ambivalent
第一強勢は「ビィ」に置かれます。/æ/ は日本語の「ア」と「エ」の中間のような音で、口を少し大きく開けて発音します。/ɪ/ は日本語の「イ」よりも曖昧で短い音です。「-valent」の部分は、曖昧母音を意識して、はっきり発音しすぎないように注意しましょう。
揺れ動く
相反する感情や意見の間で心が定まらない状態。決断をためらっているニュアンスを含む。例:ambivalent feelings about the job offer(仕事のオファーに対する複雑な感情)
She felt ambivalent about the new job offer, excited but also a little nervous.
彼女は新しい仕事のオファーに対して複雑な気持ちを抱いていました。ワクワクするけれど、少し不安でもあったのです。
※ 新しい仕事のオファーは魅力的ですが、今の仕事への愛着や変化への不安もある。そんな「嬉しいけど心配」という、相反する感情が同時に心の中にある状態が 'ambivalent' です。'feel ambivalent about ~' は「~について複雑な気持ちを抱く」という典型的な使い方です。
He was ambivalent about his old friend; he valued their history but sometimes found him annoying.
彼は長年の友人に対して複雑な感情を抱いていました。これまでの関係は大切に思っていましたが、時々彼が煩わしく感じることもありました。
※ 長年の友人に対して、良い思い出もたくさんあるけれど、最近はちょっと合わないなと感じることもある。完全に嫌いではないけれど、モヤモヤする気持ちが 'ambivalent' です。人に対しても物事に対しても使え、「好きと嫌い」「尊敬と不満」など、相反する感情が同時にあるときに使います。
Many people are ambivalent about artificial intelligence, seeing both its potential and its risks.
多くの人々が人工知能(AI)に対して複雑な感情を抱いています。その可能性もリスクも両方見ているからです。
※ AIのような新しい技術は便利で未来を感じさせる一方で、プライバシーや仕事への影響など、心配な点もたくさんある。良い面と悪い面の両方を同時に考えている状態が 'ambivalent' です。社会的な問題や新しいトレンドに対して、賛成と反対の両方の意見が心の中にある時に使われることが多いです。
両面持つ
物事や状況が、良い面と悪い面の両方を含んでいること。評価が分かれるような状況で使われる。例:an ambivalent attitude towards technology(テクノロジーに対する両面的な態度)
She felt ambivalent about the new job offer; it paid well, but the long commute worried her.
彼女は新しい仕事のオファーについて複雑な気持ちでした。給料は良かったけれど、長い通勤時間が心配だったのです。
※ この例文は、新しい仕事のオファーを前に、メリット(良い給料)とデメリット(長い通勤)の間で気持ちが揺れ動く様子を描写しています。「ambivalent about 〜」で「〜について複雑な気持ちである」という形でよく使われます。仕事や進路など、人生の大きな選択で使われる典型的な場面です。
He was ambivalent about going to the party; he wanted to see friends, but he was also very tired.
彼はパーティーに行くかどうか迷っていました。友達には会いたかったけれど、とても疲れてもいたのです。
※ この例文では、友達に会いたい気持ちと、疲れていて休みたい気持ちの間で板挟みになっている男性の姿が目に浮かびます。日常的な状況で、相反する二つの感情が同時に存在する場合に「ambivalent」を使えます。特に「〜したいけど、〜したくない」という心の葛藤を表すのに便利です。
The mayor was ambivalent about the new city plan, seeing both its benefits and potential problems.
