epidemiology
強勢は「オ」にあります。最初の 'e' は曖昧母音 /ɪ/ で、日本語の『エ』よりも弱く短く発音します。'd' は有声音で、日本語の『デ』よりも喉を震わせます。'gy' は /dʒi/ のように発音され、日本語の『ジ』に近いですが、少し口を丸めて発音するとより正確です。全体を通して、各音節をはっきり発音することを心がけましょう。
専門的な内容に関するご注意
このページには、健康、金融、法律など、専門的な知識を必要とする内容が含まれている可能性があります。本サイトの情報は学習目的で提供されており、専門家による助言の代わりとなるものではありません。重要な判断を行う際には、必ず資格を持つ専門家にご相談ください。
感染症の流行を追う学問
集団における病気の発生パターンや原因を統計的に分析し、予防策を立てる学問分野。病気の広がり方や影響を解明し、対策を立てるイメージ。
He felt a strong desire to understand how diseases spread, so he chose **epidemiology** as his major at college.
彼は病気がどう広がるのかを理解したいという強い思いから、大学で疫学を専攻することを選びました。
※ 大学での専門分野として「疫学」を選ぶ典型的な場面です。病気への関心から学問に進む、真剣な学生の情景が目に浮かびます。'major' は大学での「専攻」を意味します。
During the pandemic, experts on TV explained how crucial **epidemiology** is to control the virus.
パンデミックの間、テレビの専門家たちは、ウイルスを抑えるために疫学がいかに重要かを説明しました。
※ ニュースやメディアで「疫学」という言葉が使われる、非常に典型的な場面です。社会全体が病気の流行に直面している状況で、その学問の役割が強調される様子が伝わります。'crucial' は「非常に重要な」という意味です。
When my friend talked about her job, she proudly mentioned that she works in **epidemiology**.
友人が自分の仕事について話したとき、彼女は「疫学」の分野で働いていると誇らしげに言いました。
※ 誰かが自分の専門分野や仕事について話す際に使う、自然な場面です。専門知識を持つ人が、自身の仕事内容を説明する情景が目に浮かびます。'proudly' は「誇らしげに」という意味で、仕事への情熱が伝わります。
感染症の広がり方
特定の地域や集団における感染症の発生状況や拡大のプロセス。まるで地図を眺めるように、病気がどのように広がっていくかを捉えるニュアンス。
On the news, a scientist explained how **epidemiology** helps track the spread of diseases.
ニュースで、科学者が感染症の広がり方を追跡するのに「疫学」がいかに役立つかを説明しました。
※ テレビのニュース番組で、専門家が冷静に感染症について語っている場面を想像してください。この例文は、『疫学』が具体的にどう役立つか、つまり病気の『広がり方』を『追跡する(track the spread)』という、最も中心的な役割を示しています。ニュースでよく聞くような、専門的な話題が一般向けに説明される典型的なシチュエーションです。
My friend chose to study **epidemiology** at college because she wants to understand how diseases affect communities.
私の友人は、病気が地域社会にどう影響するかを理解したいので、大学で「疫学」を学ぶことを選びました。
※ 大学で、将来の夢について語り合う学生たちの場面を思い浮かべてみてください。『疫学』は大学や大学院で学ぶ専門分野であり、この例文は、その学問を学ぶ動機付けを具体的に示しています。特に『病気が地域社会にどう影響するか(how diseases affect communities)』という部分は、『疫学』が社会全体に貢献する学問であることを伝えています。
The public health team closely watched the **epidemiology** of the flu to prepare for winter.
