英単語学習ラボ

ethnography

/ɛθˈnɒɡrəfi/
名詞

民族誌

ある特定の民族・社会・文化集団の生活様式や慣習を、現地調査に基づいて記述・分析した記録や研究のこと。単なる記録ではなく、研究者の解釈や分析が含まれる点が重要。

The student read a fascinating ethnography about a small village in Africa.

その学生は、アフリカの小さな村についての魅力的な民族誌を読みました。

この例文は、学生が学術的な本として「民族誌」を読んでいる情景を描いています。民族誌が特定の地域や人々の生活を深く探求し、まとめた「本」として扱われる、最も典型的な使い方の一つです。

This ethnography clearly shows the daily life of the indigenous people.

この民族誌は、その先住民たちの日常生活をはっきりと示しています。

ここでは、民族誌が「何を描写しているか」に焦点を当てています。まるで写真や映像のように、ある文化の具体的な生活や習慣を鮮明に伝えている様子がわかります。「show」は「見せる、示す」という意味で、民族誌の内容を説明する際によく使われます。

Writing an ethnography takes a long time because you need to live with the people.

民族誌を書くには長い時間がかかります。なぜなら、その人々と一緒に暮らす必要があるからです。

この例文は、民族誌を作成する「行為」とその難しさを表しています。民族誌は、研究者が実際に現地で生活し、人々との交流を通じてデータを集める「フィールドワーク」を伴うことが多く、非常に時間と労力がかかる研究です。「Writing an ethnography」のように、動名詞(-ing形)を文の主語として使うと、「〜すること」という意味になります。

名詞

文化理解

ある集団の文化的特徴を深く理解しようとする活動や姿勢。単に知識として知るだけでなく、その文化の中で生きる人々の視点に立って理解しようと努めるニュアンスを含む。

She did an ethnography to understand life in that small village.

彼女はその小さな村の生活を理解するために、エスノグラフィーを行った。

この例文は、若い研究者が初めて訪れた村で、人々の生活に溶け込み、注意深く観察している情景を描いています。「ethnography」は「ある文化を深く理解するための研究」を指すため、「~を理解するためにエスノグラフィーを行う」という形は、この単語の最も典型的で自然な使い方の一つです。「do an ethnography」で「エスノグラフィーを行う」という意味になります。

Ethnography helps us deeply understand the daily life of a group.

エスノグラフィーは、ある集団の日常生活を深く理解するのに役立つ。

大学の講義で、教授がエスノグラフィーの重要性を学生に熱心に説明している場面を想像してみてください。この例文は、「ethnography」が「文化理解」のための手法として、その目的や効果を説明する際によく使われる表現です。学術的な説明や導入部分で非常に一般的です。「help + 人 + (to) 動詞の原形」で「~が…するのを助ける」という基本的な文型が使われています。

His new ethnography offered a new perspective on ancient tribes.

彼の新しいエスノグラフィーは、古代の部族についての新しい視点を提供した。

歴史博物館の書架に並んだ、まだ新しい研究書を想像してください。この例文は、「ethnography」が「文化理解の成果物(報告書や論文)」を指すことも多い点を示しています。研究者が自分の成果が多くの人々に読まれ、古代文化への理解を深めるきっかけになっていることを誇らしく感じている場面に合います。新しい発見や知見を共有する際に使われる、自然で典型的な文脈です。「offer A on B」で「BについてAを提供する」という意味になります。

コロケーション

conduct ethnography

民族誌調査を行う

「conduct」は「(調査・実験などを)行う」という意味で、ethnographyと組み合わせることで、学術的な調査研究を実施するニュアンスが強まります。単に「do ethnography」と言うよりも、よりフォーマルで専門的な印象を与えます。社会学、人類学、文化研究などの分野で、研究者がフィールドワークを行い、データ収集・分析するプロセス全体を指すことが多いです。論文や研究発表など、アカデミックな文脈で頻繁に使われます。

ethnography reveals

民族誌調査によって明らかになる

「reveal」は「明らかにする、暴露する」という意味で、ethnographyの結果が何らかの洞察や事実を浮かび上がらせることを強調します。調査によって隠されていた文化的な側面や、人々の行動の背後にある理由が明らかになるというニュアンスを含みます。「Ethnography reveals the intricate social dynamics of the community.(民族誌調査は、そのコミュニティの複雑な社会力学を明らかにする)」のように使われます。研究報告書や論文でよく見られる表現です。