市長は新しい都市計画について複雑な感情を抱いていました。その利点と潜在的な問題点の両方を見ていたからです。
※ この例文は、市長が机に向かい、新しい都市計画の資料を前に、良い点も悪い点も熟考している様子を描写しています。「ambivalent」は、ある物事やアイデアに対して、良い面と悪い面の両方を認識し、明確な賛成・反対の立場を取れない状態を表す際にも使われます。特に、公共の意思決定など、多角的な視点が必要な場面でよく登場します。
コロケーション
相反する感情、割り切れない気持ち
※ 最も基本的なコロケーションの一つで、形容詞 + 名詞の形です。愛情と憎しみ、期待と不安など、同時に抱く矛盾した感情を表します。単に「二つの感情がある」だけでなく、その感情の間で揺れ動き、どちらかに決められない状態を指します。ビジネスシーンやフォーマルな場面でも使用されます。
曖昧な態度、煮え切らない態度
※ こちらも形容詞 + 名詞の形ですが、感情だけでなく、行動や意見に対する姿勢を表します。賛成とも反対とも言えない、どちらつかずの態度を指し、しばしば優柔不断さや日和見主義と関連付けられます。政治的な文脈や人間関係において、相手の真意を測りかねる状況でよく用いられます。
~について複雑な感情を抱いている、~について割り切れない気持ちだ
※ 前置詞 + 名詞(または動名詞)の形です。特定の対象(人、物、状況)に対して、肯定的な側面と否定的な側面の両方を感じている状態を表します。例えば、"I'm ambivalent about accepting the job offer."(その仕事のオファーを受けることについて、複雑な気持ちだ)のように使います。日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われます。
非常に割り切れない気持ちだ、深く葛藤している
※ 副詞 + 形容詞の形です。「ambivalent」という感情の度合いを強調します。些細な迷いではなく、人生における重要な決断や、倫理的なジレンマに直面した際に生じる深刻な葛藤を表します。文学作品や心理学的な議論でよく用いられます。
複雑な関係、愛憎入り混じる関係
※ 形容詞 + 名詞の形で、特に人間関係において、愛情と憎しみ、親密さと疎遠さなど、相反する感情が共存している状態を表します。家族関係、恋愛関係、友情関係など、感情的な結びつきが強い関係性でよく見られます。心理学や社会学の分野でも用いられます。
依然として割り切れないままでいる、態度を決めかねている
※ 動詞 + 形容詞の形で、ある状況や問題に対して、依然として肯定と否定の感情が混ざり合っている状態を表します。時間が経過しても、考えが変わらず、結論を出せずにいることを示唆します。政治的な議論や意思決定の場面でよく用いられます。
曖昧な反応、煮え切らない返事
※ 形容詞 + 名詞の形で、相手の質問や提案に対して、明確な賛成や反対を示さない、曖昧な反応を指します。相手に誤解を与えたり、不信感を抱かせたりする可能性があります。ビジネスシーンや交渉の場面で、意図的に曖昧な態度を取る場合にも用いられます。
使用シーン
学術論文や研究発表で、複雑な概念や相反する意見を表現する際に用いられます。例えば、「先行研究では、この現象に対して両価的な解釈がなされている」のように、研究対象に対する評価が定まっていない状況を示すのに適しています。文語的な表現が中心です。
ビジネスシーンでは、提案書や報告書などのフォーマルな文書で、利点と欠点が共存する状況を客観的に説明する際に使用されます。例えば、「新プロジェクトの導入には、コスト削減効果が期待できる一方で、初期投資の負担が大きいという両面性がある」のように、意思決定の判断材料として提示されることが多いです。
日常会話で使われることは比較的少ないですが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、ある人物の行動や政策に対する賛否両論の意見を紹介する際に用いられることがあります。例えば、「〜について、世間は賛否両論ある」のように、意見が分かれている状況を伝える際に使われます。
関連語
類義語
あいまいではっきりしない、両義的であることを意味します。発言や行動が意図的に複数の解釈を許す場合に使われ、しばしば欺瞞的なニュアンスを含みます。ビジネスや政治の文脈でよく見られます。 【ニュアンスの違い】"ambivalent"は感情の葛藤を指すのに対し、"equivocal"は意図的なあいまいさを指します。 "equivocal"は、発言者が真意を隠したい場合や、責任を回避したい場合に使われることが多いです。よりフォーマルな語。 【混同しやすい点】"ambivalent"は人の感情を表すのに対し、"equivocal"は発言や行動を修飾します。"equivocal answer"(あいまいな答え)というように使われますが、"equivocal feeling"とは言いません。
