を示すニュアンスを含むことがある。フォーマルな文脈や、所有を強調しない場合に用いられる。 【混同しやすい点】"its"は所有限定詞として名詞の前に置かれるが、"of it"は前置詞句であり、文の構造が異なる。例えば、「its color」と「the color of it」のように使い分ける。
- belonging to it
"it"に属するものを指す表現。所有関係を明示的に示す。 【ニュアンスの違い】"its"よりもフォーマルで、所有権や所属関係を強調する際に使用される。契約書や法的文書など、厳密な文脈に適している。 【混同しやすい点】"its"は簡潔な表現だが、"belonging to it"はより詳細で明確な表現を必要とする場合に用いられる。日常会話では"its"が一般的だが、正式な場面では"belonging to it"が好まれることがある。
派生語
『所有する』という意味の動詞。語源は『座る、所有する』に由来し、『完全に所有する』というニュアンス。日常会話から契約書まで幅広く使用。
『所有』や『所有物』を意味する名詞。動詞possessから派生し、抽象的な概念から具体的な所有物まで表す。法律やビジネスの文脈で頻出。
『所有欲の強い』という意味の形容詞。possessionから派生し、所有の性質や状態を表す。心理学や人間関係を語る際にも用いられる。
語源
"its" は、古英語の "hit"(中性代名詞)に由来します。元々、英語には所有格を明確に示す語形変化が少なく、"his"(彼)や "her"(彼女)のように、性別によって所有格が区別されていました。しかし、中性を表す "hit" には、初期には明確な所有格が存在せず、"his" が代用されることもありました。その後、16世紀頃から "hit" の所有格として "its" が徐々に使われ始め、17世紀には定着しました。アポストロフィ付きの "it's" は "it is" の短縮形であり、"its" とは全く異なるため、混同しないように注意が必要です。"its" の成立は、英語における所有格の発展と、中性代名詞の独自性を確立する過程を示す好例と言えるでしょう。
暗記法
「its」は、人間中心の世界から、より広い視野への移行を映す鏡。かつて無生物にも「his」が使われた時代から、「its」の登場はルネサンス以降の科学的視点の深化と共鳴します。文学では自然の神秘や、現代小説では流動的なアイデンティティを表現。企業やAIにも使われ、集合体やテクノロジーが社会に不可欠な存在になったことを示唆します。言葉は、世界をどう捉えるかの表れなのです。
混同しやすい単語
「its」と「it's」は、発音が全く同じ(/ɪts/)ため、書き言葉で非常に混同しやすいです。「it's」は「it is」または「it has」の短縮形であり、アポストロフィ (') が所有格の「its」との唯一の区別点です。意味と文法的な役割が大きく異なるため、注意が必要です。例えば、「It's raining.」は「雨が降っている」ですが、「The dog wagged its tail.」は「犬は自分のしっぽを振った」となります。アポストロフィの有無で意味が全く変わることを意識しましょう。
「its」と「is」は、どちらも短い単語で、語尾が「s」で終わるという共通点があります。特に会話スピードが速い場合や、音声認識技術では聞き間違えやすいことがあります。「is」はbe動詞の三人称単数現在形であり、主語と動詞を結びつける役割を果たします。例えば、「This is its toy.」のような文では、「is」と「its」が隣り合うため、特に注意が必要です。文法的な構造を理解することで、区別しやすくなります。
「its」と「eats」は、どちらも語尾が「-ts」で終わるため、発音とスペルが似ています。特に「-ts」の部分が強調されない発音の場合、混同しやすいです。「eats」は「eat」(食べる)の三人称単数現在形であり、動詞として使われます。例えば、「The cat eats its food.」のような文では、「eats」と「its」が連続するため、注意が必要です。文脈からどちらが動詞であるかを判断することが重要です。
「itz」は、一般的な英単語ではありませんが、「its」のスペルミスとしてよく見られます。特に急いでタイプする場合や、スペルチェックをせずに書いた場合に起こりやすいです。もし「itz」という単語を見かけたら、それはほぼ間違いなく「its」の誤りである可能性が高いです。スペルチェックツールを活用し、正しいスペルを常に意識することが重要です。
「hiss」は、蛇などが「シューッ」と音を立てる擬音語であり、また「非難する」という意味の動詞でもあります。「its」とは意味も品詞も全く異なりますが、どちらも短い単語で、無声音の/s/の音が共通しているため、特に発音練習の初期段階では混同しやすいことがあります。文脈から判断することが重要です。例えば、「The snake made a hissing sound.」と「The dog wagged its tail.」では、文脈が全く異なります。
「this」は指示代名詞・形容詞であり、「これ」「この」という意味を持ちます。「its」と発音は大きく異なりますが、文中で所有格が必要な場合に、誤って「this」を使ってしまうことがあります。例えば、「This tail is wagging.」は文法的に誤りであり、「Its tail is wagging.」が正しい表現です。所有格が必要な場合に「its」を使うことを意識しましょう。
