pass on
「pass」の /æ/ は日本語の「ア」と「エ」の中間のような音で、口を大きめに開けて発音します。「on」の /ɑː/ は日本語の「アー」よりも口を大きく開け、喉の奥から出すイメージです。また、「pass」と「on」の間には、ごく短い休止(ポーズ)が入ることがあります。意識的に区切ることで、より自然な発音になります。
専門的な内容に関するご注意
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伝える
情報、知識、メッセージなどを誰かに伝える、共有する意味。単に伝えるだけでなく、次の人に託すニュアンスを含む。例:Please pass on my regards to your mother. (お母様によろしくお伝えください。)
My friend asked me to pass on this message to you.
友達があなたにこのメッセージを伝えるように頼みました。
※ カフェで友達と話している時、「あ、そうそう、〇〇ちゃんがこれ伝えてって言ってたよ」と思い出して話すような、日常的な情報伝達の場面です。誰かから頼まれた情報を別の人に「伝える」という、最も基本的な使い方です。
My grandmother likes to pass on her secret recipes to me.
祖母は私に秘密のレシピを伝えるのが好きです。
※ 温かい台所で、おばあちゃんが笑顔で孫に料理のコツを教えているような、世代を超えて知識や技術が「受け継がれる」場面を描写しています。愛情を込めて大切なものを「伝える」というニュアンスが伝わります。
I will pass on your request to my manager right away.
あなたの要望をすぐに私の上司に伝えます。
※ オフィスで、顧客や同僚から受けた要望を、責任を持ってすぐに上司に報告しようとしている場面です。組織の中で情報を「橋渡しする」「連絡する」という、ビジネスシーンでもよく使われる典型的な表現です。
手渡す
物を誰かに手渡しで渡す意味。目の前の相手に物理的に何かを渡す場面で使われる。例:Could you pass me the salt? (塩を取ってくれますか?)
Please pass on this book to Tom after you read it.
この本を読み終えたら、トムに手渡してください。
※ 友達があなたに本を貸してくれて、読み終わったらさらに別の友達に渡してほしいと頼んでいる情景です。「読んだら、〇〇さんに回してね」という日常の頼みごとでよく使われる表現です。「pass on A to B」で「AをBに手渡す」という形を覚えましょう。
My boss asked me to pass on these important documents to the new staff member.
上司は私に、これらの重要な書類を新しい社員に手渡すよう頼みました。
※ オフィスで、上司があなたに書類の束を渡し、「これを新入社員に渡してあげて」と指示している場面です。職場での情報伝達や書類の受け渡しで、責任を持って物を渡す際に非常によく使う表現です。「ask 人 to do」で「人に~するよう頼む」という形で使われています。
Mom, can you please pass on my drawing to Grandma when you visit her?
ママ、おばあちゃんのところに行く時に、私の絵をおばあちゃんに手渡してくれる?
※ 子供が一生懸命描いた絵を、おばあちゃんに渡してほしいと、お母さんにお願いしている可愛らしい場面です。誰かに何かを託して、別の人に渡してもらうという、家庭内での温かいやり取りが感じられます。「Can you please...?」は、相手に何かを丁寧にお願いする時にとても便利な表現です。
亡くなる
人が亡くなることを婉曲的に表現する際に用いる。直接的な表現を避けたい場合に適している。例:He passed on peacefully in his sleep. (彼は眠るように安らかに亡くなった。)
Our old dog, Max, peacefully passed on last night after many happy years with our family.
私たちの老犬マックスは、家族と過ごした長い幸せな歳月を経て、昨夜安らかに息を引き取りました。
※ 【情景】長年連れ添った家族の一員である犬が、穏やかに天寿を全うした悲しくも温かい場面です。【解説】「pass on」は「亡くなる」を意味する、直接的すぎない優しい表現です。特にペットに対して使う際によく耳にします。動詞の過去形「passed on」で「亡くなった」と伝えます。
My kind grandmother passed on quietly at home last year at a very old age.
私の優しい祖母は、昨年、大変高齢で自宅で静かに息を引き取りました。
※ 【情景】大切な祖母が、自宅で静かに亡くなったという、心温まる思い出の場面です。【解説】身近な親族の死を伝える際にも「pass on」はよく使われます。「died」よりも柔らかく、相手への配慮が感じられる表現です。「at home」(自宅で)や「at a very old age」(大変高齢で)のように状況を付け加えると、より自然な会話になります。
The famous actor, who brought joy to many, sadly passed on this morning.