- undecided
まだ決定していない、迷っている状態を表します。個人的な選択からビジネス上の意思決定まで、幅広い場面で使用されます。日常会話で頻繁に使われる、一般的な語です。 【ニュアンスの違い】"ambivalent"は感情的な葛藤を含むのに対し、"undecided"は単に決定が下されていない状態を指します。必ずしも感情的な対立があるわけではありません。 【混同しやすい点】"undecided"は、具体的な選択肢が複数存在し、その中からどれを選ぶか迷っている状況に使われます。一方、"ambivalent"は、ある対象に対して相反する感情を抱いている状態を表します。"undecided about which candidate to vote for"(どの候補者に投票するか迷っている)のように使われます。
- wavering
心が揺れ動いている、ためらっている状態を表します。決断を前にして、どちらに進むべきか迷っている様子を描写する際に用いられます。文学的な表現にも使われます。 【ニュアンスの違い】"ambivalent"は相反する感情が同時に存在することを強調するのに対し、"wavering"は感情が時間とともに変化し、安定しないことを強調します。 "wavering"は決断力の欠如を示唆することがあります。 【混同しやすい点】"wavering"は自動詞として使われることが多いですが、"ambivalent"は形容詞として使われます。 "wavering in one's commitment"(決意が揺らぐ)のように使われます。
- conflicted
感情的に対立している、葛藤している状態を表します。内面の葛藤や、相反する欲求の間で苦しんでいる様子を描写する際に用いられます。心理学的な文脈でよく使われます。 【ニュアンスの違い】"ambivalent"と"conflicted"はどちらも感情的な葛藤を表しますが、"conflicted"はより強い葛藤を意味することがあります。 "conflicted"は、道徳的なジレンマや、重大な決断を迫られている状況で使われることが多いです。 【混同しやすい点】"conflicted"は、しばしば"conflicted feelings"(葛藤する感情)という形で使われ、感情の種類を具体的に示すことがあります(例:conflicted feelings of love and hate)。一方、"ambivalent"は感情の種類を特定せずに、一般的な葛藤を表します。
ためらっている、躊躇している状態を表します。行動や発言をためらう様子を描写する際に用いられます。日常会話で頻繁に使われる、一般的な語です。 【ニュアンスの違い】"ambivalent"は感情的な葛藤を含むのに対し、"hesitant"は単に行動をためらっている状態を指します。 "hesitant"は、自信のなさや、リスクを避けたい気持ちから生じることがあります。 【混同しやすい点】"hesitant"は、具体的な行動を伴うことが多いです(例:hesitant to speak up)。一方、"ambivalent"は、行動を伴わない感情的な状態を表すこともあります。 "hesitant to ask for help"(助けを求めるのをためらう)のように使われます。
混ざり合った、複合的な感情や意見を持っている状態を表します。良い感情と悪い感情が混ざり合っている場合や、賛成と反対の意見が混在している場合に使われます。日常会話で広く使われます。 【ニュアンスの違い】"ambivalent"は相反する感情がほぼ同程度に存在することを暗示しますが、"mixed"は感情の割合に言及しません。 "mixed feelings"は、良い感情が強い場合も、悪い感情が強い場合も、どちらでも使えます。 【混同しやすい点】"mixed feelings"(複雑な感情)というフレーズでよく使われます。 "mixed"は、感情だけでなく、意見や反応など、さまざまなものに対して使うことができます(例:mixed reviews)。 "ambivalent"は主に感情に対して使われます。
派生語
- ambivalence
