balance of power
勢力均衡
国家間や組織間の力が拮抗し、安定した状態を保っていること。一方が突出しないように、相互に牽制しあう状況を指す。外交、政治、軍事などの文脈で用いられる。
The old balance of power in Europe was broken, leading to a big war.
ヨーロッパの古い勢力均衡が崩れ、大きな戦争につながりました。
※ この例文は、歴史の教科書やニュースでよく聞くような、国際的な力関係の変化を描写しています。古い安定した状態が崩れ、それが大きな出来事(この場合は戦争)を引き起こす、という典型的な使われ方です。「balance of power」が「was broken(壊された)」という受動態で使われている点も注目です。
Keeping a good balance of power is important for our team to work well together.
良い勢力均衡を保つことは、私たちのチームがうまく協力するために重要です。
※ この例文は、会社やスポーツチーム、友人グループなど、身近な集団の中での力関係をイメージさせます。誰か一人が強すぎたり弱すぎたりせず、みんなが協力して目標を達成するために「勢力均衡を保つこと(Keeping a good balance of power)」が大切だというメッセージです。普段の会話でも使えそうな、前向きなシチュエーションですね。
In the game, the new character changed the balance of power, making old strategies useless.
そのゲームでは、新しいキャラクターが勢力均衡を変え、古い戦略を役に立たなくしました。
※ これは、対戦型のゲームやスポーツなどで、新しい要素(この場合はキャラクター)が登場したことで、それまでの優劣関係や戦略が大きく変わってしまう状況を描いています。「balance of power」は、このように競争のある場面で「力の釣り合い」という意味で使われることも多いです。「making old strategies useless」は「古い戦略を役に立たなくする」という意味で、結果を表す表現です。
力の均衡
複数の要素や要因が互いに影響し合い、全体として安定している状態。経済、生態系、個人の心理状態など、幅広い分野で使われる。
In the world, countries try to maintain the balance of power to keep peace.
世界では、国々は平和を保つために力の均衡を維持しようとします。
※ この例文は、国際関係における「力の均衡」という、最も典型的で重要な使い方を示しています。それぞれの国が突出した力を持たないようにすることで、争いを避け、平和を保とうとする様子が目に浮かびます。「maintain the balance of power」は「力の均衡を保つ」という、非常によく使われるフレーズです。
When the new leader arrived, I felt the balance of power in our team greatly shifted.
新しいリーダーが来たとき、私たちのチーム内の力の均衡が大きく変わったのを感じました。
※ この例文は、会社やチーム、友人関係など、身近なグループ内の人間関係や影響力の変化に「balance of power」が使われる状況を描写しています。新しい人物の登場で、それまでの力関係が変わり、雰囲気が一変するような感覚が伝わります。「shifted」は「(位置や状態が)移動する、変わる」という意味で、力の均衡が変化する様子を自然に表現できます。
In chess, good players always consider the balance of power on the board.
チェスでは、良いプレイヤーは常に盤上の力の均衡を考えます。
※ この例文は、チェスのような戦略的なゲームやスポーツにおいて、「balance of power」がどのように使われるかを示しています。盤上の駒の配置を見て、どちらが有利か、どのように動かせば優位に立てるかを戦略的に考える様子がイメージできます。「consider」は「~を考慮する、考える」という意味で、戦略を練る状況でよく使われる動詞です。
コロケーション
勢力均衡を変化させる、パワーバランスを変動させる
※ この表現は、政治、経済、あるいは人間関係など、様々な分野で、ある勢力やグループの影響力が相対的に増減し、それによって全体の力関係が変わる状況を表します。例えば、新技術の登場によって市場における企業の勢力図が塗り替えられる場合や、選挙の結果によって議会の勢力バランスが変化する場合などに使われます。単に『バランスを変える』だけでなく、その変化がもたらす影響や、変化の主体(誰が、何がバランスを変えたのか)に注目することが重要です。ビジネスや政治のニュースで頻繁に見られます。
