slow
二重母音 /oʊ/ は、日本語の『オ』から『ウ』へスムーズに変化する音です。まず口を丸めて『オ』を発音し、すぐに唇をすぼめて『ウ』に移行するイメージで。語尾の 'w' のように聞こえるのは自然な流れです。また、's' は日本語のサ行よりも息を強く出すように意識すると、よりクリアに聞こえます。
のろい
速度が遅い状態を表す一般的な形容詞。物理的な速度だけでなく、処理速度や理解の遅さなど、抽象的な意味にも使われる。対義語はfastやquick。
A snail is a very slow animal.
カタツムリはとても動きの遅い動物です。
※ この文は、カタツムリが葉っぱの上をゆっくりと進んでいる様子を想像させます。「slow」は、動物の動きや性質が「のろい」ことを表す、最も基本的で中心的な使い方です。`is`(be動詞)の後に「slow」を置いて、主語の状態を説明する形は、英語の基本的な文型の一つです。
My old computer is very slow.
私の古いパソコンはとても動作が遅いです。
※ 古いパソコンがなかなか起動せず、作業が進まない様子を思い浮かべてみてください。「slow」は、機械やインターネットの接続、乗り物などの「動作が遅い」状態を表すのにも非常によく使われます。日常生活で「遅い」と感じる場面で、すぐに使える典型的な表現です。
The traffic was very slow this morning.
今朝は交通がとても混んでいました(進みが遅かったです)。
※ 朝の通勤・通学中に、車がほとんど動かない大渋滞にはまってしまった、そんなイライラする状況が目に浮かびますね。「slow」は、交通の流れや進捗が「遅い」ことを表現する際にも頻繁に登場します。`The traffic is slow`のように現在形で使えば「交通が混んでいる」という意味になります。
減速する
速度を落とす動作を表す。自動車や機械の速度を落とす場合や、活動のペースを落とす場合など、幅広い状況で使用される。
She saw the red light and started to slow down her car carefully.
彼女は赤信号が見えたので、慎重に車を減速させ始めました。
※ この例文は、運転中に赤信号を見て「速度を落とす」という、誰もが経験する具体的なシーンを描写しています。`slow down`は「減速する」という意味で非常によく使われる句動詞(動詞と副詞がセットになったもの)です。ここでは目的語(her car)が`slow`と`down`の間に挟まれていますが、`slow her car down`も`slow down her car`もどちらも自然です。
As I walked through the quiet forest, I wanted to slow down and listen to the birds.
静かな森を歩いていると、速度を落として鳥のさえずりを聞きたくなりました。
※ ここでは、自分の「歩く速度」を意識的に落とすシーンです。美しい景色や音に気づき、もっと長くその場にいたいという気持ちが伝わってきますね。`slow down`は、このように乗り物だけでなく、人や動物の動きの速度を落とす場合にも使われます。ここでは自動詞として使われています。
My old computer often starts to slow down when I open too many apps.
古いパソコンは、アプリをたくさん開くとよく動作が遅くなります。
※ これは、現代の多くの人が共感できる「パソコンの動作が遅くなる」という典型的なシーンです。`slow down`は、機械やシステム、または物事の進行が遅くなる、といった比喩的な文脈でも頻繁に使われます。ここでも自動詞として「(主語自身が)遅くなる」という意味で使われています。
ゆっくりと
動作や進行が遅い様子を表す。slowlyよりも口語的なニュアンスがあり、リラックスした雰囲気や、意図的に時間をかけて行う様子を表す。
My grandmother walked slowly through the garden, enjoying the flowers.
私の祖母は庭をゆっくりと歩き、花を楽しんでいました。
※ おばあちゃんが、景色を楽しみながらゆっくりと歩いている様子が目に浮かびますね。「slowly」は、このように「(人が)ゆっくり歩く」という動作を説明するときによく使われます。動詞「walked」を修飾しています。
The little boy ate his ice cream very slowly, savoring every bite.