『ambivalent』の名詞形で、『両価感情』や『相反する感情が同居している状態』を指します。心理学や社会学の学術論文でよく用いられるほか、ニュース記事やエッセイなどでも、複雑な感情や態度を表す際に用いられます。『-ence』は抽象名詞を作る接尾辞で、感情や状態を表す名詞に多く見られます。
- ambiguously
『ambiguous(曖昧な)』の副詞形で、『曖昧に』という意味です。『ambivalent』な状態から、表現や状況が曖昧になることを表します。ビジネス文書や日常会話で、意図や意味がはっきりしない状況を説明する際に使われます。『-ly』は副詞を作る接尾辞です。
- ambi-
『両方の』という意味の接頭辞。ラテン語に由来し、『ambivalent』の語源の一部です。この接頭辞を持つ単語は他にも多く存在し、例えば『ambidextrous(両手利き)』や『ambitious(野心的な)』などがあります。これらの単語を理解することで、『ambi-』という接頭辞の持つ意味をより深く理解できます。
反意語
『確信している』『明確な』という意味の形容詞。『ambivalent』が迷いやためらいを含むのに対し、『certain』は疑いの余地がない状態を表します。日常会話からビジネスシーン、学術的な議論まで幅広く使用されます。例えば、『I am certain of my decision.(私は自分の決断に確信を持っている)』のように使われます。
- decided
『決心した』『断固とした』という意味の形容詞。『ambivalent』が優柔不断な状態を表すのに対し、『decided』は意志が固く、決意が定まっている状態を表します。ビジネスシーンで、リーダーシップや決断力を示す際に用いられることがあります。例えば、『He is a decided leader.(彼は断固としたリーダーだ)』のように使われます。
『明白な』『疑いの余地のない』という意味の形容詞。接頭辞『un-(否定)』がついていますが、意味としては『equivocal(曖昧な)』の否定ではなく、より強い肯定を表します。『ambivalent』が相反する感情を含むのに対し、『unequivocal』は一点の曇りもない明確さを意味します。公式な声明や契約書など、誤解を避けたい場面で用いられます。
語源
「ambivalent」は、「両方の」という意味のラテン語の接頭辞「ambi-」と、「力、価値」を意味する「valens(valereの現在分詞)」が組み合わさってできた言葉です。元々は「両方の価値を持つ」という意味合いで、そこから「相反する感情や考えを同時に抱く、どちらつかずの」という意味に発展しました。「ambi-」は、例えば「ambidextrous(両手利き)」にも見られるように、「両方」や「二つの」といった意味を表します。「valens」は、「価値」だけでなく、「力」や「健康」といった意味も持ち、英語の「value(価値)」や「valid(有効な)」といった単語の語源にもなっています。つまり、「ambivalent」は、文字通りには「両方の力(価値)を持つ」状態を表し、心の内で二つの異なる感情や考えが拮抗している様子を表すようになったのです。例えば、ある人に対して「尊敬する気持ち」と「反発する気持ち」の両方を持っているような状態が、「ambivalent」な感情と言えます。
暗記法
「ambivalent」は、善悪、愛憎、希望と絶望…相反する感情がせめぎ合う、人間の複雑さを表す言葉。ハムレットの苦悩も、恋愛映画の切なさも、この感情が根底にあります。環境問題への関心と便利さへの欲求、自国文化の尊重と異文化への憧憬。現代社会の矛盾もまた、ambivalenceの表れなのです。単なる優柔不断さではなく、多面性を受け入れる言葉として、深く理解しましょう。
混同しやすい単語
『ambivalent』と『ambiguous』は、どちらも『ambi-』という接頭辞(両方の意味を持つ)を持ち、スペルも似ているため混同しやすい。しかし、『ambivalent』は相反する感情が同居している状態を指すのに対し、『ambiguous』は意味が曖昧で解釈が一つに定まらない状態を指します。品詞もどちらも形容詞ですが、意味合いが大きく異なるため、文脈で判断する必要があります。日本人学習者は、それぞれの単語がどのような状況で使用されるかを意識すると良いでしょう。
