incline
第一音節の /ɪ/ は日本語の『イ』よりも口を少し開き、短く発音します。第二音節の強勢(ˈ)に注意し、母音 /aɪ/ は二重母音なので、日本語の『アイ』よりも滑らかにつなげてください。最後の 'n' は舌先を上の歯の裏につけて発音します。'cline' の部分を強く意識すると、より自然な発音になります。
傾ける
物理的に何かを傾ける動作。または、意見や気持ちがある方向に傾く、偏るという意味合いでも使う。例:He inclined his head.(彼は首を傾げた。)
He inclined his head slightly to listen carefully to the quiet whisper.
彼は静かなささやきに注意深く耳を傾けるため、少し頭を傾けた。
※ 誰かが何かを真剣に聞こうとしている様子が目に浮かびますね。'incline' はこのように、体の一部を『意図的に』傾ける動作によく使われます。集中している気持ちが伝わる自然な例文です。
The old, wobbly table inclined a little because one leg was shorter than the others.
その古くてぐらぐらするテーブルは、脚が一本短いために少し傾いていた。
※ テーブルが不安定で傾いている情景が想像できますね。ここでは『incline』が、人ではなく物が『自然に傾いている』状態を表す自動詞として使われています。物の状態を描写する際にも便利です。
She inclined the large canvas easel forward to catch the morning light better.
彼女は朝の光をよりよく取り込むため、大きなキャンバスのイーゼルを前に傾けた。
※ 画家が光の具合を調整しているような、具体的な作業の様子が伝わってきます。何か目的があって『物を傾ける』という行動は、日常でもよくありますね。'incline' は、このように道具や物体を意図的に動かす場面でもよく使われます。
〜したい気持ちになる
ある行動や選択をしたいという気持ちが湧き上がる状態。ややフォーマルな言い方。例:I incline to believe him.(私は彼を信じたい気持ちになる。)
On a rainy day, I often incline to stay home and read a book.
雨の日には、私はよく家にいて本を読みたくなります。
※ 雨の日の午後に、温かい飲み物を片手に本を読む、というリラックスした情景が目に浮かびます。「incline to do something」は「〜したい気持ちになる」という心の動きを表し、ここでは「そうする傾向がある」というニュアンスも含まれます。
When my friend suggested hiking, I didn't incline to go because I was tired.
友人がハイキングを提案した時、私は疲れていたので行きたいとは思いませんでした。
※ 友人の誘いに対して、体調や気分が乗らない時に使う典型的な場面です。「did not incline to do something」で「〜したい気持ちにならなかった」と、その気持ちが起きなかったことを自然に表現できます。
Facing a new challenge, I didn't incline to take the first step.
新しい挑戦を前にして、私は最初の一歩を踏み出したいとは思いませんでした。
※ 新しいことに挑戦する際、不安やためらいから「なかなか気持ちが乗らない」という状況を描写しています。「incline」は、このように「心が特定の行動に向かうかどうか」を表すのに使われます。
傾斜
地面や床などが傾いている状態。坂道やスロープなどを指すことが多い。例:a steep incline(急な傾斜)
The hiking path had a steep incline, making us breathe hard.
そのハイキングコースは急な傾斜があり、私たちは息を切らしました。
※ この例文は、山道を登る時の大変な状況を描写しています。「steep incline」は「急な傾斜」という意味で、山道や坂道がとてもきつい時に使われる典型的な表現です。息を切らしている様子から、その傾斜の厳しさが伝わりますね。
There was a gentle incline for wheelchairs at the building entrance.
建物の入り口には、車椅子用の緩やかな傾斜がありました。
※ この例文は、建物の入り口にあるバリアフリーのスロープをイメージさせます。「gentle incline」は「緩やかな傾斜」という意味で、車椅子やベビーカーが通りやすいように作られた坂道によく使われます。これにより、誰もがアクセスしやすい場所であることがわかります。
Engineers carefully measured the incline of the new roof.
