pick
母音 /ɪ/ は日本語の『イ』よりも口を左右に開かず、リラックスした状態で短く発音します。『ピ』と『プ』の中間のようなイメージです。また、語尾の /k/ は息を止めるように発音し、日本語の『ク』のように母音を伴わないように注意しましょう。
選び出す
多くのものの中から特定のものを選び取る行為。注意深く吟味するニュアンスを含む。
My son looked at all the toys and carefully picked a red car.
息子はすべてのおもちゃを見て、慎重に赤い車を選びました。
※ おもちゃ屋さんで、目を輝かせながらたくさんの中からお気に入りの一台を「選び出す」子供の姿が目に浮かびますね。「pick」は、このように「多くの選択肢の中から、手にとって選ぶ」という具体的な動作を伴う場合によく使われます。ここでは「carefully(慎重に)」が加わることで、選び出す様子がより鮮明に伝わります。
She wanted to pick the perfect gift for her best friend's birthday.
彼女は親友の誕生日にぴったりのプレゼントを選びたかったのです。
※ 大切な人のために「最高のプレゼントを吟味して選ぶ」という、心温まるシーンです。「pick」は、このように目的を持って「数ある中から最適なものを選び出す」際にも自然に使われます。「pick a gift」は日常会話で非常によく使われるフレーズなので、覚えておくと便利です。
We looked at many samples and finally picked a bright blue for the room.
私たちはたくさんのサンプルを見て、最終的に部屋のために明るい青色を選びました。
※ 部屋の色を選ぶために、たくさんの見本(サンプル)を比較検討し、最終的に「これだ!」と決める様子が伝わりますね。このように「pick」は、具体的な物だけでなく、「色」のような抽象的な選択肢の中から「これにする」と決める場合にも使われます。「finally(ついに、最終的に)」という言葉が、選ぶ過程があったことを示しています。
つまみ食いする
少量だけを、または一部分だけを試すように取る行為。食べ物に限らず、情報や経験などにも使われる。
My little brother loves to pick a cookie from the jar before dinner.
僕の幼い弟は、夕食前にジャーからクッキーを一枚つまみ食いするのが大好きです。
※ この例文は、小さな子供が大人に隠れて、または無邪気に、おやつ入れからクッキーをこっそりつまんでいる、微笑ましい光景を描写しています。「pick a cookie from the jar」は、容器などから何かを「つまみ取る」「つまみ食いする」という、日常的で自然な行動を表す典型的な使い方です。
He only picked the sweet corn from his vegetable mix.
彼は野菜ミックスの中からスイートコーンだけをつまんで食べました。
※ 食卓で、嫌いな野菜には手をつけず、大好きなコーンだけをフォークや指でつまんで食べている子供の姿が目に浮かびます。この文は、食事の際に特定の食べ物だけを「選り好みしてつまむ」という「つまみ食い」のニュアンスを伝えています。このように「pick (something) from (something else)」で、何かの中から特定のものを「選んで食べる」状況で使われます。
I picked a juicy strawberry directly from the garden.
私は庭から直接、みずみずしいイチゴをつまんで食べました。
※ 太陽の光を浴びた庭で、真っ赤に熟れたイチゴを、その場でつまんで口に入れている、新鮮で喜びを感じる情景です。この「pick」は、畑や庭で採れたての果物や野菜を、その場で新鮮なうちに「摘み取って味見する」という、自然で開放的な「つまみ食い」の状況を表現しています。新鮮さを楽しむ気持ちが伝わります。
選択
選ぶという行為、または選ばれたもの自体を指す。特に、最良または好ましいものの選択。
Her smile showed that my gift was a good pick.
彼女の笑顔が、私のプレゼントが良い選択だったことを示していました。
※ 誕生日や記念日に贈ったプレゼントが、相手にとても喜ばれた場面です。ここでは、選んだプレゼントそのものが「良い選択(good pick)」だった、という意味で使われています。相手の笑顔が、あなたの選択が成功したことを教えてくれる、心温まる瞬間が目に浮かびますね。
The coach made me his first pick for the basketball team.
コーチは私をバスケットボールチームの最初の選択にしてくれました。
※ スポーツのチーム分けやメンバー選考の場面です。コーチが多くの選手の中から「最初に選んだ(first pick)」のがあなただった、という状況を表しています。これは、あなたがチームにとって重要な存在だと認められたことを意味し、誇らしい気持ちが伝わってきますね。'first pick' は「一番最初に選ばれた人(物)」という意味でよく使われます。
I had no time, so I just made a quick pick at the store.