公衆衛生チームは冬に備えて、インフルエンザの「疫学」(広がり方)を注意深く観察しました。
※ 会議室で、データが映し出されたスクリーンを見ながら、真剣に話し合っている専門家チームの姿を想像してください。この例文は、『疫学』が具体的な対策(この場合は冬のインフルエンザ対策)にどう活用されるかを示しています。『closely watched』(注意深く観察した)という表現から、彼らの責任感や慎重な姿勢が伝わります。『prepare for...』(〜に備える)は、日常生活でもよく使う便利な表現です。
コロケーション
分子疫学
※ 疫学に分子生物学の技術を応用し、病気の原因や発生メカニズムを分子レベルで解明しようとする分野です。遺伝子、タンパク質、代謝物質などの生体分子と病気の関係を調べます。例えば、特定の遺伝子変異が特定の感染症に対する感受性を高めるかどうかを研究する際に用いられます。アカデミックな研究論文や、専門的な医療関係者の間でよく使われる表現です。
社会疫学
※ 病気の分布や決定要因を、社会的な文脈から理解しようとする分野です。貧困、教育、住環境、社会的なサポート体制などが健康にどのように影響するかを研究します。単に病気の生物学的な原因を追求するのではなく、社会構造や格差が健康格差を生み出すメカニズムを明らかにしようとします。政策立案や公衆衛生の分野で重要視されています。
疫学研究
※ 病気の原因やリスクファクターを特定するために行われる研究全般を指します。観察研究(コホート研究、ケースコントロール研究など)や介入研究(臨床試験など)が含まれます。研究結果は、公衆衛生政策や臨床ガイドラインの策定に役立てられます。学術論文や医療ニュースで頻繁に見られる表現です。 "epidemiologic study" とも表現されますが、意味は同じです。
疫学データ
※ 疫学研究によって収集された、病気の発生率、罹患率、死亡率などに関するデータのことを指します。これらのデータは、病気のパターンを把握し、リスクファクターを特定するために分析されます。政府機関、研究機関、医療機関などが収集・分析・共有します。ニュース記事や報告書でよく見られる表現です。
疫学サーベイランス
※ 感染症やその他の健康問題の発生状況を継続的に監視・分析する活動を指します。早期警戒システムとして機能し、異常な事態が発生した場合に迅速な対応を可能にします。具体的には、感染症の患者数、死亡者数、原因となる病原体などの情報を収集し、分析します。公衆衛生機関が中心となって実施します。
記述疫学
※ 病気の発生状況を、時間、場所、人という3つの要素に基づいて記述する疫学の一分野です。誰が、いつ、どこで病気にかかっているのかを把握することで、病気のパターンを明らかにし、原因究明の手がかりを得ます。例えば、季節性インフルエンザの流行状況を分析したり、特定の地域で発生率の高い病気を調べたりします。疫学研究の初期段階でよく用いられます。
分析疫学
※ 記述疫学で得られた情報をもとに、病気の原因やリスクファクターを特定するために、統計的な手法を用いて仮説を検証する疫学の一分野です。特定の曝露(喫煙、食習慣など)が病気のリスクを高めるかどうかを調べたり、病気の予防策の効果を評価したりします。コホート研究やケースコントロール研究などが用いられます。
使用シーン
疫学の研究論文や医学系の講義で頻繁に使用されます。例えば、「この研究は、特定の生活習慣が特定の疾患の疫学に与える影響を調査するものです。」のように、研究の目的や背景を説明する際に使われます。また、公衆衛生学の分野では、感染症の発生率や分布を分析する際に不可欠な用語です。
製薬会社や医療関連企業で、新薬開発や市場調査の報告書で使われることがあります。例えば、「この新薬の臨床試験における疫学データは、既存薬と比較して良好な結果を示しています。」のように、データの信頼性や有効性を強調する際に用いられます。また、保険会社がリスク評価を行う際にも、特定の疾患の疫学的情報が参照されることがあります。
ニュースやドキュメンタリー番組で、感染症の流行状況や健康問題について報道される際に使われることがあります。例えば、「今回のインフルエンザの流行は、過去の疫学的データと比較して異常な広がりを見せています。」のように、専門家が状況を解説する際に用いられます。日常会話で使うことは稀ですが、健康意識の高い人が、感染症予防に関する情報を共有する際に使う可能性はあります。
関連語
類義語
- public health
公衆衛生。病気の予防や健康増進を通じて、社会全体の健康を守る活動や学問分野を指す。政府機関や医療機関が中心となって行うことが多い。 【ニュアンスの違い】「epidemiology」は病気の発生原因や分布を研究する学問分野であるのに対し、「public health」は、その研究結果を基に、具体的な対策を講じ、人々の健康を改善することを目的とする。より実践的なニュアンスが強い。 【混同しやすい点】「epidemiology」は研究分野、「public health」は実践分野という区別を理解することが重要。両者は密接に関連しているが、焦点が異なる。