その小さな男の子はアイスクリームをとてもゆっくり食べ、一口ずつ味わっていました。
※ 大好きなアイスクリームを、大事に大事に味わって食べている男の子の姿が目に浮かびますね。「slowly」は、単に速度が遅いだけでなく、このように「慎重に」「時間をかけて」何かを行う様子を表すときにも使われます。「very slowly」のように「very」を前につけて、さらに「とてもゆっくり」と強調することができます。
The old computer ran very slowly, making me feel a bit frustrated.
その古いコンピューターはとてもゆっくりと動き、私を少しイライラさせました。
※ 古いパソコンがなかなか動かず、作業が進まなくてイライラする気持ち、よく分かりますよね。「slowly」は、このように「機械の動作が遅い」という状況を説明する際にも非常に頻繁に使われます。「ran slowly」は「動くのが遅い」という意味で、「run」は機械が「作動する」という意味でも使われます。
コロケーション
じわじわと高まる感情や展開
※ 元々は物理的な燃焼現象を表す言葉ですが、比喩的に「時間とともに徐々に強くなる感情(怒り、愛情など)」や「ゆっくりと展開していくストーリー」を指します。恋愛ドラマやサスペンス作品でよく用いられ、最初から激しい感情が爆発するのではなく、伏線を張りながら徐々に盛り上げていく手法を指すことが多いです。例えば、'Their relationship was a slow burn.'(彼らの関係は時間をかけて深まった)のように使います。ビジネスシーンでは、徐々に成果を上げていくプロジェクトや、長期的な投資戦略を指すこともあります。
特に重要なニュースがない日
※ 報道業界で使われる表現で、「大きな事件や出来事がなく、ニュースのネタに困る日」を意味します。皮肉めいたニュアンスを含むことがあり、そのような日に限って些細なニュースが大げさに報道されたりします。例えば、'It's a slow news day, so they're reporting on a cat stuck in a tree.'(今日はニュースがないから、木に登った猫のニュースを報道している)のように使われます。文化的な背景として、メディアが常に何か新しい情報を探し求めている状況を示唆しています。
理解が遅い、物覚えが悪い
※ 人の理解力や反応速度が遅いことを婉曲的に表現する際に用いられます。直接的に「頭が悪い」と言うよりも、相手に配慮した言い方です。例えば、'He's a bit slow on the uptake, but he's a hard worker.'(彼は少し理解が遅いけど、よく働く)のように使われます。この表現は、相手の能力を完全に否定するのではなく、別の長所も認めつつ、弱点を指摘するニュアンスがあります。フォーマルな場面では避けるべきですが、親しい間柄ではユーモラスに使うこともできます。
ペースを落とす、減速する
※ 物理的な速度を落とす意味の他に、比喩的に「活動を控える」「落ち着く」という意味でも使われます。例えば、'You need to slow down and take a break.'(あなたはペースを落として休憩する必要がある)のように使われます。また、病気や怪我をした人に「無理をしないでゆっくり休んでください」と伝える際にも使われます。ビジネスシーンでは、プロジェクトの進行速度を調整したり、従業員の負担を軽減したりする際に用いられます。
非常に時間がかかること、遠回しな方法
※ 文字通りには「中国へ行く遅い船」を意味し、比喩的に「非常に時間がかかること」や「遠回しな方法」を指します。昔、船旅が長かった時代に、中国へ行く船が特に時間がかかったことから生まれた表現です。例えば、'Getting that approval is like taking a slow boat to China.'(その承認を得るのは、中国へ行く遅い船に乗るようなものだ)のように使われます。この表現は、プロセスが非効率的であったり、官僚的な手続きが煩雑であったりする場合によく用いられます。
スローダンス
