expedient
都合の良い
ある目的を達成するために、必ずしも最善ではないが、手軽で効果的な方法であることを示唆する。倫理的な考慮よりも、実用性を優先するニュアンスを含むことがある。緊急時や一時的な解決策として使われることが多い。
When the deadline was tight, using old data was the most expedient solution.
締め切りが厳しかったので、古いデータを使うのが最も都合の良い解決策だった。
※ 会社でレポートの締め切りが迫っている場面です。新しい情報を集める時間がないため、「完璧ではないかもしれないけれど、とりあえず間に合わせるために、手元にある古いデータを使うのが一番手っ取り早く、都合が良い」という状況を表しています。目的を達成するための『実用的な手段』というニュアンスが伝わります。
Taking the shortcut was the most expedient way to get home before dark.
暗くなる前に家に帰るには、近道を通るのが一番手っ取り早い方法だった。
※ 日が暮れる前に家に帰りたい子供や急いでいる人が、遠回りするよりも「一番早く、効率的に目的地に着ける方法(近道)」を選んだ場面です。もしかしたら少し道が悪いかもしれませんが、目的を達成するための『最も効率的で都合の良い方法』というニュアンスがよく表れています。
To stop the cold air, putting a blanket over the broken window was an expedient measure.
冷たい空気を止めるには、壊れた窓に毛布をかけるのが都合の良い応急処置だった。
※ 窓が壊れて冷たい風が入ってくる状況です。すぐに窓を直すことはできないので、とりあえず手元にある毛布で塞ぐという『一時的で実用的な応急処置』を選んだ場面です。本格的な解決策ではないけれど、その場の問題をしのぐための『都合の良い手段』として使われています。
間に合わせの手段
困難な状況を乗り切るための一時的な、または即席の解決策。必ずしも理想的ではないが、現状を改善するために用いられる。しばしば、長期的な解決策が見つかるまでのつなぎとして使われる。
The broken window needed a quick fix, so putting tape on it was a temporary expedient.
割れた窓には素早い修理が必要だったので、テープを貼るのは一時的な間に合わせの手段だった。
※ 窓が割れてしまい、本格的な修理ができない状況で、とりあえずテープで応急処置をする場面です。理想的な解決策ではないけれど、その場をしのぐための「間に合わせ」として使われる典型的な例です。名詞の 'expedient' は、このように 'temporary' や 'quick' などの形容詞を伴って使われることが多いです。
Facing a tight deadline, we chose a simple expedient to finish the report quickly.
厳しい締め切りに直面し、私たちはレポートを素早く終えるために簡単な間に合わせの手段を選んだ。
※ プロジェクトや仕事で、時間がない中で完璧ではないけれど、とにかくタスクを完了させるための方法を選ぶ場面です。理想的なやり方ではないけれど、目的を達成するために「手っ取り早い」方法を取る、というビジネスシーンでの「間に合わせ」のニュアンスが伝わります。'expedient' は、しばしば「理想的ではないが、実用的な解決策」という意味合いで使われます。
When his car broke down, using a shoelace as a temporary belt was a clever expedient.
