ingrate
第1音節にアクセントがあります。/ɪ/ は日本語の『イ』よりも口を少し開いて短く発音します。最後の 't' は、息を止める程度の軽い破裂音で、はっきり発音するとより自然です。日本語の『ト』のように母音を伴わないように注意しましょう。
恩知らず
受けた恩恵を忘れ、感謝の気持ちを持たない人。しばしば軽蔑的なニュアンスを伴う。
After all her mother did for him, he acted like a complete ingrate.
お母さんが彼のためにあれだけしてあげたのに、彼は全くの恩知らずのように振る舞いました。
※ この例文は、誰かが尽くしてくれたにもかかわらず、その恩恵を当たり前だと思って感謝せず、ひどい態度をとる状況を描いています。親が子供に愛情を注いだのに、子供がその価値を理解しない、という日常で起こりうる残念な場面を想像できますね。「complete ingrate」で「全くの恩知らず」と強調しています。
My mentor helped me so much, but he was an ingrate and never even said thank you.
私の指導者は私をとても助けてくれたのに、彼は恩知らずで、一度もありがとうさえ言いませんでした。
※ 仕事や学習の場で、先輩や先生(mentor)が親身になって助けてくれたのに、助けられた側が感謝の気持ちを全く示さない、という状況です。恩を受けたにもかかわらず、その恩を忘れてしまう人のことを「ingrate」と表現します。相手の親切を当たり前だと感じる人の心情が伝わってきますね。
She gave him a place to stay, but the ingrate stole her money and left.
彼女は彼に泊まる場所を与えたのに、その恩知らずは彼女のお金を盗んで去っていきました。
※ この例文では、困っている人に親切にしたのに、その親切を踏みにじり、裏切りの行為に出る「恩を仇で返す」ような状況を描写しています。住む場所を提供したという大きな親切に対し、お金を盗むという衝撃的な行動が対比され、「ingrate」が持つ強い非難のニュアンスが伝わります。物語やニュースなどでよく使われるような、ドラマチックな場面です。
恩知らずな
感謝の気持ちを欠いている様子。人の行為や態度を評価する際に使われる。
He lent her money when she was in trouble, but she was so ingrate that she never even said thank you.
彼が彼女が困っている時にお金を貸してあげたのに、彼女はとても恩知らずで、お礼さえ言いませんでした。
※ 【情景】困っている友人を助けたのに、感謝すらされない状況。助けた側の「彼」の失望が伝わる場面です。 【解説】親切な行為に対して感謝がない、という「ingrate」の最も基本的な使い方です。 【文法/ヒント】「so ingrate that...」で「とても恩知らずなので~」と、その結果を示しています。
The kind old woman gave him a warm meal, but he was ingrate and left without saying a word.
親切な老婦人が彼に温かい食事を与えたのに、彼は恩知らずで、一言も言わずに立ち去りました。
※ 【情景】見知らぬ人からの親切な行為を、当たり前のように受け取り、感謝せずに立ち去る人の姿。老婦人の温かい気持ちが踏みにじられるような場面です。 【解説】助けてもらった恩を忘れて、無礼な態度をとる典型的な状況で使われます。 【文法/ヒント】「without saying a word」は「一言も言わずに」という意味で、不愛想な態度を表す時によく使われます。
After all his parents did for him, he acted like an ingrate and moved far away.