時間がなかったので、お店でさっと選びました。
※ 急いでいる時に、じっくり選ぶ暇がなく、棚から目についたものを「素早く選んだ(quick pick)」という状況です。スーパーで夕食の材料を決めたり、本屋さんで手軽な雑誌を選んだりするような、日常の慌ただしい一コマが想像できます。'quick pick' は「熟考せずにパッと選ぶ」というニュアンスで使われます。
コロケーション
人に意見や知識を求める、知恵を借りる
※ 直訳すると「人の脳みそを摘む」となり、相手の知識やアイデアを積極的に引き出そうとする意味合いです。ビジネスシーンで、専門家や経験豊富な人にアドバイスを求める際によく使われます。フォーマルな場面でもカジュアルな場面でも使用可能です。ただし、相手に過度な負担をかけるような状況での使用は避けるべきでしょう。例えば、プロジェクトの初期段階で、上司や先輩に相談する際に『Can I pick your brain about this new project?』のように使います。
喧嘩を売る、言い争いを始める
※ 文字通り「喧嘩を選ぶ」という意味で、自ら進んで争いを始めることを指します。相手を挑発したり、些細なことで文句をつけたりする行為が含まれます。口語的な表現で、フォーマルな場面には不向きです。例えば、バーで酔っ払いが他の客に因縁をつけるような状況を『He was trying to pick a fight with everyone.』と表現できます。
徹底的に批判する、欠点を見つけ出す
※ 文字通り「バラバラに摘む」という意味から、詳細に分析し、欠点や誤りを指摘することを指します。対象は、計画、文章、議論など多岐に渡ります。建設的な批判だけでなく、意図的に相手を貶めるようなニュアンスも含まれる場合があります。例えば、論文の査読で『The reviewer picked apart my methodology.』のように使われます。
勘定を払う、おごる
※ 「勘定書を拾う」というイメージから、誰かの分の支払いをする、またはグループ全体の勘定を負担することを意味します。友人との食事やビジネスの接待など、様々な場面で使われます。例えば、同僚の昇進祝いに食事に行った際に『I'll pick up the tab tonight.』のように使います。
良いものだけを選ぶ、より好みする
※ 文字通り「選んで、さらに選ぶ」という意味で、多くの選択肢の中から自分の気に入ったものだけを選び取ることを指します。しばしば、選択が自由であること、または選択基準が主観的であることを示唆します。例えば、商品のセールで『You can pick and choose whatever you want.』のように使われます。
立ち直る、元気を取り戻す
※ 文字通り「自分自身を拾い上げる」という意味で、困難や失敗から立ち直り、再び前向きな状態になることを指します。精神的な回復や再起を表す際に用いられます。例えば、失恋後に『It took her a while to pick herself up after the breakup.』のように使われます。
あら探しをする、批判的な視点を持つ
※ 文字通り「穴をあける」という意味から、欠点や矛盾点を見つけ出して批判することを指します。しばしば、建設的な意図よりも、相手を貶めようとする意図が含まれる場合があります。例えば、プレゼンテーションに対して『He always tries to pick holes in my ideas.』のように使われます。
使用シーン
学術論文や研究発表で、データや事例を「選び出す」「抽出する」という意味で使用されます。例えば、研究者が統計データの中から特定の傾向を「pick out」して議論したり、先行研究から重要な知見を「pick up」して自分の研究の根拠としたりする際に用いられます。フォーマルな文体で使用されることが多いです。
ビジネスシーンでは、プロジェクトのメンバーを「選抜する(pick)」、特定の市場セグメントを「ターゲットとして選び出す(pick)」、あるいは問題点を「特定する(pick out)」といった意味で使われます。会議での議論や報告書などで、意思決定や戦略に関連する文脈で登場することが多いです。例:「プロジェクトメンバーをアサインする際に、スキルセットを考慮してメンバーをpickした。」
日常会話では、「選ぶ」「拾う」「摘む」といった基本的な意味で頻繁に使われます。例えば、レストランで料理を「選ぶ(pick)」、道端に落ちているゴミを「拾う(pick up)」、庭で花を「摘む(pick)」など、幅広い場面で登場します。また、「pick a fight(喧嘩を売る)」のようなイディオムもよく使われます。例:「今日は気分が良いから、好きなケーキをpickして帰ろう。」
関連語
類義語