彼の車が故障した時、靴ひもを一時的なベルトとして使うのは賢い間に合わせの手段だった。
※ 車が故障し、修理工具がない中で、身近なものを工夫して代用する場面です。予期せぬトラブルに対し、知恵を絞って「間に合わせ」の解決策を見つけ出す状況を描いています。ここでは 'clever expedient'(賢い間に合わせ)とすることで、その工夫が評価されていることが分かります。
コロケーション
政治的に都合の良い決定
※ このフレーズは、道徳的または倫理的な考慮よりも、特定の政治的目的を達成するために行われる決定を指します。しばしば、長期的な視点や普遍的な利益よりも、短期的な利益や特定の支持者の満足を優先するニュアンスを含みます。例えば、支持率を上げるための方策や、選挙での勝利を確実にするための妥協などが該当します。ビジネスシーンでも使われますが、政治的な文脈でより頻繁に見られます。形容詞 'politically' が加わることで、打算的な側面が強調されます。
その場しのぎの解決策、一時しのぎの解決策
※ 問題に対する迅速かつ簡単な解決策を指しますが、その解決策は必ずしも最良または最も永続的なものではありません。多くの場合、根本的な原因に対処するのではなく、表面的な問題に対処するものです。たとえば、機械の故障を一時的に修理するためにガムテープを使うような状況です。ビジネスや日常生活でよく使われ、緊急時や時間的制約がある場合に特に有効ですが、長期的な解決には不向きです。
~することが都合が良いと判断する
※ この構文は、ある行動をとることが、特定の結果を達成するために最も効果的または有利であると判断することを意味します。しばしば、他の選択肢よりも簡単、迅速、またはコスト効率が良いという理由で選択されます。例えば、「詳細な調査をするよりも、既存のデータを利用することが都合が良いと判断した」のように使われます。フォーマルな文脈でよく見られ、意思決定のプロセスを説明する際に役立ちます。 'find' の代わりに 'consider' を使うこともできます。
便宜的な措置、その場しのぎの対策
※ 特定の目的を達成するために、迅速かつ効果的に実行される対策を指します。これらの措置は、必ずしも理想的または長期的な解決策ではありませんが、当面のニーズを満たすために採用されます。たとえば、経済危機に対応するための緊急的な財政政策や、感染症の拡大を抑制するための旅行制限などが該当します。このフレーズは、政府や組織が直面する緊急事態や危機的状況において、迅速な対応が必要な場合に特に適しています。
便宜上の理由で、都合により
※ このフレーズは、特定の行動や決定が、効率性、利便性、またはその他の実用的な考慮事項に基づいて行われることを示します。道徳的または原則的な理由ではなく、実際的な利点が優先される場合に用いられます。たとえば、「便宜上の理由で、会議の場所を本社に変更した」のように使われます。この表現は、特に公式な文書やビジネスコミュニケーションにおいて、意思決定の根拠を説明する際に役立ちます。
原則を犠牲にして便宜を図る
※ 長期的な原則や道徳的な価値観よりも、短期的な利益や都合を優先することを意味します。このフレーズは、倫理的なジレンマに直面した際に、容易な道を選ぶことへの批判的なニュアンスを含みます。例えば、企業の利益のために環境保護を軽視するような状況が該当します。政治、ビジネス、倫理学などの分野でよく議論されるテーマであり、長期的な視点と短期的な利益のバランスの重要性を示唆します。
使用シーン
学術論文や研究発表で、特に倫理的な側面を議論する際に使われることがあります。例えば、「その研究手法は、データ収集の迅速さという点ではexpedient(都合が良い)だったが、被験者のプライバシー保護の観点からは問題があった」のように、短期的利益と長期的な倫理的影響を比較検討する文脈で用いられます。
ビジネス文書や会議において、緊急時や一時的な解決策を指す際に使われることがあります。例えば、「コスト削減のため、一時的にexpedient(間に合わせの)な対策として、人員削減を検討する」のように、理想的ではないが、状況を打開するために一時的に採用される手段を説明する際に用いられます。ただし、長期的な視点や倫理的な配慮も求められるため、使用頻度は高くありません。
日常会話ではほとんど使われませんが、ニュース記事やドキュメンタリーなどで、政治的な判断や企業の行動を批判的に評価する文脈で見かけることがあります。例えば、「政府は、問題を一時的に隠蔽するためにexpedient(都合の良い)な政策を採用した」のように、短期的な利益のために倫理的に問題のある行動を批判する際に用いられます。
関連語
類義語
『都合が良い』『便利である』という意味で、時間、場所、方法などが手軽で使いやすい状況を表します。日常会話やビジネスシーンで広く使われます。 【ニュアンスの違い】『expedient』が倫理的な側面を考慮せず、一時的な問題解決に役立つことを強調するのに対し、『convenient』は単に利便性が高いことを意味します。感情的な意味合いは薄いです。 【混同しやすい点】『convenient』は単に『便利』という意味であり、必ずしも最善策であるとは限りません。一方、『expedient』は、状況によっては倫理的に問題がある可能性を含みます。例えば、自己保身のために不誠実な行動を取る場合、『expedient』がより適切です。