多くの人に喜びをもたらしたその有名な俳優は、今朝、残念ながら亡くなりました。
※ 【情景】世間に広く愛された有名人の訃報が、ニュースで伝えられるような場面です。【解説】公の場で著名人の死を伝える際にも「pass on」は使われます。この例文のように、「who brought joy to many」(多くの人に喜びをもたらした)のように、その人物の生前の功績を簡潔に付け加えることで、より深い感情が伝わります。「sadly」(残念ながら、悲しいことに)は、気持ちを表す副詞です。
コロケーション
情報を伝える、伝達する
※ 「pass on」の中でも非常に基本的なコロケーションですが、単に「tell」や「inform」と言うよりも、情報が連鎖的に伝わっていくニュアンスを含みます。例えば、会議で聞いた内容を同僚に伝えたり、噂話を広めたりする状況で使われます。ビジネスシーンでも口語でも使われますが、情報の内容によっては、よりフォーマルな動詞を選ぶ方が適切な場合もあります。
病気を伝染させる、感染させる
※ 病原体が人から人へ、あるいは動物から人へと伝わる状況を表します。医学的な文脈や、感染症に関するニュースなどで頻繁に使われます。「transmit」や「spread」といった類義語がありますが、「pass on」はより直接的な伝達のイメージが強く、責任の所在を曖昧にするニュアンスも含むことがあります。例えば、「He passed on the flu to his family.(彼は家族にインフルエンザをうつした)」のように使われます。
責任を転嫁する、責任を人に押し付ける
※ 本来自分が負うべき責任を、他の人に委ねたり、押し付けたりする行為を指します。ネガティブな意味合いが強く、非難や批判の文脈で使われることが多いです。「shift responsibility」や「delegate responsibility」と似ていますが、「pass on」は、より一方的に責任を放棄するニュアンスを含みます。組織論や社会問題に関する議論でよく見られます。
機会を逃す、機会を見送る
※ 好機やチャンスを意図的に、あるいは意図せずに逃してしまうことを意味します。「decline an opportunity」と似ていますが、「pass on」は、より消極的な選択、あるいは無意識的な見送りのニュアンスを含みます。例えば、昇進の機会を断ったり、投資のチャンスを逃したりする状況で使われます。後悔の念を伴うこともあります。
メッセージを伝言する、メッセージを伝達する
※ 誰かから預かったメッセージを、別の誰かに伝える行為を指します。電話の伝言や、口頭での伝達など、様々な場面で使われます。「relay a message」とほぼ同義ですが、「pass on」は、よりカジュアルな印象を与えます。ビジネスシーンでも使われますが、フォーマルな場面では「convey a message」を使う方が適切です。
弔意を伝える、お悔やみを申し上げる
※ 誰かが亡くなった際に、遺族や близкимに哀悼の意を表す行為を指します。葬儀や告別式などのフォーマルな場面でよく使われます。「offer one's condolences」とほぼ同義ですが、「pass on」は、間接的に弔意を伝えるニュアンスを含みます。例えば、第三者を通じて遺族に弔意を伝えたり、手紙やメールで弔意を伝えたりする状況で使われます。
伝統を受け継ぐ、伝統を伝える
※ 文化、習慣、知識などを次世代に継承することを意味します。家族の伝統、地域の祭り、職人の技術など、様々なものが対象となります。「hand down a tradition」とほぼ同義ですが、「pass on」は、より積極的に伝承するニュアンスを含みます。教育や文化人類学などの分野でよく使われます。
使用シーン
学術論文や発表で、情報や知識を伝達する際に使用されることがあります。例えば、「この研究結果は、過去の研究から受け継がれた知見をさらに発展させたものである(This research passes on the insights passed down from previous studies)」のように、研究の文脈や系譜を説明する際に用いられます。また、学生がレポートで先行研究について言及する際などにも見られますが、よりフォーマルな表現が好まれる傾向にあります。
ビジネスシーンでは、情報伝達、特に責任やタスクの委譲に関連して使われます。たとえば、「このプロジェクトの責任を次の担当者に引き継ぎます(I will pass on the responsibility for this project to the next person in charge)」のように、業務の引き継ぎを明確にする際に使われます。また、会議で得た情報を同僚に伝える場合などにも使用されます。メールや報告書など、様々なビジネスコミュニケーションで使用される可能性があります。
