empirical
強勢は「ピ」に置かれます。最初の 'i' は日本語の「イ」よりも曖昧な音(schwa /ə/ に近い)で、軽く発音します。'p' は息を強く出す破裂音です。'r' は舌を丸めるか、または軽く上に持ち上げるようにして発音します。最後の '-al' は曖昧母音で弱く発音します。
実証的な
経験や観察を通して得られた証拠に基づいていることを指します。理論や推測ではなく、実際のデータや実験結果を重視するニュアンスです。科学研究、市場調査、歴史分析などでよく使われます。
The young researcher spent hours collecting **empirical** data from the lab to prove his new theory.
若い研究者は、自分の新しい理論を証明するため、何時間も研究室で実証的なデータを集めました。
※ この例文では、若い研究者が実際に実験を行い、その結果として得られた「データ(data)」が「実証的(empirical)」であると述べています。机上の空論ではなく、実際に観察や実験で得られた確かな情報であることを強調しています。科学的な研究の場面で非常によく使われる表現です。
The chef used an **empirical** method, adjusting the ingredients until the cake tasted perfect.
そのシェフは実証的な方法を使い、ケーキの味が完璧になるまで材料を調整しました。
※ ここでは、シェフが理論通りに作るだけでなく、実際に何度も試作し、味見をしながら最適な配合を見つけ出す様子が描かれています。「empirical method(実証的な方法)」は、実際にやってみて、その結果を見て改善していく、という試行錯誤のプロセスを指します。日常生活や仕事で「経験に基づいて試す」というニュアンスで使えます。
The experienced manager always made decisions based on **empirical** evidence from past projects, not just theories.
経験豊富なマネージャーは常に、理論だけでなく、過去のプロジェクトから得た実証的な証拠に基づいて決定を下しました。
※ この例文は、ビジネスの場面で「実証的な証拠(empirical evidence)」がどのように使われるかを示しています。経験豊富なマネージャーが、単なる予測や理論ではなく、実際に過去のプロジェクトで得られた実績やデータという確かな情報に基づいて判断している様子が伝わります。信頼性や確実性を重視する文脈でよく使われます。
経験主義の
経験主義哲学に関連し、知識の源泉は感覚的経験にあるという考え方を表します。抽象的な思考や理論よりも、具体的な観察と実験を重視する立場です。
He made empirical observations by planting the seeds himself to see if they would grow.
彼は、植物が育つかどうかを確かめるために、自分で種を植えて経験的な観察をしました。
※ この例文は、ある人が本や誰かの話を聞くだけでなく、実際に手を動かし、目で見て確かめている場面を描いています。「empirical」は、このように「実際にやってみて、その結果から学ぶ」というニュアンスを含みます。「empirical observation」は「経験に基づいた観察」という意味で、科学だけでなく、日常生活でも「実際に試して確かめる」という行動を表すのに役立ちます。
Scientists gathered empirical data to test their new theory about the universe.
科学者たちは、宇宙に関する新しい理論を検証するために、経験的なデータを集めました。
※ 白衣を着た科学者たちが、実験室や望遠鏡の前で、真剣な表情でデータを記録している様子を想像してください。何かを「証明する」ためには、頭の中の考えだけでなく、実際に得られた情報(データ)が不可欠であることを示しています。「empirical data」は「経験的なデータ」や「実証データ」という意味で、科学や研究の分野で非常に頻繁に使われます。理論だけでなく、事実に基づいた証拠を重視する場面で活躍します。
The teacher used an empirical approach to improve her lesson, observing how students actually learned.