『実用的』『現実的』という意味で、理論だけでなく、実際に使える、役に立つというニュアンスがあります。ビジネスや技術分野でよく使われます。 【ニュアンスの違い】『expedient』が短期的な問題解決に焦点を当てるのに対し、『practical』は長期的な視点での有用性を重視します。また、『practical』は倫理的な問題を含みません。 【混同しやすい点】『practical』は、実現可能性や効率性を重視する言葉であり、必ずしも倫理的な正当性を含みません。一方、『expedient』は、倫理的な側面を無視してでも、手っ取り早く問題を解決しようとする意味合いがあります。
『有利な』『有益な』という意味で、特定の状況において利益をもたらすことを示します。ビジネスや交渉の場面でよく使われます。 【ニュアンスの違い】『expedient』が必ずしも長期的な利益を考慮しないのに対し、『advantageous』はより戦略的な視点から見て有利であることを意味します。また、『advantageous』は倫理的な問題を含みません。 【混同しやすい点】『advantageous』は、正当な手段で得られる利益を指しますが、『expedient』は、不正な手段や倫理的に問題のある手段を用いて、一時的な利益を得る場合に使われることがあります。例えば、競争相手を陥れるような行為は『expedient』と言えます。
- politic
『賢明な』『如才ない』という意味で、状況をうまく乗り切るための適切な行動や判断を指します。政治や外交の場面でよく使われます。 【ニュアンスの違い】『expedient』がしばしば自己中心的で短期的な利益を追求するのに対し、『politic』はより広い視野で、長期的な関係や全体の利益を考慮します。ただし、『politic』も必ずしも倫理的に正しいとは限りません。 【混同しやすい点】『politic』は、状況に応じて柔軟に対応する能力を指しますが、『expedient』は、目的達成のためには手段を選ばないというニュアンスがあります。例えば、嘘をついてでもその場を乗り切ろうとする行為は『expedient』と言えますが、それが長期的な関係に悪影響を及ぼす可能性を考慮しない場合があります。
『好都合な』『時宜を得た』という意味で、特定の目的を達成するのに最適なタイミングであることを示します。ビジネスや個人的な機会について使われます。 【ニュアンスの違い】『expedient』は必ずしも最適なタイミングでなくても、緊急の必要性から行われることを意味するのに対し、『opportune』は計画的で、より良い結果を期待できるタイミングであることを強調します。 【混同しやすい点】『opportune』は、機会が訪れるのを待つというニュアンスがありますが、『expedient』は、機会がなくても、状況を打開するために行動するという意味合いがあります。例えば、市場の状況が整うのを待って新製品を発売するのは『opportune』ですが、競争相手に先んじるために、不完全な製品を急いで発売するのは『expedient』と言えるでしょう。
- resourceful
『機転の利く』『臨機応変な』という意味で、困難な状況でも創造的な方法で問題を解決できる能力を指します。ビジネスや日常生活で高く評価されます。 【ニュアンスの違い】『expedient』は倫理的な考慮を欠く可能性があるのに対し、『resourceful』は通常、倫理的に許容される範囲内で、創意工夫によって問題を解決することを意味します。また、『resourceful』は個人の能力を強調します。 【混同しやすい点】『resourceful』は、与えられた資源を最大限に活用して問題を解決する能力を指しますが、『expedient』は、必ずしも資源がなくても、手っ取り早い方法で問題を解決しようとする場合があります。例えば、限られた予算内で最大限の効果を上げるマーケティング戦略を立てるのは『resourceful』ですが、法律の抜け穴を利用して税金を逃れるのは『expedient』と言えるでしょう。
派生語
『促進する』という意味の動詞。元々は『足かせを外す』というイメージで、障害を取り除いて物事をスムーズに進めることを意味する。ビジネスシーンで、プロジェクトや手続きを迅速化する際に頻繁に使われる。
『遠征』『探検』という意味の名詞。元々は『準備を整えて出発すること』を指し、そこから大規模な旅行や冒険を意味するようになった。学術的な文脈や歴史的な記述でよく見られる。
- expeditious
『迅速な』『手際のよい』という意味の形容詞。『expedite』から派生し、物事が効率的に進む様子を表す。ビジネス文書や公式な報告書で、効率性やスピードを強調する際に用いられる。
反意語
