but
母音 /ʌ/ は日本語の『ア』と『オ』の中間のような音で、口を軽く開けて短く発音します。日本語の『ア』よりも口の開きを小さく、喉の奥から出すイメージです。語尾の /t/ は、舌先を上の歯の裏側に当てて息を止める音で、日本語の『ト』のように強く発音しません。軽く息を止めるだけで、次の単語に繋げることが多いです。
しかし
前の文脈からの予想や期待に反する内容を導入する。対比や譲歩を示す際によく用いられ、フォーマルからカジュアルまで幅広く使用される。文頭に置かれることも多い。
It was sunny this morning, but it started raining in the afternoon.
今朝は晴れていましたが、午後には雨が降り始めました。
※ 楽しみにしていた外出が雨で台無しになるような、がっかりする気持ちが伝わりますね。「〜だった、しかし〜になった」という、状況の変化や予想外の出来事を伝える時によく使われます。「but」は文と文をつなぐ接続詞で、前にくる内容と反対や対照的な内容を後ろに続けます。
I was very tired, but I still finished my homework.
私はとても疲れていましたが、それでも宿題を終えました。
※ 疲れていてもやるべきことをやり遂げた、あなたの頑張りや達成感が伝わる場面です。「〜だったけれど、それでも〜した」のように、困難や障害があっても何かを成し遂げた時に使われます。「still」は「それでも、まだ」という意味で、「but」と組み合わせて使うと「困難な状況にもかかわらず」というニュアンスが強まります。
The coffee shop was nice, but the music was a bit too loud.
そのカフェは素敵でしたが、音楽が少しうるさすぎました。
※ 素敵なカフェでくつろぎたかったのに、音楽が気になって残念な気持ちになった、という場面が目に浮かびますね。「〜は良かったけれど、〇〇は△△だった」のように、何かを評価する際に、良い点と気になる点を両方伝える時によく使われます。「a bit」は「少し、やや」という意味で、不満や気になる点をやわらかく伝えるのに便利です。
〜を除いて
「〜以外には」という意味合いで、例外や除外を示す。しばしば「but for」の形で用いられ、「もし〜がなければ」という仮定の意味合いも含む。
Everyone at the table ate the green beans but my little brother.
テーブルにいたみんながインゲンを食べたけれど、私の幼い弟だけは食べなかった。
※ この例文は、食卓でのごくありふれた風景を描いています。家族みんなが野菜を食べているのに、幼い弟だけが顔をしかめて食べない、という情景が目に浮かびますね。`but` の後に「my little brother(私の幼い弟)」という人が来て、「彼を除いて、みんなが〜した」という、この前置詞の最も典型的で分かりやすい使い方です。
All the shops were closed on Sunday night but the small ramen shop.
日曜の夜、小さならーめん屋さんを除いて、すべてのお店が閉まっていた。
※ 静かな日曜の夜、街を歩いていて、ほとんどのお店が閉まっている中で、唯一明かりが灯っているラーメン屋さんを見つけた時の、ちょっとした安堵感が伝わってきます。`but` の後に「the small ramen shop(小さならーめん屋さん)」という場所が来て、「それ以外は全て〜だった」という状況を表すのにぴったりです。
Everyone at the party was laughing loudly but the new girl.
パーティーにいたみんなが大声で笑っていたけれど、新しく来た女の子だけは笑っていなかった。
※ 賑やかなパーティー会場の様子が目に浮かびます。みんなが楽しそうに笑っている中で、新しく来た子が少し緊張して、まだ場に馴染めずにいる、という情景が想像できますね。ここでも `but` の後に「the new girl(新しく来た女の子)」という人が来て、「彼女を除いて、みんなが〜した」という形で、ある状況における例外を鮮やかに示しています。
ほんの
程度がわずかであることを示す。強調するニュアンスが含まれる場合がある。「just」や「only」と類似した意味合いで使われる。
My little brother got but one cookie from his mom, and he looked very sad.