先生は、生徒たちが実際にどのように学んでいるかを観察することで、経験的なアプローチを使って授業を改善しました。
※ この例文は、先生が教室で、生徒たちの反応や理解度を注意深く見ながら、授業の進め方を変えている場面です。頭で考えるだけでなく、現場での具体的な生徒の様子から学び、改善していく姿勢が伝わります。「empirical approach」は「経験に基づいたアプローチ」という意味です。計画や理論だけでなく、実際にやってみて、その結果から改善策を見つけるような場合に使うと自然で、ビジネスや教育の現場でよく聞かれる表現です。
コロケーション
経験的証拠、実証的証拠
※ 「empirical」が最も頻繁に使われるコロケーションの一つです。科学、研究、法廷などで、観察や実験を通じて得られたデータや事実を指します。単なる推測や理論ではなく、実際に検証可能な証拠であることを強調する際に用いられます。構文は「形容詞 + 名詞」で、客観性と信頼性を担保するニュアンスがあります。学術論文や報道記事など、フォーマルな文脈でよく見られます。
実証研究、経験的研究
※ こちらも「empirical evidence」と同様に、研究分野で頻繁に使われる表現です。理論やモデルを構築するのではなく、実際のデータ収集と分析に基づいて結論を導き出す研究手法を指します。社会科学や心理学、経済学などの分野で、アンケート調査や実験、統計分析などを用いて行われる研究を指すことが多いです。研究の信頼性や妥当性を示す上で重要なキーワードとなります。「形容詞 + 名詞」の組み合わせです。
実証データ、経験データ
※ 観察や実験によって収集された具体的な数値や情報のこと。理論的なデータや仮説とは異なり、実際に測定された事実に基づいている点が重要です。統計分析や機械学習などの分野で、モデルの構築や検証に用いられます。ビジネスの現場でも、市場調査や顧客データなど、意思決定の根拠となるデータとして活用されます。「形容詞 + 名詞」の組み合わせです。データに基づいた意思決定(data-driven decision making)を重視する現代において、ますます重要性が高まっています。
経験的アプローチ、実証的アプローチ
※ 問題解決や意思決定において、理論や直感に頼るのではなく、実際のデータや経験に基づいて判断する方法。試行錯誤を通じて最適な解決策を見つけ出すプロセスを重視します。ビジネスにおいては、A/BテストやMVP(Minimum Viable Product)の開発など、仮説検証型の開発手法と親和性が高いです。科学的な思考をビジネスに応用する際に重要な概念となります。「形容詞 + 名詞」の組み合わせです。
経験的に検証可能な、実証的に検証可能な
※ ある仮説や理論が、観察や実験を通じてその正しさを検証できることを意味します。科学的な理論は、反証可能性(falsifiability)を持つことが重要であり、「empirically testable」はその重要な要素となります。哲学や科学方法論の文脈でよく用いられる表現です。例えば、「神の存在は経験的に検証不可能である」といった議論で使われます。「副詞 + 形容詞」の組み合わせです。
経験的観察、実証的観察
※ 五感を通じて得られる、直接的な観察に基づく情報。理論的な推論や先入観にとらわれず、客観的に事実を捉えることが重要です。科学研究におけるデータ収集の基本であり、質的研究においても、インタビューやフィールドワークを通じて得られた情報を指します。観察対象に注意を払い、バイアスを排除することが、信頼性の高い「empirical observation」を得るための鍵となります。「形容詞 + 名詞」の組み合わせです。
純粋に経験的な、完全に実証的な
※ 理論や推測が一切含まれず、完全に観察や実験に基づいている状態を指します。客観性と信頼性を強調する際に用いられる表現です。例えば、「この研究結果は純粋に経験的なデータに基づいている」のように使用します。科学論文や報告書など、客観性が求められる文脈でよく見られます。「副詞 + 形容詞」の組み合わせです。
使用シーン
社会科学、自然科学の研究論文や学術書で頻繁に使用される。例えば、経済学の研究で「過去のデータに基づいて実証的に分析した結果、〜という関係が見られた」のように、客観的な証拠やデータに基づいた議論を展開する際に用いられる。学生がレポートや論文を書く際にも、データに基づいた主張を裏付けるために使うことがある。
市場調査報告書や経営戦略会議などのフォーマルなビジネスシーンで使われる。例えば、「今回のキャンペーンの効果を実証的に検証した結果、売上が大幅に向上した」のように、具体的なデータや実績に基づいて意思決定を行う必要がある場合に用いられる。プレゼンテーション資料や社内文書など、客観的な根拠を示す必要がある場面で登場する。
日常会話で使われることは稀だが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、社会現象や科学的な発見を説明する際に用いられることがある。例えば、「この治療法の効果は、実証的なデータによって裏付けられている」のように、信頼性や客観性を強調する文脈で使われることがある。知的な話題や議論をする際に、相手に説得力を持たせるために使うこともある。
関連語
類義語