※ 男女が寄り添ってゆっくりと踊るダンスのことです。主に恋愛的な雰囲気の中で踊られることが多く、映画やドラマなどのロマンチックなシーンでよく見られます。文化的な背景として、欧米の社交ダンスの習慣があり、親密な関係を築くための手段として用いられてきました。例えば、'They shared a slow dance at the prom.'(彼らはプロムでスローダンスを踊った)のように使われます。近年では、結婚式やパーティーなどで、新郎新婦やカップルが踊ることがあります。
使用シーン
学術論文や講義で、実験結果や調査データを説明する際に使用されます。例えば、経済学の論文で「経済成長が鈍化する」という状況を分析する際に 'slow growth' という表現が使われます。また、統計学の分野では、データ処理の速度が遅い場合に 'slow processing' と表現されることがあります。
ビジネスシーンでは、プロジェクトの進捗状況や市場の動向を報告する際に使用されます。例えば、会議で「プロジェクトの進行が遅れている」と報告する際に 'slow progress' という表現が使われます。また、市場分析のレポートで「売上成長が鈍化している」と述べる際に 'slow sales' と表現されることがあります。フォーマルな文書やプレゼンテーションで使われることが多いです。
日常会話で、動作が遅いことや物事がゆっくり進むことを表現する際に頻繁に使用されます。例えば、「運転が遅い」と言う時に 'slow driver' と表現したり、「インターネット回線が遅い」と言う時に 'slow internet' と表現したりします。また、レストランで料理の提供が遅い場合に 'slow service' と言うこともあります。口語的な表現として広く使われています。
関連語
類義語
倦怠感や無気力によって動作や反応が遅い状態を指す。医学的な文脈や、体調不良、精神的な落ち込みなどを表現する際に用いられる。日常会話よりもややフォーマルな表現。 【ニュアンスの違い】"slow"が単に速度が遅いことを指すのに対し、"lethargic"はエネルギーの欠如が原因で遅いというニュアンスを含む。病気や疲労による一時的な状態を指すことが多い。 【混同しやすい点】"slow"は人、機械、プロセスなど様々なものに使えるが、"lethargic"は主に人や動物の状態を表す。また、"lethargic"は状態を表す形容詞であり、動作の速度を表す副詞としては使えない。
動きが鈍く、活気がない状態を表す。経済の停滞、消化不良、反応の遅さなど、様々な状況で使用される。日常会話でよく使われる。 【ニュアンスの違い】"slow"よりも動きの悪さ、停滞感を強調する。"lethargic"と似ているが、"sluggish"は必ずしも病的な状態を意味せず、一時的な不活発さを示すことが多い。 【混同しやすい点】"slow"は速度の遅さを客観的に示すが、"sluggish"は主観的な印象を含む。例えば、「景気がslowだ」とは言えるが、「景気がsluggishだ」と言う方が、停滞感や不満のニュアンスが強くなる。
徐々に、段階的に変化する様子を表す。変化の速度が遅いことを意味し、進歩、改善、衰退など、時間経過を伴う事柄に使われる。学術的な文脈や、ビジネスシーンでも用いられる。 【ニュアンスの違い】"slow"が単に速度が遅いことを指すのに対し、"gradual"は変化の過程に焦点を当てる。変化自体が緩やかであることを強調する。 【混同しやすい点】"slow"は具体的な動作や速度に対して使われるが、"gradual"は変化のプロセスに対して使われる。「slow progress」と「gradual progress」はどちらも「遅い進歩」を意味するが、前者は進歩の速度が遅いことを、後者は進歩が徐々に進むことを強調する。
意図的で、慎重な行動を表す。熟考を重ね、注意深く行動する様子を示す。ビジネスシーンや、フォーマルな状況で使われることが多い。 【ニュアンスの違い】"slow"が単に速度が遅いことを指すのに対し、"deliberate"は意図的に速度を落としていることを示す。目的意識を持った遅さ、慎重さを意味する。 【混同しやすい点】"slow"は単に速度が遅いことを表すが、"deliberate"は意図的な行動を伴う。例えば、「slow down」は速度を落とすことを意味するが、「deliberate action」は熟慮された行動を意味する。
