narrative
第1音節にアクセントがあります。/æ/ は日本語の「ア」と「エ」の中間のような音で、口を横に広げて発音します。最後の /v/ は有声の摩擦音で、上の前歯を下唇に軽く当てて、息を出しながら震わせるように発音します。日本語の「ブ」よりも摩擦を意識しましょう。
物語
出来事や経験を語り、伝える行為。歴史、小説、映画など、様々な形式で表現される。単なる事実の羅列ではなく、語り手の視点や解釈が含まれるニュアンス。
Her narrative always touches my heart.
彼女の物語はいつも私の心を打ちます。
※ おばあちゃんが昔の出来事を語っている場面を想像してください。その話が心に響く、感動する様子が伝わります。「narrative」は個人の経験や出来事を語る「話」や「物語」としてよく使われます。特に、語り手の視点や感情が込められたストーリーを指すのに適しています。
The movie's narrative was very interesting.
その映画の物語はとても面白かった。
※ 映画館で、スクリーンに映し出される物語に夢中になっている様子をイメージしてください。そのストーリーがとても面白くて、引き込まれていく感覚です。映画や小説、演劇などの「ストーリー」を指す際にも「narrative」が使われます。「story」よりも、その作品全体が持つ筋書きやテーマ性、語り口といったニュアンスを含むことがあります。
The historical narrative teaches us many lessons.
歴史の物語は私たちに多くの教訓を与えます。
※ 歴史の教科書を読んだり、ドキュメンタリーを見たりしながら、過去の出来事から大切なことを学んでいる場面を想像してください。歴史は単なる事実の羅列ではなく、一つの大きな「物語」として私たちに教訓を与えます。歴史や社会現象、科学的な説明など、事実に基づいた一連の出来事を「物語」として提示する際にも「narrative」が使われます。
語り口
特定の視点やスタイルで物事を語る方法。ニュース報道、政治演説、個人的な体験談など、誰がどのように語るかによって意味合いが変わる。
His unique narrative made the story exciting for everyone.
彼の独自の語り口が、物語をみんなにとってわくわくするものにした。
※ 目を輝かせた少年が、身振り手振りを交えながら楽しそうに物語を語っている情景を想像してみてください。彼の「語り口(narrative)」が個性的で、聞いている人みんながその話に引き込まれている様子が伝わります。物語の伝え方や表現方法について話す際によく使われる典型的な例です。
The news reporter's objective narrative helped us understand both sides.
そのニュース記者の客観的な語り口は、私たちが両方の側面を理解するのに役立った。
※ テレビで冷静に、しかし説得力のある声でニュースを伝える記者の姿を思い浮かべてください。彼/彼女の「語り口(narrative)」が偏りがなく、物事の異なる意見や状況を公平に伝えているため、視聴者が深く納得できたという場面です。ニュースやレポートなど、事実を伝える文脈でよく使われます。
Her personal narrative deeply moved the audience during the speech.
彼女の個人的な語り口は、スピーチ中に聴衆の心を深く動かした。
※ 壇上で話す女性が、自身の経験や感情を込めて語っている情景を想像してください。彼女の「語り口(narrative)」が非常に個人的で心に響くものだったため、聴衆が感動して涙を拭う人もいたかもしれません。スピーチや文章で、書き手や話し手の個性や感情が強く表れた伝え方を指す際によく使われます。
物語的な
物語のような性質を持つこと。出来事が順序立てて語られ、登場人物や背景が描写される様子を指す。例えば、「narrative approach(物語的アプローチ)」は、出来事を物語として捉え、分析する方法。
Her story about the field trip was very narrative, making us smile.
彼女の遠足の話はとても物語的で、私たちを笑顔にしました。
※ 幼稚園から帰ってきた子が、今日の出来事を興奮しながら話している情景です。「narrative」は、その話が単なる事実の羅列ではなく、まるで小さな冒険物語のように、登場人物や展開があって、聞く人を引き込むような話し方であることを表します。子供の話や、誰かの体験談によく使われます。
His presentation was very narrative, not just facts.