実験に基づいた、実験的なという意味。科学的な文脈で、仮説を検証するために行われる実験に関連して使われることが多い。学術的な場面でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"empirical"が観察や経験全般に基づくのに対し、"experimental"は意図的に設定された条件下での実験に限定される。より統制された環境下での検証を強調する。 【混同しやすい点】"empirical"は実験以外の観察データも含むが、"experimental"は必ず実験というプロセスを伴う。例えば、ある薬の効果を観察する場合、観察データ全体を指すなら"empirical"、臨床試験の結果を指すなら"experimental"が適切。
- observational
観察に基づいた、観察によるという意味。自然科学や社会科学において、データを収集するために観察を行う際に使われる。学術的な文脈で使われることが多い。 【ニュアンスの違い】"empirical"が経験全般に基づくのに対し、"observational"は特に観察という行為に焦点を当てる。観察対象に介入しない点が実験とは異なる。 【混同しやすい点】"empirical"は観察だけでなく、実験や調査など、より広範な経験に基づくデータを指すのに対し、"observational"は観察データに限定される。例えば、星の動きを観察する場合、"observational data"となるが、それを基にした理論は"empirical theory"となる。
事実に基づいた、事実上のという意味。ニュース報道や報告書など、客観的な情報を伝える際に使われる。日常会話からビジネスまで幅広く使われる。 【ニュアンスの違い】"empirical"が経験的な証拠に基づくのに対し、"factual"は単に事実であるという性質を強調する。必ずしも経験的な検証を必要としない。 【混同しやすい点】"empirical"は検証可能な事実に基づくが、"factual"は必ずしも検証可能とは限らない。例えば、"It is a factual statement."(それは事実の記述だ)という場合、その事実が経験的に検証されているとは限らない。
実用的な、実際的なという意味。理論よりも実際の結果を重視する際に使われる。ビジネスや政治の文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"empirical"が経験的証拠に基づいて判断するのに対し、"pragmatic"は効果や効率を重視して判断する。必ずしも経験的な裏付けを必要としない。 【混同しやすい点】"empirical"は証拠に基づいた判断を意味するが、"pragmatic"は結果を重視するため、時に経験的な証拠を無視することがある。例えば、"an empirical study"は証拠に基づいた研究だが、"a pragmatic solution"は必ずしも証拠に基づいているとは限らない。
- evidence-based
証拠に基づいたという意味。医療や教育などの分野で、効果が実証された方法や政策を指す際に使われる。専門的な文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"empirical"が経験的な証拠全般を指すのに対し、"evidence-based"は特に科学的な研究によって得られた証拠を重視する。より厳密な証拠に基づくことを強調する。 【混同しやすい点】"empirical"は広範な経験に基づく証拠を指すが、"evidence-based"は科学的な研究、特にランダム化比較試験(RCT)などの厳密な手法で得られた証拠に限定される。例えば、"empirical knowledge"は経験的な知識だが、"evidence-based medicine"は科学的根拠に基づいた医療を指す。
- real-world
現実世界の、実社会のという意味。理論やモデルが実際の状況でどのように機能するかを議論する際に使われる。ビジネスや工学の文脈でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】"empirical"が経験的なデータに基づいて分析するのに対し、"real-world"は理論やモデルが実際に適用される状況を指す。経験的な検証よりも、現実的な適用可能性を強調する。 【混同しやすい点】"empirical"はデータに基づいて分析するが、"real-world"はデータだけでなく、様々な現実的な制約や要因を考慮する。例えば、"empirical analysis"はデータ分析だが、"real-world application"は実際に適用される状況を指す。
派生語
- empiricism
名詞形で「経験主義」。『empirical』が持つ「経験に基づく」という性質を抽象化し、思想や学問の分野で、経験を重視する立場を指す。学術論文や哲学書で頻繁に見られる。
- empiricist
「経験主義者」。『empiricism』に人を表す接尾辞『-ist』が付いた名詞。哲学、科学史などの文脈で、特定の思想的立場を持つ人物を指す。
- empirically
