equilibrium
強勢は「リ」にあります。最初の「イ」は長母音/iː/で、日本語の「イー」よりも少し緊張感を持たせて発音します。「キゥイ」の部分は、/ɪ/の音が日本語の「イ」と「ウ」の中間のような音になる点に注意。最後の「アム」は、口をあまり大きく開けずに発音するとより自然に聞こえます。全体として、各音節を区切らず、滑らかにつなげるように意識しましょう。
専門的な内容に関するご注意
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釣り合い
力や影響が互いに打ち消し合い、安定した状態。天秤が釣り合っているイメージ。経済、物理、心理など様々な分野で使われる。対義語はimbalance(不均衡)。
She slowly raised one leg, trying to find her **equilibrium** on the yoga mat.
彼女はゆっくりと片足を上げ、ヨガマットの上で体の釣り合いを見つけようとしていました。
※ ヨガやスポーツで「体のバランスを取る」という物理的な釣り合いを表す典型的な場面です。不安定な状態から、安定した状態に戻ろうとする様子が伝わりますね。
After a busy day, he needed quiet time to restore his inner **equilibrium**.
忙しい一日の後、彼は心の釣り合いを取り戻すために静かな時間が必要でした。
※ ここでは「心のバランス」や「心の平静」を意味します。ストレスの多い状況で、精神的な安定を取り戻そうとするときにぴったりの表現です。静かに落ち着く様子が目に浮かびます。
The forest ecosystem maintained a delicate **equilibrium** between different species.
その森の生態系は、異なる種の間で繊細な釣り合いを保っていました。
※ 自然や社会、経済など、様々な要素が互いに影響し合って安定している状態を指すときにも使われます。「delicate equilibrium」は「壊れやすいバランス」という意味で、よくセットで使われる表現です。森の中の動物や植物がお互いを支え合っている様子がイメージできます。
平静
感情や精神状態が安定し、落ち着いている状態。心の平穏を指す場合もある。disturb the equilibrium(平静を乱す)のように使われる。
After a stressful day, she took a deep breath to find her inner equilibrium.
ストレスの多い一日を終え、彼女は深呼吸をして内なる平静を取り戻しました。
※ この例文は、多忙な一日を過ごした人が、静かな場所で自分自身を取り戻し、心を落ち着かせようとする場面を描いています。ストレスを感じたときに、意識的に「心の平静(inner equilibrium)を取り戻す」という、日常生活でよくある使い方です。
Before the big presentation, he paused for a moment to regain his equilibrium.
大勢の前での発表を前に、彼は少し間を置いて平静を取り戻しました。
※ この例文は、重要なプレゼンテーションを控えた人が、緊張しながらも、一呼吸置いて心の落ち着きを取り戻そうとしている様子を表しています。プレッシャーがかかる状況で、意識的に「平静を取り戻す(regain one's equilibrium)」という、ビジネスシーンでも役立つ表現です。
The experienced captain maintained his equilibrium even during the fierce storm.
経験豊富な船長は、激しい嵐の間でさえ平静を保ちました。
※ この例文は、荒れ狂う嵐の海で、経験豊富な船長が冷静さを失わずに船を操る、ドラマチックな場面を描いています。困難や危機的な状況下で、動揺せずに「平静を保ち続ける(maintain one's equilibrium)」という、リーダーシップや強さを表す典型的な使い方です。
均衡を保つ
動詞として使われることは稀だが、主に"equilibrate"の形で使われる。異なる要素間のバランスを調整し、安定した状態にする行為。
The little bird tried to keep its equilibrium on the thin branch in the wind.
その小鳥は、風の中で細い枝の上で均衡を保とうとしました。
※ この例文は、小鳥が風に揺れる細い枝の上で、一生懸命に体のバランスを取っている情景を描いています。物理的な安定やバランスを保つ状況でよく使われる典型的な例です。`equilibrium`は名詞で「均衡、平衡」といった意味です。日本語の「均衡を保つ」という動詞的な意味合いで使う場合は、この例文のように「keep (one's) equilibrium」と他の動詞と組み合わせて表現します。
It took her some time to find her emotional equilibrium after the big change.