技術者たちは、新しい屋根の傾斜を慎重に測りました。
※ この例文は、建築や設計の場面を想像させます。専門家が屋根の「incline(傾斜)」を測ることで、雨水が流れやすくなったり、雪が積もりにくくなったりするように設計する様子が目に浮かびます。「measure the incline」は「傾斜を測る」という、非常に実用的な使い方です。
コロケーション
〜と思う傾向がある、〜と考えがちである
※ 「incline」を受動態で用いた表現で、ある意見や考えに傾いている状態を婉曲的に示します。断定を避け、控えめな印象を与えるため、ビジネスシーンやフォーマルな場面でよく使われます。類似表現に 'tend to think' がありますが、'be inclined to think' の方がより丁寧で思慮深いニュアンスを含みます。例えば、会議で自分の意見を述べるときに、'I am inclined to think that...' と切り出すことで、相手に配慮しながら自分の考えを伝えることができます。
〜の方へ傾く、〜を好む傾向がある
※ 物理的な傾きだけでなく、好みや意見が特定の方向へ向かうことを表します。政治的な立場や趣味の選択など、抽象的な概念に対しても使われます。例えば、「彼は保守的な考え方に傾いている (He inclines towards conservative views)」のように使います。 'lean towards' と似た意味ですが、'incline towards' の方がよりフォーマルで、慎重な判断に基づいているニュアンスがあります。また、'incline towards' は、徐々に変化していく過程を表すことが多いです。
耳を傾ける、注意して聞く
※ 「incline」を「傾ける」という意味で使い、相手の話に真剣に耳を傾ける様子を比喩的に表現します。古風な言い回しで、文学作品や演説などで見られます。日常会話ではあまり使われません。類似表現に 'lend an ear' がありますが、'incline an ear' の方がより敬意を払い、注意深く聞く姿勢を示します。例えば、「王は民衆の訴えに耳を傾けた (The king inclined an ear to the people's grievances)」のように使われます。
なだらかな傾斜
※ 物理的な地形を表す際に、「incline」を名詞として使用し、傾斜が緩やかであることを強調します。ハイキングコースの紹介や不動産の広告などで使われます。「steep incline(急な傾斜)」と対比して使われることが多いです。例えば、「この道はなだらかな傾斜なので、初心者でも歩きやすい (This road has a gentle incline, making it easy for beginners to walk)」のように使われます。
〜と信じる傾向がある、〜と考える
※ 'be inclined to think' と同様に、確信は持てないものの、ある事柄を信じる気持ちがあることを表します。ただし、'be inclined to think' よりも、信じる気持ちがやや強いニュアンスがあります。証拠は不十分だが、直感的にそう思う場合などに用いられます。例えば、「彼の話は信じがたいが、私は彼を信じる傾向がある (His story is hard to believe, but I incline to believe him)」のように使われます。
道徳的な傾向、倫理観
※ 人の行動や判断を左右する、道徳的な価値観や信念を指します。心理学や倫理学の分野でよく用いられる表現です。例えば、「彼の行動は彼の道徳的な傾向を反映している (His actions reflect his moral inclinations)」のように使われます。 'ethical inclinations' とほぼ同義ですが、'moral inclinations' の方が、個人の内面的な価値観に焦点を当てるニュアンスがあります。
使用シーン
学術論文や専門書で、データや実験結果の傾向を示す際に用いられます。例えば、「実験参加者はリスクの高い選択肢を選ぶ傾向がある(Participants incline to choose riskier options)」のように、客観的な事実を述べる文脈で使われます。心理学、社会学、経済学といった分野でよく見られます。
ビジネス文書やプレゼンテーションで、市場の動向や顧客の嗜好の変化を説明する際に使用されることがあります。例:「最近の顧客は、環境に配慮した製品を選ぶ傾向が強い(Recent customers incline strongly to choose environmentally friendly products)」といった形で、分析結果や予測を伝える際に使われます。ただし、より平易な言葉(tend to)が好まれる場合もあります。