副詞形で「経験的に」。『empirical』に副詞化の接尾辞『-ly』が付加。ある事柄が経験に基づいて確かめられたり、検証されたりしたことを示す。学術論文でデータや証拠を示す際に用いられる。
反意語
「理論的な」。経験に基づかず、理論や推論によって構築された概念や体系を指す。『empirical』が現実の観察や実験に基づくのに対し、こちらは抽象的な思考やモデルに基づく。学術論文や議論で、対比的に用いられる。
「推測的な」「思索的な」。証拠や根拠が不十分な状態で、推測や仮説に基づいて考えられたことを指す。『empirical』が客観的なデータに基づくのに対し、こちらは主観的な推測や予想を含む。ビジネスや科学研究の初期段階で用いられる。
- a priori
ラテン語由来の表現で、「先験的な」「演繹的な」という意味。経験に先立つ、あるいは経験に依存しない知識や推論を指す。『empirical』が経験的な証拠に基づくのに対し、『a priori』な知識は、理性や論理によって得られるとされる。哲学や数学の分野で用いられる。
語源
"empirical"は、ギリシャ語の"empeirikos"(経験のある、熟練した)に由来します。これはさらに"empeiria"(経験)から派生しており、"en"(中に)+ "peira"(試み、実験)という構造を持っています。つまり、元々は「試みを通して得られた」という意味合いがありました。日本語で例えるなら、「百聞は一見に如かず」という言葉が近いかもしれません。実際に試してみる、経験することを通じて得られた知識や証拠に基づいている、というニュアンスが「実証的な」「経験主義の」という意味につながっています。科学的な探求において、理論だけでなく、観察や実験によって得られたデータが重要視されるのは、この語源からも理解できます。
暗記法
「経験主義」は、観察と実験こそ知識の源泉とする考え方。中世の思弁や宗教的教義からの脱却を目指し、ベーコンやロックが提唱しました。科学革命と啓蒙思想を推進し、医学や物理学の発展を支えた一方で、ヒュームは経験の限界も指摘。現代では客観性や検証可能性と結びつき、政策立案や教育にも影響を与える、文化的価値観の象徴です。
混同しやすい単語
『empirical』と『imperial』は、語頭の母音とアクセント位置が異なるものの、スペルが非常に似ているため混同しやすい単語です。『imperial』は『帝国の』『皇帝の』という意味で、政治的なニュアンスを持ちます。日本人学習者は、発音記号を意識して区別することが重要です。また、語源的には『imperial』はラテン語の『imperium』(支配権)に由来し、『empirical』はギリシャ語の『empeiria』(経験)に由来するため、意味の違いを理解することで記憶に残りやすくなります。
『empirical』と『ephemeral』は、どちらも少し長めの単語で、語感も似ているため混同されることがあります。『ephemeral』は『つかの間の』『儚い』という意味で、時間的な概念を表します。発音も異なりますが、スペルの一部が共通しているため注意が必要です。語源的には、『ephemeral』はギリシャ語の『ephemeros』(一日だけの)に由来し、短期的な性質を表しています。
『empirical』と『emotional』は、どちらも形容詞で、接尾辞 '-al' が共通しているため、なんとなく似たような意味合いを持つと誤解されることがあります。『emotional』は『感情的な』という意味で、人間の感情や心理状態を表します。意味が全く異なるため、文脈で判断することが重要です。また、『emotional』は発音も比較的容易であるため、『empirical』を学習する際に混同しないように注意が必要です。
『empirical』と『practical』は、どちらも経験や観察に基づいて判断するという点で、意味の関連性が若干あるため、混同される可能性があります。『practical』は『実践的な』『実用的な』という意味で、具体的な行動や応用に関連します。スペルも一部似ているため、注意が必要です。語源的には、『practical』はギリシャ語の『praktikos』(行動的な)に由来し、『empirical』とは異なる背景を持ちます。
『empirical』と『cynical』は、語尾の '-ical' が共通しているため、スペルを見たときに混同される可能性があります。『cynical』は『皮肉な』『冷笑的な』という意味で、人の動機や誠実さを疑う態度を表します。意味も発音も大きく異なるため、文脈で区別することが重要です。特に、発音記号を意識して学習することで、混同を防ぐことができます。
『empirical』と『piratical』は、どちらも比較的長く、語尾が '-ical' で終わる形容詞であるため、視覚的に混同しやすい単語です。『piratical』は『海賊の』『海賊行為の』という意味で、犯罪や不正行為に関連します。発音もスペルも異なる部分が多いため、注意深く区別する必要があります。特に、'emp-' と 'pir-' の部分を意識して発音練習することで、混同を防ぐことができます。
誤用例
