evoke
第2音節にアクセントがあります。最初の 'i' は、日本語の『イ』よりも喉の奥から出すような曖昧母音 /ɪ/ です。'v' は有声の唇歯摩擦音で、上の前歯を下唇に軽く当てて発音します。最後の 'k' は、息を止めてから破裂させるように発音するとよりネイティブに近い発音になります。 'ヴォ'は唇を丸めて発音する意識を持つと良いでしょう。
呼び起こす
過去の記憶、感情、イメージなどを心に呼び覚ます。意図的に思い出させたり、特定の刺激によって自然に思い出されたりする状況で使われる。例:a song that evokes memories of youth(青春時代を呼び起こす歌)
The old song evoked happy memories of my childhood.
その古い歌は、私の子供時代の楽しい思い出を呼び起こしました。
※ この例文では、昔聴いたことのある歌が流れてきて、その歌を聴いていた頃の楽しかった記憶や情景が心の中に鮮やかに蘇る様子を描いています。音楽が感情や記憶を呼び起こすのは、私たちが日常でよく経験する典型的な状況です。「evoke」は、このように「(感情や記憶などを)心の中に呼び起こす」というニュアンスで非常によく使われます。
Her warm smile always evokes a feeling of peace in me.
彼女の温かい笑顔は、いつも私の中に安らぎの気持ちを呼び起こします。
※ この例文は、誰かの笑顔を見たときに、心が穏やかになり、安心感に包まれるような情景を表しています。特定の表情や行動、あるいは人柄が、相手の心に特定の感情を「呼び起こす」という状況はよくあります。「evoke a feeling of...」は、「〜という感情を呼び起こす」という、とても自然で使いやすい表現です。
The mysterious old house evoked a sense of curiosity in us.
その謎めいた古い家は、私たちの中に好奇心を呼び起こしました。
※ この例文では、古くて少し不気味な家を見たときに、「この家にはどんな秘密があるんだろう?」と興味が湧いてくる様子を描いています。景色や建物、あるいはある出来事などが、人の心に「好奇心」や「疑問」といった特定の感情や反応を「呼び起こす」場合にも「evoke」が使われます。新しい発見につながるようなわくわくする場面でも使えます。
引き出す
潜在的な感情、反応、行動などを引き出す。表面には見えていなかったものを、特定の働きかけによって表に出させるニュアンス。例:The speaker's words evoked a strong reaction from the audience.(演説者の言葉は聴衆から強い反応を引き出した)
The old photo album evoked warm memories of my childhood.
その古い写真アルバムは、私の子供時代の温かい思い出を引き出した。
※ この例文は、古いもの(この場合は写真アルバム)が、過去の感情や記憶を「呼び起こす」「引き出す」という、'evoke'の最も典型的な使い方を示しています。おばあちゃんが昔のアルバムを開いて、懐かしい気持ちになるような温かい情景が目に浮かびますね。
The storyteller's voice easily evoked vivid images in the children's minds.
語り手の声は、子供たちの心の中に鮮やかなイメージを簡単に引き出した。
※ ここでは、語り手の声が、聞いている人の心の中に具体的な「イメージ」や「想像」を「呼び起こす」様子を描写しています。子供たちが物語に夢中になり、目を輝かせながら頭の中で情景を思い浮かべる、そんな生き生きとした場面が伝わってきます。
Her new perfume evoked a feeling of elegance and confidence.
彼女の新しい香水は、優雅さと自信の感覚を引き出した。
※ この例文では、香水という具体的なものが、身につける人の内面に「感情」や「感覚」を「引き起こす」ことを示しています。新しい香りをまとった女性が、ふと自分の中に優雅さや自信が芽生えるのを感じる、そんな瞬間を想像してみてください。香りや音楽、芸術などが感情を呼び起こす際によく使われます。
喚起する
雰囲気、感情、イメージなどを間接的に伝え、感じさせる。直接的な表現ではなく、暗示や連想によって何かを感じさせるニュアンス。例:The painting evokes a sense of peace.(その絵は平和な感覚を喚起する)
The old song evoked a feeling of deep nostalgia in her heart.
その古い歌は、彼女の心に深い懐かしさの気持ちを呼び起こしました。
※ この例文は、古い歌を聴いて、昔の楽しかった日々を懐かしく思い出している情景を描いています。音楽や香り、写真などが、特定の人や場所、感情を「自然と心に引き出す」という 'evoke' の中心的な使い方を示しています。ここでは「懐かしさ (nostalgia)」という感情が喚起されています。
The sweet smell of the flowers evoked warm memories of my grandmother's garden.