勢力均衡を維持する、パワーバランスを保つ
※ 現状の勢力関係を維持し、特定の勢力が過度に優位にならないように努めることを意味します。国際政治の文脈では、同盟関係の構築や軍事力の均衡などが、この目的のために行われます。個人レベルでも、人間関係において一方的な負担や優位性が生じないように、互いの意見や立場を尊重し、バランスを取ろうとすることを指します。外交交渉や紛争解決の場面でよく用いられ、安定と平和を重視するニュアンスが含まれます。
勢力均衡を崩す、パワーバランスを乱す
※ 現状の勢力関係を覆し、不安定な状態を作り出すことを意味します。これは、意図的な行動によって引き起こされることもあれば、予期せぬ出来事(例えば、自然災害や技術革新)によってもたらされることもあります。国際関係においては、ある国の軍事的な台頭や、新たな同盟の結成などが、地域の勢力均衡を崩す要因となることがあります。ビジネスシーンでは、新規参入企業の革新的な戦略が、既存の市場のパワーバランスを覆すことがあります。しばしば、混乱や競争激化といったネガティブな結果を伴うニュアンスが含まれます。
微妙な勢力均衡、危ういパワーバランス
※ 現状の勢力関係が不安定で、わずかな変化で容易に崩れてしまうような状態を表します。国際政治においては、複数の国が互いに牽制し合い、均衡を保っている状態がこれに該当します。ビジネスシーンでは、複数の企業が拮抗し、わずかな優位性を争っている状況を表すことがあります。この表現は、常に注意を払い、慎重な行動が求められる状況を示唆します。少しフォーマルな場面や、危機感を表したい場合に適しています。
地域的な勢力均衡
※ 特定の地域(例えば、東アジア、中東など)における国々の勢力関係を指します。この地域における各国の軍事力、経済力、外交力などが相互に影響し合い、全体のバランスを形成します。特定の国が突出した力を持つことを防ぎ、地域の安定を維持することが重要な課題となります。国際政治学や地政学の議論で頻繁に用いられ、ニュースや専門的な分析記事でよく見られます。地域ごとの特性や歴史的背景を考慮する必要があるため、深い知識が求められます。
世界的な勢力均衡
※ 世界全体における主要な国々や勢力の力関係を指します。冷戦時代のアメリカとソ連のような超大国間の対立や、現代におけるアメリカ、中国、ロシアなどの大国間の関係が、このバランスに影響を与えます。経済、軍事、技術、文化など、多様な要素が絡み合い、複雑な力学を形成します。国際政治の大きな流れを理解するために不可欠な概念であり、グローバルな視点を持つことが重要です。新聞やニュースで頻繁に用いられます。
勢力均衡を回復する、パワーバランスを取り戻す
※ 一度崩れた勢力均衡を、元の安定した状態に戻すことを意味します。これは、紛争や危機の後、国際的な協力や外交努力によって、地域の安定を取り戻そうとする場合に用いられます。ビジネスシーンでは、競争激化や市場の変化によって失われた企業の競争力を回復させることを指すことがあります。回復のためには、積極的な介入や戦略的な行動が必要となることが多く、時間と資源を要するプロセスとなる場合があります。政治や経済の分野でよく使われます。
使用シーン
国際関係論、政治学、歴史学などの分野で頻繁に使用される。国家間の勢力均衡を分析する論文や、国際政治史の講義などで、「ヨーロッパの勢力均衡が崩れたことが、第一次世界大戦の一因となった」のように、重要な概念として議論される。
企業間の競争状況や市場シェアの変化を分析する際に使われる。例えば、「A社とB社の勢力均衡が崩れ、A社が市場をリードし始めた」のように、業界レポートや経営戦略会議で用いられることがある。また、M&Aによって業界の勢力図が変わる状況を説明する際にも使用される。
ニュース番組やドキュメンタリーで、国際情勢や政治に関する報道で使われることがある。「米中間の勢力均衡が変化している」といった形で、専門家が解説する際に用いられることが多い。日常会話で使うことは稀だが、政治や国際関係に関心のある人が、議論の中で使う可能性はある。
関連語
類義語
釣り合い、均衡、平衡状態を意味する。物理学、化学、経済学、心理学など、様々な分野で使われる。安定した状態を指すことが多い。 【ニュアンスの違い】"balance of power" が勢力間の動的な均衡を指すのに対し、"equilibrium" はより静的で安定した状態を表す。また、"equilibrium" は人間関係や個人の内面的なバランスにも用いられる。 【混同しやすい点】"equilibrium" は可算名詞としても不可算名詞としても使われるが、具体的な均衡状態を指す場合は可算、抽象的な概念を指す場合は不可算となることが多い。政治的な文脈で使用される頻度は "balance of power" より低い。