彼のプレゼンテーションはとても物語的で、単なる事実の羅列ではありませんでした。
※ 会議室で、新入社員が初めてのプレゼンをしている場面を想像してください。データや情報だけでなく、背景や未来が想像できるようなストーリー性のある語り口で、聞き手を飽きさせずに引き込む様子を表します。ビジネスの場面でも、説明が「物語的」だと、より理解されやすくなります。
The history book was written in a very narrative way, making it easy to read.
その歴史の本はとても物語的な書き方で、読みやすかったです。
※ 図書館で古い歴史書を読んでいる情景です。専門的な内容なのに、まるで小説を読んでいるかのようにするすると頭に入ってくる様子を表しています。「narrative」は、文章や話の「書き方」や「語り方」が物語のようである、という意味でも使われます。歴史や科学のような分野でも、物語のように書かれていると、読者は内容に入り込みやすくなります。
コロケーション
社会で広く受け入れられている主要な物語、通説
※ ある社会や集団において、最も影響力があり、広く信じられている解釈や歴史観を指します。メディア、政治、教育などを通じて形成され、人々の考え方や行動に大きな影響を与えます。例えば、ある国の歴史における特定の出来事に対する政府の見解などがこれに当たります。学術的な議論や社会批判の文脈でよく用いられます。
物語の展開、起承転結
※ 物語が時間の経過とともにどのように変化・発展していくかを示す構造のことです。導入部(exposition)、葛藤の発生(rising action)、クライマックス(climax)、解決(falling action)、結末(resolution)といった要素を含みます。映画、小説、演劇などの分析で頻繁に使用されます。ビジネスシーンでは、プレゼンテーションやストーリーテリングを通じて、聴衆を引き込むための効果的な構成要素として活用されます。
物語の一貫性、首尾一貫していること
※ 物語が論理的に繋がり、矛盾がない状態を指します。登場人物の行動、出来事の順序、語り口などが一貫していることが重要です。心理学や社会学では、個人のアイデンティティや自己認識を形成する上で、自身の経験を首尾一貫した物語として語ることが重要であると考えられています。法廷での証言や報告書など、信頼性が求められる場面で特に重視されます。
出来事を単純な物語で説明しようとする誤り
※ 複雑な事象を、原因と結果を結びつけた単純な物語で理解しようとする人間の心理的な傾向を指します。ナシーム・ニコラス・タレブが提唱した概念で、偶然や不確実性を無視し、後付けで合理的な説明を与えてしまうことの危険性を示唆します。金融市場の分析や歴史解釈において、この誤りに陥らないように注意が必要です。
主流の物語に対抗する物語、異論
※ 支配的な物語や通説に異議を唱え、別の視点や解釈を提供する物語のことです。社会的な不正義や抑圧されたグループの視点を明らかにするために用いられます。例えば、歴史教科書における少数民族の扱いに対する批判的な視点などが該当します。社会運動や政治的な議論において重要な役割を果たします。
個人的な物語、自伝的な語り
※ 個人の経験、感情、思考を語る物語のことです。日記、回顧録、ブログなどが含まれます。心理療法では、クライアントが自身の人生経験を語ることで、自己理解を深める手段として用いられます。文学的な表現においては、個人的な視点から普遍的なテーマを探求する手法として活用されます。
物語の視点、語り口
※ 物語が誰の視点から語られるかという観点です。一人称、三人称、客観的視点などがあります。物語の印象や読者の感情移入に大きな影響を与えます。例えば、ミステリー小説において、犯人の視点から物語を語ることで、読者を欺く効果を生み出すことができます。文芸批評において重要な概念です。
使用シーン
学術論文や研究発表で頻繁に使用される。特に、人文科学、社会科学、文学などの分野で、特定の現象や出来事を分析する際の「物語」や「語り口」として用いられる。例:『この研究は、〇〇という社会現象に関する支配的なnarrative(物語)に異議を唱えるものである。』学生がレポートや論文で用いる場合、「先行研究における〇〇のnarrative(物語)」のように、既存の研究の流れを要約する際に役立つ。