大きな変化の後、彼女が心の平静を取り戻すには少し時間がかかりました。
※ この例文は、人生の大きな変化やショックな出来事の後、心が落ち着かず、精神的な安定を取り戻すのに苦労する人の気持ちを表しています。`equilibrium`は、特に「心の平静」や「精神的な安定」を意味する際にも使われます。例文のように「find (one's) emotional equilibrium」で「心の平静を見つける・取り戻す」という状況を自然に表現できます。
The team worked hard to bring the project back to equilibrium after some problems.
いくつかの問題の後、チームはプロジェクトを均衡状態に戻すために懸命に働きました。
※ この例文は、プロジェクトやシステム、状況などが一時的に不安定になった後、元の安定した状態に戻そうと努力する様子を描いています。ビジネスや学術的な文脈でもよく使われる表現です。`equilibrium`は、全体的なシステムや状況の「安定」や「均衡状態」を指す際にも用いられ、例文のように「bring (something) back to equilibrium」で「元の安定した状態に戻す」という意味で使われます。
コロケーション
平衡状態にある、均衡が取れている
※ 物理学や化学の文脈でよく使われる表現ですが、比喩的に、力や影響が互いに打ち消し合い、安定した状態にあることを指します。例えば、市場経済における需要と供給のバランス、あるいは人間関係におけるパワーバランスなどを表現する際に用いられます。単に"balanced"と言うよりも、力が拮抗しているニュアンスが強いです。構文としては "system in equilibrium", "state in equilibrium" のように使われます。
平衡状態に達する、均衡に至る
※ 何らかの変動や変化を経て、最終的に安定した状態に落ち着くことを意味します。ビジネスシーンでは、交渉や戦略の策定において、関係者全員が納得できる妥協点を見つけるプロセスを指すことがあります。また、心理学的な文脈では、葛藤やストレスを乗り越えて精神的な安定を取り戻す過程を表現する際に用いられます。動詞 "attain", "achieve" なども同様の意味で使えますが、"reach" はより自然な流れで到達するニュアンスを含みます。 "The market reached equilibrium after the initial shock." のように使われます。
経済均衡
※ 経済学における基本的な概念で、需要と供給が一致し、価格が安定している状態を指します。市場メカニズムが効率的に機能している理想的な状態であり、現実の経済は常にこの状態を目指して変動します。 "general equilibrium" (一般均衡) や "partial equilibrium" (部分均衡) などの派生表現も存在し、分析の対象範囲によって使い分けられます。専門的な経済論文やニュース記事で頻繁に用いられます。
動的平衡
※ 一見安定しているように見えても、実際には絶えず変化し続けている状態を指します。生物学や生態学でよく用いられる概念で、例えば、細胞内の分子は常に合成と分解を繰り返していますが、全体としては一定の状態を保っている、といった状況を表現します。ビジネスの世界では、市場の変化に対応しながら、企業の戦略や組織構造を柔軟に変化させていくことを指すことがあります。静的な安定ではなく、変化を前提としたバランス感覚が重要であることを示唆する表現です。 "maintain dynamic equilibrium" のように使われます。
平衡状態を回復する、均衡を取り戻す
※ 何らかの要因によって崩れたバランスを、元の安定した状態に戻すことを意味します。例えば、災害後の復興活動や、経済危機からの回復などを表現する際に用いられます。また、個人の健康状態や精神的なバランスを回復させるという意味でも使われます。"re-establish equilibrium" もほぼ同義ですが、"restore" はより積極的な修復のニュアンスを含みます。 "restore market equilibrium" のように使われます。
平衡状態を乱す、均衡を崩す