ethnographic study

民族誌研究

最も一般的なコロケーションの一つで、「ethnographic」が形容詞として「study」を修飾します。特定の文化、社会集団、組織などを対象とした詳細な研究を指します。研究の目的、方法論、結果など、研究活動全体を包括的に示す言葉として使われます。学術論文、研究プロジェクト、報告書などで頻繁に見られます。

ethnographic data

民族誌データ

民族誌調査を通じて収集されたデータを指します。インタビュー記録、観察ノート、写真、ビデオ、文書など、文化や社会に関するあらゆる種類の情報が含まれます。この表現は、データの種類や収集方法を特定する際に用いられます。研究者が論文や報告書でデータについて言及する際に不可欠な表現です。

ethnographic methods

民族誌的手法

民族誌調査で使用される特定の手法やアプローチを指します。参与観察、インタビュー、文書分析などが含まれます。研究者が研究デザインやデータ収集方法について議論する際に使用されます。研究論文や方法論に関する議論で頻繁に用いられます。

digital ethnography

デジタル民族誌

オンラインコミュニティやデジタル文化を研究するための民族誌的手法です。インターネット、ソーシャルメディア、オンラインゲームなど、デジタル環境における人々の行動や相互作用を調査します。近年、社会学や人類学の分野で注目を集めており、新しい研究分野として発展しています。

autoethnography

自己民族誌

研究者自身の個人的な経験を分析し、文化的な理解を深める手法です。研究者自身が調査対象の一部となり、自己の経験を通して文化や社会現象を考察します。従来の民族誌とは異なり、主観的な視点を重視する点が特徴です。社会学、教育学、コミュニケーション学などの分野で使用されています。

使用シーン

アカデミック

社会学、人類学、文化人類学などの分野の研究論文や学術書で頻繁に使用されます。例えば、「地域社会の食文化に関する民族誌的研究」のように、特定の集団や文化を深く掘り下げて記述する際に用いられます。また、質的研究法を説明する文脈で、データ収集・分析手法としての民族誌が言及されることも多いです。

ビジネス

マーケティングやUXリサーチの分野で、顧客の行動やニーズを理解するために使用されることがあります。例えば、「顧客の購買行動に関する民族誌的調査」のように、顧客の生活空間に入り込み、観察やインタビューを通じてインサイトを得る手法として用いられます。また、組織文化の研究においても、従業員の行動様式や価値観を理解するためにethnographyが用いられることがあります。

日常会話

日常生活での会話で直接使われることは稀ですが、ドキュメンタリー番組やノンフィクション書籍などで、異文化や社会現象を解説する際に登場することがあります。例えば、「アマゾンの先住民族の生活を描いた民族誌」のように、特定の文化や社会の様子を詳細に伝える文脈で用いられます。教養番組などで、異文化理解の重要性を説く際に紹介されることもあります。

関連語

類義語

  • cultural anthropology

    文化人類学。学術分野を指す言葉で、特定の文化や社会を研究する学問領域全般を指します。大学の学部名や研究テーマとして用いられることが多いです。 【ニュアンスの違い】「ethnography」が具体的な調査方法や記述を指すのに対し、「cultural anthropology」はより広い学問分野を指します。「ethnography」はその一部の手法です。 【混同しやすい点】「ethnography」は研究の成果物である記述や論文を指すこともありますが、「cultural anthropology」は学問分野そのものを指すため、置き換えられる場面は限られます。

  • フィールドワーク。研究者が特定の場所(フィールド)に赴き、直接観察やインタビューを通じてデータを収集する調査活動を指します。人類学、社会学、地理学などで用いられます。 【ニュアンスの違い】「ethnography」はフィールドワークを通じて得られたデータに基づいて記述された研究成果を指しますが、「fieldwork」はデータ収集のプロセスそのものを指します。 【混同しやすい点】フィールドワークはエスノグラフィーを作成するための手段の一つであり、イコールではありません。フィールドワークの結果がエスノグラフィーとしてまとめられます。

  • case study

    ケーススタディ。特定の個人、グループ、組織、イベントなどを詳細に分析する研究手法。ビジネス、医学、教育など幅広い分野で用いられます。 【ニュアンスの違い】「ethnography」が文化や社会全体の記述を目指すのに対し、「case study」は特定の事例に焦点を当てて深く掘り下げます。エスノグラフィーは、複数のケーススタディを包含することもあります。 【混同しやすい点】エスノグラフィーが文化的な文脈全体を理解しようとするのに対し、ケーススタディは特定の事例の分析に重点を置くため、研究のスコープが異なります。