日常会話では、物を手渡す、情報を伝える、といった意味で頻繁に使われます。「塩を取って(Pass on the salt)」のように、食事中に物を手渡す場面や、「〇〇さんがよろしくと言っていたよ(〇〇 passed on their regards)」のように、伝言を伝える場面でよく使われます。また、「風邪をうつさないようにね(Don't pass on your cold)」のように、病気をうつすという意味でも使われます。亡くなるという意味も持ちますが、日常会話では婉曲表現として使われることが多いです。
関連語
類義語
『伝達する』という意味で、情報、信号、病気などを伝える場合に使われる。フォーマルな場面や技術的な文脈で用いられることが多い。 【ニュアンスの違い】「pass on」よりも、より公式で、客観的なニュアンスを持つ。物理的な伝達や、情報伝達の正確さを強調する場合に使われる。感情的なニュアンスは少ない。 【混同しやすい点】「pass on」が、必ずしも意図的な伝達を意味しないのに対し、「transmit」は、意図的な伝達、またはシステムを介した伝達を暗示することが多い。例えば、病気をうっかり伝えてしまう場合は「pass on」が適切だが、意図的に情報を送る場合は「transmit」が適切。
『伝える』『運ぶ』という意味で、メッセージ、感情、ニュアンスなどを伝える際に使われる。ややフォーマルな印象を与える。 【ニュアンスの違い】「pass on」よりも、より抽象的なものを伝えるニュアンスが強い。特に、言葉や行動を通じて間接的に何かを伝える場合に使われる。例えば、表情で気持ちを伝えるような場合。 【混同しやすい点】「pass on」が、具体的な物や情報を伝える場合にも使えるのに対し、「convey」は、抽象的な概念や感情を伝えるのに適している。また、「convey」は物理的に物を運ぶという意味もあるが、「pass on」にはその意味はない。
- hand down
『(世代から世代へ)伝える』という意味で、伝統、知識、財産などを後世に伝える場合に使われる。歴史的、文化的な文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】「pass on」よりも、時間的な経過、世代間の継承というニュアンスが強い。単に何かを伝えるだけでなく、受け継がれてきたものを尊重する気持ちが含まれることが多い。 【混同しやすい点】「pass on」が、必ずしも世代間の伝達を意味しないのに対し、「hand down」は、明確に世代から世代への伝達を意味する。また、「hand down」は、しばしば価値のあるもの、重要なものを伝えるという意味合いを持つ。
『移動させる』『譲渡する』という意味で、物理的なもの、権利、責任などを移す際に使われる。ビジネスや法律の文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】「pass on」よりも、移転、譲渡という行為そのものに焦点が当てられる。受け渡しのプロセスや、その結果としての所有権の変更が強調される。 【混同しやすい点】「pass on」が、必ずしも所有権の変更を意味しないのに対し、「transfer」は、所有権の変更を伴うことが多い。例えば、病気を「pass on」することはできるが、「transfer」することはできない(医学的な文脈を除く)。
- devolve
『(権限、義務などが)委譲される』『移行する』という意味で、責任、権限、財産などが、上位の者から下位の者へ、またはある組織から別の組織へと移る場合に用いられる。主に政治、法律、組織論などの文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】「pass on」よりも、責任や権限の移動というニュアンスが強く、階層構造や組織構造における移動を意味することが多い。また、しばしば責任の重圧や、負担の増加といったネガティブな意味合いを伴う。 【混同しやすい点】「pass on」は、単に何かを伝える、渡すという意味合いが強いのに対し、「devolve」は、権限や責任の委譲という、より限定的でフォーマルな意味を持つ。日常会話ではほとんど使われない。
『(遺産などを)遺贈する』という意味で、遺言によって財産や権利を後世に残す場合に用いられる。法律用語であり、フォーマルな場面で使用される。 【ニュアンスの違い】「pass on」よりも、遺産相続という明確な文脈で使用される。単に物を渡すだけでなく、法的な手続きを経て、正式に財産を譲り渡すという意味合いが強い。 【混同しやすい点】「pass on」が、生前にも死後にも使えるのに対し、「bequeath」は、死後の遺産相続に限定される。日常会話ではあまり使われず、法律関係の文書や、文学作品などで見られることが多い。
派生語
『passage』は『通り過ぎること』『通過』を意味する名詞。動詞『pass』から派生し、場所・時間・文章の一節など、何かが通過する、または経過する状況を表す。日常会話から学術論文まで幅広く使われる。
『passenger』は『乗客』を意味する名詞。『pass(通過する)』に接尾辞『-enger(〜する人)』が付いた形で、『乗り物などを通過する人』というイメージ。日常会話で頻繁に使われる。
- passing