- unhurried
急がない、のんびりとした様子を表す。時間的な余裕があり、焦りがない状態を示す。日常会話や、旅行などのリラックスした状況で使われる。 【ニュアンスの違い】"slow"が客観的な速度の遅さを指すのに対し、"unhurried"は主観的な心の余裕を表す。急ぐ必要がない、リラックスした状態を強調する。 【混同しやすい点】"slow"は様々な状況で使えるが、"unhurried"は主に人の行動や態度に対して使われる。「slow pace」は遅いペースを意味するが、「unhurried pace」はのんびりとしたペースを意味する。
- tardy
予定や時間に対して遅れている状態を表す。主に到着や提出が遅れた場合に使われる。フォーマルな文脈や、学校、ビジネスシーンで用いられる。 【ニュアンスの違い】"slow"が単に速度が遅いことを指すのに対し、"tardy"は時間的な遅れ、特に義務や約束に対する遅れを意味する。非難や責任を伴うニュアンスを含むことがある。 【混同しやすい点】"slow"は様々なものに使えるが、"tardy"は主に人や行動が時間的に遅れている場合に使う。「slow train」は遅い列車を意味するが、「tardy student」は遅刻した学生を意味する。
派生語
『ゆっくりと』という意味の副詞。『slow』に副詞を作る接尾辞『-ly』が付いた形。動作や変化のペースを表す日常会話で頻繁に使われるほか、指示書や技術文書などでも用いられる。単に速度が遅いだけでなく、注意深く、着実に進むニュアンスを含む場合もある。
『減速』や『景気後退』を意味する名詞。『slow』と『down』が組み合わさった複合語。経済状況の悪化を表す際によく用いられ、ニュースやビジネスシーンで頻出する。単なる速度の低下だけでなく、勢いや活力が失われる状況を指す。
『動きが鈍い』や『不活発な』という意味の形容詞。『slow』と関連があるものの、直接的な派生語ではない。人や動物の動作、経済活動、市場の動きなどを描写する際に用いられる。日常会話からビジネスシーンまで幅広く使用されるが、特に経済や健康に関する話題でよく登場する。
反意語
『速い』という意味の形容詞・副詞。『slow』と最も直接的な対義語。速度やペースが速いことを表し、時間、移動、行動など様々な文脈で使用される。日常会話からビジネス、技術的な分野まで幅広く用いられ、『slow』との対比で速度の違いを明確に示す。
『素早い』や『迅速な』という意味の形容詞。fastと似ているが、fastが一般的な速度を指すのに対し、quickはより短い時間で完了することを強調する。判断や行動の速さを表す際によく用いられ、『quick decision(迅速な決定)』などのように使われる。
『急速な』という意味の形容詞。fastやquickよりもさらに速度が速いことを強調し、変化や成長の速度を表す際によく用いられる。科学技術、経済、社会の変化などを描写する際に用いられ、学術的な文脈やニュース記事で頻出する。
語源
"slow"の語源は、古英語の"slāw"に遡ります。これは「動きが遅い」「のろい」「鈍い」といった意味を持っていました。さらに遡ると、ゲルマン祖語の"*slæwaz"に由来し、これは「だらしない」「怠惰な」といったニュアンスを含んでいました。この語根は、印欧祖語の"*(s)lei-"(滑る、ぬるぬるする)と関連があると考えられています。つまり、物理的な遅さだけでなく、精神的な鈍さや怠惰さも含む、根源的な「動きのなさ」を表す言葉として発展してきたと言えるでしょう。日本語で例えるなら、「のろま」という言葉が持つ、単なる速度の遅さだけでなく、どこか間の抜けた感じに近いかもしれません。
暗記法
「slow」は単なる遅さでなく、慎重さや忍耐の象徴。産業革命以降、否定的な意味合いも帯びたが、スローフード運動などを通して、その価値が見直された。フォークナーの小説では、変化を拒む社会の象徴として描かれ、ウサギとカメの物語では、着実さの重要性を示す。現代では、持続可能な生き方や心の豊かさを追求するキーワードとして、「slow living」などのライフスタイルが注目されている。