- biostatistics
生物統計学。生物学や医学におけるデータを統計学的に分析する学問分野。臨床試験や疫学研究でよく用いられる。 【ニュアンスの違い】「epidemiology」は病気の発生パターンやリスク要因を特定するために、統計学的な手法を用いる。一方、「biostatistics」はより広範な生物学的データ分析に適用される。疫学研究における統計解析は、「biostatistics」の一分野として捉えることができる。 【混同しやすい点】「epidemiology」は病気の分布と原因に焦点を当てるが、「biostatistics」は生物学全般のデータ分析を扱う。疫学研究では両方の知識が不可欠。
- disease control
疾病対策。特定の病気の発生や蔓延を抑制するための活動。予防接種、感染者の隔離、衛生教育などが含まれる。 【ニュアンスの違い】「epidemiology」は病気の発生原因を明らかにし、「disease control」はその知識を基に具体的な対策を講じる。疫学研究の結果が疾病対策の基礎となる。 【混同しやすい点】「epidemiology」は原因究明、「disease control」は対策実施という役割の違いを理解する必要がある。両者は協力して病気の蔓延を防ぐ。
- infectious disease
感染症。細菌、ウイルス、真菌などの病原体によって引き起こされる病気。人から人へ感染するものもあれば、動物や環境から感染するものもある。 【ニュアンスの違い】「epidemiology」は感染症を含む様々な病気の発生パターンを研究するが、「infectious disease」は特定の病気のカテゴリーを指す。疫学研究は感染症対策に不可欠な情報を提供する。 【混同しやすい点】「epidemiology」は学問分野、「infectious disease」は病気の分類という違いを認識することが重要。疫学研究は感染症の予防と制御に役立つ。
- clinical trial
臨床試験。新しい治療法や薬の効果と安全性を評価するために、患者を対象に行われる試験。厳格なプロトコルに従って実施される。 【ニュアンスの違い】「epidemiology」は病気の原因やリスク要因を特定するために観察研究を行うのに対し、「clinical trial」は特定の治療法の効果を検証するために介入研究を行う。臨床試験の結果は、疫学研究の知見と組み合わせて、より効果的な治療戦略を立てるのに役立つ。 【混同しやすい点】「epidemiology」は観察研究、「clinical trial」は介入研究という研究デザインの違いを理解することが大切。両者は相互補完的な関係にある。
サーベイランス。特定の病気や健康状態の発生状況を継続的に監視し、変化を早期に検知する活動。感染症対策や公衆衛生政策の策定に役立つ。 【ニュアンスの違い】「epidemiology」は病気の発生原因を研究し、「surveillance」は病気の発生状況を監視する。サーベイランスの結果は、疫学研究の方向性を決定したり、新たなリスク要因の発見につながったりする。 【混同しやすい点】「epidemiology」は原因究明、「surveillance」は状況把握という役割の違いを理解することが重要。サーベイランスは疫学研究の出発点となることが多い。
派生語
『伝染病の流行』を意味する名詞、または『流行性の』を意味する形容詞。「epi-(〜の上に)」+「demos(人々)」+「-ic(〜に関する)」という語構成で、「人々の間に広がる」という疫病の性質を表す。疫学研究の結果、特定の地域や集団で発生する病気の流行を指す際に使われる。日常会話よりも、ニュースや医療関係の記事で頻繁に見られる。
『(特定の地域に)固有の』という意味の形容詞。「en-(中に)」+「demos(人々)」+「-ic(〜に関する)」という語構成で、「ある地域の人々の中に根付いている」という状態を示す。疫学では、特定の地域や集団で常に一定の割合で発生する病気を指す際に用いられる。学術論文や専門的な医療現場でよく使用される。
『(広範囲な地域での)伝染病の大流行』を意味する名詞。「pan-(全て)」+「demos(人々)」+「-ic(〜に関する)」という語構成で、「全ての人々に広がる」という疫病の性質を表す。epidemicよりもさらに広範囲に及ぶ感染症の流行を指す。近年では、COVID-19の世界的流行により、一般にも広く知られるようになった。
反意語
- prophylaxis
『予防(医学)』を意味する名詞。epidemiologyが病気の発生原因や広がりを研究するのに対し、prophylaxisは病気の発生を未然に防ぐための対策を指す。疫学研究の結果を応用して、予防接種や衛生管理などの具体的な予防措置を講じる。学術的な文脈や医療現場で用いられる。
『治療』または『治癒』を意味する名詞・動詞。epidemiologyが病気の分布と決定要因を分析するのに対し、cureは病気からの回復を目指す。疫学的なデータは、効果的な治療法の開発や改善に役立てられる。日常会話から医学論文まで幅広く使用される。