『ambivalent』と『equivalent』は、語尾の『-valent』が共通しているため、スペルが似ていると感じやすい。また、どちらも少し難しめの単語であるため、記憶が曖昧になりやすい。『equivalent』は『同等の』という意味で、数学や科学の分野でよく使われます。品詞は形容詞ですが、名詞としても使われます。日本人学習者は、それぞれの単語が使われる分野を意識すると、混同を防ぐことができます。語源的には、『equivalent』は『equal(等しい)』から派生していることを知っておくと、意味の理解が深まります。
『ambivalent』と『eloquent』は、母音の並びと語尾の音が似ているため、発音を聞き間違えやすい。特に、早口で話された場合や、音声の質が悪い場合には注意が必要です。『eloquent』は『雄弁な』という意味で、話すことや書くことの能力が高いことを指します。品詞は形容詞です。日本人学習者は、それぞれの単語の発音を正確に覚え、区別できるように練習する必要があります。また、『eloquent』は『e-(外へ)』+『loqui(話す)』という語源から来ており、言葉を外に豊かに表現するというイメージを持つと覚えやすいでしょう。
『ambivalent』と『invaluable』は、どちらも接頭辞(『ambi-』と『in-』)が付いており、少し長めの単語であるため、似たような印象を受けやすい。『invaluable』は『非常に貴重な』という意味で、価値が計り知れないほど高いことを指します。品詞は形容詞です。日本人学習者は、『invaluable』が『valuable(貴重な)』に否定の接頭辞『in-』が付いているのではなく、『価値を測れないほど貴重』という意味であることを理解する必要があります。つまり、否定の意味ではないことに注意が必要です。
『ambivalent』と『belligerent』は、語尾の音が似ているため、発音を聞き間違えやすい。特に、語尾が弱く発音される場合には注意が必要です。『belligerent』は『好戦的な』という意味で、争いを好む態度や行動を指します。品詞は形容詞です。日本人学習者は、それぞれの単語の発音を意識して練習するとともに、『belligerent』が『bellum(戦争)』というラテン語に由来することを知っておくと、意味の理解が深まります。
『ambivalent』と『relevant』は、語尾のスペルと音が類似しているため、混同しやすい。特に、発音が曖昧な場合や、リスニングの練習が不足している場合には注意が必要です。『relevant』は『関連のある』という意味で、ある事柄と関係があることを指します。品詞は形容詞です。日本人学習者は、それぞれの単語がどのような文脈で使用されるかを理解し、区別できるようにする必要があります。また、『relevant』は『re-(再び)』+『levare(持ち上げる)』という語源から来ており、ある事柄を再び持ち上げて関連付けるというイメージを持つと覚えやすいでしょう。
誤用例
日本人学習者は『ambivalent』を単に『どちらでも良い』『どうでもいい』という意味で捉えがちですが、これは誤りです。『ambivalent』は、ある対象に対して相反する感情(愛と憎しみ、喜びと悲しみなど)を同時に抱いている状態を指します。したがって、単に『まあまあだった』という程度の感想には不適切です。正しい文では、魅力的な雰囲気という肯定的な側面と、遅いサービスという否定的な側面が共存しているため、『ambivalent』が適切に使われています。日本語の『微妙』という言葉が、肯定・否定どちらにも使えるため、誤用につながりやすいと考えられます。
『ambivalent』は形容詞であり、特定の動詞と直接結びつくわけではありません。よくある誤りとして、『be ambivalent to + 動詞の原形』という形にしてしまうことが挙げられますが、これは文法的に誤りです。正しい構文は、『be ambivalent about + 名詞/動名詞』です。この『about』は、対象となる事柄(ここでは昇進を受け入れること)を示す前置詞です。日本語の『~について』という表現を直訳しようとして、『to』を使ってしまうことが原因と考えられます。英語では、感情や態度を表す形容詞の後に続く前置詞は、特定のパターンが決まっていることが多いので、注意が必要です。
この誤用は、感情の複雑さを十分に表現できていないことが問題です。『ambivalent』は、相反する感情が同時に存在する状態を指します。単に『すべての命が大切』という理由だけでは、死刑に対する複雑な感情を十分に説明できません。正しい文では、報復への欲求と生命の尊重という、相反する価値観が示されています。日本人学習者は、意見や立場を明確にすることを重視するあまり、感情の複雑さを表現することをためらう傾向があります。しかし、『ambivalent』を使う場合は、相反する感情を具体的に示すことで、より深い理解を得ることができます。また、文化的背景として、日本人は直接的な意見表明を避ける傾向があるため、曖昧な表現を選びがちですが、『ambivalent』は曖昧さではなく、複雑な感情を表す言葉であることを理解する必要があります。