  • 参与観察。研究者が調査対象となる集団やコミュニティに実際に参加し、内部からの視点で観察やインタビューを行う調査手法。社会学や人類学でよく用いられます。 【ニュアンスの違い】「ethnography」は参与観察を含む様々なデータ収集方法に基づいて記述された研究成果を指しますが、「participant observation」はデータ収集の具体的な方法の一つです。 【混同しやすい点】参与観察はエスノグラフィーを作成するための重要な手法ですが、エスノグラフィーは参与観察だけでなく、他のデータ収集方法(インタビュー、文献調査など)も含む場合があります。

  • qualitative research

    質的研究。数値データではなく、インタビュー、観察、テキスト分析などを通じて、人々の経験、感情、行動などを深く理解しようとする研究手法。社会科学、教育学、看護学などで用いられます。 【ニュアンスの違い】「ethnography」は質的研究の一つの方法であり、特定の文化や社会の全体像を記述することを目指します。質的研究はより広い概念で、エスノグラフィー以外の様々な手法を含みます。 【混同しやすい点】エスノグラフィーは特定の文化や社会に焦点を当てる質的研究ですが、質的研究はより広い範囲の問題を扱うことができます。例えば、特定の教育プログラムの効果をインタビューで評価する研究は質的研究ですが、エスノグラフィーではありません。

  • social research

    社会調査。社会現象や社会問題を理解するために、様々なデータ収集方法(アンケート、インタビュー、統計分析など)を用いて行う研究。社会学、政治学、経済学などで用いられます。 【ニュアンスの違い】「ethnography」は社会調査の一つの方法であり、特定の文化や社会を深く理解するために、参与観察やインタビューなどの質的なデータ収集方法を重視します。社会調査はより広い概念で、量的なデータ収集方法も含む。 【混同しやすい点】エスノグラフィーは質的なデータに重点を置く社会調査ですが、社会調査は量的なデータも扱うことができます。例えば、大規模なアンケート調査は社会調査ですが、エスノグラフィーではありません。

派生語

  • 『民族的な』という意味の形容詞。元々は『民族誌の』という意味合いも持っていたが、現在では民族そのものや民族特有の文化・慣習を指すことが多い。学術論文やニュース記事で頻繁に使われ、政治的な文脈でも登場する。

  • 『民族性』という意味の名詞。抽象的な概念を表し、民族集団に共通する文化、言語、アイデンティティなどを指す。社会学、人類学、政治学などの分野でよく用いられ、学術論文や政策文書で頻出する。

  • 『自民族中心主義』という意味の名詞。接頭辞『ethno-(民族)』と『centrism(中心主義)』が組み合わさった語。自民族の文化や価値観を基準に他民族を評価する傾向を指し、社会学や人類学で用いられる学術用語。国際関係や多文化共生を議論する際にも登場する。

反意語

  • universalism

    『普遍主義』という意味の名詞。特定民族や文化に限定されず、全ての人々に共通する価値や原理を重視する立場を指す。民族誌(ethnography)が特定の文化や社会を深く掘り下げるのに対し、普遍主義は文化や社会の違いを超えた共通性を探求する。哲学、倫理学、政治学などの分野で用いられ、国際法や人権思想の根底にある概念。

  • 『一般化』という意味の名詞。特定の事例やデータから、より広範な範囲に適用できる法則や結論を導き出すこと。民族誌(ethnography)が特定の民族や文化の固有性を詳細に記述するのに対し、一般化は個別の事例を超えた共通のパターンや傾向を見つけ出すことを目指す。統計学、社会科学、自然科学など幅広い分野で使用される。

語源

"Ethnography(エスノグラフィー)」は、民族誌、文化理解を意味する言葉です。語源はギリシャ語に遡り、「ethnos(民族)」と「graphia(記述)」が組み合わさって出来ています。「ethnos」は、共通の文化や歴史を持つ人々の集団、つまり「民族」を指します。例えば、「民族衣装」という言葉を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。「graphia」は「書くこと」「記述」を意味し、英語の「graphic(図解の)」や「graph(グラフ)」といった単語にもその痕跡が見られます。したがって、ethnographyは文字通りには「民族の記述」を意味し、特定の民族や文化を詳細に観察し、記述する研究手法を指すようになりました。これは、単に情報を羅列するのではなく、その文化を生きる人々の視点から深く理解しようとする試みです。