弟はお母さんからクッキーをたった1枚しかもらえず、とても悲しそうだった。
※ この例文では、小さな男の子が期待していたよりも少ないクッキー(たった1枚)しか手に入らず、がっかりしている様子が目に浮かびます。「but one cookie」で「たった1枚のクッキー」と、その少なさを強調しています。このように「but」を数字や量と組み合わせて使うと、「ほんの」「~だけ」という意味で、期待外れや不足感を伝えることができます。少し古風な響きもありますが、小説やフォーマルな会話で使われることもあります。
She missed the winning goal by but a few inches, making her teammates sigh.
彼女はほんの数インチ差で決勝ゴールを外し、チームメイトはため息をついた。
※ スポーツの試合で、あと一歩で成功だったのに惜しくも逃した、という悔しい瞬間を描写しています。「by but a few inches」で「ほんの数インチ差で」と、その差がごくわずかであったことを強調しています。このように「but」は、距離や時間、量などが「ほんの少し」であることを示す際に使われ、その差の小ささや惜しさを際立たせる効果があります。
We have but five minutes until the train leaves, so we must hurry!
電車が出発するまであとほんの5分しかないので、急がなきゃ!
※ 駅で、電車の出発時刻が迫っている状況で、焦っている様子が伝わります。「but five minutes」で「ほんの5分」と、残された時間の少なさを強調しています。このように「but」は、時間や期間の短さを表現する際にも使われ、「ほんの~」「~だけしか」という限定的な意味合いで、切迫感や焦りを伝えることができます。日常会話では「only」を使うことが多いですが、「but」を使うことで、より劇的なニュアンスが生まれることがあります。
コロケーション
決して~ではない、~以外の何でも
※ 「Anything but + 名詞/形容詞」の形で用いられ、「~以外のどんなものでも(良い)」という強い否定を表します。例えば、"He is anything but a hero" は「彼は決して英雄ではない」という意味になります。似た表現に "far from" がありますが、"anything but" の方がより口語的で、感情的なニュアンスが強くなります。ビジネスシーンよりも、日常会話や文学作品でよく見られます。
~がなければ、~がなかったならば
※ "But for + 名詞/名詞句" の形で用いられ、仮定法過去完了(would have + 過去分詞)や仮定法過去(would + 動詞の原形)と組み合わせて、ある条件がなければ結果が異なっていたであろうことを示します。例えば、"But for your help, I would have failed." は「あなたの助けがなければ、私は失敗していただろう」という意味です。ややフォーマルな表現で、法律や哲学の議論でも用いられます。原因と結果のつながりを強調する際に有効です。 "If it had not been for" とほぼ同義ですが、より簡潔に表現できます。
しかし結局は、そうは言っても
※ 直前の発言に対する修正や限定を加える際に使われます。ある事柄を述べた後、「しかし、よく考えてみると…」「結局のところ…」というニュアンスで、逆説的な結論や新たな視点を提示します。例えば、「I wanted to go to the party, but then I remembered I had to work.」(パーティーに行きたかったけど、結局仕事があることを思い出した)のように使います。会話やカジュアルな文章でよく見られます。 "However" や "On the other hand" より口語的で、より自然な流れで話題を転換できます。
言い訳は聞きたくない
※ 相手の言い訳や反論を遮る際に使われる口語的な表現です。"But" を重ねることで、相手に弁解の余地を与えない強い拒絶の意思を示します。命令形や強い口調で使われることが多く、親しい間柄での会話でよく見られます。フォーマルな場面やビジネスシーンでの使用は避けるべきです。類似の表現として、"No excuses!" がありますが、"But me no buts" はよりユーモラスで皮肉なニュアンスを含みます。