語源
「epidemiology」は、感染症の流行を研究する学問分野を指します。この単語は、ギリシャ語に由来しており、その構成要素は「epi-」(上に、〜の間に)、「demos」(人々、地域住民)、「-logy」(学問、研究)です。つまり、直訳すると「人々の間に(epi-)広がるもの(demos)に関する学問(-logy)」となります。古代ギリシャでは、「demos」は単に「人々」を意味するだけでなく、特定の地域に住む共同体を指していました。感染症が地域社会にどのように広がり、影響を与えるかを研究する学問、というニュアンスが語源から見て取れます。日本語で例えるなら、「地域社会(demos)を覆う(epi-)病の研究(-logy)」といったイメージです。
暗記法
疫学は、単なる病気の統計を超え、社会の脆さと回復力を映す鏡。ペスト流行時にはユダヤ人迫害の引き金にもなり、社会不安を増幅。COVID-19パンデミックでは、グローバル化と情報過多が感染症対策を複雑化させた。現代疫学は感染症に加え、生活習慣病や社会格差にも挑み、社会科学や政策立案と融合。過去の教訓を未来の健康に繋げる、社会の羅針盤なのだ。
混同しやすい単語
『epidemiology』と『etiology』は、どちらも病気の原因や起源を扱う学問分野に関連する単語であり、発音とスペルが似ているため混同されやすいです。『epidemiology』は疫学(病気の分布と決定要因の研究)を意味し、『etiology』は病因論(病気の原因や起源の研究)を意味します。日本人学習者は、それぞれの単語が扱う範囲の違い(疫学は分布、病因論は原因)を意識することで区別できます。語源的には、どちらもギリシャ語に由来し、接頭辞 'epi-'(上に、〜に関して)と 'etio-'(原因)が意味の違いを示しています。
『epidemiology』と『endemic』は、どちらも病気の発生状況を表す単語であり、発音の一部が似ているため混同されることがあります。『epidemiology』は疫学という学問分野を指しますが、『endemic』は特定の地域で常に発生している病気(地方病)を指します。日本人学習者は、『-ology』で終わる単語は学問分野を指すことが多いことを覚えておくと、区別しやすくなります。また、『endemic』は『in + demos(人々)』という語源から、特定の地域に『人々の中に』病気が存在するというイメージを持つと覚えやすいでしょう。
『epidemiology』と『pandemic』は、どちらも病気の広がりに関連する単語であり、接頭辞 'epi-' と 'pan-' の違いが紛らわしいことがあります。『epidemiology』は疫学という学問分野を指しますが、『pandemic』は世界的な規模で広がる病気の流行(パンデミック)を指します。日本人学習者は、『pan-』(すべて)という接頭辞が『pandemic』の規模の大きさを表していることを意識すると、区別しやすくなります。例えば、『panorama(パノラマ)』も『すべてを見る』という意味合いを持っています。
『epidemiology』と『dermatology』は、どちらも『-ology』で終わる学問分野を指す単語であり、発音のリズムが似ているため混同されることがあります。『epidemiology』は疫学を指しますが、『dermatology』は皮膚科学を指します。日本人学習者は、それぞれの単語の最初の部分('epidemi-' と 'derma-')が扱う対象の違い(病気の分布と皮膚)を表していることを意識すると、区別しやすくなります。語源的には、『derma』はギリシャ語で『皮膚』を意味します。
『epidemiology』と『economy』は、発音のリズムが似ており、どちらも社会全体に関わる分野を扱うため、文脈によっては混同される可能性があります。『epidemiology』は疫学を指しますが、『economy』は経済を指します。日本人学習者は、それぞれの単語が扱う対象の違い(病気の分布と経済活動)を意識することで区別できます。また、語源的には、『economy』はギリシャ語の『oikonomia(家計管理)』に由来し、家計から社会全体の経済活動へと意味が拡大したことを知っておくと、覚えやすくなります。
『epidemiology』と『apology』は、どちらも語尾が '-ology' で終わる名詞であり、発音のリズムが似ているため、特に会話の中で聞き間違える可能性があります。『epidemiology』は疫学を意味しますが、『apology』は謝罪を意味します。意味が全く異なるため、文脈で判断することが重要です。語源的には、『apology』はギリシャ語の『apologia(弁明)』に由来し、自分の行動を正当化する意味合いから、謝罪へと意味が変化したことを知っておくと、語彙の理解が深まります。
誤用例
Epidemiologyは主に『疫病の流行』を扱う学問分野であり、比喩的に『噂の流行』に使うのは不適切です。日本語の『蔓延』という言葉に引きずられて、安易にepidemiologyを使ってしまう例です。噂の広がりを指す場合は、単純に『spread』を使う方が自然です。Epidemiologyを使う場合は、より科学的、統計的な調査・分析を伴う文脈が適切です。