暗記法

エスノグラフィーは、異文化への謙虚な探求の記録です。初期は西洋中心の視点でしたが、参与観察の導入で、研究者の主観と倫理観が重視されるようになりました。現代では企業文化やオンラインコミュニティも対象とし、異文化理解と自己理解を深める鏡として機能します。他者を尊重し、多文化共生社会を築くための羅針盤として、その役割はますます重要になっています。

混同しやすい単語

etymology

『ethnography』と語頭の音が似ており、どちらも学術的な単語であるため混同しやすい。スペルも前半部分が似ている。意味は『語源』であり、ある単語の起源や歴史を指す。品詞は名詞。日本人学習者は、それぞれの単語が扱う対象の違い(民族誌 vs. 語源)を意識する必要がある。語源的に見ると、etymology はギリシャ語の『etymon』(真実の意味)に由来し、言葉の真実を探求するという意味合いがある。

ethnology

『ethnography』とスペルが非常に似ており、意味も関連するため混同しやすい。ethnology は『民族学』と訳され、民族の比較研究を行う学問分野。ethnography が特定の民族の記述を重視するのに対し、ethnology は比較を通じて人類普遍の法則を探求する。日本人学習者は、-graphy(記述)と -logy(学問)の違いに着目すると良い。-logy は「〜学」を意味する接尾辞で、biology(生物学)など他の単語にも見られる。

autobiography

語尾の -graphy が共通しており、スペルも長いため混同しやすい。autobiography は『自伝』という意味。ethnography が他者の文化を描写するのに対し、autobiography は自分自身の人生を描写する。日本人学習者は、auto-(自己)という接頭辞の意味を理解すると区別しやすい。ギリシャ語の autos(自己)に由来し、automobile(自動車)などにも使われる。

orthography

語尾の -graphy が共通しており、スペルも似ているため混同しやすい。orthography は『正書法』、つまり正しい綴り方の体系を意味する。ethnography が文化の記述であるのに対し、orthography は文字の正しい書き方に関するもの。日本人学習者は、ortho-(正しい)という接頭辞の意味を理解すると区別しやすい。ギリシャ語の orthos(正しい)に由来し、orthodontics(歯列矯正)などにも使われる。

demography

語尾の -graphy が共通しており、スペルも似ているため混同しやすい。demography は『人口統計学』という意味。ethnography が民族誌であるのに対し、demography は人口の統計的分析を行う。日本人学習者は、demo-(人々)という接頭辞の意味を理解すると区別しやすい。ギリシャ語の demos(人々)に由来し、democracy(民主主義)などにも使われる。

stenography

語尾の -graphy が共通しており、スペルもいくらか似ているため混同しやすい。stenography は『速記術』という意味。ethnography が文化の記述であるのに対し、stenography は手書きによる高速記録技術を指す。日本人学習者は、steno-(狭い、短い)という接頭辞の意味を理解すると区別しやすい。ギリシャ語の stenos(狭い)に由来する。

誤用例

✖ 誤用: I did ethnography on the local ramen shop.
✅ 正用: I conducted an ethnographic study of the local ramen shop.

While 'ethnography' can refer to the *process* of ethnographic research, it more commonly denotes the *written result* of that research (the ethnography itself). Using 'do ethnography' implies a casualness inappropriate for academic or professional contexts. Japanese learners might directly translate '〜について民族誌をやる' into 'do ethnography on ~', but English prefers a more formal phrasing like 'conduct an ethnographic study of ~'. This also reflects a subtle cultural difference: English often favors explicitly naming the *type of study* being undertaken, whereas Japanese might imply it through context.

✖ 誤用: His ethnography was very subjective, so it wasn't objective.
✅ 正用: His account was very subjective, so it lacked objectivity, deviating from the standards of proper ethnography.

While all ethnography inherently involves a degree of subjectivity, it's a misunderstanding to equate 'subjective' with a *lack of rigor* or value. Ethnography, as a discipline, strives for reflexivity – acknowledging and accounting for the researcher's own biases. The first sentence implies that subjectivity *automatically* invalidates the work as ethnography. A Japanese learner might focus on the binary opposition of 'subjective' and 'objective', missing the nuanced understanding that ethnography embraces subjectivity as part of the research process. The corrected sentence clarifies that while subjectivity is present, the account *deviated from the standards* of how it's handled in ethnography. The key is to emphasize that ethnography has standards that must be followed, and that simply being subjective does not remove those standards.

✖ 誤用: The ethnography of my family is very interesting.
✅ 正用: An account of my family history and cultural practices would be very interesting.

