affirmative action
積極的格差是正措置
人種、性別、民族など、歴史的に差別されてきた集団に対して、教育や雇用などの機会を積極的に提供することで、社会的な不均衡を是正しようとする政策や活動のこと。単に機会均等を提供するだけでなく、積極的に優遇措置を講じる点が特徴。
The university decided to use affirmative action to help more diverse students get accepted.
その大学は、より多様な学生が合格できるよう、アファーマティブ・アクションを導入することを決めました。
※ 大学の広報担当者が、新しい入学方針について説明している場面を想像してみましょう。この例文は、大学が多様な背景を持つ学生を受け入れるために、具体的な手段として「affirmative action」を用いる典型的な状況を描写しています。「decided to do(〜することに決める)」は、何かを実行すると決断する際によく使われる表現です。
Our company believes affirmative action can create a fairer workplace for everyone.
私たちの会社は、アファーマティブ・アクションが全ての人にとってより公平な職場を作れると信じています。
※ 会社の人事部長が、社員会議で会社の新しい方針について熱く語っている場面です。この例文は、企業が雇用における公平性を高めるために「affirmative action」を肯定的に捉えている状況を示しています。「believe that S + V(SがVだと信じる)」の「that」は、この例文のように省略されることがよくあります。
Many people are debating if affirmative action is still necessary today.
多くの人々が、アファーマティブ・アクションが今日でもまだ必要なのかどうか議論しています。
※ テレビの討論番組で、コメンテーターたちが真剣に意見を交わしている場面を思い浮かべてください。この例文は、「affirmative action」が社会的な議論の対象となり、その有効性や必要性について意見が分かれる典型的な状況を表しています。「debate if/whether S + V(SがVかどうか議論する)」は、何かについて賛否両論があるときに使われる便利なフレーズです。
アファーマティブアクション
上記の日本語訳をカタカナにしたもの。報道や論文など、比較的フォーマルな文脈でも用いられる。
Looking at the university's website, she learned about their affirmative action policy to help diverse students.
大学のウェブサイトを見て、彼女は多様な学生を支援するためのアファーマティブアクションの方針について知りました。
※ この例文は、学生が大学の入学制度について調べている情景を描写しています。大学が学生の多様性を増やすために、特定の背景を持つ学生に機会を与える政策を「affirmative action policy」と呼ぶことはとても一般的です。「policy」は「方針」という意味です。
Our company started an affirmative action program to hire more women and minorities.
私たちの会社は、より多くの女性やマイノリティを雇用するためのアファーマティブアクションプログラムを開始しました。
※ この例文は、企業がより公平な職場環境を目指して、積極的に多様な人材を採用しようとしている様子を表しています。「program」は「計画」や「制度」という意味で、「affirmative action program」という形でよく使われます。企業が社会的な責任を果たす場面で耳にする表現です。
I read a news article discussing how affirmative action affects college admissions.
アファーマティブアクションが大学の入学にどのように影響するかを議論しているニュース記事を読みました。
※ この例文は、ニュースや社会的な議論の文脈で「affirmative action」が使われる典型的な例です。特に大学の入学(college admissions)は、この政策がよく議論される分野の一つです。「affect(s)」は「~に影響を与える」という意味で、ニュース記事などで頻繁に使われる動詞です。
コロケーション
アファーマティブアクションを実施する、施行する
※ 「implement」は、政策や計画などを実行に移す意味を持つ動詞です。アファーマティブアクションを単に「行う」だけでなく、具体的な制度や措置として導入・運用するニュアンスを含みます。ビジネスや行政の文脈で頻繁に使われ、口語よりもフォーマルな表現です。似た表現に「enact affirmative action」がありますが、「enact」は法律や規則を制定・施行する意味合いが強いため、アファーマティブアクションを法制化する場合に特に適しています。
アファーマティブアクションを支持する、擁護する