同等、類似、対等、等価性を意味する。特に数量、地位、価値などが同等であることを強調する。数学、物理学、ビジネス、政治など、様々な分野で使用される。 【ニュアンスの違い】"balance of power" が勢力の均衡状態を指すのに対し、"parity" は二者間の対等な関係や状態を強調する。勢力争いというよりは、権利や機会の平等に焦点が当てられる。 【混同しやすい点】"parity" はしばしば「パリティ」とカタカナで表記されるため、英語の単語として認識しにくい場合がある。また、政治的な文脈では、特定の集団(女性やマイノリティなど)の代表者が人口比率と同等になることを指す場合もある。
- counterbalance
相殺する力、対抗力、均衡させるものを意味する。力、影響力、効果などを打ち消し合う際に用いられる。主に政治、経済、物理学の分野で使用される。 【ニュアンスの違い】"balance of power" が複数の勢力間の均衡状態を指すのに対し、"counterbalance" は特定の力に対抗する別の力を指す。特定の勢力の優位性を防ぐために用いられることが多い。 【混同しやすい点】"counterbalance" は名詞としても動詞としても使用される。動詞として使用する場合、「~を相殺する」という意味になる。名詞として使用する場合は、通常、具体的な対象物を指すのではなく、抽象的な概念を指す。
対称性、均衡、調和を意味する。数学、物理学、美術、建築など、様々な分野で使用される。左右対称や上下対称など、視覚的な均衡状態を指すことが多い。 【ニュアンスの違い】"balance of power" が勢力間の動的な均衡を指すのに対し、"symmetry" はより静的で安定した、視覚的な均衡状態を表す。政治的な文脈で使用されることは少ない。 【混同しやすい点】"symmetry" は主に視覚的な均衡状態を指すため、政治的な勢力争いには直接的には用いられない。ただし、比喩的に、政治的な理想状態や調和のとれた社会構造を表現する際に使用されることがある。
安定、安定性、不動を意味する。社会、経済、政治、物理学など、様々な分野で使用される。変化や変動が少なく、安定した状態を指す。 【ニュアンスの違い】"balance of power" が複数の勢力間の均衡状態を指すのに対し、"stability" は全体としての安定性を指す。均衡状態が必ずしも安定を意味するとは限らない。 【混同しやすい点】"stability" は抽象的な概念であり、具体的な対象物を指すことは少ない。政治的な文脈では、政権の安定や社会の安定などを指すことが多い。
- check and balance
抑制と均衡、牽制と均衡を意味する。特に政治学において、権力の集中を防ぐために、複数の機関が互いを監視し、制限し合うシステムを指す。三権分立などがその例。 【ニュアンスの違い】"balance of power" が国家間の勢力均衡を指すのに対し、"check and balance" は国内の権力分立を指す。目的はどちらも権力の集中を防ぐことだが、対象とする範囲が異なる。 【混同しやすい点】"check and balance" は通常、政治学の専門用語として使用されるため、日常会話ではあまり用いられない。また、複数形 (checks and balances) で用いられることが多い。
派生語
『バランスの取れた』という意味の形容詞。『balance』に過去分詞を表す『-ed』が付加され、状態や性質を表す。日常会話からビジネスシーン、学術論文まで幅広く使用され、物事の調和や安定を表現する際に頻繁に用いられる。
- balancing
『バランスを取ること』を意味する動名詞または現在分詞。『balance』に進行形を表す『-ing』が付加され、均衡を保つ行為や過程を示す。政策、会計、人間関係など、様々な分野で調整や均衡を試みる状況を表す際に用いられる。
接頭辞『im-(否定)』がつき、『不均衡』を意味する名詞。『balance』の前に『im-』が付くことで、均衡が崩れた状態や不均衡な状態を表す。経済、環境、健康など、様々な分野で不均衡な状態を指摘する際に用いられる。学術的な文脈や報道などで頻繁に見られる。
反意語
『支配』や『優位』を意味する名詞。『balance of power(勢力均衡)』が複数の勢力間の均衡を指すのに対し、『dominance』は特定の勢力が他を圧倒する状態を表す。政治、経済、スポーツなど、様々な分野で特定の勢力が他を圧倒する状況を指す。
『覇権』を意味する名詞。『balance of power』が勢力間の牽制と均衡を重視するのに対し、『hegemony』は特定の国家や勢力が他を圧倒し、支配的な影響力を持つ状態を指す。国際政治や歴史学において、特定の国家が他国を支配する状況を指す際に用いられる。より政治的・学術的な文脈で使用される。