その花の甘い香りは、私のおばあちゃんの庭の温かい記憶を呼び起こしました。
※ この例文では、ある特定の「香り」が、過去の具体的な場所や人に関する「記憶」を鮮明に呼び起こす様子が描かれています。五感(特に嗅覚)が、忘れかけていた記憶を瞬時に引き出す際に 'evoke' は非常によく使われます。温かい記憶が心に蘇る、穏やかな場面です。
The artist's painting evoked a sense of peace and calm in everyone who saw it.
その画家の絵は、それを見たすべての人に平和と落ち着きの感覚を呼び起こしました。
※ この例文は、芸術作品(絵画)が、鑑賞者の心に特定の「感覚」や「感情」を呼び起こす様子を示しています。ここでは、絵を見た人が心地よい平和や落ち着きを感じる、という状況です。何かを見た人が、感動したり、考えさせられたり、特定の感情を抱くような場面で 'evoke' を使うことができます。
コロケーション
記憶を呼び起こす、思い出させる
※ 過去の出来事や感情を鮮明に思い出させるという意味です。単に思い出すだけでなく、感情的な反応や感覚を伴うニュアンスがあります。例えば、古い写真を見たときや、特定の音楽を聴いたときに、過去の記憶が鮮やかに蘇るような状況で使われます。構文は "evoke + (形容詞) + memory" (e.g., evoke a vivid memory) とすることも可能です。ビジネスシーンよりも、個人的な体験や感情を語る際に適しています。
感情を呼び起こす、〜の感情を抱かせる
※ 特定の感情、例えば喜び、悲しみ、恐怖などを引き出すという意味です。対象(例えば、映画、音楽、絵画など)が鑑賞者の心に特定の感情を沸き起こさせる状況で用いられます。"evoke a feeling of nostalgia" (懐かしさを呼び起こす) のように、具体的な感情を伴うことが多いです。ビジネスの文脈では、広告などが特定の感情を喚起することを意図している場合などに使われます。
イメージを喚起する、情景を思い起こさせる
※ 具体的な視覚的イメージだけでなく、抽象的な概念や状況を心に思い描かせるという意味です。例えば、文章や音楽が特定の風景や人物像を想像させる場合に用いられます。"The poem evokes an image of a peaceful countryside." (その詩は平和な田園風景のイメージを喚起する) のように使います。文学作品の分析や批評でよく見られる表現です。
反応を引き出す、反響を呼ぶ
※ 何らかの行動や意見、感情的な反応を引き起こすという意味です。例えば、政治的な演説や社会的な問題提起が人々の間で議論を巻き起こすような状況で使われます。"The controversial statement evoked a strong response from the public." (その物議を醸す発言は、一般大衆から強い反発を呼んだ) のように使います。ビジネスシーンや報道などで頻繁に使われる表現です。
精神を呼び起こす、〜の精神を体現する
※ 特定の時代、文化、あるいは人物の精神や本質を表現、再現するという意味合いがあります。例えば、映画や演劇が歴史的な出来事や人物の精神を忠実に再現する場合に使われます。"The film evokes the spirit of the 1960s." (その映画は1960年代の精神を呼び起こす) のように使います。文化的な文脈でよく用いられる表現です。
子供時代の記憶を呼び起こす
※ 特に幼少期の楽しかった思い出や懐かしい情景を思い起こさせる、という意味合いが強いです。特定の場所、匂い、食べ物などがトリガーとなり、子供の頃の感情や経験が鮮やかに蘇る状況で使われます。個人的なエッセイや回顧録などでよく見られる表現です。
強い感情を呼び起こす
※ 喜び、悲しみ、怒り、恐怖など、激しい感情を引き起こすという意味です。芸術作品や出来事が、鑑賞者や体験者に深い感情的な影響を与える状況で用いられます。映画レビューや批評などでよく使われる表現です。 "The play evoked strong emotions in the audience." (その劇は観客に強い感情を呼び起こした) のように使います。
使用シーン
学術論文や研究発表で、ある感情、記憶、連想などを「呼び起こす」「喚起する」という意味で使用されます。例えば、先行研究について言及する際に、「この研究は、〇〇という議論を新たにevokeする(呼び起こす)」のように使われます。心理学、社会学、文学などの分野で比較的よく見られます。
ビジネスシーンでは、フォーマルな文書やプレゼンテーションで、間接的に感情や反応を引き出すニュアンスで使われることがあります。例えば、マーケティング戦略を説明する際に、「この広告キャンペーンは、顧客の〇〇な感情をevokeする(喚起する)ことを目的としています」のように、やや間接的な表現として用いられます。日常的な会話ではあまり使いません。
