ballad
第一音節にアクセントがあります。/æ/ は日本語の「ア」と「エ」の中間のような音で、口を大きく開けて発音します。第二音節の /ə/ は曖昧母音で、力を抜いて軽く「ア」と発音します。最後の /d/ は舌先を上前歯の裏につけて発音する有声子音です。
物語を歌う
物語性のある歌。特に恋愛や英雄譚などを、感情豊かに歌い上げるもの。古くから口承で伝えられてきたものや、それを模倣した詩や楽曲を指すことが多い。
My grandmother sang a beautiful ballad by the warm fireplace last night.
昨夜、祖母が暖かい暖炉のそばで美しいバラードを歌ってくれました。
※ この例文では、家族が集まる温かい場所で、おばあちゃんが昔の物語を歌で語り継いでいる情景が目に浮かびます。balladは、特に古い時代から伝わる「物語を歌った歌」という意味でよく使われます。ここでは「歌う(sang)+バラード(ballad)」という自然な組み合わせで使われていますね。
The famous singer performed a sad ballad about lost love at the concert.
その有名な歌手は、コンサートで失われた愛についての悲しいバラードを歌いました。
※ 現代の音楽シーンでも、ゆっくりとしたテンポで感情的な物語(特に恋愛の物語)を歌う曲をballadと呼びます。この例文では、コンサートという場所で、歌手が聴衆の心に響くような切ない物語の歌を歌っている様子が伝わってきます。「perform a ballad」も、ライブなどで歌を披露する際によく使われる表現です。
In the old movie, the hero hummed a ballad telling a sad story of war.
その古い映画の中で、主人公は戦争の悲しい物語を語るバラードを口ずさんでいました。
※ 映画のワンシーンで、登場人物が何かを思いながら歌を口ずさむ様子を描いています。balladは、歴史的な出来事や悲劇的な物語を伝える歌という意味でも使われます。ここでは、主人公が戦争の悲しい物語を語る歌を、心の中で味わうように口ずさんでいる情景が浮かびます。「hum a ballad」で「バラードを口ずさむ」という意味になります。
感傷的な歌
ゆっくりとしたテンポで、感情を込めて歌われる歌。失恋や別れなど、悲しい出来事をテーマにすることが多い。
She listened to a sad ballad, remembering her old days quietly.
彼女は悲しいバラードを聴き、静かに昔の日々を思い出していました。
※ この例文は、一人の女性が感傷的なバラードを聴きながら、過去を懐かしむ静かな夜の情景を描いています。「ballad」はしばしば「sad(悲しい)」や「melancholy(物悲しい)」といった感情と結びつきやすく、個人的な思い出や感情を呼び起こす音楽として典型的な使い方です。
A soft ballad was playing in the quiet coffee shop, making the atmosphere calm.
静かな喫茶店では優しいバラードが流れ、雰囲気を穏やかにしていました。
※ この例文は、カフェのような公共の場所で「ballad」がBGMとして流れている様子を描写しています。ゆったりとした「ballad」は、リラックスした空間や落ち着いた雰囲気を作るのにぴったりです。動詞 'play' と一緒に使われることが多いです。
His new song is a beautiful ballad that truly touches many hearts.