※ 安定した状態に変化をもたらし、不安定な状態にすることを意味します。新しい技術の導入や政策の変更など、予期せぬ事態によって市場や社会のバランスが崩れる状況を表現する際に用いられます。比喩的に、人間関係や組織内の安定を脅かす行為を指すこともあります。"disrupt the equilibrium" も同様の意味で使えますが、"disturb" はより穏やかな変化を指すニュアンスがあります。 "The new policy disturbed the economic equilibrium." のように使われます。
平衡をシフトさせる
※ これまで均衡していた状態が、何らかの要因によって新しいバランスへと移行することを指します。これは単にバランスが崩れるだけでなく、新しい安定状態が生まれることを示唆します。例えば、技術革新や市場の変化によって、産業構造や競争環境が大きく変化する状況を表現する際に用いられます。"The rise of AI is shifting the equilibrium in the job market." のように使われます。"shift" は、意図的な変化というよりも、自然な流れによる変化を意味することが多いです。
使用シーン
経済学、物理学、化学、生物学など、様々な分野の論文や教科書で頻繁に使用されます。例:経済学において「市場の均衡点(market equilibrium)」を分析する際や、化学において「化学平衡(chemical equilibrium)」の状態を説明する際に使われます。また、心理学や社会学においても、個人の心理状態や社会システムの安定状態を指す言葉として用いられます。大学の講義や研究発表など、アカデミックな文脈では必須の語彙と言えるでしょう。
経営戦略、経済分析、市場調査などのビジネス文書や会議で使われます。例:企業の「需給均衡(supply-demand equilibrium)」を分析し、価格戦略を立てる際に用いられます。また、プロジェクトチーム内の役割分担や、組織全体のバランスを保つことの重要性を説明する際にも使用されます。フォーマルな報告書やプレゼンテーションで登場することが多いです。
日常会話ではあまり使われませんが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、政治や経済の状況を説明する際に使われることがあります。例:国際関係における「力の均衡(balance of power)」を維持することの重要性を議論する際や、個人の生活におけるワークライフバランスの重要性を語る際に用いられます。やや硬い表現なので、日常会話では「バランス」や「安定」といったより平易な言葉が好まれます。
関連語
類義語
『バランス』を意味し、物理的な釣り合い、精神的な安定、経済的な均衡など、幅広い状況で用いられます。名詞としても動詞としても使われます。 【ニュアンスの違い】『equilibrium』よりも一般的で、日常会話で頻繁に使われます。物理的なバランスや、対立する要素間の調和を指すことが多いです。感情的なバランスや安定を表す際にも使われます。 【混同しやすい点】『balance』は可算名詞としても不可算名詞としても使われますが、『equilibrium』は通常不可算名詞として扱われます。また、動詞として使う場合は、目的語が必要な他動詞として使われます(例:balance the budget)。
『安定』を意味し、状態が変化しにくいこと、揺るがないことを指します。政治、経済、社会、個人の精神状態など、様々な分野で用いられます。名詞です。 【ニュアンスの違い】『equilibrium』が動的な平衡状態を指すのに対し、『stability』はより静的で、変化がない状態を強調します。危機や混乱からの回復後によく用いられます。 【混同しやすい点】『stability』は抽象的な概念を表すことが多く、具体的な物理的な平衡状態を指すことは少ないです。例えば、経済の安定(economic stability)や心の安定(mental stability)のように使われます。
『落ち着き』や『安定した態度』を意味し、特に困難な状況でも冷静さを保つ能力を指します。人間関係やパフォーマンスの文脈でよく用いられます。名詞です。 【ニュアンスの違い】『equilibrium』が客観的なバランスを指すのに対し、『poise』は主観的な、内面的な落ち着きや優雅さを強調します。自信と洗練された態度を示す際に使われます。 【混同しやすい点】『poise』は人の態度や振る舞いに対してのみ用いられ、物理的なバランスや経済的な均衡には使用されません。また、『poise』はフォーマルな場面で使われることが多いです。