Using 'empirical' to describe inherent traits is problematic. 'Empirical' refers to evidence-based observations, but attributing shyness as an inherent trait can perpetuate stereotypes. The original sentence sounds like a broad generalization based on potentially biased observations. The correction emphasizes a 'correlation' found through studies, acknowledging the complexity of cultural influences on behavior. Japanese learners often directly translate '経験的な証拠' (keikenteki na shouko) as 'empirical evidence,' but the context matters. In English, 'empirical' should be tied to specific, verifiable research, not just casual observation, particularly when discussing cultural traits.
The word 'empirical' focuses on evidence gained through observation and experimentation. Applying it to a 'fortune teller' creates a contradiction, as fortune telling is usually associated with intuition or supernatural beliefs, not empirical methods. Japanese learners might misunderstand 'empirical' as simply meaning 'based on experience,' leading to this misuse. A better word is 'pragmatic,' which means practical and focused on results. The correction highlights that his experience and observation helped him understand people, shifting the focus from mystical abilities to practical judgment. The Japanese phrase '経験主義' (keiken shugi) can sometimes be understood loosely, leading to an oversimplified application of 'empirical'.
Using 'empirical data' to 'prove' beauty is a category error. Beauty is subjective and aesthetic, not something that can be empirically proven. While data can inform our understanding of factors contributing to the blossoms' quality (e.g., bloom duration, petal density), it cannot prove their beauty. This misuse stems from a tendency to over-emphasize the importance of data and scientific validation in all contexts. The correction acknowledges the evident beauty while suggesting that empirical data could provide additional context and understanding, separating the aesthetic experience from scientific analysis. This reflects a cultural difference: while Japanese culture appreciates data-driven insights, it also values subjective appreciation of beauty, avoiding the need to 'prove' it empirically. The common phrase 'データに基づいた' (data ni motozuita) can lead Japanese learners to overuse 'data' and 'empirical' even when subjective appreciation is more appropriate.