※ アファーマティブアクションの賛成意見を表明する際に用いられます。「support」は、単純な賛成だけでなく、積極的に支援する意味合いも含むため、政治的な議論や社会運動の文脈でよく使われます。対義語としては「oppose affirmative action」があり、反対意見を表明する際に使用します。また、「advocate for affirmative action」は、より積極的にアファーマティブアクションを提唱・推進するニュアンスを持ちます。
アファーマティブアクションに異議を唱える、法的異議申し立てをする
※ アファーマティブアクションの正当性や合法性に疑問を呈し、異議申し立てや訴訟を起こすことを意味します。法的な文脈でよく用いられ、「challenge」は単なる反対意見ではなく、具体的な行動を伴うニュアンスを含みます。「legally challenge affirmative action」のように、副詞「legally」を伴うことで、法的な手段に訴えることをより明確に表現できます。
アファーマティブアクションの恩恵を受ける
※ アファーマティブアクションによって有利な扱いを受けたり、機会を得たりすることを意味します。特に、これまで差別されてきたグループのメンバーが、アファーマティブアクションによって教育や雇用などの機会を得る状況を指します。「benefit」は、恩恵を受けるというポジティブな意味合いを持つため、アファーマティブアクションの肯定的な側面を強調する際に用いられます。ただし、文脈によっては、不当な恩恵を受けているという批判的なニュアンスを含むこともあります。
アファーマティブアクションの目標と達成期限
※ アファーマティブアクションの具体的な目標(採用数、昇進率など)と、それを達成するための期限を設定することを指します。企業や政府機関がアファーマティブアクションを実施する際に、進捗を管理し、責任を明確にするために用いられる表現です。「goals」は具体的な数値目標、「timetables」は達成までのスケジュールを意味し、両方を合わせてアファーマティブアクションの計画性を強調します。ビジネスや行政の文脈で頻繁に使用されます。
アファーマティブアクションにおける逆差別
※ アファーマティブアクションが、かえって多数派グループ(例えば白人男性)に対する差別を生み出すという主張を指します。「reverse discrimination」は、本来差別是正を目的とするアファーマティブアクションが、意図せぬ結果として新たな差別を生み出してしまうという批判的な視点を表します。議論の多いテーマであり、政治や社会問題に関する文脈で頻繁に登場します。
アファーマティブアクションの遺産、アファーマティブアクションが残したもの
※ アファーマティブアクションが過去に社会に与えた影響や、現在も残る制度・考え方を指します。「legacy」は、過去の出来事が現在に与える影響を意味し、アファーマティブアクションの歴史的意義や、その後の社会の変化を評価する際に用いられます。肯定的な意味合いだけでなく、否定的な影響も含めて、多角的に評価するニュアンスを含みます。歴史、政治、社会学などの分野でよく用いられます。
使用シーン
大学の講義や論文で頻繁に使用されます。特に、社会学、政治学、法学などの分野で、差別是正政策や多様性に関する議論において不可欠な用語です。例えば、「アファーマティブアクションの歴史的背景と現代的課題」といったテーマで研究発表が行われたり、「アファーマティブアクションは逆差別にあたるのか」といった倫理的な問題を考察する際に用いられます。学術論文では、略語の 'AA' が用いられることもあります。
企業の人事部門やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)関連の部署で、採用や昇進における多様性を推進する施策を説明する際に使用されます。例えば、「当社はアファーマティブアクションに基づき、女性管理職の割合を向上させる目標を設定しています」といった文脈で、社内文書や報告書、企業のウェブサイトなどで見られます。また、従業員向けの研修プログラムで、アファーマティブアクションの意義や法的な側面について解説されることもあります。
日常会話で直接使われることは少ないですが、ニュースやドキュメンタリー番組などで、社会問題や政治に関する報道の中で言及されることがあります。例えば、「最高裁判所がアファーマティブアクションに関する訴訟の判決を下しました」といったニュース記事を読んだり、アメリカの大学における入学選考制度に関するドキュメンタリーを視聴したりする際に、この言葉に触れる機会があります。ただし、一般の人がこの言葉を積極的に使う場面は限られています。
関連語
類義語
- Equal Opportunity
機会均等。人種、性別、宗教、出身地などに関わらず、すべての人に平等な機会を与えることを指します。ビジネス、教育、雇用など幅広い分野で使われます。法律や企業のポリシーで定められていることが多いです。 【ニュアンスの違い】"Affirmative action"よりも広い概念で、差別をなくし、誰もが平等に競争できる状況を作ることに重点を置いています。具体的な優遇措置を伴わない場合もあります。 【混同しやすい点】"Equal Opportunity"は、差別をなくすための原則であり、"Affirmative action"は、過去の差別を是正するための積極的な措置であるという違いを理解する必要があります。前者はより普遍的で、後者は特定の状況下でのみ適用されます。
- Diversity and Inclusion (D&I)