『passing』は『一時的な』『通り過ぎる』という意味の形容詞。また、『死』を婉曲的に表現する際にも使われる(例:the passing of a loved one)。動詞『pass』の現在分詞形に由来し、日常会話やニュースなどで見られる。
反意語
『keep』は『持ち続ける』『維持する』という意味の動詞。『pass on(伝える、渡す)』が何かを手放すニュアンスなのに対し、『keep』は保持し続けるという対照的な意味を持つ。ビジネスシーンや日常生活で頻繁に使われる。
『retain』は『保持する』『記憶する』という意味の動詞。『pass on』が情報を人に伝える、あるいは物を譲るという意味合いなのに対し、『retain』は情報を自分のものとして保持する、あるいは物を手元に置いておくという意味で対立する。学術的な文脈やビジネスシーンで使われることが多い。
『receive』は『受け取る』という意味の動詞。『pass on』が何かを人に与える、あるいは伝える行為であるのに対し、『receive』はそれを受け取る側のアクションを表すため、対義語として捉えられる。日常会話、ビジネスシーン、学術論文など、幅広い場面で使用される。
語源
"Pass on"は、比較的単純な構成の句動詞ですが、それぞれの要素が意味の広がりを生み出しています。 "Pass"は、古フランス語の"passer"(通り過ぎる、通過する)に由来し、さらに遡るとラテン語の"passare"(歩く、進む)にたどり着きます。この「通り過ぎる」という根本的な意味が、「伝える」「手渡す」という行為に繋がります。何かを自分の手から相手の手へと「通過させる」イメージです。一方、"on"は古英語の"an"または"on"に由来し、「上に」「続けて」といった意味合いを持ちます。"Pass on"全体としては、「何かを通過させて、さらに先へ進める」というニュアンスを含み、これが「伝える」「手渡す」という意味を強め、さらに「(世代を)超えて伝える」という概念から「亡くなる」という意味へと発展したと考えられます。例えば、駅の改札を「pass」するように、何かを通過させるイメージを持つと理解しやすいでしょう。
暗記法
「pass on」は単なる伝達に留まらず、知識、伝統、死といった、世代や人から人へ受け継がれるものを指します。ヴィクトリア朝時代には、死を婉曲的に表現する言葉として、礼儀正しさと感情の抑制を重んじる社会で重宝されました。技術や経験といった無形の財産が受け継がれる様子も表し、単なる情報伝達を超え、文化的な価値観や精神性を受け継ぐ意味合いを持ちます。過去、現在、未来を結びつけ、文化的な連続性を意識させる言葉なのです。
混同しやすい単語
『pass on』と発音が非常に似ており、特に会話では区別が難しい。スペルも一文字違いで、タイプミスしやすい。意味は『過去の~について』のように使われる。pass on は動詞句だが、past on は形容詞+前置詞という品詞の違いがある点に注意。
『pass on』の過去形/過去分詞形である『passed on』と混同しやすい。意味は『(何かを)渡した』『(情報を)伝えた』、あるいは婉曲表現として『亡くなった』という意味になる。時制に注意が必要。
『pass on』と似た構造を持つが、意味が大きく異なる。『pass upon』は『~について判断を下す』『~に批評を加える』という意味合いを持つ。現代英語ではあまり一般的ではないが、古風な表現として目にすることがある。
『pass on』とは全く異なる意味だが、発音の類似性から混同されることがある。『phase in』は『段階的に導入する』という意味の句動詞。特に、onとinの区別が曖昧な学習者は注意が必要。
発音記号は異なりますが、日本語話者には『pass』と『pawn』が似て聞こえることがあります。『pawn』は『質に入れる』という意味の動詞、またはチェスの『歩』という意味の名詞です。文脈が全く異なるため、注意が必要です。
『pass on』とはスペルも意味も大きく異なるが、音の響きが似ているため、特に聞き取りの際に混同する可能性がある。『parson』は『牧師』を意味する名詞。古風な言い方であり、現代英語ではreverendなどが一般的。
誤用例
「pass on」は、情報を伝える意味では正しいですが、フォーマルな場面、特に弔意を伝える際には、ややカジュアルに聞こえる可能性があります。日本語の「お伝えください」を直訳するとpass onを選びがちですが、より丁寧でフォーマルな「convey」を使う方が適切です。英語では、場面に応じた言葉の選択が重要であり、特に相手への配慮が求められる状況では、より丁寧な表現を選ぶのが一般的です。
「pass on」は「(責任などを)人に渡す」という意味でも使えますが、この文脈では「責任転嫁する」というニュアンスが弱く、不自然に聞こえます。日本語の「責任を人に渡す」という表現をそのまま英語にしようとするとpass onを選んでしまいがちですが、「shift the blame」の方がより直接的に責任を転嫁する行為を表します。英語では、責任の所在を明確にする表現が好まれる傾向があり、責任転嫁のようなネガティブな行為を表現する際には、より強い言葉を選ぶことが一般的です。