接頭辞『im-(否定)』がつき、『非現実的な』『実行不可能な』という意味になる。『expedient』が『都合の良い』解決策を指すのに対し、『impractical』は現実的でないため採用できない案を指す。日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われる。
接頭辞『un-(否定)』がつき、『賢明でない』『分別がない』という意味になる。『expedient』が短期的な利益を優先するニュアンスを含むのに対し、『unwise』は長期的な視点や倫理的な観点から見て不適切であることを示唆する。フォーマルな議論や倫理的な考察で用いられる。
『有害な』『不利益な』という意味の形容詞。『expedient』な行動が一時的な利益をもたらすかもしれないのに対し、『detrimental』な行動は長期的に見て損害を与えることを意味する。学術論文や政策提言など、より深刻な結果を伴う状況を議論する際に用いられる。
語源
「expedient」はラテン語の「expediens」(役立つ、都合が良い)に由来します。これは「ex-」(外へ)と「ped-」(足)という要素から構成されています。「ped-」は「pes」(足)を語源とする語幹で、ペダル(pedal)や歩行者(pedestrian)などにも見られます。つまり、「expedient」は元々「足かせを外す」「障害を取り除く」といった意味合いを持っていました。道にある障害物を取り除き、物事が円滑に進むようにするというイメージです。そこから、「都合の良い」「間に合わせの」といった意味に発展しました。たとえば、旅行で急な雨に降られた際に、コンビニで買った傘が「expedient」な解決策となるでしょう。一時しのぎではあるものの、当面の困難を乗り越えるのに役立つ、という意味合いが込められています。
暗記法
「expedient(便宜的な)」は、目先の利益を優先する姿勢を示唆し、政治やビジネスでよく見られます。マキャヴェリズムは、国家維持のためには道徳に縛られない「expedient」な行動を是としました。文学作品では、その倫理的な問題点が描かれます。現代では、企業の環境基準無視や人気取り政策など、倫理的ジレンマと関連付けられ、批判の対象となることも。「expedient」な選択は、長期的な影響を考慮し、近視眼的な利己心でないか見極める必要があるのです。
混同しやすい単語
『expedient』と『expedite』は、スペルが非常に似ており、発音も最初の部分が同じであるため、混同しやすいです。『expedite』は動詞で「〜を促進する、〜を早める」という意味です。品詞が異なる点と、意味の違いに注意が必要です。語源的には、どちらもラテン語の『expedire』(障害を取り除く、準備する)に由来しますが、その後の意味の発展が異なっています。
『expedient』と『expect』は、最初の 'ex-' の部分が共通しているため、スペルと発音の両方で混同される可能性があります。『expect』は「〜を予期する、〜を期待する」という意味の動詞です。意味も品詞も異なるため、文脈で区別することが重要です。また、『expect』は、ラテン語の『exspectare』(見張る、待つ)に由来し、語源が異なります。
『expedient』と『experience』は、スペルの一部が似ており、特に 'expe-' の部分が共通しているため、混同されることがあります。『experience』は名詞で「経験」という意味、または動詞で「経験する」という意味です。意味と品詞が全く異なるため、注意が必要です。語源的には、ラテン語の『experiri』(試す、経験する)に由来します。
『expedient』と『ingredient』は、音の響きとスペルの一部(特に語尾の-ent)が似ているため、混同される可能性があります。『ingredient』は「材料、成分」という意味の名詞です。意味も品詞も異なり、文脈も異なるため、区別が必要です。ラテン語の『ingredi』(入る)に由来し、材料が「入って」構成されるイメージです。
『expedient』と『impediment』は、語頭の音とスペルが似ており(それぞれ 'ex-' と 'im-')、語尾の '-ent' も共通しているため、混同される可能性があります。『impediment』は「障害、妨げ」という意味の名詞です。意味が正反対である点に注意が必要です。語源的には、ラテン語の『impedire』(妨げる)に由来します。
『expedient』と『appropriate』は、意味の面で誤解が生じやすい場合があります。『expedient』は「都合の良い、間に合わせの」という意味合いがあり、必ずしも最善ではないニュアンスを含む場合があります。一方、『appropriate』は「適切な、ふさわしい」という意味で、よりポジティブな意味合いを持ちます。両者のニュアンスの違いを理解することが重要です。
誤用例