最後に、しかし重要な
※ リストや順序を伴う事柄を述べる際に、最後に紹介する項目が重要であることを強調するために使われます。文字通りには「最後だが、決して重要でないわけではない」という意味です。プレゼンテーションやスピーチ、記事などでよく使われ、聞き手や読者の注意を惹きつけます。フォーマルな場面でも使用できます。類似の表現として、"Finally" がありますが、"Last but not least" は、単に順番が最後であるだけでなく、その項目の重要性を強調するニュアンスが含まれます。
非常に良い、本当に良い
※ 主に米国南部の方言で使われる表現で、"very good" や "really good" と同義です。例えば、「That pie is but good!」は「あのパイは本当に美味しい!」という意味になります。口語的な表現であり、フォーマルな場面での使用は避けるべきです。地域的なスラングであり、一般的な英語話者には通じにくい場合があります。映画やドラマで、特定の地域出身のキャラクターが使うことで、その人物像を際立たせる効果があります。
使用シーン
学術論文やプレゼンテーションで頻繁に使用されます。先行研究や既存の理論に対する反論、あるいは限定的な条件を示す際に用いられます。例えば、「先行研究ではAという結果が出ている。しかし、本研究ではBという結果が得られた。」のように、研究の独自性や意義を強調する文脈で重要です。また、複雑な議論を展開する上で、論理的な接続詞として不可欠です。
ビジネスシーンでは、会議での議論や報告書、メールなどで使用されます。提案や計画に対する懸念点や課題を示す際、あるいは条件付きの合意を表現する際に役立ちます。例としては、「予算は承認された。しかし、スケジュールには注意が必要だ。」のように、ポジティブな側面とネガティブな側面をバランス良く伝えるために用いられます。フォーマルな文体で使用されることが多いです。
日常会話で非常に頻繁に使用されます。相手の意見に対する反対や、予期せぬ出来事、あるいは軽い反論などを表現する際に用いられます。例えば、「映画は面白かった。しかし、少し長すぎた。」のように、感想や意見を述べる際に自然に使われます。口語的な表現であり、親しい間柄でのコミュニケーションで特に多く見られます。
関連語
類義語
前の文や節の内容を受けて、対比や矛盾を示す接続副詞。フォーマルな文脈や書き言葉でよく使用される。文頭、文中、文末に置くことができる。 【ニュアンスの違い】"but"よりもフォーマルで、より客観的な印象を与える。議論や論文などで、論理的な対比を明確に示したい場合に適している。感情的なニュアンスは少ない。 【混同しやすい点】"However"は接続詞ではないため、文と文を直接つなぐことはできない。必ずコンマやセミコロンが必要。また、文頭に置く場合は、その文全体を修飾するニュアンスを持つ。
- although / though / even though
譲歩の接続詞で、「〜にもかかわらず」という意味。従属節を導き、主節の内容との対比を示す。"Although"が最もフォーマルで、"though"はより口語的、"even though"は譲歩の意味合いを強調する。 【ニュアンスの違い】"but"が直接的な対比を示すのに対し、これらの語は「〜であるにもかかわらず、…」というように、予想外の結果や状況を示す。"Though"は文末に置かれることもあり、その場合は「〜だけどね」のような軽いニュアンスになる。 【混同しやすい点】"Although/though/even though"は従属節を導くため、文構造が異なる。"but"は等位接続詞なので、2つの独立した文をつなぐ。また、"but"と"although/though/even though"を同じ文中で一緒に使うのは冗長になるため避けるべき。
