eloquence
強勢は最初の音節 /ˈel/ にあります。2つ目の音節 /ə/ は曖昧母音で、軽く「ア」と発音します。/kw/ の部分は、日本語の「ク」よりも唇を丸めて発音するとより正確になります。最後の /əns/ は、やはり曖昧母音と、鼻にかかった「ン」の音を意識しましょう。全体として、各音節を区切らず、滑らかにつなげるイメージで発音すると自然になります。
雄弁
人を惹きつけ、説得力のある話し方。単に言葉が上手いだけでなく、情熱や知性がこもっているニュアンスを含む。演説やプレゼンテーションなど、公の場でのスピーチに用いられることが多い。
The speaker's eloquence moved everyone in the room deeply.
その話し手の雄弁さは、部屋にいた全員の心を深く揺さぶった。
※ この例文では、話し手の言葉が聴衆に深く響き、感動を与えた様子を描いています。「eloquence」は、ただ流暢に話すだけでなく、言葉に力があり、人の心を動かすような「雄弁さ」を指します。「move (人) deeply」は「(人)の心を深く動かす」という意味でよく使われる表現です。
Her eloquence helped her win the difficult debate easily.
彼女の雄弁さのおかげで、彼女は難しい討論に簡単に勝つことができた。
※ この例文は、議論や討論の場で、言葉の力で相手を納得させ、自分の意見を通す様子を表しています。「eloquence」は、単なる話術ではなく、論理的で説得力のある話し方にも使われます。「win the debate」は「議論に勝つ」という意味です。
We admired the simple eloquence of the poet's words.
私たちはその詩人の言葉が持つ素朴な雄弁さに感嘆した。
※ 「eloquence」は、話すことだけでなく、書かれた言葉、特に詩や文章の美しさや力強さに対しても使われます。この例文では、詩人の言葉が持つ表現力や感動させる力を表現しています。「admire」は「~に感嘆する、感心する」という意味です。ここでは「simple eloquence」で、飾り気のない言葉の中にある力強さを表現しています。
弁舌の才
生まれつき、または訓練によって身につけた、巧みな話術。議論や交渉の場で、相手を説得し、有利な状況を作り出す能力を指す。
His eloquence during the speech deeply impressed everyone in the hall.
スピーチ中の彼の雄弁さは、ホールにいる全員に深い感銘を与えた。
※ この例文は、大勢の人の前で話すフォーマルな場面での「eloquence」の使い方を示しています。話す内容だけでなく、その話し方や言葉選びが素晴らしく、聴衆の心を強く動かした様子が伝わります。「deeply impressed」で、聴衆がどれほど感動したかがわかりますね。
She used her eloquence to persuade her colleagues to support the new project.
彼女は弁舌の才を使い、同僚たちに新しいプロジェクトを支持するよう説得した。
※ 「eloquence」は、単に話がうまいだけでなく、相手を納得させたり、行動を促したりする「説得力」がある場合にも使われます。特にビジネスの場面で、意見をまとめたり、人を動かしたりする際に重要な能力です。「persuade (人) to (動詞)」は「(人)に~するよう説得する」という、とても役立つ表現です。
Even when sharing simple stories, her natural eloquence always captivated her friends.