プレゼンテーションや企業の広報資料などで、自社のブランドや製品の「物語」を語る際に使用される。例:『当社のサステナビリティに関するnarrative(物語)は、環境保護への長年の取り組みに基づいています。』また、社内向けの戦略説明会などで、市場の変化や競合他社の動向を「語り口」として説明する際にも用いられる。管理職が部下に対して「市場のnarrative(流れ)を理解することが重要だ」と伝える場面も考えられる。
日常会話ではあまり使われないが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで見聞きすることがある。例:『〇〇事件に関するメディアのnarrative(報道)は、必ずしも真実を反映しているとは限らない。』友人との会話で「最近見た映画のnarrative(物語)が面白かった」のように、少し意識の高い表現として用いられることもある。
関連語
類義語
物語、話。出来事の順序や登場人物、場所などを描写した、口頭または書かれた説明。日常会話から文学作品まで幅広く使われる。 【ニュアンスの違い】"Story"は、より口語的で一般的な用語であり、必ずしも詳細な構造や特定の視点を持つ必要はない。一方、"narrative"は、より洗練された構造や特定の視点、目的意識を持つことが多い。物語の面白さや娯楽性よりも、伝えたいメッセージや解釈に重点が置かれる。 【混同しやすい点】"Story"は個人的な経験やフィクションを指すことが多いが、"narrative"は歴史、政治、組織の戦略など、より広範な文脈で使用されることがある。例えば、企業の"story"は創業者の逸話かもしれないが、企業の"narrative"は市場における自社の位置づけや将来の展望を示す。
報告、説明、記録。出来事や状況について、客観的または主観的に記述したもの。ニュース記事、会計報告、個人の証言など、様々な形式がある。 【ニュアンスの違い】"Account"は、事実に基づいた説明を重視する傾向がある。一方、"narrative"は、事実だけでなく、解釈や感情、価値観を含んだ、より主観的な説明を指すことが多い。"Account"は客観性を装うことが多いが、"narrative"は語り手の視点を明確にする。 【混同しやすい点】"Account"は、出来事を単に羅列するだけでなく、その重要性や影響を評価することがある。しかし、"narrative"は、出来事を特定の文脈に位置づけ、より大きな意味を与えることを目的とする。例えば、事件の"account"は被害状況や犯人の行動を記述するが、事件の"narrative"は社会的な背景や人々の感情を分析する。
報告書、報道。特定の目的のために、調査結果や情報をまとめたもの。ビジネスレポート、科学論文、ニュース記事などがある。 【ニュアンスの違い】"Report"は客観性と正確性を重視し、特定の目的のために情報を整理して提示する。一方、"narrative"は、より主観的で、出来事を語り手の視点から解釈し、感情や価値観を伝えることを目的とする。"Report"は事実の提示に重点を置くが、"narrative"は意味の構築に重点を置く。 【混同しやすい点】"Report"は通常、特定の形式や構造に従って作成されるが、"narrative"はより自由な形式で表現されることが多い。例えば、市場調査の"report"はグラフや表を用いてデータを提示するが、顧客の"narrative"はインタビューやアンケートの結果を引用して感情や経験を語る。
年代記、記録。出来事を時間順に記録したもの。歴史的な出来事や個人の生涯を記録したものが一般的。 【ニュアンスの違い】"Chronicle"は、出来事を客観的に時間順に記録することを重視する。一方、"narrative"は、出来事を特定の視点から解釈し、意味を与えることを目的とする。"Chronicle"は事実の羅列に重点を置くが、"narrative"は物語の構築に重点を置く。 【混同しやすい点】"Chronicle"は、出来事の正確な日付や場所を重視するが、"narrative"は、出来事の背後にある動機や影響を重視する。例えば、王室の"chronicle"は、国王の即位や結婚、戦争などの出来事を記録するが、国の"narrative"は、国民のアイデンティティや価値観、歴史的な使命を語る。