- unipolarity
『単極構造』を意味する名詞。『balance of power』が多極的な勢力均衡を前提とするのに対し、『unipolarity』は単一の超大国が圧倒的な力を持つ状態を指す。国際政治学において、冷戦後のアメリカのように、単一の超大国が世界を支配する状況を指す際に用いられる。学術的な文脈でよく用いられる。
語源
「balance of power」は、それぞれの単語が持つ意味の組み合わせから理解できます。「balance」は、ラテン語の「bilanx」(二つの皿を持つ天秤)に由来し、これは「bi-」(二つの)+「lanx」(皿)から構成されています。元々は文字通り天秤を意味し、そこから「均衡」「釣り合い」といった意味に発展しました。「power」は、ラテン語の「potere」(できる、能力がある)に由来し、「力」「権力」「能力」といった意味を持ちます。したがって、「balance of power」は、複数の主体(国家など)の間で力が均衡している状態、つまり、ある主体が突出して強大にならないように、互いに牽制し合う状態を指します。これは、天秤が釣り合っている状態を、国家間の力関係にたとえたものと考えると理解しやすいでしょう。
暗記法
「balance of power(勢力均衡)」は、国々のパワーバランスを保ち、平和を維持しようとする考え方です。17世紀以降、ヨーロッパで特に重視され、各国は同盟を組んで特定国の突出を防ぎました。しかし、これは常に平和をもたらすとは限らず、第一次世界大戦のような悲劇も生みました。冷戦時代は「恐怖の均衡」という言葉も生まれました。現代では、グローバル化で状況は複雑化していますが、勢力均衡の考え方は、今も国際政治を理解する上で重要な視点を提供してくれます。
混同しやすい単語
balance と語感が似ており、特に語尾の -ance と -ot が曖昧母音化すると区別が難しくなる。意味は『投票』であり、政治的な文脈で登場する点も共通するため、意味の混同にも注意が必要。ballot は、小さな球(ball)を使って投票していたことに由来する。
balance の形容詞形であり、意味は関連するものの品詞が異なるため注意が必要。『均衡の取れた』という意味で、例えば『balanced diet(バランスの取れた食事)』のように使われる。発音も balance に -d が付くだけなので、文脈で判断する必要がある。
balance に否定の接頭辞 im- が付いた単語。『不均衡』という意味で、balance of power の文脈では対義語として登場する可能性がある。接頭辞 im- が付くことで発音が変化するため、注意が必要。接頭辞 im- は、続く語の最初の音が p, b, m の場合に用いられる(例:impossible, imbalance, immoral)。
balance とスペルが一部似ており、特に最初の 'bal-' の部分が視覚的に混同しやすい。意味は『強化する、支える』であり、政治的な文脈で『勢力を強化する』といった意味で使われる場合があるため、文脈によっては意味の誤認も起こりうる。古英語の「枕」を意味する言葉に由来する。
balance と発音が類似しており、特に語尾の -ance と -ence が曖昧母音化すると区別が難しくなる。化学用語で『原子価』という意味を持つ。政治学で使われる balance of power とは分野が異なるため、通常は文脈から区別できる。ただし、比喩的に『影響力』といった意味で使われる場合もあるため注意が必要。
balance とスペルの一部(-ace)が共通しており、視覚的に混同しやすい。意味は『宮殿』であり、政治的な権力の象徴として登場する可能性がある。発音も balance とは異なるため、注意が必要。語源はラテン語の Palatium(パラティヌス)で、ローマの七つの丘の一つであるパラティヌスの丘に皇帝の宮殿が建てられたことに由来する。
誤用例
『balance of power』は、国際政治や組織構造における勢力均衡を指す専門用語であり、家族内のような個人的な関係性における力関係を説明するのには不適切です。代わりに、より一般的な『dynamic』という言葉を使う方が自然です。日本人が『パワーバランス』という言葉を安易に直訳してしまうと、このような誤用につながりやすいです。
『balance of power』は名詞句であり、動詞として使用することはできません。勢力均衡を『確立する』という意図を表現するなら、『establish a balance of power』のように、動詞を伴う表現を使う必要があります。また、より自然な英語としては、動詞の『rebalance』を使うこともできます。日本人が『バランスを取る』という日本語に引きずられて、安易に動詞として使ってしまうケースが見られます。