文化的背景
「ambivalent」は、相反する感情や考えが同時に存在する状態を表し、西洋文化においては、人間の複雑さや矛盾、そして決断の難しさを象徴する言葉として用いられてきました。特に、近代社会において個人の自由や選択肢が増加するにつれて、ambivalenceは、単純な二項対立では捉えきれない、複雑な心理状態を表現する重要な概念となっていきました。
文学作品においては、主人公が善と悪、愛と憎しみ、希望と絶望といった相反する感情の間で揺れ動く様子を描写する際に、ambivalenceが頻繁に用いられます。例えば、シェイクスピアのハムレットは、父の復讐を果たすべきか否か、生きるべきか死ぬべきかというambivalenceに苦悩する人物として描かれています。また、映画においても、登場人物が過去のトラウマや現在の状況との間で葛藤し、相反する感情を抱く様子を表現する際に、ambivalenceは重要な役割を果たします。恋愛映画においては、愛する人を求める気持ちと、傷つくことを恐れる気持ちのambivalenceが、物語の展開を左右する要素となることも少なくありません。
現代社会においては、ambivalenceは、消費行動や政治的態度など、さまざまな場面で見られます。例えば、環境問題に関心を持ちながらも、便利な生活を手放せないというambivalenceや、特定の政策を支持しつつも、その副作用を懸念するというambivalenceなどが挙げられます。また、グローバル化が進む現代においては、自国の文化を尊重しつつも、異文化を受け入れるというambivalenceも、多くの人が抱える感情と言えるでしょう。このように、ambivalenceは、現代社会における複雑な価値観や利害関係を反映した、多層的な意味を持つ言葉として理解することができます。
「ambivalent」という言葉は、単に「どちらつかず」や「優柔不断」といった意味合いだけでなく、むしろ、人間が持つ多面性や、複雑な状況に対する繊細な感受性を表現する言葉として、その文化的意義を深く理解することが重要です。この言葉を理解することは、自分自身や他者の複雑な感情を理解し、より豊かな人間関係を築くための一助となるでしょう。
試験傾向
- 出題形式: 主に語彙問題、長文読解
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。1級でも出題可能性あり
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、科学技術、文化など幅広いテーマ。意見論述問題の根拠としても使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 相反する感情・意見を持つという意味を理解。ambivalence(名詞)も重要。類似語のequivocalとの違いに注意。
- 出題形式: Part 5(短文穴埋め)、Part 7(長文読解)
- 頻度と級・パート: Part 7で稀に出題。Part 5では難易度高めの問題として登場
- 文脈・例題の特徴: ビジネスシーンにおける意思決定、顧客対応、市場調査など。賛否両論ある状況の説明。
- 学習者への注意点・アドバイス: ビジネスにおける「迷い」「躊躇」ニュアンスを把握。肯定・否定両方の側面を含む文脈で使われることが多い。
- 出題形式: リーディングセクション
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻出
- 文脈・例題の特徴: 学術的なテーマ(心理学、社会学、歴史など)。複雑な概念や議論を説明する文脈。
- 学習者への注意点・アドバイス: 抽象的な概念を表すため、文脈全体から正確な意味を把握する必要がある。類義語・反意語を合わせて学習。
- 出題形式: 長文読解
- 頻度と級・パート: 難関大学で頻出
- 文脈・例題の特徴: 評論文、小説など。人間の心理描写や社会現象を分析する文章。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から「どちらつかず」「相反する感情」といった意味を推測する練習が必要。比喩的な用法にも注意。