両親が彼のためにあれほど尽くしたのに、彼は恩知らずのように振る舞い、遠くへ引っ越してしまいました。
※ 【情景】長年にわたる両親の愛情や努力を顧みず、冷たく去っていく息子の姿。親の深い悲しみが感じられる場面です。 【解説】「恩知らずな行動をとる」という文脈で、「act like an ingrate」(恩知らずのように振る舞う)という表現は非常に自然です。 【文法/ヒント】「After all...」は「~にもかかわらず」「あれほど~したのに」といった、相手の努力や状況を強調する際に使われます。
コロケーション
恩知らずな人
※ これは最も直接的なコロケーションの一つで、'thankless'(感謝を知らない)という形容詞を'ingrate'に付け加えることで、その人の恩知らずな性質を強調します。日常会話でも比較的よく使われますが、やや強い非難のニュアンスを含むため、相手や状況を選ぶ必要があります。単に'ingrate'と言うよりも、感情的な重みが加わります。
誰かを恩知らずな人間のように扱う
※ このフレーズは、誰かが不当に恩知らずの烙印を押されている状況を示唆します。例えば、十分な感謝を示しているにもかかわらず、周囲から感謝が足りないと見なされている場合に用いられます。この表現は、単に誰かを批判するのではなく、その人が置かれている状況に対する同情や批判的な視点を含むことがあります。
恩知らずの極み
※ 'height'はここでは比喩的に「頂点」「極み」を意味し、信じられないほどの恩知らずな行為や態度を指します。これは、フォーマルな場面や文学的な表現でよく見られ、強い非難や失望を伴います。例えば、「彼が会社を裏切ったのは、まさに恩知らずの極みだった」のように使われます。
感謝を知らない恩知らず
※ 'ungrateful'と'ingrate'はほぼ同義ですが、重ねて使うことで感情的な強調が生まれます。これは、特に強い不快感や怒りを表現する際に用いられ、口語的な場面でよく見られます。ただし、相手を強く非難する表現なので、使用には注意が必要です。
誰かを恩知らずだと非難する
※ このフレーズは、ある人が他者から感謝の気持ちが足りないと非難されている状況を示します。単に誰かが恩知らずであるという事実を述べるだけでなく、非難という行為自体に焦点を当てています。ビジネスシーンや人間関係のトラブルなど、具体的な状況を説明する際に役立ちます。
甘やかされた恩知らず
※ 'spoiled'(甘やかされた)という形容詞が'ingrate'を修飾することで、その人が感謝の気持ちを持たない原因が、過保護な環境で育ったことにあるという含意が生まれます。この表現は、単に恩知らずであるという非難に加えて、その背景にある家庭環境や教育に対する批判的な視点を含むことがあります。
使用シーン
学術論文においては、感謝の念の欠如に関する心理学的な研究や、社会学的な文脈における恩義の概念を議論する際に用いられることがあります。例えば、「The study explores the psychological factors contributing to ingrate behavior among adolescents.(この研究は、青年期の恩知らずな行動に寄与する心理的要因を探求する)」のように使用されます。フォーマルな文体で、感情的なニュアンスを抑えて客観的に記述される傾向があります。
ビジネスシーンでは、従業員の態度や行動に関する報告書、または顧客との関係における問題点を指摘する際に稀に使用されます。例えば、「The client's ingrate response to our efforts has strained the relationship.(クライアントの我々の努力に対する恩知らずな反応が、関係を悪化させている)」のように、やや批判的なニュアンスを含んだ表現として用いられることがあります。ただし、直接的な非難を避けるために、婉曲的な表現が好まれる傾向があります。
日常会話では、非常に稀に、家族や友人など親しい間柄での不満や皮肉を込めた表現として用いられることがあります。例えば、「After all I've done for him, he's such an ingrate!(私が彼のためにあれだけしてやったのに、彼は本当に恩知らずだ!)」のように、強い感情を伴って用いられることが多いです。ただし、相手を強く非難する言葉であるため、使用する場面や相手を選ぶ必要があります。
関連語
類義語
- ungrateful
感謝の気持ちがない、恩知らずな状態を表す形容詞。広く一般的に使われ、フォーマルな場面でもカジュアルな場面でも使用可能。人の性質や行為を評価する際に用いられる。 【ニュアンスの違い】"ingrate"は名詞であり、人そのものを指して非難するニュアンスが強いのに対し、"ungrateful"は形容詞であり、その人の性質や態度を客観的に描写するニュアンスを持つ。感情の強さとしては、"ingrate"の方がより強い非難の意を含む。 【混同しやすい点】"ingrate"は名詞で人を指すのに対し、"ungrateful"は形容詞で、人の性質や行動を修飾する。日本人学習者は品詞の違いを見落としがちである。