多様性と包括性。組織や社会において、様々な背景を持つ人々を受け入れ、尊重し、その能力を最大限に活用することを目指す概念です。企業の人事戦略や社会運動のスローガンとして用いられます。 【ニュアンスの違い】"Affirmative action"が特定のグループに対する優遇措置を伴う場合があるのに対し、D&Iはより包括的な視点から、組織全体の多様性を高め、すべての人が活躍できる環境を作ることを重視します。 【混同しやすい点】D&Iは、単に多様な人材を集めるだけでなく、それぞれの個性を尊重し、組織への帰属意識を高めることが重要です。"Affirmative action"が結果の平等を目指すのに対し、D&Iはプロセスの平等とインクルージョンを重視する傾向があります。
- Positive Discrimination
積極的差別。特定のグループ(マイノリティ、女性など)に対して、雇用や教育などの機会を優先的に与える政策を指します。主にヨーロッパやイギリスで使用される言葉です。 【ニュアンスの違い】"Affirmative action"とほぼ同義ですが、より直接的に差別を是正するという意味合いが強く、批判的なニュアンスを含むことがあります。日本語の「逆差別」に近い概念です。 【混同しやすい点】"Positive Discrimination"は、英語圏の一部で使用される言葉であり、アメリカ英語の"Affirmative action"とは異なる文化的背景を持つことを理解する必要があります。また、この言葉自体が論争の的となるため、使用には注意が必要です。
- Quota System
割り当て制度。特定のグループ(マイノリティ、女性など)に対して、一定の割合の雇用や入学枠を割り当てる制度です。政府や企業が、多様性を促進するために導入することがあります。 【ニュアンスの違い】"Affirmative action"の一つの具体的な方法として用いられることがあります。ただし、能力や適性に関わらず、機械的に割り当てるという批判を受けることもあります。 【混同しやすい点】"Quota System"は、結果の平等を重視するあまり、能力主義や公平性を損なう可能性があるという批判があります。"Affirmative action"全体が、必ずしもQuota Systemを意味するわけではありません。
- Outreach Programs
アウトリーチプログラム。特定のグループ(マイノリティ、低所得者層など)に対して、教育や雇用に関する情報を提供したり、支援を行ったりする活動です。大学や企業が、多様な人材を獲得するために実施することがあります。 【ニュアンスの違い】"Affirmative action"を支援するための活動であり、直接的な優遇措置を伴うわけではありません。潜在的な候補者に機会を知らせ、応募を促すことに重点を置いています。 【混同しやすい点】"Outreach Programs"は、機会の平等を実現するための手段であり、"Affirmative action"そのものではありません。アウトリーチ活動は、応募者の多様性を高めることを目指しますが、採用選考の基準自体を変更するものではありません。
- Preferential Treatment
優遇措置。特定のグループ(マイノリティ、女性など)に対して、他のグループよりも有利な条件を与えることです。雇用、教育、契約などで用いられます。 【ニュアンスの違い】"Affirmative action"は、Preferential Treatmentを含む場合がありますが、より広い概念です。Preferential Treatmentは、具体的な優遇措置そのものを指します。 【混同しやすい点】"Preferential Treatment"は、公平性を損なう可能性があるという批判があります。"Affirmative action"が、必ずしもPreferential Treatmentを意味するわけではありません。例えば、アウトリーチ活動は、Preferential Treatmentには該当しません。
派生語
『肯定する』という意味の動詞。肯定的な行動・言動を表す基本的な語彙。日常会話からビジネスシーン、法律文書まで幅広く用いられる。肯定の意思を示す際に頻繁に使われ、affirmative actionの根幹にある『肯定』という概念を理解する上で重要。
『肯定』『断言』という意味の名詞。自己啓発や心理学の分野で、目標達成のために肯定的な言葉を繰り返し唱える行為を指すことが多い。affirmative actionが目指す社会的な肯定・是正という概念を、個人のレベルに落とし込んだものと捉えることもできる。学術論文や心理学関連の書籍で頻出。
- affirmed
『肯定された』という意味の過去分詞形。法律や裁判の文脈で、判決や決定が支持されたことを示す際に用いられる。『The court affirmed the decision』のように使用。affirmative actionの合法性や正当性が争われる際に、判決が『affirmed』されるかどうかは重要な意味を持つ。
反意語
『差別』という意味の名詞。affirmative actionが是正しようとする差別の構造そのものを指す。人種、性別、宗教などに基づく不当な扱いを意味し、affirmative actionの議論において常にその対概念として登場する。日常会話、ニュース報道、学術論文など、あらゆる場面で使用される。
- reverse discrimination