日常会話では、直接的な表現を好むため、「evoke」はあまり使われません。ただし、芸術や文学、映画などの話題で、作品が持つ感情的な影響や連想について語る際に、「この映画は、私の子供の頃の記憶をevokeした(呼び起こした)」のように、少し改まった言い方として用いられることがあります。ニュース記事やドキュメンタリーなど、ややフォーマルな文脈で見かけることがあります。
関連語
類義語
『引き出す』という意味で、情報、感情、反応などを引き出す場面で使われる。フォーマルな文脈や学術的な文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】『evoke』がある種の感情や記憶を呼び起こすのに対し、『elicit』はより具体的な反応や情報を引き出すことに重点を置く。また、『elicit』は『evoke』よりも意図的な行為であることが多い。 【混同しやすい点】『elicit』は目的語として具体的な名詞(情報、反応など)を取りやすい。感情そのものを目的語にすることは少ない。また、日常会話よりもビジネスシーンや論文などで使用される頻度が高い。
『刺激する』『喚起する』という意味で、感情、欲望、興味などを刺激する場面で使われる。性的な意味合いを含む場合もある。 【ニュアンスの違い】『evoke』が過去の記憶や感情を呼び起こすのに対し、『arouse』は現在における感情や興味を積極的に刺激するニュアンスが強い。また、『arouse』はより強い感情や欲望を喚起する場合に使われることが多い。 【混同しやすい点】『arouse』は性的な意味合いを持つ可能性があるため、使用する文脈には注意が必要。また、『evoke』よりもフォーマルな文脈で使用される頻度が低い。
『祈願する』『発動する』という意味で、神の名前を呼んだり、法律や規則などを適用したりする場面で使われる。フォーマルな文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】『evoke』が感情や記憶を呼び起こすのに対し、『invoke』はより具体的な力や権威に訴えかけるニュアンスが強い。また、『invoke』は儀式的な意味合いを含む場合もある。 【混同しやすい点】『invoke』は神や法律など、特定の対象に対して使用されることが多い。感情や記憶に対して使用されることは少ない。また、日常会話よりも法律や宗教に関連する文脈で使用される頻度が高い。
『刺激する』という意味で、体、心、経済などを刺激する場面で使われる。幅広い文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】『evoke』がある種の感情や記憶を呼び起こすのに対し、『stimulate』は活動や成長を促す意味合いが強い。また、『stimulate』はより一般的な刺激を表す場合に用いられる。 【混同しやすい点】『stimulate』は感情だけでなく、体や経済など、幅広い対象に使用できる。感情を呼び起こすというニュアンスは『evoke』の方が強い。また、ビジネスシーンでよく使われる。
- conjure up
『魔法で呼び出す』『思い起こさせる』という意味で、イメージ、記憶、感情などを呼び起こす場面で使われる。やや口語的な表現。 【ニュアンスの違い】『evoke』と同様に、過去の記憶や感情を呼び起こす意味合いを持つが、『conjure up』はより強いイメージや具体的な情景を伴うことが多い。また、魔法のような非現実的なニュアンスを含む場合もある。 【混同しやすい点】『conjure up』は句動詞であり、目的語の位置に注意が必要(例:conjure up memories)。また、フォーマルな文脈よりも日常会話で使用される頻度が高い。
『思い出にふける』という意味で、過去の出来事を懐かしむ場面で使われる。自動詞として使われることが多い。 【ニュアンスの違い】『evoke』は感情や記憶を呼び起こす行為そのものを指すのに対し、『reminisce』は過去の出来事を懐かしみながら語る行為を指す。主語は通常、人である。 【混同しやすい点】『reminisce』は自動詞であり、目的語を取らない(例:reminisce about the good old days)。『evoke』は他動詞であり、目的語が必要(例:The song evokes memories)。また、『reminisce』は個人的な思い出に焦点を当てることが多い。
派生語
- invocation
『祈願』『喚起』という意味の名詞。動詞『invoke(祈る、呼び起こす)』がさらに名詞化されたもので、宗教的な儀式や、法律・権利の行使など、厳粛な場面で用いられることが多い。抽象的な概念を扱う学術論文にも適している。