簡単な話をしている時でさえ、彼女の生まれ持った弁舌の才はいつも友人たちを魅了した。
※ この例文では、「eloquence」がフォーマルな場だけでなく、日常の会話で人を惹きつける才能にも使われることを示しています。「natural eloquence」は「生まれつきの弁舌の才」という意味で、その人の個性や魅力の一部であることを示します。「captivated」は「魅了する」という意味で、相手がその話に夢中になった様子が伝わりますね。
コロケーション
情熱的な雄弁
※ 「impassioned」は『情熱的な、感情的な』という意味で、この形容詞が「eloquence」を修飾することで、単なる言葉の巧みさだけでなく、強い感情を伴った説得力のある話し方を表します。ビジネスシーンのスピーチや、政治演説など、聴衆の心を揺さぶるような場面で用いられます。単に上手なだけでなく、熱意が伝わる点がポイントです。構文は『形容詞 + 名詞』。
人を巧みに言いくるめる弁舌
※ 「silver-tongued」は『弁の立つ、口達者な』という意味で、しばしば人を操るようなニュアンスを含みます。単に話が上手いだけでなく、言葉で相手を魅了し、自分の意のままに動かすようなイメージです。政治家や詐欺師など、言葉を武器にする人物を形容する際に使われます。比喩表現で、文字通り『銀の舌』を持つわけではありません。構文は『形容詞 + 名詞』。
雄弁の披露、見事な弁舌
※ 「display」は『展示、披露』という意味で、「a display of eloquence」は、優れた弁舌を公に示す行為を指します。フォーマルなスピーチ、法廷での弁論、あるいは文学作品における登場人物の演説など、特別な状況でその能力が発揮される場面で用いられます。日常会話よりも、やや格式ばった文脈で使われることが多いです。構文は『名詞句 + of + 名詞』。
雄弁に、見事な弁舌で
※ 「with eloquence」は、ある行為や発言が雄弁さを伴って行われることを示します。例えば、『He spoke with eloquence about the need for change.(彼は変革の必要性を雄弁に語った)』のように使われます。この表現は、単に話が上手いだけでなく、言葉の選び方や表現力において優れていることを示唆します。フォーマルな場面や、文章表現でよく用いられます。構文は『前置詞 + 名詞』。
文章における雄弁さ、流麗な文章
※ 「eloquence in writing」は、話し言葉だけでなく、書き言葉においても優れた表現力を持つことを指します。小説、エッセイ、論文など、様々な文章において、読者を魅了し、深い感動を与えるような文章表現を意味します。単に文法的に正しいだけでなく、言葉の選び方やリズム、構成などが洗練されていることが重要です。構文は『名詞 + 前置詞 + 名詞』。
沈黙の雄弁
※ 一見矛盾する表現ですが、言葉を発しないことによって、かえって強いメッセージを伝える状況を指します。例えば、悲しみを表す表情、抗議の意志を示す沈黙のデモ、あるいは言葉では表現できない深い感情などが該当します。文学作品や詩などで、比喩的に用いられることが多い表現です。構文は『形容詞 + 名詞』。
雄弁術
※ 「the art of eloquence」は、話し方や表現方法を磨き、聴衆を魅了する技術を指します。古代ギリシャ・ローマ時代から、政治家や弁護士にとって必須のスキルとされてきました。現代では、プレゼンテーションスキルやコミュニケーション能力として重要視されています。単なる才能だけでなく、訓練や学習によって習得できる技術であることを強調する表現です。構文は『定冠詞 + 名詞句 + of + 名詞』。
使用シーン
学術論文やスピーチなどで、著者の主張を強調する際に使われます。例えば、文学研究で「〜の作品における登場人物の雄弁さは、作者の意図を反映している」のように用いられます。また、歴史学の研究発表で、ある政治家の演説について「彼の雄弁さによって、民衆の支持を得た」と分析する際にも使われます。
ビジネスシーンでは、プレゼンテーションや重要な会議など、フォーマルな場面で使われることがあります。例えば、経営者が株主総会で「当社の将来について、雄弁に語る」といった状況が考えられます。日常的な業務報告やメールでは、より平易な表現が好まれるため、頻度は低いです。
日常会話で「eloquence」が使われることは稀ですが、文学作品や映画のレビュー、ニュース記事などで見かけることがあります。例えば、映画評論で「主演俳優の雄弁な演技が、観客を魅了した」と評されることがあります。また、政治家の演説について議論する際に、「彼の雄弁さは時に人を惑わす」といった意見が出ることもあります。