『gentle』は『穏やかな』という意味で、人や行動を形容するのに適しています。勢力均衡は、しばしば不安定で崩れやすい状態を指すため、『delicate(繊細な、微妙な)』という形容詞を使う方が適切です。日本語の『バランス感覚』という言葉が持つ良いイメージに引きずられて、『gentle』のような肯定的な意味合いの言葉を選んでしまう可能性があります。英語では、勢力均衡は常に注意深く扱われるべき、もろい概念として認識されています。
文化的背景
「balance of power(勢力均衡)」は、国家間の力関係を天秤に例え、安定を求める政治思想の中核概念です。それは単なる軍事力だけでなく、経済力、外交力、文化的な影響力など、多岐にわたる要素が複雑に絡み合った状態を指し示します。この概念は、ヨーロッパの歴史において、特に顕著な役割を果たしてきました。
17世紀以降、ヨーロッパ諸国は、特定の国家が突出して強大化することを防ぎ、大陸全体の平和を維持するために、勢力均衡を外交政策の基本としました。これは、三十年戦争後のウェストファリア条約(1648年)によって確立された主権国家体制の原則と深く結びついています。各国は、同盟関係を巧みに利用し、ある国が強大化すれば、他の国々が結束して対抗するというパターンを繰り返しました。この結果、ヨーロッパは、絶え間ない戦争と外交交渉の舞台となり、「balance of power」という言葉は、政治家や外交官の日常的な語彙となりました。たとえば、ナポレオン戦争後、ウィーン体制(1815年)は、フランスの再台頭を警戒し、ヨーロッパの勢力均衡を再構築することを目的としました。この体制は、その後数十年にわたってヨーロッパの平和を維持する役割を果たしましたが、同時に、民族自決の動きを抑圧し、新たな対立の火種を抱えることにもなりました。
「balance of power」の概念は、国際政治学においても重要な位置を占めています。現実主義の立場からは、国家は自己の安全保障を最優先に追求し、勢力均衡はそのための合理的な戦略であるとされます。しかし、勢力均衡は、必ずしも平和をもたらすとは限りません。むしろ、軍拡競争や代理戦争を引き起こす可能性もあります。第一次世界大戦は、ヨーロッパにおける勢力均衡の崩壊が、破滅的な結果をもたらした典型的な例と言えるでしょう。冷戦時代には、アメリカとソ連という二つの超大国が、核兵器を背景に、世界的な勢力均衡を維持しようとしました。この時期、「balance of terror(恐怖の均衡)」という言葉が生まれ、核戦争の脅威が、かろうじて平和を保っている状態を表現しました。
現代においては、グローバル化の進展や新たなパワーの台頭により、「balance of power」の概念は、より複雑な様相を呈しています。アメリカ一極支配の時代は終わりを告げ、中国、ロシア、インドなどの国々が、国際社会における影響力を増しています。また、テロリズムや気候変動など、国家の枠組みを超えた新たな脅威も出現しています。このような状況下で、どのようにして安定した国際秩序を構築していくのか。「balance of power」の概念は、依然として重要な示唆を与えてくれますが、同時に、その限界も認識する必要があります。それは、単なる力の均衡ではなく、相互依存関係や共通の価値観に基づいた、より包括的な平和構築の必要性を教えてくれるのです。
試験傾向
- 出題形式: 長文読解、語彙問題
- 頻度と級・パート: 準1級以上でまれに出題。1級でやや頻出。
- 文脈・例題の特徴: 政治、国際関係、歴史などのアカデミックな文脈で登場。
- 学習者への注意点・アドバイス: 政治・外交関連の語彙と合わせて覚える。関連語句(stability, equilibriumなど)との区別を意識。
- 出題形式: 長文読解
- 頻度と級・パート: Part 7でまれに出題。
- 文脈・例題の特徴: 国際ビジネス、経済に関する記事で登場する可能性あり。しかし、頻度は低い。
- 学習者への注意点・アドバイス: TOEICでは政治的な話題は少ないため、優先度は低い。もし出題されても文脈から推測可能。
- 出題形式: 長文読解
- 頻度と級・パート: リーディングセクションで頻出。
- 文脈・例題の特徴: 政治学、社会学、歴史学などのアカデミックな文脈で登場。
- 学習者への注意点・アドバイス: アカデミックな文章に慣れることが重要。類義語(equilibrium, parity)とのニュアンスの違いを理解する。
- 出題形式: 長文読解
- 頻度と級・パート: 難関大学で出題される可能性あり。
- 文脈・例題の特徴: 政治、経済、歴史に関する論説文で登場。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈から意味を推測する練習が必要。政治・経済関連の背景知識があると有利。