- steadiness
『安定性』や『不動性』を意味し、揺るぎない状態を指します。物理的な安定だけでなく、精神的な安定や行動の一貫性も表します。名詞です。 【ニュアンスの違い】『equilibrium』が変化に対応しながらバランスを保つイメージなのに対し、『steadiness』は変化しない、安定した状態を強調します。長期的な安定や信頼性を表す際に使われます。 【混同しやすい点】『steadiness』は抽象的な概念を表すことが多く、具体的な物理的な平衡状態を指すことは少ないです。例えば、手の安定(steadiness of hand)や心の安定(steadiness of mind)のように使われます。
- counterbalance
『相殺する』または『釣り合いを取る』という意味で、一方の力が他方の力を打ち消す、またはバランスを取る状況を指します。名詞としても動詞としても使われます。 【ニュアンスの違い】『equilibrium』が全体的なバランスを指すのに対し、『counterbalance』は具体的な対抗力や相殺作用に焦点を当てます。対立する力や要素の存在を前提としています。 【混同しやすい点】『counterbalance』は、常に二つ以上の力が存在し、それらが互いに影響しあう状況で使われます。例えば、リスクを相殺する(counterbalance the risk)のように使われます。
『平静』や『落ち着き』を意味し、特に動揺しやすい状況でも感情をコントロールする能力を指します。人間関係やプレゼンテーションなどの場面でよく用いられます。名詞です。 【ニュアンスの違い】『equilibrium』が客観的なバランスを指すのに対し、『composure』は主観的な、内面的な平静さを強調します。ストレスやプレッシャーの中でも冷静さを保つ能力を示す際に使われます。 【混同しやすい点】『composure』は人の感情や態度に対してのみ用いられ、物理的なバランスや経済的な均衡には使用されません。また、『composure』はフォーマルな場面で使われることが多いです。
派生語
- equanimity
『心の平静』を意味する名詞。「equi-(等しい)」+「animus(心)」が組み合わさり、『心が平静である状態』を表す。日常会話よりも、心理学や哲学、文学などの分野で、精神的な安定や冷静さを表す際に用いられる。やや硬い表現。
- equilibrate
『平衡を保つ』『均衡させる』という意味の動詞。学術的な文脈や、物理学、化学などの分野で、状態やシステムを安定させるプロセスを指す場合に使われる。ビジネスシーンでは、需要と供給のバランスを取るなどの意味合いで使用されることもある。
- equilateral
『等しい辺を持つ』という意味の形容詞。「equi-(等しい)」+「lateral(側面、辺)」が組み合わさり、『すべての辺が等しい』という意味を表す。主に数学や幾何学で、三角形などの図形を説明する際に使用される。日常会話ではあまり使われない。
反意語
- disequilibrium
接頭辞『dis-(否定)』がついて『不均衡』を意味する名詞。経済学、生態学など、さまざまな分野で、バランスが崩れた状態を指す。単にバランスが悪いだけでなく、不安定で変化しやすい状況を表すニュアンスがある。
接頭辞『im-(否定)』がついて『不均衡』を意味する名詞。物理的な不均衡だけでなく、比喩的に、感情、意見、力関係などの不均衡を指す場合にも使われる。日常会話でも比較的使われる。
『不安定』を意味する名詞。『stable(安定した)』に否定の接頭辞『in-』と名詞化の接尾辞『-ity』がついた形。経済、政治、気候など、さまざまな文脈で、安定していない状態、変動しやすい状態を指す。equilibriumが理想的な安定状態を指すのに対し、instabilityはその状態からの逸脱を表す。
語源
「equilibrium」は、ラテン語の「aequus」(等しい、平等な)と「libra」(天秤、重さ)を組み合わせた言葉に由来します。接頭辞「aequi-」は「等しい」という意味を表し、これは「イコール(equal)」の語源と同じです。続く「libra」は、文字通り「天秤」を意味し、物を量る際に左右のバランスが取れている状態を示します。つまり、「equilibrium」は、天秤が釣り合っている状態、すなわち「等しい重さ」または「均衡」を意味するようになりました。物理的な釣り合いだけでなく、比喩的に心の平静や社会的な均衡など、様々なバランスが取れた状態を表す言葉として使われるようになりました。日本語の「均衡」という言葉も、まさに釣り合いが取れている状態を表しており、「equilibrium」の概念と非常に近いと言えます。