複数の選択肢の中から、最も好ましいものを選ぶという意味。日常会話、ビジネス、学術など、幅広い場面で使用される。 【ニュアンスの違い】`pick`よりもフォーマルで、より慎重に、論理的に選択するというニュアンスが強い。また、`choose`はしばしば、より重要な選択や、長期的な影響を伴う選択を指す。 【混同しやすい点】`pick`は具体的な物を手で選ぶイメージが強いが、`choose`は抽象的な概念や行動を選ぶ場合にも使える。例えば、「職業を選ぶ」は`choose a career`だが、「りんごを摘む」は`pick apples`。
注意深く、または特定の基準に基づいて選ぶという意味。ビジネス、学術、技術的な文脈でよく使用される。例えば、データを選択する、チームメンバーを選ぶなど。 【ニュアンスの違い】`choose`よりもさらにフォーマルで、客観性や合理性が重視されるニュアンスがある。`pick`のようなカジュアルな印象はない。 【混同しやすい点】`select`は、あらかじめ用意されたリストやグループから選ぶ場合に適している。`pick`のように、自然に生えているものを摘むようなニュアンスは含まれない。また、`select`は形容詞として「選りすぐりの」という意味でも使われる(例:select few)。
花、果実、羽などを『引き抜く』または『摘み取る』という意味。農業、料理、鳥に関する文脈で使用されることが多い。 【ニュアンスの違い】`pick`と似ているが、より力を込めて、あるいは勢いよく引き抜くイメージ。また、`pluck`はしばしば、自然な状態から何かを取り除くことを指す。 【混同しやすい点】`pluck`は、ギターなどの弦を弾くという意味もあるが、`pick`にはこの意味はない。また、比喩的に「勇気を奮い起こす」という意味でも使われる(例:pluck up courage)。
何かを『集める』という意味。特に、自然に生えているものや散らばっているものを集める際に使われる。日常会話や農業、狩猟採集に関する文脈で使われる。 【ニュアンスの違い】`pick`が個々の物を選択して摘むのに対し、`gather`はまとめて集めるというニュアンスが強い。また、`gather`は情報や人々を集めるという意味でも使われる。 【混同しやすい点】`pick`は選んで摘む行為に焦点があるが、`gather`は集めること自体に焦点がある。例えば、「きのこを摘む」は`pick mushrooms`だが、「きのこを集める」は`gather mushrooms`。
情報を苦労して少しずつ集める、または収穫後に畑に残った作物を拾うという意味。学術的な文脈や、歴史的な背景を伴う文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】`pick`とは異なり、`glean`は、すでに主要な部分が取り除かれた後に残ったものを集めるというニュアンスが強い。また、情報を集める場合は、困難な状況で、断片的な情報を集めるイメージ。 【混同しやすい点】`glean`は、現代の日常会話ではあまり使われない。`pick`のように、単純に何かを選ぶという意味では使われない。例えば、「情報を集める」は`gather information`だが、「(苦労して)情報を収集する」は`glean information`。
- single out
他のものとは区別して、特定のものを選び出すという意味。ビジネス、人事、教育などの文脈でよく使用される。 【ニュアンスの違い】`pick`よりも意図的で、他のものと比べて特別扱いするというニュアンスが強い。しばしば、選ばれたものが賞賛や批判の対象となることを示唆する。 【混同しやすい点】`single out`は句動詞であり、常に目的語を伴う。`pick`のように、単独で「選ぶ」という意味では使われない。また、`single out`は、良い意味でも悪い意味でも使われる可能性がある(例:優秀な生徒を指名する、スケープゴートを選ぶ)。
派生語
- pickpocket
『スリ』という意味の名詞。『pick(つまむ、抜き取る)』と『pocket(ポケット)』が組み合わさり、『ポケットから物を抜き取る人』を指す。日常会話やニュース記事で使われ、特に犯罪に関する文脈でよく見られる。語の構成要素から意味が推測しやすい。
『好みがうるさい』『えり好みする』という意味の形容詞。『pick』が持つ『選りすぐる』というニュアンスが強調され、特に食べ物や選択に関して細かいことを気にする様子を表す。日常会話で頻繁に使われる。例えば、子供が食べ物に対して『picky』であるといった使われ方をする。
- picking
『摘み取ること』『収穫』という意味の名詞。『pick』に進行形を作る接尾辞『-ing』が付加され、行為やその結果としての収穫物を指す。農業や果樹園など、特定の分野で使われることが多い。また、ギターなどの弦楽器を『picking(ピッキング)』するといった用法もある。
反意語
『拒否する』『却下する』という意味の動詞。『pick』が『選び取る』という意味であるのに対し、『reject』は『選ばずに捨てる』という対立関係にある。ビジネスや学術的な文脈で、提案や申請などを拒否する際に用いられる。日常会話でも、申し出を断る場合などに使われる。