「pass on」は「譲る」という意味で使えますが、この文脈では「図書館への寄贈」という行為の持つ公共性や貢献のニュアンスが伝わりません。日本語の「譲る」という言葉には、様々な意味合いが含まれますが、英語では、行為の性質に応じて適切な動詞を選ぶ必要があります。「donate」は、特に慈善的な目的での寄贈を意味し、この文脈に合っています。英語では、行為の意図や目的を明確に表現することが重要であり、特に社会的な貢献を表す場合には、より適切な言葉を選ぶことが一般的です。
文化的背景
「Pass on」は、単に「渡す」「伝える」という意味だけでなく、目に見えないもの、例えば知識、伝統、価値観、あるいは病気や死といった、受け継がれていくものを表現する際に特に用いられます。この語には、世代から世代へ、あるいは人から人へと、何か重要なものが引き継がれていくという、文化的連続性や伝承の概念が込められているのです。
「Pass on」が持つ「死」の婉曲表現としての側面は、ヴィクトリア朝時代の道徳観と密接に結びついています。直接的な表現を避け、穏やかな言葉を選ぶことで、死という厳粛な現実を和らげようとする傾向が、この語の使用を広げました。当時の人々は、死をタブー視し、それを直接口にすることを避けることで、悲しみを静かに受け止め、社会的な秩序を維持しようとしたのです。そのため、「pass on」は、家族や親しい友人の死を伝える際に、礼儀正しく、かつ感情を抑制した表現として重宝されました。
さらに、「pass on」は、知識や技術、経験といった無形の財産が受け継がれていく様子を表現する際にも用いられます。例えば、熟練した職人が弟子に技術を「pass on」する、あるいは先人たちが築き上げてきた知恵や教訓を後世に「pass on」するといった具合です。この用法には、単なる情報の伝達だけでなく、その背後にある文化的な価値観や精神性を受け継ぐという意味合いが含まれています。それは、単なるスキル伝授ではなく、生き方や考え方そのものを伝える行為であり、コミュニティのアイデンティティを維持する上で不可欠な要素となります。
現代においても、「pass on」は、ビジネスシーンでの情報伝達から、家族間の価値観の共有、そして、不幸な出来事を伝える場面まで、幅広く使用されています。この語が持つ婉曲性や、世代を超えて受け継がれるものへの敬意は、現代社会においても依然として重要な意味を持ち続けており、「pass on」という言葉を通して、私たちは過去と現在、そして未来を結びつけ、文化的な連続性を意識することができるのです。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解、稀にリスニング
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。2級でも稀に出題される可能性あり
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場。フォーマルな文章から日常会話まで
- 学習者への注意点・アドバイス: 「伝える」「渡す」「(機会などを)見送る」「(病気を)感染させる」など複数の意味があるので、文脈から判断する必要がある。類義語の 'hand over', 'transmit', 'decline' などとの使い分けも重要。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 5, 7で比較的頻出
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンでのメール、報告書、会議の議事録など
- 学習者への注意点・アドバイス: 「(情報を)伝える」「(機会などを)譲る」の意味で頻出。ビジネスシーンでは、提案や申し出を断る意味でも使われることがある。'relay', 'transfer' など類似の単語との識別が重要。
- 出題形式: リーディング
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻出
- 文脈・例題の特徴: 学術論文、研究報告書、歴史的な記述など
- 学習者への注意点・アドバイス: 「(情報・知識などを)伝える」「(病気などを)感染させる」の意味で使われることが多い。アカデミックな文脈では、抽象的な概念やアイデアの伝達を表す場合もある。類義語の 'convey', 'impart' などとのニュアンスの違いを理解することが重要。
- 出題形式: 長文読解、和訳問題
- 頻度と級・パート: 難関大学ほど頻出
- 文脈・例題の特徴: 評論文、物語文、科学系の文章など幅広い
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈によって意味が異なるため、前後の文脈から正確な意味を把握する必要がある。「伝える」「渡す」「(機会などを)見送る」「(病気を)感染させる」など、複数の意味を理解しておくこと。また、比喩的な意味で使われることもあるので注意。