- thankless
感謝されない、報われない、という意味を持つ形容詞。仕事や努力などが感謝されない状況を表す際に使われることが多い。日常会話からビジネスシーンまで幅広く使用される。 【ニュアンスの違い】"ingrate"が人そのものを非難するのに対し、"thankless"は状況や行為が感謝されないことを指す。主語が異なる点が大きな違い。また、"thankless"は必ずしも非難の意を含まず、客観的な状況描写にも使われる。 【混同しやすい点】"thankless job"(割に合わない仕事)のように、仕事や役割を修飾する形容詞として使われることが多い点を理解する必要がある。人を指す場合は、"ungrateful person"などを用いる。
- unappreciative
感謝の気持ちを示さない、価値を認めないという意味を持つ形容詞。感謝の気持ちを期待していた相手に対して、その気持ちが伝わらなかった場合に用いられる。ややフォーマルな響きを持つ。 【ニュアンスの違い】"ingrate"が直接的な非難であるのに対し、"unappreciative"は感謝の気持ちの欠如を婉曲的に表現する。また、"unappreciative"は、相手の価値を認識していないという意味合いも含む。 【混同しやすい点】"unappreciative"は、必ずしも悪意があるわけではなく、単に相手の行為や価値を理解していない場合にも使われる。"ingrate"のような強い非難のニュアンスはない。
- unmindful
(良いことなどに対して)気づかない、無頓着な、という意味を持つ形容詞。相手の親切や好意に気づいていない状態を表す。比較的フォーマルな表現。 【ニュアンスの違い】"ingrate"が恩を仇で返すような強い非難を含むのに対し、"unmindful"は単に気づいていない、注意を払っていないという状態を表す。感情的なニュアンスは薄い。 【混同しやすい点】"unmindful"は、感謝の気持ちがないというよりも、そもそも相手の行為に気づいていない場合に用いられる。文脈によっては、無神経さや配慮の欠如を意味する場合もある。
- churlish
無作法な、無愛想な、という意味を持つ形容詞。行動や態度が粗野で、礼儀をわきまえていない様子を表す。やや古風な表現で、現代ではあまり一般的ではない。 【ニュアンスの違い】"ingrate"が感謝の気持ちの欠如を非難するのに対し、"churlish"は行動や態度の無作法さを指す。感謝の気持ちの有無にかかわらず、礼儀正しくない態度に対して用いられる。 【混同しやすい点】"churlish"は、感謝の気持ちがないことよりも、社会的なマナーや礼儀を欠いている点を強調する。現代英語ではあまり使われないため、使用頻度は低い。
- boorish
下品な、無骨な、洗練されていない、という意味を持つ形容詞。行動や態度が洗練されておらず、粗野な様子を表す。"churlish"と似た意味を持つが、より強い侮蔑のニュアンスを含む。 【ニュアンスの違い】"ingrate"が恩知らずな人を指すのに対し、"boorish"は洗練されていない、粗野な態度を指す。感謝の気持ちの有無は関係なく、社会的な作法やマナーを知らない、または無視する態度に対して用いられる。 【混同しやすい点】"boorish"は、教養や品格の欠如を強調する言葉であり、感謝の気持ちがないことだけを意味するわけではない。"ingrate"とは非難の対象が異なる。
派生語
- ingratitude
名詞形で「恩知らず」「感謝の念の欠如」を意味します。抽象概念を表す名詞語尾「-itude」が付加され、状態や性質を示します。日常会話よりも、ややフォーマルな場面や文章で、人の行いを批判的に評価する際に用いられます。例えば、「彼の無礼な態度は、明らかなingratitudeの表れだ」のように使われます。
「親切な」「優雅な」という意味の形容詞です。語源的には「感謝に値する」という意味合いを含み、「grat-(喜ばせる、感謝する)」の語幹を持ちます。「ingrate」とは反対に、好意や感謝を引き出すような性質を表します。日常会話からビジネスシーンまで幅広く用いられ、人の性格や態度、行為などを形容する際に使われます。
「喜ばせる」「満足させる」という意味の動詞です。「grat-(喜ばせる、感謝する)」の語幹を持ち、他者を喜ばせる行為を表します。「ingrate」が感謝を受けない人であるのに対し、「gratify」は感謝を生み出す行為そのものを指します。日常会話だけでなく、ビジネスシーンや心理学の分野でも用いられ、欲求や願望を満たすことを表現する際にも使われます。
反意語
「感謝している」「ありがたく思っている」という意味の形容詞です。「ingrate」が感謝の念を持たない人を指すのに対し、「grateful」は感謝の気持ちで満たされている状態を表します。日常会話で頻繁に使われ、手紙やメールなどでも感謝の気持ちを伝える際に用いられます。例えば、「ご親切に感謝いたします」は英語で "I am grateful for your kindness." と表現できます。