混同しやすい単語
発音が /sloʊ/ と非常に近く、スペルも 'w' と 'e' の違いだけなので、聞き間違いやスペルミスが起こりやすい。意味は『スローベリー』という植物の実を指す名詞であり、『遅い』という意味の形容詞である 'slow' とは全く異なる。特に会話では注意が必要。
発音が /slɔː/ と似ており、特にアメリカ英語では母音の区別が曖昧になりやすい。スペルも似ているため、混同しやすい。意味は『コールスロー』であり、食べ物を指す名詞。文脈から判断する必要がある。
発音は /sloʊθ/ で、語尾に 'th' がつくため、'slow' とは異なる音だが、日本人には 'th' の発音が苦手なため、聞き取りにくい場合がある。意味は『ナマケモノ』であり、動物を指す名詞。発音記号を確認し、'th' の音を意識して練習すると良い。
語尾の 'ow' の発音が共通しているため、語感から混同しやすい。スペルも 'fl' と 'sl' の違いのみ。意味は『流れ』であり、名詞または動詞として使われる。『slow』が状態を表すのに対し、『flow』は動きを表す。
'gl-'という子音連結が異なるものの、'-ow'の母音と二重子音が共通するため、音の響きが似ており混同しやすい。意味は『輝き』であり、名詞または動詞として使われる。類似した音を持つ単語は、文脈で意味を判断することが重要。
接頭辞 'be-' がつくことで意味が大きく異なるが、'-low' の部分が共通しているため、スペルを見たときに混同しやすい。意味は『〜の下に』という前置詞または副詞。前置詞 'be-' は『〜を完全に覆う』という意味合いがあり、『below』は『低い位置にある』ことを示す。
誤用例
日本語の『プロジェクトが遅れている』という表現を直訳すると、つい 'going slow' と言ってしまいがちですが、これは口語的すぎる表現です。ビジネスシーンやフォーマルな場面では、'progressing slowly' のように、より丁寧な語彙を使うのが適切です。また、'going slow' は意図的に作業を遅らせるニュアンスを含む場合もあります。教養ある大人の会話では、状況を正確かつ客観的に伝える表現を心がけましょう。日本語の『〜している』という進行形に引きずられず、文脈に合った適切な動詞を選ぶことが重要です。
'slow' は必ずしも知的な遅れを意味するわけではありませんが、ジョークの理解が遅いという文脈では、やや直接的すぎる表現です。相手を傷つけないように、'dense'(鈍感)や 'not quick on the uptake'(理解が早くない)のような婉曲的な表現を使う方が、大人のコミュニケーションとしては適切です。特に欧米文化では、直接的な表現を避け、ユーモアを交えたり、控えめな言い方をすることが好まれます。これは、相手の自尊心を尊重し、人間関係を円滑に保つための配慮です。日本語の『鈍い』をそのまま 'slow' に置き換えるのではなく、相手への配慮を込めた表現を選ぶことが大切です。
『鈍行列車』を 'slow train' と表現するのは間違いではありませんが、ニュアンスが少し異なります。 'slow train' は文字通り速度が遅いことを強調する表現であり、必ずしも快適さを意味するわけではありません。一方、'local train' は各駅停車であることを示し、旅行者が景色をゆっくり楽しんだり、リラックスできる時間があることを連想させます。特に旅行に関する話題では、単に速度だけでなく、体験や感情を伝える言葉を選ぶことが重要です。日本語の『鈍行』という言葉には、のんびりとした旅情や風情が含まれることがありますが、'slow' だけではそのニュアンスが伝わりにくい場合があります。
文化的背景
「slow」は、単に速度が遅いことを示すだけでなく、慎重さ、忍耐、そして時には社会的な停滞や抵抗の象徴としても用いられます。近代化や効率化を急ぐ社会において、「ゆっくり」という概念は、失われた価値や理想を想起させる力を持つことがあります。