文化的背景
「経験主義的な(empirical)」という言葉は、科学革命の時代に、観察と実験を通して得られた証拠に基づく知識の重要性を強調する文脈で生まれました。これは、中世のスコラ哲学における思弁的な推論や、宗教的な教義に頼る知識体系からの大きな転換を意味し、近代的思考の基盤を築いた概念です。
経験主義は、フランシス・ベーコンやジョン・ロックといった思想家たちによって擁護され、科学的方法論の確立に不可欠な役割を果たしました。ベーコンは、観察と実験を通して自然の法則を発見することを提唱し、ロックは、人間の心は生まれたときは白紙(タブラ・ラサ)であり、経験を通して知識を獲得すると主張しました。これらの思想は、啓蒙思想の時代における理性と知識の探求を推進し、社会の進歩と改革を促す原動力となりました。経験主義的なアプローチは、医学、物理学、化学などの分野で目覚ましい成果をもたらし、産業革命の技術革新を支える基盤となりました。例えば、エドワード・ジェンナーが牛痘の接種によって天然痘を予防する方法を発見したことは、経験的な観察と実験に基づく医学の勝利を示す好例です。
しかし、経験主義は、その限界も指摘されています。経験から得られた知識は、常に観察者の主観や偏見の影響を受ける可能性があり、客観的な真理を完全に捉えることは難しいという批判があります。また、経験主義は、過去の経験に基づいて未来を予測することを前提としていますが、予測が常に正しいとは限りません。デヴィッド・ヒュームは、因果関係に対する経験的な根拠の欠如を指摘し、経験主義的な知識の確実性に対する懐疑的な見方を提示しました。それでも、経験主義は、現代社会においても、科学研究、政策決定、教育など、様々な分野で重要な役割を果たしています。客観的な証拠に基づいた意思決定は、合理的で効果的な行動を可能にし、社会の発展に貢献します。
現代においては、「経験主義的な」という言葉は、単に「経験に基づく」という意味合いを超えて、客観性、証拠、検証可能性といった価値観と結びついています。例えば、政策立案においては、経験主義的なアプローチは、過去の政策の効果を分析し、その結果に基づいて将来の政策を設計することを意味します。また、教育においては、経験主義的な学習は、生徒が実際に手を動かし、実験や観察を通して知識を習得することを重視します。このように、「経験主義的な」という言葉は、単なる知識の獲得方法にとどまらず、社会のあり方や人々の行動様式にも影響を与える、深く根ざした文化的価値観を象徴していると言えるでしょう。
試験傾向
準1級、1級の長文読解、語彙問題で出題される可能性あり。特に、科学、社会科学系のテーマで「経験的な」「実証的な」という意味で使われる。文脈から意味を推測する問題や、同意語を選ぶ問題で問われることが多い。注意点として、形容詞「empirical」だけでなく、関連語の「empirically」も押さえておくこと。
TOEIC L&Rでは、Part 5(短文穴埋め問題)やPart 7(長文読解)で稀に出題される。ビジネスシーンよりは、学術的な内容、例えば市場調査やデータ分析の結果を報告する文脈で使われることが多い。TOEIC S&Wでは、自分で使う機会は少ない。注意点として、TOEICでは同意語・類義語に関する知識が問われるため、「experimental」「observational」などとの違いを理解しておくこと。
TOEFL iBTのリーディングセクションで頻出。科学、社会科学、歴史など、アカデミックなテーマの文章でよく見られる。文脈から意味を推測する問題、パラフレーズ問題で問われることが多い。ライティングセクションで使うことも可能だが、不自然にならないように注意が必要。注意点として、TOEFLではアカデミックな語彙力が重要なので、類義語や反意語(theoreticalなど)をセットで覚えておくこと。発音も確認しておくこと。
難関大学の長文読解で出題される可能性がある。文脈から意味を推測する問題や、内容説明問題で問われることが多い。科学、社会科学系のテーマの文章でよく見られる。注意点として、語源(ギリシャ語の「経験」に由来する)を知っておくと、初見の文章でも意味を推測しやすくなる。また、関連語の「empiricism(経験主義)」も覚えておくと、理解が深まる。