『拒む』『断る』という意味の動詞。『reject』と同様に、『pick』の選択するという意味と対照的に、受け入れないことを表す。ただし、『reject』がより強い拒絶のニュアンスを含むのに対し、『refuse』は意思や行動の拒否を意味することが多い。例えば、『refuse to answer(返答を拒否する)』のように使われる。
『捨てる』『放棄する』という意味の動詞。『pick』が『選び取る』のに対し、『discard』は『選ばずに捨てる』という意味で対立する。特に、不要になった物や情報を捨てる際に用いられる。ビジネスシーンでは、計画やアイデアを『discard(破棄)』するといった使われ方をする。
語源
「pick」の語源は、古英語の「pician」(つつく、刺す)に遡ります。これはゲルマン祖語の*pik-(鋭いもの、つつく)に由来し、さらにインド・ヨーロッパ祖語の*(s)peig-(尖ったもの)という語根につながると考えられています。つまり、「pick」の基本的な意味は、尖ったもので何かを「つつく」ことから、「選び出す」「つまみ出す」といった行為を表すようになったと考えられます。日本語で例えるなら、串で食べ物をつまみ上げる様子や、鳥が地面をつついて餌を探す様子を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。この「つつく」という原義から、対象を特定して選び出す、選択するという意味合いへと発展していったのです。
暗記法
「pick」は、選ぶ以上の意味を持ちます。アメリカでは、奴隷制度の苦難の歴史と結びつき、自由を「選び取る」決意の象徴へ。イギリスでは、「pick a fight」のように攻撃的な選択や不正義を批判する意味合いも。日常会話の「pick up」は偶然の出会いを表します。歴史、社会、感情が詰まったこの言葉から、選択と責任、未来への希望を深く考えさせられますね。
混同しやすい単語
発音が /piːk/ と同じであり、文脈によっては聞き分けが難しい。スペルも 'ea' と 'i' の違いのみ。意味は『頂点』『絶頂』であり、『選ぶ』という意味の 'pick' とは全く異なる。日本人学習者は、文章全体から判断する必要がある。'peak' は古フランス語の『先端』を意味する 'pic' に由来し、山頂を指すようになった。
語尾の子音 /tʃ/ が似ているため、発音の区別が難しいと感じる学習者がいる。スペルも似ているため、視覚的にも混同しやすい。意味は『投げる』『音程』など多岐にわたる。'pick' とは意味が大きく異なるので、文脈で判断することが重要。また、'pitch' には「(市場の)露店」という意味もあり、中世の市場で商品を並べた場所を指したことに由来する。
語頭の子音と母音が似ているため、特に発音練習の初期段階で混同しやすい。スペルも 'i' と 'i' の違いだけなので、注意が必要。意味は『豚』であり、全く異なる。'pig' は古英語の 'picga' に由来し、若い豚を指していた。
母音の発音が似ており、特に早口で話されると聞き分けが難しいことがある。スペルも似ているため、視覚的にも混同しやすい。意味は『槍』『カワカマス』など。'pick' とは意味が大きく異なるため、文脈で判断する必要がある。'pike' は中英語の『尖ったもの』を意味する言葉に由来する。
語尾の子音 /k/ が同じであるため、発音の区別が難しいと感じる学習者がいる。意味は『荷物』『詰め込む』など。'pick' とは意味が異なるため、文脈で判断することが重要。'pack' はゲルマン祖語の『束ねる』という意味の言葉に由来する。
'peak'と同様、発音が/piːk/であり、'pick'とは母音の長さが異なる。スペルも'ee'と'i'の違いのみで、視覚的に混同しやすい。意味は『覗き見する』であり、'pick'とは異なる。'peak'と発音が同じなので、文脈で判断する必要がある。'peek'は、元々スコットランドの方言で『こっそり見る』という意味だった。
誤用例
日本人が『〜と予想する』という日本語を直訳しようとする際に、安易に『pick』を選んでしまうことがあります。しかし、『pick』には『選択する』という意味合いが強く、『pick that...』とすると、根拠なく何かを選ぶような印象を与えてしまいます。より客観的な根拠に基づいた予測を意味する場合には、『predict』を使うのが適切です。背景にある考え方として、『predict』はラテン語の『praedicere(前もって言う)』に由来し、根拠や兆候に基づいて未来を語るニュアンスがあります。
『pick』はカジュアルな場面で『選ぶ』という意味で広く使われますが、ビジネスの場やフォーマルな状況では、より丁寧で客観的な印象を与える『select』を使う方が適切です。『pick』には、いくつかある選択肢の中から無作為に選ぶようなニュアンスが含まれることがあります。特に、リーダーを選ぶような重要な決定においては、『select』を使うことで、慎重に検討した結果であるという印象を与えることができます。日本語の『選抜する』という言葉に近いニュアンスです。