接頭辞『pro-(前に)』がつき、『(感情などを)引き起こす』『挑発する』という意味になる。元の『evoke』よりも、より能動的で、負の感情や反応を引き出すニュアンスが強い。日常会話でも使われるが、ニュースや社会問題の議論でも頻出する。
- evocative
形容詞で『喚起的な』『感情を呼び起こす』という意味。接尾辞『-ative』は性質や傾向を表す。文学作品や音楽、美術など、芸術作品の描写でよく用いられ、その作品が持つ雰囲気や感情的な影響力を強調する際に適している。
反意語
『抑圧する』『鎮圧する』という意味。感情や記憶、表現などを意識的に抑え込むニュアンスが強く、『evoke』が感情や記憶を呼び起こすのとは対照的。政治的な抑圧や感情のコントロールなど、幅広い文脈で使用される。
『鎮める』『静める』という意味。騒ぎや不安、反乱などを鎮静化させる意味合いが強く、『evoke』が感情や記憶を呼び覚ますのとは反対に、それらを抑制し、沈静化させる。暴動やデモ、不安や恐怖などを対象とする。
『(記憶・痕跡などを)完全に消し去る』という意味。『evoke』が過去の感情や記憶を呼び起こすのに対し、こちらは完全に消去し、存在しなかったかのようにする。歴史の改ざんや、個人の記憶の消去など、強い意志や力によって何かを消し去る状況で使われる。
語源
"evoke」はラテン語の「evocare」に由来します。「e-」は「外へ (out)」を意味する接頭辞で、「vocare」は「呼ぶ (to call)」という意味です。つまり、文字通りには「外へ呼び出す」となります。このイメージから、「心の中から呼び起こす」「感情や記憶を引き出す」「反応や行動を喚起する」といった意味合いに発展しました。例えば、ある音楽を聴いて昔の記憶が鮮やかに呼び起こされる、あるいは、ある政策が国民の強い反発を呼び起こす、といった状況で使われます。日本語の「喚起する」という言葉が、まさに「呼び起こし、気持ちを奮い立たせる」という意味で近いでしょう。
暗記法
「evoke」は、過ぎ去った記憶や感情を呼び覚ます、まるでそこに在るかのように鮮やかに想起させる言葉。文学では失われた時代を、戦争文学では戦場の光景を、移民文学では故郷の風景を呼び起こし、読者の感情を揺さぶる。芸術は人々の心に眠る感情や記憶を呼び覚ますことを目指し、音楽、絵画、演劇など、あらゆる手段で感動や気づきを与える。現代ではマーケティングにも利用されるが、倫理的な配慮も求められる。
混同しやすい単語
『evoke』と『invoke』は、接頭辞が異なるだけでスペルが非常に似ており、意味も『呼び起こす』と『祈願する』で関連があるため混同しやすいです。特に、フォーマルな文脈ではどちらを使うべきか迷うことがあります。invokeは、より強い力や権威に訴えかけるニュアンスがあります。接頭辞 'in-' は『中に』という意味合いを持ち、心の中に呼び込むイメージで捉えると良いでしょう。
『evoke』と『revoke』は、スペルが似ており、どちらも動詞であるため、文脈によっては混同される可能性があります。『revoke』は『取り消す、無効にする』という意味で、evokeとは正反対のニュアンスを持ちます。接頭辞 're-' は『再び』という意味合いを持ち、与えられたものを再び取り消すイメージで捉えましょう。
『evoke』と『vogue』は、母音と子音の配置が似ており、特に発音時に混同しやすい単語です。『vogue』は『流行、人気』という意味の名詞で、品詞も異なります。ファッション雑誌のタイトルなどで目にすることが多いでしょう。フランス語起源の単語であることも覚えておくと、evokeとの違いを意識しやすくなります。
『envoke』は、しばしば『invoke』の誤りとして使われることがあります。スペルミスによる混同が主な原因です。『evoke』と『invoke』の区別が曖昧な場合、さらに『envoke』という誤った形を生み出す可能性があります。正しい単語は『invoke』であることを常に意識しましょう。
『evoke』と『equivocal』は、語頭の音が似ており、どちらも抽象的な概念を扱う際に使われることがあるため、文脈によっては混同される可能性があります。『equivocal』は『曖昧な、両義的な』という意味の形容詞で、意味がはっきりしない様子を表します。語源的には『等しい声』という意味合いがあり、複数の解釈が可能であることを示唆しています。
『evoke』と『evolve』は、語幹が似ており、どちらも変化や発展に関する意味合いを持つため、抽象的な文脈では混同される可能性があります。『evolve』は『進化する、発展する』という意味で、徐々に変化していくプロセスを表します。語源的には『外に転がる』という意味合いがあり、徐々に姿を現していくイメージで捉えましょう。
誤用例