暗記法
「平衡」は、社会、精神、倫理の調和を象徴します。古代ギリシャでは徳、中世では神の秩序と人間の調和、ルネサンスでは美の象徴でした。近代以降は経済学で需要と供給の均衡、政治学で権力分立を意味し、冷戦時代には「恐怖の均衡」という言葉も生まれました。現代では、環境問題や社会的不平等への解決策として、持続可能な社会の実現に不可欠な概念です。
混同しやすい単語
『equilibrium』とスペルの一部が共通しているため、視覚的に混同しやすい。特に語頭の 'equ-' の部分が共通しているため、意味も関連があるように感じられるかもしれない。『equal』は『等しい』という意味の形容詞または動詞であり、『equilibrium』(平衡)とは品詞も意味も異なる。equilibrium の語源は 'aequi' (equal) + 'libra' (balance) で、equal と関連があることは事実だが、意味の範囲が異なる点に注意。
『equilibrium』と同様に、語頭が 'equ-' で始まるため、スペルと発音の両面で混同しやすい。『equinox』は『春分』や『秋分』を意味し、天文学的な現象を指す。意味の関連性は薄いが、どちらも「等しい」という概念を含む。equinox の語源は 'aequi' (equal) + 'nox' (night) で、昼と夜の長さが等しい日を指す。発音記号を確認し、音の区別を意識することが重要。
『equilibrium』の後半部分である '-librium' を含んでいるため、スペルが非常に似ている。『Librium』は、抗不安薬の商品名であり、固有名詞として用いられることが多い。意味は全く異なるため、文脈から判断する必要がある。equilibrium は一般的な名詞だが、Librium は特定の薬の名前であるという違いを意識することが重要。
『equilibrium』の語源の一部である 'libra' を含んでいるため、スペルと意味の両面で関連がある。『Libra』は、天秤座を意味する名詞であり、重量の単位であるポンド(lb)の語源でもある。equilibrium は「平衡」という概念を表すが、libra は具体的な星座や単位を指す。語源的なつながりを理解することで、それぞれの単語の意味の範囲を把握しやすくなる。
発音の強勢の位置が異なるものの、音の響きが一部似ているため、リスニング時に混同する可能性がある。『empirical』は『経験的な』という意味の形容詞で、科学的な文脈でよく用いられる。equilibrium は名詞であり、状態を表す。発音記号を確認し、強勢の位置を意識することで、聞き分けられるようになる。
スペルが似ており、特に 'li' の部分が共通しているため、視覚的に混同しやすい。『elliptical』は『楕円の』という意味の形容詞で、数学や天文学で用いられる。equilibrium とは意味が全く異なるため、文脈から判断する必要がある。また、elliptical は「省略された」という意味合いでも用いられる点に注意。
誤用例
『equilibrium』は『均衡』を意味しますが、政治的な文脈では必ずしもポジティブな状態を指しません。むしろ、膠着状態や停滞を意味する『stalemate』の方が適切です。日本人が『均衡』という言葉から平和的なイメージを連想しがちなため、誤用しやすいです。英語では、政治的な均衡はしばしば『妥協による不満の共有』を意味し、必ずしも『解決』を意味しないことを理解する必要があります。
『equilibrium』は、物理的なバランスや経済的な均衡など、客観的な状態を指すことが多いです。人間関係においては、より感情的な調和や協調を意味する『harmony』が適切です。日本人は『equilibrium』を『釣り合い』と捉え、人間関係にも安易に適用しようとしがちですが、英語では人間関係の改善には『harmony』や『rapport』のような語が好まれます。心の機微を表現する際は、より適切な語彙を選択することが重要です。