『Can I pick you up at 7?』は文法的に間違ってはいませんが、相手に直接的な許可を求める表現であり、状況によってはややカジュアルすぎたり、強引な印象を与えたりする可能性があります。特に、相手との関係性がまだ浅い場合や、相手への配慮が必要な場合には、『Would you mind if I picked you up at 7?』のように、相手の意向を伺うクッション言葉を加えることで、より丁寧で控えめな印象を与えることができます。日本的な感覚で、相手に気を遣う場合は、直接的な表現を避けることが重要です。英語でも同様に、相手への配慮を示す表現を選ぶことが大切です。
文化的背景
「pick」は、文字通りには何かを選び取る行為を指しますが、文化的な背景においては、単なる選択以上の意味合いを持ち、特に機会や幸運を「つかみ取る」という積極的な姿勢や、責任や負担を「引き受ける」という覚悟を示す言葉として深く根付いています。この単語は、個人の意思決定、社会的な役割、そして運命との関わり合いといった、人間の根源的なテーマと結びついています。
アメリカの歴史を振り返ると、「pick」は奴隷制度と深く結びついた苦い記憶を呼び起こします。綿花を「pick」する労働は、過酷な強制労働の象徴であり、アフリカ系アメリカ人の苦難の歴史を物語っています。この文脈における「pick」は、自由意志を奪われた人々が、自らの運命を「選ぶ」ことすら許されなかった状況を象徴的に表しています。しかし、公民権運動以降、「pick」は抑圧された過去を乗り越え、自らの未来を「選び取る」という決意の象徴としても用いられるようになりました。例えば、人種差別撤廃を訴えるスローガンの中には、「We must pick our own destiny(我々は自らの運命を選び取らねばならない)」といった表現が見られます。
一方、イギリス英語においては、「pick」はやや異なるニュアンスを持つことがあります。例えば、「pick a fight(喧嘩を売る)」という表現は、積極的に対立を「選ぶ」というニュアンスが強く、アメリカ英語よりも攻撃的な印象を与えることがあります。また、「pick on someone(誰かをいじめる)」という表現も、弱者に対する一方的な攻撃を意味し、社会的な不正義を批判する際に用いられます。このように、「pick」は単なる選択行為だけでなく、社会的強者が弱者に対して行う行為を批判的に捉える視点も内包しています。さらに、口語表現では、「pick up」という句動詞が頻繁に使われます。これは、物を拾うという意味だけでなく、人をナンパする、情報を得る、病気をうつされるなど、多様な意味を持ちます。これらの表現は、日常生活における偶然性や出会いを表しており、「pick」が持つ意味の幅広さを示しています。
このように、「pick」は単なる動詞としてだけでなく、歴史、社会、そして人間の感情と深く結びついた言葉として、私たちの文化の中に息づいています。この単語を学ぶことは、単に語彙を増やすだけでなく、英語圏の文化や歴史、そして人々の価値観を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。そして、「pick」という言葉を通して、私たちは自らの選択と責任、そして未来への希望について、より深く考えることができるのです。
試験傾向
- 出題形式: 語彙問題、長文読解、リスニング
- 頻度と級・パート: 準1級・1級で頻出。特に2級以上で重要
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで出題。フォーマルな文章から日常会話まで
- 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な意味に加え、句動詞(pick up, pick outなど)を確実に。文脈によって意味が異なるため注意。
- 出題形式: Part 5 (短文穴埋め)、Part 7 (長文読解)
- 頻度と級・パート: 頻出。特にPart 7で文脈理解を問われる
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンが中心。会議、メール、報告書など
- 学習者への注意点・アドバイス: 「選ぶ」「拾う」以外に、TOEIC特有のビジネスシーンにおける意味(例: (機会などを)得る、(データなどを)収集する)を把握。
- 出題形式: リーディング
- 頻度と級・パート: 頻出。アカデミックな文章でよく使われる
- 文脈・例題の特徴: 学術的な内容。科学、歴史、社会問題など
- 学習者への注意点・アドバイス: 抽象的な意味合いで使用されることが多い。「選択する」「識別する」といった意味合いを理解し、文脈から正確に判断する必要がある。
- 出題形式: 長文読解、和訳、英作文
- 頻度と級・パート: 頻出。難関大学ほど重要
- 文脈・例題の特徴: 評論文、物語文、説明文など幅広い
- 学習者への注意点・アドバイス: 基本的な意味に加え、比喩的な意味やニュアンスを理解することが重要。文脈判断能力が問われる。