『逆差別』という意味の名詞。affirmative actionが、特定のグループを優遇することで、別のグループに不利益をもたらすという批判的な視点から生まれた言葉。affirmative actionの倫理的・法的な議論において、中心的なテーマとなる。メディアや学術論文で頻繁に用いられ、肯定派と否定派の論争の焦点となる。
『中立性』という意味の名詞。affirmative actionは、社会における不平等を是正するために、意図的に特定のグループを優遇する政策であり、中立的な立場とは対立する概念。企業の人事政策や政府の政策決定において、中立性を保つことの重要性が強調される一方で、affirmative actionの必要性が議論される文脈で使用される。
語源
"Affirmative action"は、それぞれの単語が持つ意味合いから、その政策内容を理解しやすい複合語です。まず"affirmative"は、ラテン語の"affirmare"(確実にする、強くする)に由来し、"firmus"(強い、安定した)という語根を持ちます。日本語の「確言する」「断言する」といった言葉にも通じる、積極的な意味合いを含んでいます。一方、"action"はラテン語の"actio"(行動、活動)から来ており、"agere"(行う、実行する)という動詞が語源です。したがって、"affirmative action"全体としては、「積極的に行動を起こし、確実なものにする」という意味合いを持ちます。この二つの言葉が組み合わさることで、単に機会を提供するだけでなく、積極的に格差を是正し、公平な結果を目指すという政策の意図が表現されています。日本語の「アファーマティブ」というカタカナ語が、肯定的な意味合いで使われるのと同じように、この単語も積極的な意味合いを持つことを覚えておくと良いでしょう。
暗記法
アファーマティブ・アクションは、過去の差別を是正し、機会均等を目指すアメリカの政策です。1960年代の公民権運動から生まれ、当初は雇用機会の均等推進が目的でしたが、大学入学選考にも適用され、議論を呼びました。能力主義との兼ね合い、逆差別との批判など、多様な意見が存在します。最高裁判所の判断も変遷しており、アメリカ社会の根深い問題と理想を映し出す、複雑な概念です。
混同しやすい単語
『affirmative action』と『affirmation』は、どちらも『affirm(肯定する)』という語根を持ち、意味も関連するため混同しやすいです。『affirmation』は名詞で、『肯定』『断言』といった意味を持ち、個人的な目標達成などを促す文言を指すこともあります。一方、『affirmative action』は、差別是正措置という政策を指すため、文脈が大きく異なります。スペルも似ているため注意が必要です。
『affirmative action』と『information』は、どちらも長めの単語で、語尾の『-tion』が共通しているため、スペルを誤って記憶しやすいです。『information』は『情報』という意味で、日常的によく使う単語ですが、意味は全く異なります。発音も異なるため、スペルと発音をセットで覚えることが重要です。
『affirmative action』の構成要素である『action』自体も、文脈によっては混同される可能性があります。『action』は『行動』『行為』という意味ですが、『affirmative action』全体としては、単なる行動ではなく、積極的な是正措置を意味します。単独の『action』と複合語の『affirmative action』の違いを意識することが重要です。
『affirmative action』と『effective』は、どちらも『eff-』で始まる単語であり、発音も似ているため、特に聞き取りの際に混同しやすいです。『effective』は『効果的な』という意味の形容詞で、文脈も大きく異なります。例えば、『effective measures(効果的な対策)』のように使われます。発音とスペルを区別して覚える必要があります。
『affirmative action』の『affirmative』と『affect』は、スペルが似ており、発音も一部共通するため、混同しやすいです。『affect』は動詞で、『影響を与える』という意味です。名詞の『effect(影響)』と合わせて覚える必要があります。また、『affirmative』は形容詞であるのに対し、『affect』は動詞であるため、品詞の違いにも注意が必要です。
『affirmative action』と『initiative』は、どちらも政策や行動に関連する言葉であり、文脈によっては意味が曖昧になる可能性があります。『initiative』は『主導権』『率先』『発議』といった意味を持ち、個人や組織が自発的に行動することを指します。一方、『affirmative action』は、差別是正のための政策であり、意味合いが異なります。両者のニュアンスの違いを理解することが重要です。
誤用例
日本人学習者は「積極的」という言葉を直訳し、'aggressive' を使いがちですが、'affirmative action' の文脈では、これは不適切です。'Aggressive' は攻撃的なニュアンスを含み、肯定的な差別是正措置の意図とは異なります。代わりに 'proactive' (積極的な) を用いることで、是正措置が偏見や差別を解消するために積極的に行われていることを示し、よりバランスの取れた表現になります。また、'militant' は過激な印象を与え、さらに不適切です。日本語の『積極的』には多様な意味合いが含まれますが、英語では文脈に応じて適切な語を選ぶ必要があります。