誤用例
日本語では主語(The company)の直後に説明を続けることが自然ですが、英語では『主語+動詞』の後に説明が続く場合、接続詞の『that』を省略しない方がより明確でフォーマルな印象を与えます。特にビジネスシーンなどでは、誤解を避けるためにも『that』を明示的に使うことが推奨されます。日本語の『〜は』という構造に引きずられやすい誤用例です。
『its』は所有格(〜の)であり、ここでは『it is』の短縮形である『it's』を使うのが正しいです。日本語では所有格と短縮形を明確に区別しないため、英語学習者は混同しやすい傾向にあります。特に、発音が同じであるため、スペルミスに気づきにくい場合があります。文脈から判断して意味を理解することはできますが、正確な英語を書く上では注意が必要です。
『its』は単数(または集合名詞)の所有格ですが、ここでは『the government』が複数の個人から構成される組織であることを強調しています。したがって、複数の意見を代表するという意味合いで、所有格は『their』を使う方が適切です。組織を単数として捉えるか、複数として捉えるかは、文化的な背景や文脈によって異なります。英語では、組織を構成する個々のメンバーの意見を尊重するニュアンスを出すために、複数形を使うことがあります。日本語では組織を単数として捉える傾向が強いため、英語のこのニュアンスを理解することが重要です。
文化的背景
「its」は所有格代名詞として、中性的な存在や、人格を持たないものに対する所有を示す言葉です。この語は、人間中心の世界観から、より包括的な視点への移行を象徴していると言えるでしょう。
英語における所有格代名詞「its」の確立は、比較的新しい現象です。中英語の時代には、無生物や動物に対する所有を示す場合、「his」が用いられることが一般的でした。しかし、16世紀から17世紀にかけて、「it」という中性代名詞が普及するにつれて、「its」の使用も徐々に広まりました。この変化は、言語が社会の変化を反映する好例と言えるでしょう。ルネサンス以降、科学的思考が発達し、人間以外の自然や事物に対する認識が深まる中で、「its」は、人間中心ではない視点を表現するための不可欠なツールとなっていったのです。
文学作品における「its」の使用は、作者の意図や文脈によって様々なニュアンスを生み出します。例えば、自然を擬人化する詩においては、「its」は自然の神秘的な力や生命力を表現するために用いられることがあります。また、現代小説においては、人間関係の複雑さや、アイデンティティの曖昧さを表現するために、「its」が用いられることもあります。例えば、ジェンダーアイデンティティが流動的なキャラクターを描写する際に、「its」という代名詞が意図的に選択されることがあります。これは、従来の性別二元論を超越した、新しい自己認識のあり方を表現する試みと言えるでしょう。
現代社会において、「its」は、企業や組織などの集合体を指す場合にも頻繁に用いられます。これは、企業や組織が、個人の集合体でありながら、独自の意思決定や行動を行う主体として認識されていることを示しています。また、「its」は、テクノロジーやAIなどの、人間ではない存在に対しても用いられることがあります。これは、テクノロジーが社会に浸透し、私たちの生活に不可欠な一部となっていることを反映しています。このように、「its」の使用は、私たちがどのように世界を認識し、理解しているかを反映する鏡のような存在と言えるでしょう。
試験傾向
1. 出題形式: 長文読解、空所補充問題。まれにリスニング。
2. 頻度と級・パート: 2級以上で頻出。特に準1級、1級の長文読解。
3. 文脈・例題の特徴: 説明文、物語文など幅広い。所有格として文中で自然に使われる。
4. 学習者への注意点・アドバイス: 「it's」(it is/hasの短縮形)との混同に注意。文脈から判断することが重要。
1. 出題形式: Part 5 (短文穴埋め)、Part 7 (長文読解)。
2. 頻度と級・パート: 頻出。特にPart 7のビジネス文書。
3. 文脈・例題の特徴: 報告書、メール、記事などビジネス関連の文書。
4. 学習者への注意点・アドバイス: 所有格であることを意識し、後に続く名詞との関係を理解する。it is/it hasとの区別も重要。
1. 出題形式: リーディングセクション。
2. 頻度と級・パート: 頻出。アカデミックな文章でよく使われる。
3. 文脈・例題の特徴: 科学、歴史、社会学など、アカデミックな内容の文章。
4. 学習者への注意点・アドバイス: 代名詞が指す内容を正確に把握する。複雑な文構造の中で使われることが多いため、文法的な理解も必要。
1. 出題形式: 長文読解、文法問題(正誤判定など)。
2. 頻度と級・パート: 頻出。難関大学ほど出現頻度が高い。
3. 文脈・例題の特徴: 論説文、物語文など、幅広いジャンルの文章。
4. 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から意味を判断する練習が必要。it'sとの区別はもちろん、文法的な役割(所有格)を理解することが重要。