歴史。過去の出来事や人々の活動を研究し、記述したもの。歴史書、歴史研究、歴史ドキュメンタリーなどがある。 【ニュアンスの違い】"History"は、過去の出来事を客観的に研究し、分析することを重視する。一方、"narrative"は、過去の出来事を特定の視点から解釈し、物語として語ることを目的とする。"History"は客観性を追求するが、"narrative"は主観的な解釈を許容する。 【混同しやすい点】"History"は、出来事の証拠や根拠を重視するが、"narrative"は、出来事の意味や影響を重視する。例えば、第二次世界大戦の"history"は、戦闘の経過や死者数などを記述するが、戦争の"narrative"は、人々の苦しみや英雄的な行動、戦争の教訓を語る。
(物語の)筋、構成。物語の中で起こる出来事の順序や関係性。小説、映画、演劇などで用いられる。 【ニュアンスの違い】"Plot"は物語の出来事の構造そのものを指し、物語の展開やクライマックス、結末に重点を置く。一方、"narrative"は、出来事の語り方や視点、解釈を含めた、より包括的な概念である。"Plot"は物語の骨格であり、"narrative"はその骨格に肉付けされた物語全体を指す。 【混同しやすい点】"Plot"は物語の客観的な構造であるのに対し、"narrative"は語り手の主観的な解釈が加わる。例えば、同じ"plot"を持つ物語でも、語り手や視点が変われば、異なる"narrative"が生まれる。ロミオとジュリエットの"plot"は、敵対する家系の若者の悲恋だが、その"narrative"は、家族間の憎しみの深さや、運命の残酷さを強調するなど、様々な解釈が可能である。
派生語
『語り手』や『ナレーター』を意味する名詞。『narrate(語る)』に、人を表す接尾辞『-or』が付いた形。物語、ドキュメンタリー、ニュースなど、様々な文脈で『物語を伝える人』を指す。日常会話でも使用頻度は高く、物語論など学術的な文脈でも用いられる。
- narration
『語り』や『物語ること』を意味する名詞。『narrate(語る)』に、名詞化する接尾辞『-tion』が付いた形。物語の内容そのものではなく、語りの行為や様式を指すことが多い。学術論文(文学研究、メディア研究など)や、映画・演劇の批評などで頻繁に使用される。
- narrative journalism
『物語ジャーナリズム』という複合名詞。『narrative(物語)』と『journalism(ジャーナリズム)』が組み合わさったもので、事実を物語形式で伝える報道手法を指す。従来の客観報道とは異なり、登場人物の視点や感情を重視し、読者を引き込むような語り口が特徴。新聞、雑誌、オンラインメディアなどで見られる。
反意語
『ノンフィクション』。接頭辞『non-(非)』が『fiction(虚構)』に付いたもので、『narrative(物語)』が持つ虚構性・創造性とは対照的に、事実に基づいた記述を意味する。小説や映画などの物語作品に対して、ドキュメンタリーや報道記事などがノンフィクションに分類される。日常会話でも、書籍や映画のジャンルを区別する際によく用いられる。
『抽象』を意味する名詞または形容詞。『narrative(物語)』が具体的な出来事の連鎖を描写するのに対し、『abstract』は個々の要素から共通の性質を抜き出し、一般化・概念化する。例えば、物語のテーマを『abstract』に表現したり、学術論文の冒頭に『abstract(要約)』を記載したりする。日常会話よりも、学術的な文脈やビジネスシーンでよく用いられる。
『現実』を意味する名詞。『narrative(物語)』が現実を解釈・再構成したものであるのに対し、『reality』は客観的に存在する事実そのものを指す。物語が現実を歪めたり、美化したりする可能性があるのに対し、『reality』はありのままの姿を示す。ニュース報道や科学研究など、客観性が求められる分野で重視される。
語源