関連語
類義語
流暢さ、滑らかさ。言語、特に外国語を淀みなく話す能力を指すことが多い。日常会話、ビジネス、学術など、様々な場面で使用される。 【ニュアンスの違い】「eloquence」が人を感動させるような雄弁さを意味するのに対し、「fluency」は単に言葉がスムーズに出てくることを指す。感情的な深みや説得力は含まれない。 【混同しやすい点】「fluency」は言語能力そのものを指すのに対し、「eloquence」は話者の表現力、つまり伝え方に関する能力を指す。日本語の「流暢」は、しばしば「英語がペラペラ」といったニュアンスで使われるため、「eloquence」の持つ重みや芸術性を見落としがち。
明瞭な発音、または明確な表現。個々の音や単語をはっきりと発音すること、または考えや感情を分かりやすく表現することを指す。発音に関する場合は言語学、演劇などで、表現に関する場合はビジネス、学術、日常会話などで使用される。 【ニュアンスの違い】「eloquence」が言葉の美しさや力強さを強調するのに対し、「articulation」は正確さや明瞭さを重視する。そのため、「eloquence」は聴衆を魅了するスピーチに、「articulation」は技術的な説明や議論に適している。 【混同しやすい点】「articulation」は、必ずしも聴衆を感情的に揺さぶる必要はなく、論理的で分かりやすい説明が求められる場合に適している。「eloquence」が聴衆の感情に訴えかけるのとは対照的。また、日本語の「アーティキュレーション」は音楽用語として使われることも多いため、英語の「articulation」が持つ表現の明瞭さという意味を理解しにくい場合がある。
修辞法、弁論術。効果的なコミュニケーションのための技法や原則。政治、法律、広告など、説得を目的とする場面で用いられる。時に、中身のない言葉遊びや誇張された表現を指す場合もある。 【ニュアンスの違い】「eloquence」が自然で心からの表現を伴うことが多いのに対し、「rhetoric」は意図的な説得術である。「eloquence」は真実味や誠実さを感じさせるが、「rhetoric」は操作的、あるいは欺瞞的であると見なされることもある。 【混同しやすい点】日本語の「レトリック」は比喩や誇張といった修辞技法を指すことが多いが、英語の「rhetoric」はより広範な弁論術を意味する。また、「rhetoric」がネガティブな意味合いで使用される場合があることを理解しておく必要がある。「雄弁は銀、沈黙は金」ということわざのように、言葉が過ぎると逆効果になる場合がある。
- oratory
演説術、弁論術。公衆に対して効果的に話す技術。政治、法律、宗教など、聴衆を前にして意見を述べたり、説得したりする場面で用いられる。 【ニュアンスの違い】「eloquence」が言葉の美しさや感動を与える力に焦点を当てるのに対し、「oratory」は聴衆を惹きつけ、説得するための技術全般を指す。「oratory」は、声のトーン、身振り手振り、話の構成など、言葉以外の要素も含む。 【混同しやすい点】「oratory」は、単に美しい言葉を並べるだけでなく、聴衆の感情や論理に訴えかける戦略的なスキルを必要とする。一方、「eloquence」は、必ずしも戦略的である必要はなく、自然な感情の発露として現れることもある。日本語の「演説」は、やや形式ばったイメージがあるため、「eloquence」の持つ自然な美しさを捉えにくい場合がある。
- expressiveness
表現力。感情、考え、意図などを効果的に伝える能力。芸術、文学、音楽、日常会話など、様々な場面で使用される。 【ニュアンスの違い】「eloquence」が言葉の巧みさや美しさを強調するのに対し、「expressiveness」は感情や意図を伝えることに重点を置く。「expressiveness」は、言葉だけでなく、表情、身振り、声のトーンなど、非言語的な要素も含む。 【混同しやすい点】「expressiveness」は、必ずしも流暢な言葉を必要としない。例えば、絵画や音楽などの芸術作品は、言葉を使わずに感情を表現することができる。「eloquence」が言葉による表現の巧みさを指すのに対し、「expressiveness」はより広範な表現手段を含む。日本語の「表現力」は、しばしば芸術分野における才能を指すため、「eloquence」の持つ言葉の力を捉えにくい場合がある。