日常会話ではあまり使われませんが、ニュース記事やノンフィクション作品で、人々の行動や意見の傾向を説明する際に用いられることがあります。例:「若者は都会に住むことを好む傾向がある(Young people incline to live in urban areas)」のように、社会現象を解説する文脈で見かけることがあります。会話では「tend to」や「likely to」がより一般的です。
関連語
類義語
『傾く』『寄りかかる』という意味で、物理的に傾いている状態や、精神的に何かに頼る状態を表す。自動詞・他動詞どちらでも使用可能。 【ニュアンスの違い】『incline』よりも物理的な傾きや、一時的な寄りかかりを表すことが多い。カジュアルな場面でよく使われる。 【混同しやすい点】『lean』は『寄りかかる』という意味合いが強く、物理的なサポートを必要とするニュアンスがある。『incline』はより抽象的な傾きや傾向を示す。
『傾斜』『坂』という意味の名詞、または『傾斜する』という意味の動詞。地形や物の表面の傾きを表す際に用いられる。学術的な文脈や地理的な説明でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『incline』よりも角度がはっきりとした傾きを示す。名詞として使われることが多い点が異なる。 【混同しやすい点】『slope』は具体的な地形や物の傾斜を指すことが多く、『incline』のような抽象的な心の傾きや傾向を示すことは少ない。また、『slope』は名詞としても頻繁に使用される。
『〜する傾向がある』という意味で、習慣的な行動や一般的な傾向を表す。主に自動詞として使われる。 【ニュアンスの違い】『incline』よりも強い傾向や、繰り返される行動パターンを示す。学術的な文脈や、客観的な事実を述べる際に適している。 【混同しやすい点】『tend』は常に『to + 動詞の原形』の形で使用される(例:He tends to be late)。『incline』のように、直接目的語を取ることはない。また、『tend』は習慣的な傾向を表すのに対し、『incline』は一時的な心の動きや好みを示すことがある。
- predispose
『〜する傾向にさせる』という意味で、遺伝的、環境的な要因によって特定の行動や状態になりやすいことを表す。他動詞。 【ニュアンスの違い】『incline』よりも強い影響力や、長期的な傾向を示す。医学、心理学、社会学などの分野でよく使われる。 【混同しやすい点】『predispose』は常に『predispose someone to something』の形で使用され、受動態で使われることも多い(例:He is predisposed to heart disease)。『incline』よりもフォーマルで、専門的な文脈で使用される。
『偏見』『先入観』という意味の名詞、または『偏らせる』という意味の動詞。公平さを欠いた傾向や意見を表す。社会的な問題や政治的な議論でよく使われる。 【ニュアンスの違い】『incline』よりもネガティブな意味合いが強く、不公平さや差別につながる可能性を示唆する。感情的なニュアンスを含むことが多い。 【混同しやすい点】『bias』は名詞としても動詞としても使用されるが、『incline』のように抽象的な心の傾きを示す場合でも、より強い感情的な偏りや固定観念を表す。客観性に欠けるニュアンスを含む。
『傾ける』『歪曲する』という意味で、物理的な傾きだけでなく、情報や意見を意図的に偏らせることを表す。他動詞・自動詞どちらでも使用可能。 【ニュアンスの違い】『incline』よりも意図的な操作や、隠された意図があることを示唆する。ジャーナリズムや政治的な文脈でよく使われる。 【混同しやすい点】『slant』は物理的な傾きを表す場合でも、何らかの意図が込められていることが多い。『incline』のように単純な傾きを示すことは少ない。また、『slant』はニュース記事などで特定の視点から報道することを指す場合もある。
派生語
『傾斜』『傾向』を意味する名詞。動詞『incline』に名詞化接尾辞『-ation』が付加され、具体的な傾きから抽象的な心の傾きや性向を表すようになった。日常会話よりも、ややフォーマルな場面や、心理学・社会学などの学術分野で、人の性質や行動の傾向を説明する際に用いられることが多い。
『〜する傾向がある』『〜したい気持ちがある』という意味の形容詞。動詞『incline』の過去分詞形が形容詞として用いられるようになった。しばしば『be inclined to do』の形で、婉曲的な表現として用いられ、ビジネスシーンや丁寧な会話で相手に配慮した言い方をする際に適している。例えば、『I am inclined to agree with you.(あなたに賛成したい気持ちがあります)』のように使う。
接頭辞『re-(後ろへ、再び)』がつき、『もたれかかる』『寄りかかる』という意味になった動詞。物理的に後ろに傾く動作を表す。日常会話ではリクライニングチェアなどに『もたれる』状況で使われる。比喩的に『休息する』という意味合いでも用いられることがある。
反意語
接頭辞『de-(下に、離れて)』がつき、『(徐々に)減少する』『衰退する』という意味になった動詞。『incline』が上向きや前向きの傾斜を示すのに対し、『decline』は下向きや後退のイメージを表す。経済状況、健康状態、人気などが下がる状況で広く使われる。名詞としては『衰退』『辞退』の意味を持つ。