"but"と同様に、対比や矛盾を示す等位接続詞。しかし、"yet"は予想外の結果や驚きを表すニュアンスが強い。フォーマルな文脈でも使用可能。 【ニュアンスの違い】"but"よりも強い対比や意外性を示唆する。しばしば、それまでの状況から予想される結果とは異なることが起こることを強調する。"Yet"は時間的な意味合い(「まだ〜ない」)も持つため、文脈によって意味が異なる。 【混同しやすい点】"Yet"は副詞としても使用され、「まだ」という意味になる。接続詞として使用する場合は、文脈から対比の意味を判断する必要がある。また、"yet"はしばしばperfect tense(現在完了形など)と共に使われる。
「〜する一方で」という意味で、2つの事柄が同時に存在し、対比または対照的な関係にあることを示す接続詞。時間的な意味合い(「〜する間」)も持つ。 【ニュアンスの違い】"but"が直接的な対比を示すのに対し、"while"は2つの事柄が並行して存在し、互いに影響を与え合うようなニュアンスを示す。しばしば、状況や行動の背景を説明する際に用いられる。 【混同しやすい点】"While"は時間的な意味と対比的な意味の両方を持つため、文脈によって意味を判断する必要がある。また、"while"は従属節を導くため、文構造が異なる。
- nevertheless / nonetheless
"それにもかかわらず"という意味の副詞。"however"よりもさらにフォーマルで、書き言葉でよく使用される。前述の内容を認めつつ、それにも関わらず異なる結論や行動を示す。 【ニュアンスの違い】"but"よりも強い対比や反対の意思を示す。議論や論文などで、論理的な一貫性を保ちつつ、異なる視点を提示したい場合に適している。感情的なニュアンスはほとんどない。 【混同しやすい点】"Nevertheless/nonetheless"は接続詞ではないため、文と文を直接つなぐことはできない。必ずコンマやセミコロンが必要。また、文頭に置く場合は、前文全体の内容を受けて、それを否定するようなニュアンスになる。
派生語
- buttress
『支える』という意味の動詞、または『控え壁』という意味の名詞。古フランス語の『bouter(突き当てる)』に由来し、『but』の語源と関連する。比喩的に意見や主張を『支える』という意味でも用いられ、論文や議論などで使われる。
『反論する』という意味の動詞。接頭辞『re-(反対)』と『but』の語源が組み合わさり、『押し返す』イメージを持つ。主に議論や法廷などで相手の主張を否定する際に用いられ、フォーマルな場面で使用される。
- abut
『隣接する』という意味の動詞。接頭辞『a-(〜へ)』と『but』の語源が組み合わさり、『〜に接して終わる』というイメージ。『but』が境界を示す意味合いを持つことから派生。地理的な記述や法律文書などで見られる。
反意語
『〜と〜』という意味の接続詞。『but』が対比・対立を示すのに対し、『and』は並列・追加を示す。日常会話から学術論文まで、あらゆる場面で頻繁に使用され、『but』の最も一般的な対義語と言える。
『だから』という意味の接続詞。『but』が予期せぬ結果や反対の事柄を導くのに対し、『so』は順当な結果や原因と結果のつながりを示す。日常会話やビジネスシーンで理由を説明する際によく用いられる。
『それゆえに』という意味の副詞。よりフォーマルな文脈で『so』と同様に原因と結果の関係を示す。『but』が示す対比とは対照的に、論理的な結論を導く際に用いられ、学術論文や公式文書でよく見られる。
語源
"but"は、古英語の"butan"(外に)に由来します。これは"be"(〜によって)+ "utan"(外に)が組み合わさったもので、元々は「〜を除いて」「〜の外側に」という意味合いを持っていました。この「外に」という概念が、「〜を除いて」という除外の意味合いに発展し、さらに「しかし」という対比を表す意味へと変化していきました。例えるなら、あるグループの「外」にいる、つまり「仲間ではない」存在が、「しかし」という逆接のニュアンスを生み出したようなものです。現代英語では、この「〜を除いて」という意味合いは、"except"や"unless"といった単語に引き継がれていますが、"but"は主に逆接の接続詞として、その重要な役割を果たし続けています。
暗記法