"Narrative"の語源はラテン語の"narrare"(話す、物語る)に由来します。さらに遡ると、"gnarus"(知識がある、熟知している)という単語と関連があります。つまり、元々は「知っていること」を「話すこと」から「物語」へと意味が発展しました。"Narrare"は、英語の"know"(知る)とも語源を共有していると考えられています。物語を語ることは、ある事柄を熟知していることから始まる、というイメージを持つと理解しやすいでしょう。日本語で例えるなら、「由緒(ゆいしょ)」という言葉が、物語の背後にある知識や歴史を示唆するのと似ています。物語は単なるフィクションではなく、知識や経験に基づいた語り口である、というニュアンスを"narrative"は含んでいるのです。
暗記法
物語は単なる出来事の羅列ではない。それは人が世界を理解し、意味を見出すための枠組みだ。神話や伝説は社会の結束を強め、価値観を共有する。政治やビジネスの世界でも、物語は感情に訴え、行動を促す強力なツールとなる。しかし、物語は操作される危険性も孕む。批判的に分析し、倫理的な責任を自覚することが重要だ。物語は思考、感情、行動を規定する力強い概念なのだ。
混同しやすい単語
『narrative』と『narrator』は、語幹が同じで、接尾辞が異なるため、スペルと意味の両方で混同しやすい。Narrativeは『物語、語り口』という名詞または『物語的な』という形容詞だが、narratorは『語り手』という名詞である。日本語ではどちらも『物語』と訳されることがあるため、文脈で区別する必要がある。
『narrative』と『native』は、最初の2音節が似ており、発音が曖昧になりやすい。Nativeは『生まれた土地の、固有の』という意味で、文脈が大きく異なる。スペルも似ているため、注意が必要である。語源的には、narrativeは『知らせる』、nativeは『生まれる』という意味のラテン語に由来する。
『narrative』と『negative』は、語頭の音が似ており、発音が不明瞭だと混同しやすい。Negativeは『否定的な、消極的な』という意味で、意味も大きく異なる。スペルも似ている部分があるため、注意が必要。特に、心理学や社会学の文脈では、narrative(物語)とnegative(否定的な感情や経験)が組み合わさることがあるため、注意が必要。
『narrative』と『normative』は、語尾の '-ative' が共通しており、スペルが似ているため混同しやすい。Normativeは『規範的な、標準的な』という意味で、価値判断やルールに関連する文脈で使われる。Narrativeは物語や語り口を指し、事実の描写や解釈に関連する。文脈によって意味が大きく異なるため、注意が必要。
『renarrate』は『narrate(語る)』に接頭辞 're-' がついたもので、『再び語る、別の視点から語る』という意味。スペルも発音も類似しており、『narrative』が名詞であるのに対し、『renarrate』は動詞である点が異なる。どちらも物語や語り口に関連するが、文法的な役割が異なるため注意が必要。
『narrative』と『nerve』は、語頭の音が似ているため、特に発音が不明瞭な場合に混同しやすい。Nerveは『神経、勇気』などの意味を持ち、物語とは直接関係がない。スペルも大きく異なるため、注意して区別する必要がある。ただし、比喩的に『物語の神経(核心)』のように使う場合は、意味的なつながりも考慮する必要がある。
誤用例
『narrative』は『物語、語り口』という意味ですが、フォーマルなビジネスの場で個人的な苦労話を長々と語る状況では、やや大げさで自己陶酔的な印象を与えかねません。より適切なのは、短く心に響くエピソードを指す『anecdote』です。日本人が『narrative』を使いがちなのは、日本語の『物語』という言葉が持つ汎用性の高さに引きずられるためでしょう。英語では、文脈によって適切な語彙を選ぶ必要があります。特にビジネスシーンでは、簡潔さとプロフェッショナリズムが求められます。
『narrative』は『物語』という意味合いが強く、中立的な立場での『語り口』を指すことが多いです。しかし、政治的な文脈で特定の主張を強調するために用いられる場合、それは単なる事実の羅列ではなく、意図的な情報操作や印象操作を含んでいる可能性があります。このような場合には、『spin』という言葉がより適切です。『spin』は、事実を歪めたり、特定の視点から情報を解釈したりすることを意味し、政治的な文脈でよく用いられます。日本人が『narrative』を使ってしまうのは、政治的な駆け引きに対する警戒心が薄い場合や、英語のニュアンスを十分に理解していない場合に起こりがちです。政治的な文脈では、言葉の持つ裏の意味や意図を読み解くことが重要です。