「感謝している」「ありがたい」という意味の形容詞で、「grateful」とほぼ同義ですが、より日常的な表現です。「ingrate」が感謝の念を欠いているのに対し、「thankful」は感謝の気持ちを持っている状態を表します。特に、困難な状況から解放されたり、幸運な出来事が起こった際に使われることが多いです。例えば、「無事に帰宅できてありがたい」は "I am thankful to be home safe." と表現できます。
「感謝している」「高く評価している」という意味の形容詞です。「ingrate」が感謝の念を持たないのに対し、「appreciative」は物事の価値を認め、それに対して感謝の気持ちを持つ状態を表します。「grateful」や「thankful」よりも、ややフォーマルな場面で使われることが多く、芸術作品や才能、努力などを評価する際にも用いられます。例えば、「彼の才能を高く評価しています」は "I am appreciative of his talent." と表現できます。
語源
「ingrate」は、「恩知らずな人」という意味ですが、その語源はラテン語に遡ります。この単語は、接頭辞「in-」と語根「gratus」から構成されています。「in-」は否定を表し、「〜でない」という意味を持ちます。一方、「gratus」は「感謝する、喜ばせる、好ましい」といった意味合いを持ちます。したがって、「ingrate」は文字通りには「感謝しない人」を意味します。日本語で例えるなら、「ありがたい」という感情を「ない」状態にする、つまり「恩を仇で返す」ような行為をする人を指す言葉として理解できます。この構造を知ることで、「ingratitude」(恩知らずなこと)といった関連語も覚えやすくなります。
暗記法
「恩知らず」は、社会の秩序を揺るがす裏切りへの非難。リア王の悲劇では、娘たちの忘恩が王国を滅ぼし、イソップ物語では、キリギリスがアリの施しを無駄にする。支配階級への反逆もまた「恩知らず」と糾弾された。現代では個人主義が尊重される一方、感謝の念は社会の結束に不可欠。他者への敬意を欠く行為は、今も昔も変わらず「恩知らず」と呼ばれる。
混同しやすい単語
『ingrate』と語尾の発音が似ており、特に語尾が弱化されると混同しやすい。スペルも 'un-' と 'in-' で始まる点が似ているため、注意が必要。『unite』は『団結する』という意味の動詞であり、品詞も意味も大きく異なる。日本人学習者は、発音の区別と、文脈から意味を判断する練習をすると良いでしょう。
『ingrate』と語頭の 'im-' と 'in-' が似ており、発音も一部重なるため混同しやすい。『immigrate』は『(外国から)移住する』という意味の動詞であり、意味も品詞も異なる。語源的には、'in' が『中に』、'immigrate'の 'im' は 'in' が変化したもので『〜へ』という意味合いを持つ点が興味深い。日本人学習者は、それぞれの単語がどのような文脈で使われるかを意識すると良いでしょう。
『ingrate』とスペルが似ており、特に語頭の 'in-' と語尾の '-rate' が共通しているため、視覚的に混同しやすい。『integrate』は『統合する』という意味の動詞。語源的には、'integer'(完全なもの)から派生しており、『全体にする』というイメージを持つと覚えやすい。日本人学習者は、単語全体をしっかりと見て、細部の違いに注意することが重要です。
『ingrate』と意味が関連しており、両方とも『恩知らず』という意味合いを持つが、『ungrateful』は形容詞であり、『ingrate』は名詞である点が異なる。意味が似ているため、品詞を間違えて使用する可能性がある。日本人学習者は、文中でどのように使われているかを確認し、品詞を意識して使い分けることが重要。
『ingrate』と語頭の 'in-' のスペルと、母音の響きが似ているため、混同しやすい。『innate』は『先天的な』という意味の形容詞であり、意味も品詞も異なる。語源的には、'natus'(生まれた)から派生しており、『生まれつき持っている』というイメージを持つと覚えやすい。日本人学習者は、単語の全体的な形と、意味を結びつけて覚えることが効果的です。
『ingrate』と語頭の 'ig-' が視覚的に類似しており、発音も一部似ているため、混同しやすい。『ignite』は『点火する』という意味の動詞であり、意味も品詞も異なる。語源的には、'ignis'(火)から派生しており、『火をつける』というイメージを持つと覚えやすい。日本人学習者は、単語の全体的な形と、意味を結びつけて覚えることが効果的です。
誤用例