『抵抗する』という意味の動詞。『incline』が何かに向かう、あるいは傾くことを意味するのに対し、『resist』はそれに対して反対の力を加えることを意味する。誘惑、圧力、変化など、様々なものに対して抵抗する状況で用いられる。心理的な抵抗から物理的な抵抗まで、幅広い文脈で使用される。
語源
"incline」は、ラテン語の「inclinare」(傾ける、曲げる)に由来します。これは「in-」(~へ、~に向かって)と「clinare」(傾ける、曲げる)という要素から構成されています。「clinare」自体は、さらに古いインド・ヨーロッパ祖語の語根に遡ることができ、そちらは「傾く」という意味合いを持ちます。つまり、「incline」は、文字通りには「~の方へ傾ける」という意味合いを持ちます。この語源から、「傾ける」「傾斜」といった物理的な意味だけでなく、「~したい気持ちになる」という心理的な意味も派生しました。何かに対して心が傾く、つまり、好意や関心を持つ、というイメージです。たとえば、難しい問題に直面した時に、解決策の方へ「incline」する、つまり、解決策に意識を集中させる、といった使い方ができます。
暗記法
「incline」は、単なる傾きに留まらず、人の心が運命や誘惑、義務などに「傾く」様を描写し、西洋文化で重要な役割を果たしました。中世文学では神の意志や運命への傾倒が、啓蒙思想以降は理性や社会進歩への志向が表現され、個人の興味やキャリア選択といった自己実現のプロセスを象徴します。現代では、マーケティングや政治にも応用され、人々の心理的傾向を捉えるキーワードとして深く根付いています。
混同しやすい単語
『incline』と『decline』は接頭辞が異なるだけで、発音もスペルも非常に似ています。意味は『decline』が『減少する』『断る』など、逆の意味を持つことが多いです。品詞も動詞・名詞の両方で使用される点が共通しているので、文脈で判断する必要があります。日本人学習者は、接頭辞 'in-' と 'de-' の意味の違いを意識すると良いでしょう。語源的には、'de-' は『下へ』という意味合いを持ちます。
『incline』は『incline to do』の形で『~する傾向がある』という意味で使用されることがあります。これは『be inclined to do』という受動態の形でもよく見られます。この『to』がない場合、単に『傾斜』という意味になるので注意が必要です。日本人学習者は、この 'to' の有無で意味が大きく変わることを意識する必要があります。
『incline』と『include』は、どちらも接頭辞が 'in-' で始まり、続く音も似ているため、特にリスニング時に混同しやすいです。『include』は『含む』という意味で、品詞は主に動詞です。意味が全く異なるため、文脈から判断する必要があります。日本人学習者は、'cl' と 'clud' の発音の違いを意識して聞き分ける練習をすると良いでしょう。
『incline』と『infine』は、綴りが似ていますが、『infine』はイタリア語の単語で、英語では通常使用されません。ただし、音楽用語や特定の文脈で稀に使われることがあります。もし英語の文章で『infine』を見かけた場合は、スペルミスである可能性が高いです。日本人学習者は、英語の語彙として『infine』を覚える必要は基本的にありません。
『incline』と『inline』は、発音が一部似ており、'in-' で始まる点も共通しています。『inline』は『一行に』『インラインスケート』などの意味を持ち、形容詞や副詞として使われます。プログラミングの文脈でもよく使用されます。意味が全く異なるため、文脈から判断する必要があります。日本人学習者は、'cl' と 'l' の発音の違いを意識すると良いでしょう。
『incline』と『recline』は、どちらも『cline』という語幹を持ち、発音も似ているため混同しやすいです。『recline』は『寄りかかる』『もたれる』という意味で、動詞として使われます。意味は異なりますが、どちらも傾斜や姿勢に関連する単語であるため、イメージが似ているかもしれません。日本人学習者は、接頭辞 're-' の意味(再び、後ろへ)を意識すると、単語の意味を覚えやすくなります。
誤用例
日本人が『incline』を使う際、無意識に『〜する傾向がある』という直訳的な意味に引きずられ、能動的なニュアンスで捉えてしまうことがあります。しかし、この文脈では『be inclined to』という形で、受動的な『〜する気持ちがある』『〜したい気がする』という意味を表すのが自然です。日本語の『傾く』という言葉が、物理的な傾きだけでなく、心情的な傾きも表すため、英語でも同様に能動的に使えると誤解しやすいのです。正しい英語では、自分の気持ちが何かに『傾けられている』というニュアンスで捉え、受動態を使うのがポイントです。より教養的に言えば、意志の力で無理に決断するのではなく、自然な心の動きに身を任せる、という東洋的な価値観にも通じるかもしれません。