落ち着き、バランス、優雅さ。困難な状況でも冷静さを保ち、自信を持って振る舞うこと。公の場でのスピーチ、プレゼンテーション、面接など、緊張を伴う場面で重要となる。 【ニュアンスの違い】「eloquence」が言葉の流暢さや美しさを指すのに対し、「poise」は立ち居振る舞いの落ち着きや自信を表す。「eloquence」は聴衆を魅了する言葉の力であるのに対し、「poise」は話者が落ち着いて堂々としている様子を指す。 【混同しやすい点】「poise」は、必ずしも言葉の巧みさを必要としない。むしろ、言葉に詰まったり、言い間違いをしたりしても、動揺せずに落ち着いて対応する能力が重要となる。「eloquence」が言葉の技術であるのに対し、「poise」は精神的な安定や自信を表す。日本語の「ポーズ」は、写真撮影における姿勢を指すことが多いが、英語の「poise」は精神的な落ち着きや自信を含む、より広範な意味を持つ。
派生語
『雄弁な』という意味の形容詞。『eloquence』が名詞であるのに対し、こちらは人の性質や話し方を描写する際に用いられる。例えば、『He is an eloquent speaker.(彼は雄弁な話し手だ)』のように、日常会話から公式なスピーチまで幅広く使われる。
- eloquently
『雄弁に』という意味の副詞。『eloquent』に副詞語尾『-ly』が付加された形。動詞を修飾し、話し方や書き方の巧みさを強調する。例えば、『She eloquently defended her position.(彼女は雄弁に自身の立場を擁護した)』のように、議論やプレゼンテーションの場面でよく見られる。
反意語
- inarticulateness
『口下手』や『不明瞭さ』を意味する名詞。『articulateness(明瞭さ、弁舌)』に否定の接頭辞『in-』が付いた形。eloquenceが洗練された表現力であるのに対し、こちらは言葉に詰まったり、うまく表現できない状態を指す。例えば、緊張してうまく話せない状況などを表す際に用いられる。
『寡黙』や『無口』を意味する名詞。eloquenceが言葉を巧みに操る能力であるのに対し、taciturnityは積極的に言葉を発しない性質を指す。例えば、『彼の寡黙さは謎めいた魅力を放っていた』のように、性格や態度を表す際に用いられる。
語源
「eloquence(雄弁)」は、ラテン語の「eloquentia(雄弁術、弁舌の才能)」に由来します。さらに遡ると、「ex-(外へ)」と「loqui(話す)」という二つの要素から構成されているのが分かります。「ex-」は「外へ、完全に」という意味を持ち、「loqui」は「話す」という意味です。つまり、「eloquence」は、内にある考えや感情を外に、巧みに、そして完全に表現する能力を指す言葉として生まれたのです。日本語で例えるなら、「弁舌爽やか」という表現が近いかもしれません。考えを淀みなく言葉にする、その才能こそが「eloquence」の本質と言えるでしょう。
暗記法
雄弁は、古代ギリシャ・ローマで民主主義を支えた言葉の力。デモステネスやキケロは、弁舌で民衆を動かしました。シェイクスピア劇でも、雄弁は知性と野心の象徴。しかし、ヒトラーのように大衆を扇動した例も。言葉は常に善意とは限らないのです。現代ではSNSで誰もが発信できますが、倫理観と共感こそが重要。言葉の裏にある意図を見抜き、社会を良い方向へ導く誠実さこそ、現代に必要な雄弁です。
混同しやすい単語
『eloquence』と『elegant』は、どちらも良い意味を持つ形容詞に関連するため、意味の面で混同しやすいです。しかし、『eloquence』は名詞で『雄弁さ』を意味し、『elegant』は形容詞で『上品な』『優雅な』を意味します。発音も似ていますが、アクセントの位置が異なります。『eloquence』は最初の音節に、『elegant』は最初の音節に置かれます。スペルも似ていますが、'qu' と 'g' の違いに注意が必要です。また、語源的には『eloquence』は『話す』という意味のラテン語に由来し、『elegant』は『選び出す』という意味のラテン語に由来するため、意味の違いを意識すると区別しやすくなります。
『eloquence』と『eloquent』は、語幹が同じで意味も関連するため、混同しやすいです。『eloquence』は名詞で『雄弁さ』を意味し、『eloquent』は形容詞で『雄弁な』を意味します。スペルも非常に似ており、語尾が '-ence' か '-ent' かの違いしかありません。発音もほぼ同じですが、文脈によって使い分ける必要があります。例えば、『He is known for his eloquence.(彼は雄弁さで知られている)』と『He is an eloquent speaker.(彼は雄弁な話し手だ)』のように使います。