一見平凡な「but」の裏には、西洋の個人主義と合理主義が潜む。騎士道物語では、義務と愛の間で葛藤する騎士の苦悩を象徴し、シェイクスピア劇では、運命の皮肉を際立たせる。近代科学では、仮説と反証を繋ぎ、知的好奇心を刺激する。現代では、婉曲表現やユーモアとして、人間関係を円滑にする。「but」は単なる接続詞を超え、文化と歴史が織りなす、奥深いコミュニケーションの道具なのだ。
混同しやすい単語
『but』と発音が非常に似ており、特に語尾の 't' の音が弱い場合に聞き分けが難しい。意味は『お尻』や『(タバコの)吸い殻』などであり、文脈によっては非常に紛らわしい。品詞は名詞または動詞。カジュアルな表現なので注意が必要。
『but』とはスペルが大きく異なるが、過去形・過去分詞でよく使われるため目にする機会が多い。発音は /bɔːt/ で、日本語の『ボート』に近い。意味は『買う』の過去形・過去分詞であり、文脈を理解していれば誤解は少ない。ただし、発音とスペルのギャップに注意。
スペルは似ているが、'oo' の部分が長母音 /uː/ で発音されるため、『ブート』に近い音になる。意味は『ブーツ』であり、靴の種類を指す。スペルミスに注意し、発音の違いを意識することが重要。
母音字が異なるため、発音は /boʊt/ で『ボート』に近い音になる。意味は『ボート、船』であり、名詞として使用される。スペルと発音の関連性を意識することで、混同を避けることができる。
意味も品詞も異なるが、疑問詞として頻繁に使用されるため、文脈によっては混乱を招く可能性がある。発音は /wʌt/ で、『ワット』に近い。スペルと発音の違いを意識し、文脈から意味を判断することが重要。
スペルが一部共通しているため、特に初心者は混同しやすい。発音は /pʊt/ で、『プット』に近い。意味は『置く』であり、動詞として使用される。過去形も put のため、時制の判断に注意が必要。
誤用例
日本語では「〜だけど」を多用し、複数の理由を並列的に「but」で繋げがちですが、英語では同じ文中で「but」を繰り返すと冗長に聞こえます。英語の接続詞は、文の構造を明確にする役割が強く、ここでは『忙しい』と『お金がない』という2つの理由を『and』で繋げる方が自然です。日本語の「〜だけど」は、相手への配慮や婉曲表現として用いられることもありますが、英語の『but』は対比・反論のニュアンスが強いため、多用するとぶっきらぼうな印象を与える可能性があります。
前の例と同様に、『but』の連続使用は避けましょう。特に、文が長くなる場合は、セミコロン(;)と『however』のような接続副詞を使うことで、文の流れをスムーズにし、より洗練された印象を与えられます。日本語では、相手の感情や状況を推し量る際に「〜だけど、〜だと思う」という表現をよく使いますが、英語では接続詞を適切に使い分けることで、より論理的で客観的な表現を心がけることが大切です。また、英語では感情をストレートに表現することが多いため、婉曲表現を多用すると、かえって不自然に聞こえることがあります。
申し出を断る際に、ストレートに『I don't want it』と言うと、失礼に聞こえることがあります。特に、相手が好意で申し出てくれた場合は、『I'm afraid I must decline』のように、婉曲的で丁寧な表現を使うのが適切です。日本語の「〜ですが、遠慮します」という表現に近いニュアンスで、相手への配慮を示すことができます。英語では、直接的な表現が好まれる一方で、状況や相手との関係性に応じて、丁寧な表現を使い分けることが重要です。ビジネスシーンやフォーマルな場面では、特に注意が必要です。
文化的背景
「but」は、一見すると単純な接続詞ですが、その背後には西洋社会における個人主義と合理主義の微妙なせめぎ合いが潜んでいます。それは、予期せぬ事態や反論を許容しつつも、最終的には主張を貫徹しようとする、したたかな交渉術の表れとも言えるでしょう。