『incline』は名詞として『傾斜』という意味を持ちますが、動詞として使う場合、物理的な傾斜を表すよりも、精神的な傾向や好みを表すことが多いです。この文脈のように、道が物理的に傾斜していることを表す場合は、『slope』を使う方が適切です。日本人は、学校英語で『incline』を『傾ける』と覚えることが多いため、物理的な傾斜にも使えると誤解しやすいのですが、実際には、抽象的な意味合いで使われることが多いことを覚えておきましょう。例えば、『His views incline towards socialism.(彼の考えは社会主義に傾いている)』のように使います。この違いを理解することは、英語の語彙を単なる暗記ではなく、文脈の中で使いこなすための第一歩となります。
『incline one's head』は、確かに頭を傾けるという意味を持ちますが、これは相手に敬意を示す、あるいは何かを注意深く聞くような、ややフォーマルな状況で使われることが多い表現です。単に『同意してうなずく』という日常的な動作を表す場合は、『nod』を使う方が自然です。日本人は、頭を傾ける動作を『incline』で表現することを学校英語で学ぶことが多いのですが、実際の会話では『nod』の方が圧倒的に頻繁に使われます。また、日本語の『傾聴』という言葉が『incline one's ear』のような表現に結びつきやすいのですが、これも少し硬すぎる表現です。より自然な英語では、『listen attentively』などを使う方が良いでしょう。文化的背景として、日本人は相手の言葉に耳を傾けることを重視する傾向がありますが、英語ではより直接的な表現を好む場合が多いことを意識することが大切です。
文化的背景
「incline」は、物理的な傾斜だけでなく、人の心や意志が特定の方向へ「傾く」様子を表す言葉として、西洋文化において重要な意味を持ちます。これは、人間が理性だけでなく感情や欲望によって動かされる存在であることを示唆し、道徳的な選択や運命の岐路といったテーマと深く結びついてきました。
中世の文学作品では、「incline」はしばしば神の意志や運命の力に人がどのように「傾く」かを描写するために用いられました。例えば、騎士道物語では、主人公が愛や名誉、義務の間で葛藤し、どちらの道に「傾く」かが物語の核心となります。これは、人間の自由意志と運命の間の緊張関係を表現しており、読者に対して自己の行動と責任について深く考えさせる効果がありました。また、宗教的な文脈では、罪への誘惑に「傾く」ことが、人間の弱さや堕落の象徴として描かれることもありました。
さらに、18世紀以降の啓蒙思想の影響下では、「incline」は個人の理性や感情の発達、社会的な進歩への志向といった意味合いを帯びるようになりました。人々が古い権威や迷信から離れ、新しい知識や自由を求めるようになるにつれて、「incline」はより積極的で肯定的なニュアンスを持つようになったのです。例えば、科学的な探求や芸術的な創造への「傾倒」は、人間の可能性の拡大を象徴するものとして捉えられました。現代においても、「incline」は個人の興味や才能、キャリアの選択といった、自己実現のプロセスを表現するために広く用いられています。人が何に「傾く」かは、その人の個性や価値観を反映し、人生の方向性を決定づける重要な要素であると考えられているのです。
現代社会においては、マーケティングや政治の分野でも「incline」の概念が応用されています。消費者の購買意欲を「傾ける」ための広告戦略や、有権者の支持を特定の候補者や政策に「傾ける」ためのキャンペーンなど、人々の心理的な傾向を利用した手法が数多く存在します。このように、「incline」は、単なる物理的な傾きを超えて、人間の行動や社会現象を理解するための重要なキーワードとして、現代文化においても深く根付いていると言えるでしょう。
試験傾向
準1級・1級の長文読解や語彙問題で出題される可能性があります。動詞(~する気にさせる、傾ける)と名詞(傾斜、傾向)の両方の意味があり、文脈によって意味を判断する必要があります。ライティングでの使用も有効ですが、やや硬い表現です。
Part 5, 6, 7 で登場する可能性があります。ビジネスシーンで「~する傾向がある」という意味で使われることが多いです。Part 7の長文読解では、文章全体の流れから推測する問題が出題されることがあります。類義語 (tend to) との使い分けも意識しましょう。
リーディングセクションで、アカデミックな文章において頻出します。名詞としては「傾斜」「勾配」、動詞としては「~する気にさせる」「傾ける」という意味で使われます。文脈理解が重要で、抽象的な内容や論理的な議論の中で出てくることが多いです。同意語や言い換え表現も覚えておきましょう。
難関大学の長文読解で出題される可能性があります。文脈から意味を推測する問題や、同意語・反意語を選ぶ問題が出題されることがあります。動詞としての「~する気にさせる」という意味は、やや難易度が高いので注意が必要です。