産業革命以降、速度は進歩の象徴となり、「slow」はしばしば否定的な意味合いを帯びるようになりました。しかし、19世紀末のアーツ・アンド・クラフツ運動や、20世紀後半のスローフード運動のように、「slow」は大量生産や消費主義へのアンチテーゼとして、意識的に肯定的な価値を付与されるようになります。これらの運動は、手仕事の価値、地域の食文化の尊重、そして何よりも「時間をかけて丁寧に生きること」の重要性を訴えました。つまり、「slow」は、単なる物理的な速度の遅さではなく、生き方や価値観の選択肢として再評価されたのです。
文学作品においても、「slow」は多様な意味合いを持ちます。例えば、ウィリアム・フォークナーの作品に登場する南部社会は、変化を拒む「slow」な世界として描かれます。そこには、過去への執着、伝統の重み、そして社会的な不平等といった複雑な要素が絡み合っています。また、童話「ウサギとカメ」のように、「slow and steady wins the race(ゆっくり着実に進む者が勝つ)」という教訓は、忍耐と努力の重要性を説く普遍的なメッセージとして、世代を超えて語り継がれています。このように、「slow」は、物語の中で、単なる遅さではなく、知恵や戦略、そして最終的な勝利へと繋がる要素として描かれることがあります。
現代社会においては、「slow living」や「slow fashion」といったライフスタイルが提唱され、「slow」は単なる速度の遅さから、持続可能性、環境への配慮、そして心の豊かさを追求する生き方へと意味合いを広げています。情報過多で常に時間に追われる現代人にとって、「slow」は、立ち止まり、自分自身と向き合い、本当に大切なものを見つめ直すためのキーワードとなっているのです。それは、単なるノスタルジーではなく、より人間らしい生き方への希求の表れと言えるでしょう。
試験傾向
- 出題形式: 語彙問題、長文読解、リスニング
- 頻度と級・パート: 2級以上で頻出。特に準1級、1級で語彙問題や長文読解のキーワードとして登場する。
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場するが、環境問題や社会問題など、やや硬めのテーマで使われることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 形容詞、動詞、副詞の用法を理解し、それぞれの意味の違いを把握することが重要。特に動詞の「遅らせる」という意味での使用に注意。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 5, 7で頻出。ビジネスシーンでの使用が多い。
- 文脈・例題の特徴: ビジネス文書(メール、レポート)や広告などで、進捗の遅延や手続きの遅さなどを表す際に使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 形容詞、動詞、副詞の品詞を意識し、文法的に正しい選択肢を選べるようにする。また、同義語(delay, postponeなど)との使い分けも重要。
- 出題形式: リーディング、リスニング
- 頻度と級・パート: アカデミックな内容のリーディングで頻出。リスニングでは講義形式で稀に出題される。
- 文脈・例題の特徴: 科学、歴史、社会学などの学術的な文章で、速度や変化の緩慢さを表す際に使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 形容詞、動詞としての用法を理解し、文脈から正確な意味を判断できるようにする。抽象的な概念を説明する際に用いられることが多い。
- 出題形式: 長文読解、英作文
- 頻度と級・パート: 難関大学の長文読解問題で頻出。英作文では、緩やかな変化や遅延などを表現する際に使用できる。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、科学技術、文化など、幅広いテーマで登場する。抽象的な概念を説明する際に用いられることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: 形容詞、動詞、副詞の用法を理解し、文脈に応じて適切な意味を判断できるようにする。また、関連語(slowly, slowness)との使い分けも重要。