ここでの誤りは、『narrative』という言葉自体が不適切なのではなく、その使い方にあります。『narrative』は物語を意味しますが、ブランド戦略においては、単に言葉を飾るだけでなく、顧客との感情的なつながりを築くことが重要です。そのため、『compelling brand story』という表現がより適切です。日本人が陥りやすいのは、『narrative』を『物語』と直訳し、表面的で飾り立てられた表現に走ってしまうことです。しかし、現代のブランド戦略においては、透明性や誠実さが重視されます。顧客は、企業が語る物語だけでなく、その行動や価値観にも注目しています。ブランドの物語は、単なる宣伝文句ではなく、企業の魂を反映したものでなければなりません。
文化的背景
「narrative(物語)」は単なる出来事の羅列ではなく、人間が世界を理解し、意味を見出すための基本的な枠組みです。物語は個人のアイデンティティを形成し、社会的な価値観を伝達し、歴史を記憶する上で不可欠な役割を果たしてきました。そのため、物語を語ることは、権力を行使し、世界を解釈し、未来を形作る行為と深く結びついています。
物語は、古代から現代に至るまで、社会の結束を強め、文化的な規範を共有するための重要な手段でした。神話や伝説は、世界の起源や人間の存在意義を説明し、倫理的な指針を提供しました。英雄譚は、勇気や忠誠心といった価値観を称え、人々に模範を示しました。民話は、教訓や警告を通じて、社会の知恵を伝承しました。これらの物語は、口承によって世代から世代へと受け継がれ、人々の心に深く刻み込まれました。物語を語り、共有する行為は、共同体の絆を強め、文化的なアイデンティティを確立する上で不可欠でした。
近年、「narrative」という言葉は、政治やビジネスの分野でも頻繁に使われるようになりました。政治家は、国民の支持を得るために、自らの政策を魅力的な物語として語ります。企業は、ブランドイメージを構築するために、自社の歴史や理念を物語として語ります。このように、物語は人々の感情に訴えかけ、行動を促す強力なツールとして認識されています。しかし、物語はまた、誤った情報や偏見を広める可能性も秘めています。特定の意図に基づいて物語が操作されると、人々の認識が歪められ、社会的な対立が激化する恐れがあります。そのため、物語を批判的に分析し、その背後にある意図を見抜く能力がますます重要になっています。
「narrative」という言葉は、単なる物語以上の意味を持ち、人間の思考、感情、行動を深く規定する力強い概念です。物語は、私たち自身の経験を理解し、他者と共感し、世界をより良くするための羅針盤となります。しかし、物語の力を理解し、適切に活用するためには、その潜在的な危険性にも常に注意を払う必要があります。物語を語り、共有する際には、倫理的な責任を自覚し、真実を追求する姿勢が求められます。
試験傾向
長文読解で出題される可能性が高い。特に準1級以上で、物語や歴史的な出来事を説明する文脈で登場しやすい。語彙問題で直接問われることは比較的少ない。文脈から意味を推測する練習が重要。
Part 7(長文読解)で、企業の沿革や顧客体験に関する記述の中で見られることがある。ビジネスにおける事例や成功譚を語る文脈で使われることが多い。語彙問題で直接問われることは少ないが、関連語句(story, accountなど)との関連で問われる可能性はある。
リーディングセクションで頻出。歴史、社会科学、文学などのアカデミックな文章で、特定の出来事や現象に関する説明の一部として登場する。名詞としての用法(物語、語り口)だけでなく、形容詞としての用法(物語的な)も理解しておく必要がある。文脈から意味を正確に把握する能力が重要。
難関大学の長文読解で出題される可能性あり。物語、歴史、社会問題など、多様なテーマの文章で登場する。文脈把握能力と、抽象的な概念を理解する力が求められる。和訳問題で「物語」や「語り」といった訳語を適切に選択できるかがポイント。