『eloquence』と『obsolescence』は、どちらも '-escence' で終わる名詞であり、スペルが長く、抽象的な概念を表すため、視覚的に混同しやすいです。『obsolescence』は『陳腐化』『時代遅れになること』を意味し、『eloquence』とは全く異なる概念です。発音も異なります。『obsolescence』は /ˌɒbsəˈlɛsns/ と発音します。単語の長さと抽象的な意味合いから、意味を混同しないように注意が必要です。
『eloquence』と『evidence』は、どちらも名詞で、ある程度の長さがあり、スペルの一部が似ているため、視覚的に混同しやすいです。『evidence』は『証拠』を意味し、『eloquence』とは全く異なる概念です。発音も異なり、『evidence』は /ˈɛvɪdəns/ と発音します。特に、'-ence' の部分が共通しているため、前後の文字をしっかり確認することが重要です。
『eloquence』と『elocution』は、どちらも発音や話し方に関連する単語であり、語源も共有するため、意味の面で混同しやすいです。『eloquence』は『雄弁さ』という能力や才能を指すのに対し、『elocution』は『演説法』『発声法』という技術的な側面を指します。発音もスペルも似ていますが、意味合いが異なるため、文脈によって使い分ける必要があります。語源的には、どちらもラテン語の『話す』という意味の語根に由来しますが、『eloquence』は『流暢に話すこと』、『elocution』は『明確に発音すること』に重点が置かれています。
『eloquence』と『collusion』は、どちらも '-usion' で終わる抽象名詞であり、スペルの末尾が似ているため、視覚的に混同しやすいです。『collusion』は『共謀』『癒着』を意味し、『eloquence』とは全く異なる概念です。発音も異なり、『collusion』は /kəˈluːʒən/ と発音します。特に、ビジネスや政治に関連する文脈で『collusion』はよく使われるため、ニュース記事などを読む際に注意が必要です。
誤用例
『eloquence(雄弁さ、説得力のある話し方)』は基本的にポジティブな意味合いを持ちます。嘘をついていると明らかな状況で『eloquence』を使うと、皮肉として解釈される可能性があり、意図が伝わりにくくなります。この文脈では、見せかけの巧みな話術で嘘を覆い隠している、というニュアンスを出すために『apparent eloquence』や『masked』といった表現を用いる方が適切です。日本人は、英語のポジティブな単語を安易に使うことで、かえって不自然な印象を与えてしまうことがあります。英語では、状況に応じて言葉のニュアンスを細かく使い分けることが重要です。また、日本語の『口がうまい』という表現を安易に『eloquence』に置き換えるのも避けるべきです。
『eloquence』は一般的に、卓越した表現力や流暢さを指しますが、必ずしも感情に訴えかける力強さを含むとは限りません。感動的な演説の場合、より適切な語は『rhetoric(修辞)』です。『rhetoric』は、聴衆を感情的に動かすための言葉の技術を指し、政治演説などによく用いられます。日本人は、英語の学習において単語の意味を辞書的に捉えがちですが、文脈によって最適な単語を選ぶ必要があります。特に、感情を表す言葉は、文化的な背景によってニュアンスが異なるため注意が必要です。日本語の『雄弁』という言葉から安易に『eloquence』を選ぶのではなく、伝えたい感情の種類を考慮することが大切です。
『eloquence』は、主に話し言葉における流暢さや表現力を指します。書かれた文章、特に報告書のようなフォーマルな文書においては、その才能や力量を示すために『eloquence』を使うのは不自然です。報告書であれば、明晰さ(clarity)や説得力(persuasiveness)、あるいは分析力(analytical skill)など、別の言葉を使う方が適切です。一方、プレゼンテーションであれば、聴衆を魅了する話し方という点で『eloquence』が適切です。日本人は、英語の抽象的な名詞を具体的な場面で使いすぎる傾向があります。英語では、抽象名詞を使う場合、それがどのような形で具体的に現れているのかを明確にする必要があります。また、『show』という動詞も、やや直接的すぎるため、よりフォーマルな『demonstrate』を使う方が、教養ある大人の表現として適切です。
文化的背景