Epidemiologyは病気の原因や分布を研究する学問であり、直接患者を治療するものではありません。将来医師として患者を治療したいのであれば、医学(medicine)や公衆衛生学(public health)を学ぶのが適切です。Epidemiologyは、集団レベルでの健康問題に取り組むアプローチであり、臨床医とは役割が異なります。日本語の『疫学』という言葉から、病気を治すこと全般に関わる学問だと誤解しやすい典型例です。
Epidemiologyはあくまで病気の分布や原因を研究する学問であり、思想統制とは無関係です。この文脈では、プロパガンダ(propaganda)を使うのが適切です。Epidemiologyを政治的な文脈で使用すると、科学的な中立性を欠き、陰謀論的なニュアンスを与えてしまう可能性があります。日本語の『世論操作』のような言葉から、安易にepidemiologyを使ってしまうと、意図しない誤解を生む可能性があります。
文化的背景
「疫学(epidemiology)」は、単なる病気の統計的分析に留まらず、社会の脆弱性と回復力を映し出す鏡です。古来より、疫病の流行は社会秩序を揺るがし、人々の価値観や行動様式に深い影響を与えてきました。
疫学という言葉が本格的に使われるようになったのは19世紀ですが、その概念は遥か昔から存在していました。ペストやコレラといった感染症が繰り返し社会を襲い、都市の過密化や衛生環境の悪化が病気の蔓延を助長する中で、為政者たちは経験的に感染症のパターンを把握し、隔離政策や検疫措置を講じてきました。しかし、病気の原因が細菌やウイルスといった目に見えない存在であると理解されるまで、疫病は神の怒りや悪霊の仕業と解釈され、宗教的な儀式や迷信的な治療法が試みられることも少なくありませんでした。例えば、中世ヨーロッパでは、ペストの流行はユダヤ人の井戸への毒入れが原因であるというデマが広がり、ユダヤ人に対する迫害を引き起こしました。このように、疫病は社会の不安や偏見を増幅させる触媒としても機能してきたのです。
20世紀以降、医学の進歩により感染症の原因が特定され、ワクチンや抗生物質などの治療法が開発されるにつれて、疫学はより科学的な学問へと発展しました。しかし、近年では、エイズ、エボラ出血熱、そしてCOVID-19といった新たな感染症が世界中で猛威を振るい、疫学の重要性が改めて認識されています。特にCOVID-19のパンデミックは、グローバル化が進んだ現代社会における感染症の拡散の速さを浮き彫りにしました。また、情報過多の時代において、科学的な根拠に基づかない情報や陰謀論が拡散し、人々の行動に影響を与えることも明らかになりました。疫学は、単に感染症の広がりを追跡するだけでなく、人々の行動や社会構造、政治的な意思決定が感染症の制御にどのように影響するかを理解するための重要なツールとなっています。
現代の疫学は、感染症だけでなく、生活習慣病や環境汚染など、より広範な健康問題にも取り組んでいます。がんや心臓病といった慢性疾患の発生原因を解明し、予防策を講じることは、社会全体の健康寿命を延ばす上で不可欠です。また、貧困や格差といった社会的な要因が健康に及ぼす影響についても研究が進められており、疫学は単なる医学の分野を超えて、社会科学や政策立案にも貢献する学際的な学問へと進化しています。疫学は、過去の教訓を活かし、未来の健康を守るための羅針盤として、これからも社会の進歩に貢献していくでしょう。
試験傾向
準1級、1級の長文読解で出題される可能性あり。語彙問題で直接問われることは少ないが、長文の内容理解に必要となる。アカデミックな話題(環境問題、医療、社会問題など)で登場しやすい。注意点としては、専門用語であることを意識し、関連語彙(pandemic, outbreakなど)と合わせて学習すると効果的。
TOEIC L&R TESTでは、Part 7(長文読解)で稀に出題される可能性がある。医療関連、保険関連の記事で登場することが考えられる。TOEIC S&W TESTでは、医療関連の描写問題などで関連知識が問われる可能性も否定できない。頻度は高くないため、優先順位は低い。ビジネスの文脈ではあまり使われない。
リーディングセクションで頻出。アカデミックな文章で、研究や調査に関する文脈で登場する。ライティングセクションでも、社会科学系のテーマで論文を書く際に使用できる。同義語や関連語句(incidence, prevalence, morbidity, mortalityなど)を理解しておくことが重要。単語の意味だけでなく、文章中での役割を把握する必要がある。
難関大学の長文読解で出題される可能性あり。医学部や社会科学系の学部でよく扱われるテーマに関連して登場しやすい。文脈から意味を推測する問題や、内容説明問題で問われることが多い。単語帳だけでなく、学術的な文章に触れることで、語彙力と読解力を同時に高める必要がある。関連語句と合わせて覚えておくと有利。