『ingrate』は名詞であり、形容詞のように動詞『behave』を修飾することはできません。正しくは『gratitude(感謝)』という名詞を用いて、感謝の気持ちがない様子を表現します。日本人が『〜のように振る舞う』という日本語に引きずられて、副詞的に使ってしまう誤りです。英語では感情表現は名詞で具体的に示す方が自然です。
『ingrate』は相手を強く非難する言葉であり、日常会話で頻繁に使うと相手に不快感を与える可能性があります。日本人は直接的な批判を避けがちですが、『ingrate』は非常に直接的な表現です。より穏やかな表現としては、『ungrateful』を使うか、または『He never even says thank you』のように、具体的な行動を述べることで、間接的に不満を伝える方が適切です。
『ingrate』は「恩知らずな人」という状態を表す名詞であり、「〜として育てる」という目的語にはなり得ません。この誤用は、日本語の「〜として」という表現に引きずられた結果です。英語では、結果としてそうなったというニュアンスを出すために、『turn out to be』のような表現を用いる方が自然です。また、『raise』は「育てる」という意味ですが、人格形成に直接的な影響を与えるニュアンスが含まれます。そのため、親が子を『ingrate』として育てようとする意図があるように聞こえてしまうため、注意が必要です。
文化的背景
「恩知らず (ingrate)」という言葉は、感謝の念を欠く行為が、社会的な秩序や人間関係の根幹を揺るがす裏切り行為とみなされてきた歴史を反映しています。この言葉は、単に感謝の気持ちを忘れるだけでなく、与えられた恩恵を当然視し、それに対する義務を無視する態度を非難する際に用いられ、しばしば道徳的な非難を伴います。
「恩知らず」という概念は、古くから文学や寓話の中で重要なテーマとして扱われてきました。例えば、シェイクスピアの『リア王』では、娘たちの恩知らずな行為が悲劇の大きな要因となります。リア王は娘たちに王国を分け与えますが、彼女たちは権力を手に入れると父親をないがしろにし、最終的には王を破滅へと導きます。この劇は、親から子への愛情、君主から臣下への恩恵といった、一方的な与えとそれに対する感謝の重要性を強調すると同時に、恩知らずな行為がもたらす破滅的な結果を描いています。また、イソップ物語の「アリとキリギリス」も、勤勉なアリの施しを無駄にしたキリギリスの末路を通して、恩義を忘れ、将来への備えを怠る愚かさを教訓として伝えています。これらの物語は、恩知らずな行為が個人的な悲劇だけでなく、社会全体の秩序を乱す可能性を示唆していると言えるでしょう。
さらに、「恩知らず」という言葉は、しばしば階級や権力関係と結びついて用いられてきました。歴史的に見て、支配階級から恩恵を受けた者が、その恩義を忘れ、反逆や裏切り行為に及んだ場合、「恩知らず」という言葉は強い非難の言葉として用いられました。例えば、封建制度下では、領主から土地を与えられた家臣が、その恩義を忘れ、領主に反旗を翻すことは、社会秩序を揺るがす重大な裏切り行為とみなされました。同様に、現代社会においても、企業や組織から恩恵を受けた従業員が、その恩義を忘れ、不正行為や情報漏洩などを行った場合、「恩知らず」という言葉は強い非難の言葉として用いられます。このように、「恩知らず」という言葉は、権力者から恩恵を受けた者が、その恩義を忘れ、社会的な期待を裏切る行為を非難する際に、特に強い意味を持つと言えるでしょう。
現代社会において、「恩知らず」という言葉は、以前にも増して複雑な意味合いを持つようになっています。個人主義が尊重される社会においては、他者からの恩義を受けることを必ずしも当然とは考えず、自立した個人として生きることを重視する傾向があります。しかし、その一方で、他者からの支援や協力なしには生きていけないという現実も存在します。そのため、感謝の気持ちを持つことの重要性は依然として変わらず、むしろ、多様な価値観が共存する現代社会においては、他者への感謝の念を持つことが、円滑な人間関係を築き、社会的な結束を維持するために不可欠であると言えるでしょう。したがって、「恩知らず」という言葉は、単に感謝の気持ちを忘れるだけでなく、他者への敬意を欠き、社会的な責任を放棄する行為を非難する言葉として、今後も使われ続けると考えられます。
試験傾向
この単語が英検で直接問われることは稀ですが、長文読解でテーマに関連する語彙として出てくる可能性はあります。特に準1級以上では、感謝の念の欠如を示す文脈で使われることがあります。
TOEICでは、直接的な語彙問題として「ingrate」が出題される可能性は低いですが、ビジネスシーンにおける人間関係や倫理観を扱う長文読解で、関連語句とともに間接的に理解を問われることがあります。
TOEFLのリーディングセクションで、社会学や心理学に関連するアカデミックな文章において、感謝の念や恩義に関する議論の中で使用される可能性があります。ただし、頻度は高くありません。
大学受験の英語長文では、テーマによっては出題される可能性があります。特に、倫理や道徳、人間関係などを扱う文章で、やや高度な語彙として登場することが考えられます。文脈から意味を推測する力が必要です。