彼の新曲は、本当に多くの人の心を打つ美しいバラードです。
※ この例文では、「ballad」を「美しい」「感動的」といった形容詞で評価し、その曲が持つ感情的な影響を伝えています。音楽について語る際、「この曲はバラードだ」とジャンルを説明したり、その曲の特長を表現したりするのに典型的な文脈です。「touches many hearts」は「多くの人の心を打つ」という、感情を揺さぶる表現です。
コロケーション
バラードを歌う
※ 最も直接的なコロケーションの一つで、文字通りバラードを歌うことを意味します。しかし、単に『歌う』だけでなく、その歌に込められた感情や物語を伝えるニュアンスが含まれます。例えば、『彼女は失恋のバラードを歌った』のように、個人的な感情や経験を歌に託す場面で使われます。口語表現というよりは、音楽や文学的な文脈でよく見られます。
バラードを書く、創作する
※ 単に歌詞を書くだけでなく、物語性や感情が込められた詩や歌を作ることを意味します。作家の創造性や感情表現に焦点を当てた表現です。例えば、『彼は故郷を想うバラードを書いた』のように、特定のテーマや感情を表現する目的で使われます。創作活動に関する文脈で頻繁に使用されます。
悲しげなバラード、哀愁を帯びたバラード
※ 『plaintive』は『悲しげな』『哀愁を帯びた』という意味の形容詞で、バラードの持つ感情的な性質を強調します。失恋、別れ、死別など、悲しい出来事をテーマにしたバラードを指す際に用いられます。文学作品や音楽評論などでよく見られ、楽曲の雰囲気を伝えるのに役立ちます。
古くから伝わるバラード、古いバラード
※ 歴史的な背景を持つバラード、特に口承で伝えられてきた古い民謡などを指します。これらのバラードは、しばしば伝説や歴史的な出来事を題材にしており、文化的な遺産としての価値を持ちます。例えば、『その村には古代バラードが今も歌い継がれている』のように、歴史や文化遺産に関する文脈で使われます。
伝統的なバラード
※ 特定の文化や地域に根ざしたバラードを指します。形式、テーマ、歌い方などが伝統に則っていることが特徴です。フォークソングや民族音楽の文脈でよく使われ、その文化の歴史や価値観を反映しています。例えば、『アイルランドの伝統的なバラードは、移民の苦難を歌っている』のように、特定の文化のアイデンティティを表現する際に用いられます。
物語性のあるバラード
※ 物語を語ることを主眼としたバラード。歴史的な事件、伝説、個人的な体験などを物語形式で歌い上げます。登場人物、プロット、クライマックスなどの要素が含まれ、聴き手に物語を伝える役割を果たします。文学や音楽の分析において、楽曲の構造や内容を説明する際に使われます。
誰かの人生を歌ったバラード
※ 特定の人物の生涯や重要な出来事を歌い上げたバラードを指します。英雄的な行為、悲劇的な運命、あるいは平凡な人生の一場面などがテーマとなります。伝記的な要素を含み、その人物の功績や人間性を称える目的で創作されます。例えば、『マザー・テレサの人生を歌ったバラード』のように、人々の記憶に残る人物を題材にする際に用いられます。
使用シーン
文芸研究、音楽史、文化人類学などの分野で、特定の時代のバラッドの形式や内容、社会的背景などを分析する際に使われます。例えば、「この研究では、中世のバラッドにおける愛の表現と社会規範の関係について考察する」といった文脈で使用されます。
ビジネスシーンで「ballad」が直接使われることは稀ですが、音楽関連の事業(音楽配信、音楽制作、イベント企画など)において、楽曲のジャンルやターゲット層を説明する際に用いられることがあります。例えば、「このアーティストの新曲は、心に響くバラード調で、幅広い年齢層にアピールできるでしょう」というように使われます。
日常会話で「ballad」という言葉を使うことは少ないですが、音楽の話をする際に、特定の楽曲やアーティストのジャンルを表現する際に使われることがあります。例えば、「あのバンドの新曲、すごく良いバラードだよね」といった具合です。また、カラオケで歌う曲を選ぶ際に、「しっとりとしたバラードを歌いたい気分だな」のように使うこともあります。
関連語
類義語
歌全般を指す最も一般的な語。ポップ、ロック、クラシックなど、あらゆるジャンルの歌に使われる。日常会話で頻繁に使用される。 【ニュアンスの違い】『ballad』が物語性を持つ歌であるのに対し、『song』は歌詞とメロディーを持つ音楽作品全般を指すため、物語性は必須ではない。より広範な概念。 【混同しやすい点】『song』は可算名詞であり、具体的な歌を指す場合は複数形になる(例:favorite songs)。『ballad』も可算名詞だが、特定の形式を持つ歌を指す。
詩。感情や情景を言葉で表現した文学作品。朗読や暗唱を前提とする場合もある。文学、学術的な文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】『ballad』は歌われることを前提とした詩であり、音楽的な要素が不可欠。『poem』は必ずしも歌われることを前提としない。叙情詩、物語詩など様々な種類がある。 【混同しやすい点】『poem』は音楽を伴わない場合が多いが、『ballad』は音楽と一体である点が大きく異なる。『poem』は形式や韻律が多様だが、『ballad』は比較的定型的な形式を持つことが多い。