「expedient」は「(道徳的側面を無視して)都合が良い、手っ取り早い」という意味合いが強く、しばしば倫理的に問題のある行為を指すことがあります。日本語の「都合が良い」という言葉には倫理的な中立性がありますが、「expedient」は通常、ネガティブな含意を持ちます。この例では、単に利益を上げるために児童労働を使うことが「都合が良い」と述べるのではなく、短期的な利益のために倫理的に問題のある行為を行ったというニュアンスを明確にする必要があります。また、より強い語感の「exploiting」を使うことで、不当な搾取という状況をはっきりと描写できます。日本人が「〜にとって都合が良い」を直訳して「expedient for〜」と表現しがちですが、この語が持つニュアンスを理解することが重要です。
「expedient」は、しばしば「安易な解決策」や「一時しのぎの対策」を意味することがあります。この文では、問題を無視することが「expedient」であると述べていますが、それは長期的な解決にはならない可能性を示唆する必要があります。「seemingly expedient」とすることで、表面上は都合が良いように見えるが、実際にはそうではないという含みを持たせることができます。日本人は問題を「見て見ぬふりをする」ことを「都合が良い」と表現することがありますが、英語の「expedient」は、その背後にある倫理的な懸念や長期的なリスクを考慮する必要があります。安易な解決策を選ぶことの潜在的な落とし穴を示唆することで、より深い洞察を提供できます。
「expedient」は、本心からではなく、目的を達成するために行われる行為を指すことがあります。この文では、彼が議論を避けるために「expedient」な謝罪をしたと述べていますが、それは誠実な謝罪ではないというニュアンスを強調する必要があります。「expedient rather than sincere」とすることで、彼の謝罪が目的達成のための手段に過ぎなかったことを明確に示せます。日本人は「とりあえず謝っておく」という行動を「都合が良い」と捉えることがありますが、英語の「expedient」は、その背後にある計算高さや不誠実さを指摘するニュアンスを持ちます。行動の真意を疑う視点を提供することで、言葉の裏に隠された意図を読み解く力を養うことができます。
文化的背景
「expedient(便宜的な)」という言葉は、しばしば長期的な倫理や原則よりも、目前の状況を有利に進めるための手段として用いられることを示唆します。これは、目的のためには手段を選ばないという、ある種の功利主義的な思考と結びついており、政治やビジネスの世界で特にその文化的意義を強く感じさせます。
「expedient」が持つ文化的背景を考察する上で、マキャヴェリズムは避けて通れません。ニッコロ・マキャヴェッリの著書『君主論』は、政治指導者が国家を維持するために、道徳的な制約にとらわれず、状況に応じて「expedient」な行動を取ることを提唱しました。この思想は、時の権力者たちに影響を与え、政治の世界において「expedient」が、必ずしも肯定的な意味合いを持たない、計算された戦略として認識される一因となりました。文学作品においても、シェイクスピアの『ハムレット』に登場するクローディアスのように、王位簒奪のために「expedient」な手段(兄王の殺害)を選ぶ人物は、その行為の倫理的な問題点を浮き彫りにし、読者に「expedient」の持つ両義性を問いかけます。
現代社会においても、「expedient」は、しばしば倫理的なジレンマと関連付けられます。例えば、企業がコスト削減のために環境基準を無視したり、政治家が支持を得るために人気取りの政策を実行したりする行為は、「expedient」と見なされることがあります。これらの行為は、短期的な利益をもたらすかもしれませんが、長期的な視点で見ると、社会全体に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、「expedient」な行動は、しばしば批判の対象となり、倫理的な議論を呼び起こします。
「expedient」という言葉は、単なる「都合が良い」という意味を超え、倫理的な判断と長期的な影響を考慮する必要性を示唆する、文化的背景を持つ言葉と言えるでしょう。私たちが「expedient」な選択をする際には、その背後にある倫理的な意味合いを理解し、より広い視点からその影響を評価することが求められます。そして、その選択が本当に「expedient」であるのか、それとも単なる近視眼的な利己心に過ぎないのかを、慎重に見極める必要があるのです。
試験傾向
準1級・1級の語彙問題で出題される可能性あり。長文読解で、筆者の主張を補強する形容詞として使われることが多い。会話文ではまれ。
Part 5, 6, 7で、特にビジネス文書やEメールで「便宜的な」「都合の良い」という意味で出題される。同義語・類義語との選択問題に注意。
アカデミックな文章で頻出。特に、問題解決や政策に関する議論で「一時的な解決策」のような意味合いで使われる。文脈から意味を推測する能力が重要。
難関大学の長文読解で出題される可能性あり。文脈から意味を推測させる問題や、内容一致問題で間接的に問われることが多い。単語集だけでなく、長文読解を通して意味を理解することが重要。