『Evoke』は感情や記憶、イメージなどを『呼び起こす』という意味合いが強く、物理的な反応を引き出す場合には不自然です。この文脈では、『elicit(引き出す)』を使うのが適切です。日本人が『evoke』を『引き起こす』と直訳してしまうことで、このような誤用が起こりやすいです。英語では、感情や記憶などの抽象的なものを呼び起こす場合に『evoke』を使い、具体的な反応を引き出す場合は『elicit』など、より直接的な表現を選ぶ必要があります。
『Evoke』は、感情や記憶を『呼び起こす』対象が『人』である場合、直接的な目的語として使うことは稀です。この文では、歌が『私』を呼び起こすのではなく、『私に子供時代を思い出させる』という意味合いが適切です。そのため、『remind me of』のような表現を使う方が自然です。日本語の『〜を思い出させる』という表現を直訳しようとして、不自然な英語表現になってしまう典型的な例です。英語では、感情や記憶の喚起の主体と対象を明確に区別することが重要です。
『Evoke』自体は適切に使われていますが、『悲しみ』という感情を呼び起こした絵画を『pitiful(哀れな、情けない)』と表現するのは、作品の意図を理解していない、あるいは作品自体を軽んじているような印象を与えます。ここでは、深い感情を揺さぶる芸術作品に対して使われる『poignant(痛切な、心を打つ)』のような言葉を使う方が、より適切です。日本人が感情を表す言葉を選ぶ際に、表面的な意味だけで判断してしまうと、文脈にそぐわない表現を使ってしまうことがあります。英語では、感情のニュアンスや文化的な背景を考慮して、言葉を選ぶことが重要です。また、芸術作品に対する評価は、客観的であると同時に敬意を払う姿勢が求められます。
文化的背景
「evoke」は、過去の記憶や感情を呼び覚ます、あるいは存在しないものをまるでそこに在るかのように鮮やかに想起させる力を持つ言葉です。それは単なる想起ではなく、五感を通じて体験したかのような臨場感、あるいは心の奥底に眠っていた感情を揺さぶるような、強い印象を伴う想起を意味します。文学作品においては、失われた時代や過ぎ去った愛、忘れられた風景などが「evoke」されることで、読者は物語の世界に深く没入し、共感を覚えるのです。
「evoke」が持つ文化的意義は、特に喪失や郷愁の念と深く結びついています。例えば、戦争文学においては、戦場の光景や戦友との絆が「evoke」されることで、戦争の悲惨さや人間の強さが浮き彫りになります。また、移民文学においては、故郷の風景や家族との思い出が「evoke」されることで、アイデンティティの喪失や文化的な葛藤が表現されます。このように、「evoke」は、単なる事実の描写を超えて、人々の感情や記憶、そして歴史を深く理解するための鍵となるのです。
さらに、「evoke」は、芸術作品が持つ力そのものを表現する言葉としても重要です。音楽、絵画、演劇など、あらゆる芸術は、人々の心に何らかの感情や記憶を呼び覚ますことを目的としています。例えば、ある音楽を聴いたときに、過去の恋愛を思い出す、あるいはある絵を見たときに、子供の頃の夏休みを思い出すといった経験は、まさに「evoke」の力によるものです。芸術家たちは、「evoke」の力を最大限に活用し、人々の心に深く響く作品を創造しようと試みます。彼らは、言葉、音、色、形など、あらゆる手段を用いて、人々の感情や記憶を呼び覚まし、新たな感動や気づきを与えるのです。
現代社会においては、「evoke」は、マーケティングや広告の世界でも重要な役割を果たしています。企業は、消費者の感情や記憶を呼び覚ますような広告を作成することで、商品やブランドに対する親近感や共感を高めようとします。例えば、懐かしいCMソングを使用したり、過去の流行を再現したりすることで、消費者の記憶を刺激し、購買意欲を高めるのです。しかし、注意しなければならないのは、「evoke」は、操作的な意図で利用されると、消費者の感情を弄び、不快感を与える可能性があるということです。倫理的な観点から、「evoke」の利用には、慎重な配慮が求められます。
試験傾向
準1級、1級で語彙問題として出題される可能性あり。長文読解で抽象的な内容を理解する上で重要になる場合がある。直接的な語彙知識だけでなく、文脈から意味を推測する能力も問われる。
Part 5(短文穴埋め問題)やPart 7(長文読解)で出題される可能性がある。ビジネスシーンで使われることは比較的少ないため、他の語彙に比べて優先度は低い。類義語との識別がポイントになる。
リーディングセクションでアカデミックな文章の一部として登場。心理学、社会学、歴史などの分野で、感情や記憶、連想などを『呼び起こす』という意味で使われることが多い。同意語・反意語の問題や、文脈から意味を推測する問題に注意。
難関大学の長文読解問題で出題される可能性あり。文脈理解を問われることが多い。比喩的な意味合いで使われることもあり、文脈全体を把握する必要がある。単語集だけでなく、長文読解を通して意味を理解することが重要。