『equilibrium』は、変化に対する抵抗力や安定性を示す言葉ですが、企業などの組織においては、より広い意味での『stability』が適しています。日本人は『equilibrium』を『バランスが取れている状態』と捉え、組織の安定にも適用しようとしがちですが、英語では組織の安定には財務状況、従業員の士気、市場での地位など、様々な要素が含まれるため、『stability』の方が適切です。組織の状況を説明する際は、より包括的な語彙を選択することが重要です。
文化的背景
「equilibrium(平衡)」は、単なる物理的な釣り合いを超え、社会、精神、倫理といった多岐にわたる領域における理想的な状態を象徴します。それは、変化し続ける世界の中で、いかに安定と調和を保つかという、人間社会の普遍的な課題を映し出す鏡なのです。
古代ギリシャの哲学者たちは、「equilibrium」の概念を倫理的な徳、すなわち「中庸」と結びつけました。アリストテレスは、勇気は無謀と臆病の中間にあるように、あらゆる徳は二つの極端な悪徳の均衡点にあると考えました。この思想は、個人の内面における欲望や感情のバランスを重視し、過不足なく適切に行動することの重要性を説いています。中世ヨーロッパにおいては、キリスト教的な世界観と結びつき、神の秩序に対する人間の調和、魂と肉体の均衡といった概念として捉えられました。ルネサンス期には、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品に見られるように、芸術と科学の融合、理想的な人体比例の追求など、美と調和の象徴として「equilibrium」が再評価されました。
近代以降、「equilibrium」は社会科学や経済学の分野でも重要な概念となりました。アダム・スミスの「見えざる手」は、自由な市場経済における需要と供給の均衡が、社会全体の富を最大化するという考えを示唆しています。また、政治学においては、権力分立やチェック・アンド・バランスといった概念が、「equilibrium」を維持するための制度的枠組みとして発展しました。冷戦時代には、米ソ間の「恐怖の均衡(balance of terror)」という言葉が、核兵器による相互確証破壊を背景とした、不安定ながらも平和を維持する状態を表現しました。この言葉は、高度な技術と軍事力によって支えられた、一種の「equilibrium」が、いかに脆く、危険なものであるかを物語っています。
現代社会においては、「equilibrium」は、環境問題や社会的不平等といった、複雑な課題に対する解決策を模索する上での重要な視点を提供します。地球温暖化は、地球の生態系における「equilibrium」を破壊し、持続可能な社会の実現を脅かしています。また、所得格差の拡大は、社会の安定を損ない、人々の幸福感を低下させる可能性があります。したがって、「equilibrium」を回復するためには、単なる経済成長だけでなく、環境保護、社会福祉、教育といった多岐にわたる分野での取り組みが必要となります。それは、過去の教訓を踏まえ、未来世代のために、より公正で持続可能な社会を築くための、不断の努力を意味するのです。
試験傾向
準1級・1級の語彙問題、長文読解で出題される可能性があります。特に、経済や社会科学系のトピックで使われることが多いです。動詞形(equilibrate)や形容詞形(equilibrium)との関連付け、具体的な文脈での意味理解が重要です。会話文での出題は比較的少なめです。
Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)で登場する可能性があります。ビジネス関連の文章(市場分析、需給バランスなど)で使われることが多いです。類義語(balance, stability)との使い分け、文法的な用法(名詞として主語になるか、目的語になるかなど)に注意が必要です。
リーディングセクションで頻出の語彙です。アカデミックな文章(科学、社会科学など)で、抽象的な概念を表す際に使われます。文脈から正確な意味を把握する能力が求められます。同義語や関連語句(homeostasis, steady state)を併せて学習すると理解が深まります。
難関大学の長文読解で出題される可能性があります。経済学、社会学、自然科学系の文章で使われることが多いです。文脈における意味の推測、類義語や対義語(disequilibrium)との関連付けが重要です。和訳問題や内容説明問題で問われる可能性があります。