「雄弁(eloquence)」は、単なる言葉の巧みさではなく、聴衆を魅了し、感情を揺さぶり、行動を促す力強い表現力を意味します。古代ギリシャ・ローマ時代から、雄弁は政治的リーダーシップや社会的な影響力と深く結びつき、民主主義を支える重要な要素として尊重されてきました。雄弁家は、言葉を通じて人々の心を掴み、社会を動かす存在として、特別な地位を与えられてきたのです。
古代ギリシャでは、雄弁術(rhetoric)は市民教育の中核をなし、政治家や弁護士を目指す者は、言葉の技術を磨くことに人生を捧げました。デモステネスやキケロといった雄弁家は、その卓越した弁舌で民衆を鼓舞し、国家の命運を左右しました。彼らの演説は、単なる情報伝達ではなく、芸術作品として後世にまで語り継がれています。シェイクスピア劇においても、登場人物の雄弁さは、その人物の知性、教養、そして野心を象徴するものとして描かれています。例えば、『ジュリアス・シーザー』におけるアントニーの演説は、聴衆の感情を巧みに操り、政治的状況を大きく変える力を持っています。
しかし、雄弁は常に善意の元に行使されるとは限りません。歴史上、人々を扇動し、誤った方向に導いた雄弁家も数多く存在します。アドルフ・ヒトラーはその最たる例でしょう。彼のカリスマ的な演説は、大衆の不安や不満を巧みに利用し、憎悪と暴力へと駆り立てました。このように、雄弁は強力な武器となりうるため、常に批判的な視点で見つめる必要があります。現代社会においても、政治家やメディアは、言葉を通じて人々の意見を形成し、社会を動かしています。したがって、私たちは、言葉の表面的な美しさだけでなく、その背後にある意図や目的を見抜く力を養うことが重要です。
近年では、ソーシャルメディアの普及により、誰もが自由に意見を発信できるようになりました。しかし、その一方で、情報過多や誤情報の拡散といった問題も深刻化しています。このような状況下で、真に価値のある雄弁とは、単なる言葉の巧みさではなく、倫理観や共感力を伴った、誠実な表現力であると言えるでしょう。言葉を通じて社会をより良い方向に導くためには、雄弁家自身が、深い知識、高い倫理観、そして共感力を持つことが不可欠なのです。
試験傾向
準1級以上で出題される可能性あり。1. **出題形式:** 主に語彙問題(短文の空所補充)。長文読解で文脈から意味を推測させる形式も。2. **頻度と級・パート:** 準1級、1級でまれに出題。3. **文脈・例題の特徴:** スピーチ、プレゼンテーション、政治、歴史など、ややフォーマルな話題で使われることが多い。4. **学習者への注意点・アドバイス:** eloquenceは名詞であること、形容詞形eloquentとセットで覚えること。類似語fluency(流暢さ)との区別に注意。
この試験では出題頻度は低め。1. **出題形式:** 主にPart 5(短文穴埋め問題)で、まれにPart 7(長文読解)で見かける程度。2. **頻度と級・パート:** TOEIC全体を通して、非常にまれ。3. **文脈・例題の特徴:** ビジネスシーンのスピーチやプレゼンテーションに関する文章で使われる可能性がある。4. **学習者への注意点・アドバイス:** TOEIC対策としては優先順位は低い。もし登場したら、文脈から意味を推測する。ビジネスシーンにおける「巧みな話し方」というニュアンスを理解しておく。
アカデミックな文章でまれに出題される可能性あり。1. **出題形式:** リーディングセクションで、同意語選択や文脈推測問題として。2. **頻度と級・パート:** TOEFL iBTリーディングセクションでまれに出題。3. **文脈・例題の特徴:** 歴史、政治、文学、芸術など、学術的な議論や分析における「雄弁さ」について言及する際に用いられる。4. **学習者への注意点・アドバイス:** アカデミックな文脈における「巧みな表現力」や「説得力のある話し方」といったニュアンスを理解しておく。類義語のpersuasiveness(説得力)などと関連付けて覚える。
難関大学の二次試験で出題される可能性あり。1. **出題形式:** 主に長文読解問題。文脈から意味を推測させる問題や、内容説明問題の一部として問われる場合がある。2. **頻度と級・パート:** 難関国公立大学や私立大学の入試でまれに出題。3. **文脈・例題の特徴:** 社会科学、人文科学系の文章で、政治家の演説、文学作品の分析、歴史的な出来事の解説などで使われることがある。4. **学習者への注意点・アドバイス:** 単語の意味だけでなく、文章全体の内容を理解し、筆者の主張を把握することが重要。「雄弁さ」「説得力のある表現」といった意味合いを文脈に応じて適切に解釈できるように練習する。