この誤用は、'unfair advantage' という表現が、やや感情的で強い非難のニュアンスを含むため、議論の文脈において適していません。「不公平な優遇」という日本語を直訳すると、'unfair advantage' になりがちですが、より客観的な議論のためには、'potential unintended consequences' (意図せぬ結果の可能性)といった表現を使う方が建設的です。これは、アファーマティブ・アクションが、本来の目的とは異なる結果を生む可能性に対する懸念を示すもので、感情的な対立を避け、より知的な議論を促します。日本の文化では、直接的な批判を避け、遠回しな表現を好む傾向がありますが、英語での議論では、感情的な表現を避け、客観的な根拠に基づいた議論が求められます。
この誤用は、アファーマティブ・アクションを単純な「問題」として捉え、「disaster」という強い言葉で表現することで、議論を過度に単純化しています。アファーマティブ・アクションは、歴史的背景や社会構造が複雑に絡み合った問題であり、短絡的な解決策は存在しません。「問題」という言葉を安易に使うのではなく、「complex issue」(複雑な問題)として捉え、解決策も「careful consideration and nuanced solutions」(慎重な検討とニュアンスのある解決策)と表現することで、より深い理解と建設的な議論を促します。また、アファーマティブ・アクションは、社会正義、機会均等、多様性などの価値観が衝突する問題であり、一方的な視点から解決できるものではありません。英語では、このような複雑な問題を議論する際には、感情的な言葉を避け、客観的な視点を持つことが重要です。
文化的背景
「アファーマティブ・アクション(affirmative action)」は、単なる是正措置ではなく、過去の差別によって不利益を被った集団に対する積極的な機会均等の実現を目指す、アメリカ社会の根深い葛藤を象徴する言葉です。それは、自由と平等を謳うアメリカの理想と、現実の不平等の狭間で揺れ動く、複雑な社会構造の縮図と言えるでしょう。
アファーマティブ・アクションは、1960年代公民権運動の高まりの中で、ジョン・F・ケネディ大統領による行政命令によってその端緒が開かれました。当初は、政府との契約企業に対して、人種、肌の色、宗教、出身国に関わらず、雇用機会の均等を積極的に推進することを義務付けるものでした。しかし、その範囲は徐々に拡大し、大学入学選考などにも適用されるようになり、人種や民族的マイノリティに対する優遇措置として認識されるようになりました。この変化は、当初の目的であった「機会の均等」から、「結果の平等」へとシフトしていく議論を呼び起こし、賛否両論の激しい論争の的となりました。
アファーマティブ・アクションを巡る議論は、アメリカ社会における「メリトクラシー(能力主義)」の原則と深く結びついています。能力のある者が努力によって成功を掴むべきだという考え方は、アメリカンドリームの根幹をなすものですが、過去の差別によって教育や機会へのアクセスが制限されてきたマイノリティにとっては、フェアな競争条件とは言えません。アファーマティブ・アクションは、一時的な措置として、不当なハンディキャップを是正し、多様性豊かな社会を実現するための手段として擁護される一方で、逆差別であるという批判も根強く存在します。白人層やアジア系アメリカ人の中には、自身よりも成績が低いマイノリティが優先的に入学・採用されることに不満を抱く人々もおり、その感情は、政治的な対立を激化させる要因ともなっています。
最高裁判所は、アファーマティブ・アクションの合憲性について、長年にわたり判断を下してきました。人種を考慮すること自体は違憲ではないものの、人種を決定的な要因とすることは認められないという一貫した立場を示しています。しかし、2023年には、大学の入学選考におけるアファーマティブ・アクションを違憲とする判断を下し、今後の大学の選考プロセスに大きな影響を与えることが予想されます。アファーマティブ・アクションは、アメリカ社会における人種問題、機会均等、そして正義といった根源的なテーマを浮き彫りにする、複雑で多面的な概念であり、その歴史と現状を理解することは、現代アメリカ社会を理解する上で不可欠と言えるでしょう。
試験傾向
この単語が直接問われることは少ないですが、社会問題や政治に関する長文読解で背景知識として知っておくと有利です。特に準1級以上の級では、内容理解を深める上で重要になる可能性があります。
TOEIC L&Rでは、この単語が直接問われることは稀です。ただし、企業の人事戦略や多様性に関する話題が出題された場合、関連語句として登場する可能性があります。Part 7の長文読解で、文脈から意味を推測する必要があるかもしれません。
TOEFL iBTのリーディングセクションで、社会学、政治学、歴史学などのアカデミックな文章で頻出します。多様性、平等、差別是正などのテーマと関連して登場し、文章全体の議論を理解する上で重要なキーワードとなります。ライティングセクションでも、これらのテーマについて論述する際に使用する可能性があります。
大学受験の英語長文読解で、社会問題や歴史に関するテーマで出題される可能性があります。特に、難関大学の二次試験や記述式の問題では、この単語の意味を理解しているだけでなく、関連する背景知識や賛成・反対の議論を理解していることが求められることがあります。