Ethnography typically focuses on groups larger than a single family. While a family history *could* incorporate ethnographic methods, calling it 'the ethnography' of one's family sounds awkward and suggests a misunderstanding of the scope of ethnographic inquiry. Japanese learners might be tempted to directly translate '家族の民族誌' as 'the ethnography of my family', without considering the specific connotations and scale typically associated with the term. Also, remember the first example where ethnography is a written document. In this case, it makes no sense to say that 'the ethnography is very interesting'. It is more natural to say that the topic is interesting. The correction avoids the term altogether, suggesting a more general 'account' of family history and cultural practices. This emphasizes that while family history can be interesting, it doesn't automatically constitute ethnography.

文化的背景

「エスノグラフィー(ethnography)」は、単なる文化記述ではなく、異文化理解への謙虚な姿勢と、自己の文化を相対化する視点を象徴します。それは、見慣れない他者の生活様式に足を踏み入れ、彼らの言葉に耳を傾け、その文化固有の論理を内側から理解しようとする、知的冒険の記録なのです。19世紀後半、人類学が学問として確立する過程で、エスノグラフィーは未開社会の記録という形で始まりました。初期の人類学者は、植民地主義の時代背景のもと、西洋文明の進歩を前提とした進化論的な視点から異文化を観察し、記録しました。彼らの記述は、しばしば異文化を「未開」で「遅れた」ものとして描き出す傾向があり、その背後には、西洋中心主義的な価値観が色濃く反映されていました。

しかし、20世紀に入ると、エスノグラフィーは大きな転換期を迎えます。マリノフスキーのような研究者が、長期にわたる現地調査(フィールドワーク)を通じて、参与観察という手法を確立しました。参与観察とは、研究者が調査対象となる人々の生活に実際に参加し、彼らと同じように生活をすることで、文化を内側から理解しようとする方法です。この手法の登場により、エスノグラフィーは単なる客観的な記録から、研究者自身の主観や解釈が深く関わる、より複雑なプロセスへと変化しました。研究者は、自分の文化的な偏見や先入観を自覚し、それを乗り越えながら、異文化を理解しようと努める必要が生じたのです。

現代のエスノグラフィーは、企業文化の研究、都市における移民コミュニティの調査、オンラインゲームの世界の分析など、その対象範囲を大きく広げています。それは、異文化理解のためのツールであると同時に、自己理解のための鏡でもあるのです。エスノグラフィーを通じて、私たちは他者の文化を理解するだけでなく、自分自身の文化や価値観を相対化し、より深く理解することができます。例えば、ある企業のエスノグラフィー調査は、従業員の行動パターンやコミュニケーション様式を明らかにし、組織文化の改善に役立てることができます。また、オンラインゲームのエスノグラフィーは、バーチャルな世界における人間関係やコミュニティ形成のメカニズムを解明する手がかりとなるでしょう。

エスノグラフィーは、常に倫理的な問題と向き合わなければなりません。研究者は、調査対象となる人々のプライバシーを尊重し、彼らの権利を保護する義務があります。また、調査結果を公表する際には、彼らの文化や生活様式を誤解や偏見に基づいて描写することがないように、細心の注意を払う必要があります。エスノグラフィーは、単なる学術的な研究にとどまらず、異文化理解を促進し、多文化共生社会を実現するための重要なツールとなり得るのです。それは、異なる文化を持つ人々が互いを尊重し、協力し合いながら、より豊かな社会を築き上げていくための、知的羅針盤となるでしょう。

試験傾向

英検

長文読解で社会科学系のテーマで出題される可能性あり。準1級以上でまれに語彙問題として出題されることも。人類学、社会学関連のテーマで頻出。形容詞形、関連語も覚えておくこと。

TOEIC

TOEICでは出題頻度は低め。ただし、ビジネス関連の学術的な文書を扱う場合、読解問題で登場する可能性はある。マーケティングリサーチの文脈で使われることがある。

TOEFL

リーディングセクションで頻出。アカデミックな内容、特に社会科学、人類学、文化研究などのテーマでよく見られる。文脈から意味を推測する能力が重要。ライティングセクションで使うことは稀。

大学受験

難関大学の長文読解問題で出題される可能性あり。社会学、文化人類学系のテーマで登場しやすい。文脈から意味を推測する力と、関連知識があると有利。記述問題で内容説明を求められることも。

免責事項

英単語学習ラボは生成AIで機械的に意味や英語表現を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。

このページについて

作成:英単語学習ラボ
生成支援:Google Gemini
最終更新:2025年8月4日

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