中世の物語詩、特にフランス起源の短い叙事詩を指す。文学史、音楽史の文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】『ballad』よりも古い形式の物語詩を指し、より洗練された貴族的な雰囲気を持つ。『ballad』は大衆的な要素も含む。 【混同しやすい点】『lay』は現代英語ではあまり一般的ではなく、文学史の専門用語に近い。『lie』(横たわる)の過去形・過去分詞形と同綴りなので混同しやすい。
- narrative song
物語を語る歌。フォークソング、カントリーミュージックなどで用いられる。音楽評論、学術的な文脈で使用される。 【ニュアンスの違い】『ballad』が伝統的な形式を持つことが多いのに対し、『narrative song』はより自由な形式で物語を語る歌を指す。『ballad』はしばしば悲劇的な内容を含むが、『narrative song』は内容を問わない。 【混同しやすい点】『narrative song』は物語性を持つ歌全般を指すため、『ballad』を含むより広い概念。『ballad』は特定の形式を持つ物語歌である。
- chant
単調なメロディーで歌われる歌、詠唱。宗教的な儀式、スポーツの応援などで用いられる。 【ニュアンスの違い】『ballad』が物語性や感情表現を重視するのに対し、『chant』は反復的なリズムとメロディーで一体感を高めることを目的とする。内容は単純で短いことが多い。 【混同しやすい点】『chant』は物語性を持たないことが多く、歌詞も短い。『ballad』は物語を伝えることを目的とするため、歌詞が長く複雑になる傾向がある。
- ditty
短い歌、小唄。気晴らしや軽い娯楽のために歌われる。日常会話や文学作品で用いられる。 【ニュアンスの違い】『ballad』が比較的長い物語歌であるのに対し、『ditty』は非常に短い歌を指す。内容は軽快でユーモラスなものが多い。 【混同しやすい点】『ditty』は深刻なテーマを扱わず、軽い内容の歌を指す。『ballad』は恋愛、英雄譚、悲劇など、重いテーマを扱うこともある。
派生語
- balladry
『バラッド(叙事歌)の作製・収集・研究』を意味する名詞。接尾辞『-ry』は、活動・技術・場所などを表し、ここではバラッドに関する活動全般を指す。文芸・音楽研究などの学術的な文脈で使用される。
- ballader
『バラッド(叙事歌)を作る人、歌う人』を意味する名詞。接尾辞『-er』は人を表す。文芸・音楽の分野で、特に歴史的な文脈で用いられる。
反意語
『散文』を意味する名詞。バラッドが韻律や物語性を持つ詩であるのに対し、proseは通常の文章形式を指す。文学作品の形式を議論する際に、明確な対比として用いられる。
- epic
『叙事詩』を意味する名詞。バラッドが短い物語を歌うのに対し、epicは英雄的な物語を語る長編の詩を指す。物語の規模や語り口において対照的である。
語源
「ballad(バラード)」は、古プロヴァンス語の「balada(踊りの歌)」に由来します。これはさらに、ラテン語の「ballare(踊る)」から派生しています。つまり、元々は踊りに合わせて歌われる歌、特に物語性のある歌を指していました。中世ヨーロッパにおいて、吟遊詩人たちが物語を歌いながら広めたことから、物語を伝える歌という意味合いが強まりました。日本語で例えるなら、盆踊りの際に歌われる歌や、物語性のある民謡に近いイメージです。踊りを伴う歌から、物語を歌う歌へと意味が変化した背景には、人々の生活様式や文化的な変遷が深く関わっていると言えるでしょう。
暗記法
バラッドは、吟遊詩人が語り継いだ物語歌。英雄譚や恋物語、社会風刺を織り交ぜ、文字を持たない人々の歴史教科書であり、娯楽だった。ロビン・フッドの伝説はバラッドで広まり、抑圧された民衆の希望に。アメリカではカウボーイの生活を、アイルランドやスコットランドでは故郷への愛を歌い、民族意識を高めた。形を変え現代に生きるバラッドは、人々の記憶、感情、文化を伝える媒体なのだ。
混同しやすい単語
発音が似ており、特にカタカナ英語で『バレエ』と言うため、balladと混同しやすい。balladが『バラード』という叙情的な歌であるのに対し、balletは舞台芸術である。綴りも似ているため、注意が必要。
balladとsaladは、語尾の音が似ているため、聞き間違いやすい。また、スペルも前半部分が似ているため、視覚的にも混同しやすい。balladが『バラード』であるのに対し、saladは『サラダ』という料理である。
balladとballotは、最初の'ball'の部分が共通しているため、スペルが似ていると感じやすい。balladが歌の一種であるのに対し、ballotは『投票』という意味の名詞である。発音も若干異なるため、注意が必要。