中世ヨーロッパの騎士道物語において、「but」はしばしば名誉と義務の衝突をドラマチックに演出する役割を担いました。例えば、忠誠を誓った領主への義務と、愛する女性を守る義務の間で板挟みになった騎士が、「私は領主に忠誠を誓っている。*だが*、彼女を見捨てることはできない」と葛藤する場面です。この「but」は、単なる対比ではなく、騎士の内面の葛藤、そして絶対的な価値観が存在しない複雑な状況を象徴しています。シェイクスピア劇においても、「but」は登場人物の心情の揺れ動きや、運命の皮肉な展開を際立たせるために多用されました。ハムレットの有名な独白「To be, or not to be, that is the question: Whether 'tis nobler in the mind to suffer...*But* that the dread of something after death...」における「but」は、死への恐怖が自殺を思いとどまらせる、人間の矛盾した心理を見事に表現しています。
近代に入ると、「but」は科学的な議論や合理的な思考において、重要な役割を果たすようになります。仮説を提示し、反証を検討し、修正を加えるというプロセスにおいて、「but」は論理の展開を導き、より洗練された結論へと導くための道標となるのです。例えば、「この実験結果は仮説を支持している。*しかし*、いくつかの例外的なデータが存在する」というように、「but」は現状に満足せず、更なる探求を促す原動力となります。これは、西洋文化における知的好奇心と批判精神の表れと言えるでしょう。
現代社会においては、「but」はより多様な意味合いを持つようになり、婉曲表現や皮肉、ユーモアなど、様々なコミュニケーション戦略において用いられます。「I like your idea, *but*...」というように、相手の意見を尊重しつつ、自分の意見を述べたい場合に用いられることもあります。また、「He's a good guy, *but*...」というように、相手の良い点を認めつつ、欠点や問題点を指摘する場合にも用いられます。このように、「but」は単なる接続詞ではなく、相手との関係性や状況を考慮しながら、微妙なニュアンスを伝えるための重要なツールとなっているのです。この言葉を使いこなすことは、西洋的なコミュニケーションスキルを向上させる上で不可欠であると言えるでしょう。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、語彙問題。ライティングでの使用も評価対象。
- 頻度と級・パート: 準1級以上で頻出。2級でも長文読解で登場。
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場。フォーマルな文章からカジュアルな会話まで。
- 学習者への注意点・アドバイス: 接続詞としての意味(しかし、けれども)だけでなく、前置詞としての意味(~を除いて)も理解しておく。類似の接続詞(however, although)との使い分けも重要。
- 出題形式: Part 5 (短文穴埋め)、Part 6 (長文穴埋め)、Part 7 (長文読解)。
- 頻度と級・パート: 頻出。特にPart 5, 6で接続詞の選択肢としてよく見られる。
- 文脈・例題の特徴: ビジネス関連の文章で頻繁に使用される。契約書、報告書、メールなど。
- 学習者への注意点・アドバイス: 前後の文脈から論理的な関係を把握することが重要。逆接の接続詞としての意味を確実に理解し、同義語(however, nevertheless)との違いを把握する。
- 出題形式: リーディングセクションで頻出。ライティングセクションでの使用も評価対象。
- 頻度と級・パート: アカデミックな文章で頻繁に登場。
- 文脈・例題の特徴: 学術的なトピック(科学、歴史、社会学など)で使われることが多い。論理的な展開を示す際に重要。
- 学習者への注意点・アドバイス: 複雑な文章構造の中で、butがどの部分を逆接しているかを正確に把握することが重要。パラフレーズの選択肢を選ぶ問題では、butのニュアンスを理解しているかが問われる。
- 出題形式: 長文読解、文法問題(空欄補充、並べ替え)。
- 頻度と級・パート: 頻出。特に難関大学の長文読解でよく見られる。
- 文脈・例題の特徴: 幅広いトピックで登場。評論、物語、説明文など。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈におけるbutの役割(逆接、対比)を理解することが重要。butを含む文全体の構造を把握し、筆者の主張を正確に読み取る必要がある。他の接続詞(and, or)との違いも明確にしておく。