balladとbulletは、発音の強勢の位置が似ており、また、語尾の音が似ているため、聞き間違いやすい。balladが歌であるのに対し、bulletは『弾丸』という意味の名詞である。文脈から判断することが重要。
balladとbawledは、発音が類似しており、特に早口で話された場合や、音声品質が悪い場合に混同しやすい。bawledは『bawl(わめく)』の過去形であり、意味も品詞も異なる。balladは名詞であるのに対し、bawledは動詞である。
balladとbaldは、どちらも短い母音で始まり、語尾の子音で終わるため、発音が似ていると感じやすい。baldは『ハゲた』という意味の形容詞であり、ballad(バラード)とは意味が全く異なる。特に発音に注意する必要がある。
誤用例
『ballad』は物語性のある歌、特に歴史的な出来事や英雄譚を語る歌を指します。企業の財務報告のような、感情的な要素が薄い事柄を『ballad』として表現するのは不適切です。日本人が『物語』という言葉を比喩的に使うように、何かの顛末を『バラード』と表現してしまう可能性がありますが、英語の『ballad』は叙情性や物語性、音楽形式(歌)という要素が不可欠です。財務報告は『summary』や『report』と表現すべきです。
『ballad』は歌であり、口頭でのスピーチを指す言葉としては不適切です。政治家のスピーチが多くの約束を含むことを表現するなら、『litany(同じような内容の繰り返し)』がより適切です。日本人が『美辞麗句』を並べ立てる様子を『バラード』と表現しようとするかもしれませんが、英語では比喩として一般的ではありません。むしろ、詩的な表現を避け、具体的な表現を選ぶ方が適切です。
『ballad』は歌の形式を指すため、相手の発言に対して「それはバラードだ」と言うのは意味をなしません。相手の話を否定したり、信憑性がないと表現する際には、『That's nonsense.(ばかげている)』や『That's rubbish.(くだらない)』といった表現が適切です。日本人が『おとぎ話』を比喩的に使い、作り話や嘘を意味するように、『バラード』を同様のニュアンスで使ってしまう可能性がありますが、英語では通じません。
文化的背景
バラッド(ballad)は、物語を歌い伝える詩であり、特に口承文化において、歴史や伝説、庶民の感情を後世に伝える重要な役割を担ってきました。物語歌としてのバラッドは、単なる娯楽ではなく、共同体の記憶を形成し、価値観を共有するためのメディアだったのです。
中世ヨーロッパにおいて、バラッドは吟遊詩人(バード)によって広められました。彼らは村から村へと旅をしながら、英雄の武勇伝、悲恋物語、あるいは社会風刺などを歌い上げました。バラッドは文字を持たない人々にとって、歴史を学び、道徳を教えられ、娯楽を楽しむための貴重な手段でした。特に、ロビン・フッドのような伝説的な英雄譚は、バラッドを通して庶民の間に広まり、抑圧された人々にとっての希望の光となりました。バラッドは、社会の不公正を告発し、権力者を批判する手段としても機能し、民衆の不満を代弁する役割も担っていました。
バラッドは、その形式の柔軟性ゆえに、様々な文化的背景に適応してきました。アメリカでは、バラッドはカウボーイの生活や無法者の物語を歌い上げ、フロンティア精神を象徴する音楽となりました。また、アイルランドやスコットランドでは、故郷への愛や独立への願望を歌ったバラッドが多く存在し、民族意識を高める役割を果たしました。現代においても、バラッドはフォークソングやカントリーミュージックなどに影響を与え続けており、物語を歌うというその根本的な精神は、形を変えながらも生き続けています。
バラッドは、単なる歌の形式ではなく、人々の記憶、感情、そして文化を伝える媒体です。それは、歴史の証言者であり、社会の鏡であり、そして人々の心の声なのです。バラッドを理解することは、その背景にある文化や歴史、そして人々の感情を理解することに繋がります。それは、単語の意味を覚えるだけでなく、その言葉が持つ文化的深みを理解することなのです。
試験傾向
この単語は英検では出題頻度は低めです。文学的なテーマの長文読解で、背景知識として出てくる可能性はありますが、直接的な語彙問題としては稀です。
TOEICでは、'ballad' が直接問われることは非常に稀です。ビジネスシーンとは関連性が低いため、まず出題されないと考えて良いでしょう。
TOEFLでも、'ballad' が直接問われる可能性は低いですが、文学や音楽に関するテーマのリーディングセクションで、背景知識として言及されることがあります。ただし、語彙問題として出題されることは稀です。
大学受験でも、'ballad' が直接問われることは少ないでしょう。文学史や音楽史に関連するテーマで長文読解問題として出題される可能性はありますが、語彙力そのものを問う問題としてはあまり期待できません。文脈から意味を推測できるようにしておきましょう。