watershed
第1音節にアクセントがあります。/ɔː/ は日本語の「オー」よりも口を大きく開けて発音します。 'ter'の部分は、アメリカ英語では「t」が軽くはじかれる音(日本語の「ラ」行に近い音)になることがあります。'shed'の 'sh' は、日本語の「シャ」行と同じように発音しますが、より息を強く出すことを意識しましょう。
転換点
文字通りには「分水嶺」。そこを境に流れが変わるように、歴史や状況が大きく変わる決定的な出来事や時点を指す。重要な決断、画期的な発明、大きな災害などが該当する。
Deciding to quit my stable job was a real watershed moment for me.
安定した仕事を辞めるという決断は、私にとってまさに人生の転換点でした。
※ この例文は、あなたが大きな決断をして、人生が大きく変わった瞬間の情景を描いています。安定した仕事を辞めるのは勇気がいりますが、その決断が「転換点」となったことが伝わりますね。 「watershed moment」は「決定的な瞬間」や「分水嶺となる出来事」という意味で、個人的な人生の節目を表すときによく使われます。「real」は「本当に」「まさに」という意味で、その出来事の重要性を強調しています。
The launch of their new smartphone became a watershed for the entire company.
彼らの新しいスマートフォンの発売は、会社全体にとっての転換点となりました。
※ この例文では、会社が開発した新製品が成功し、それが会社の未来を大きく変えるきっかけになった様子が描かれています。社員たちが喜び、会社の雰囲気が一変したようなイメージです。 「watershed for the company」のように、「~にとっての転換点」という形で使われることが多く、ビジネスや組織の状況が大きく変わる場面で頻繁に登場します。「launch」は「(新製品などの)発売」という意味で、ビジネスニュースなどでもよく耳にしますよ。
The invention of the internet was a watershed for how people connect globally.
インターネットの発明は、人々が世界的にどのようにつながるかにおいて、大きな転換点でした。
※ この例文は、インターネットの発明という、人類のコミュニケーションを根本から変えた、歴史的な出来事を表しています。世界中の人々が瞬時につながるようになった、その画期的な変化の瞬間を想像してみてください。 「watershed for how...」のように、「~のやり方においての転換点」という形で、ある技術や出来事が社会や人々の行動に大きな影響を与えたときに使われます。「invention」は「発明」という意味で、歴史的な事実や科学の進歩について話す際によく使われる単語です。
境界線
文字通りの「分水嶺」の意味。二つの異なる地域や勢力、考え方などを隔てる境界線を指す。物理的な地形だけでなく、抽象的な区分にも使われる。
The top of this mountain acts as a watershed, sending water to two different valleys.
この山の頂上は分水嶺として機能し、水を二つの異なる谷へ送っています。
※ この例文では、watershedの元々の意味である「分水嶺」が使われています。ハイキング中に山頂に立ち、雨水がどちらの方向に流れ出すかを想像すると、この言葉が物理的な「境界線」としてより鮮明にイメージできるでしょう。地理や自然について話す際に使われます。
For her, graduating from college was a real watershed, opening up new career paths.
彼女にとって、大学卒業は本当の転換点となり、新しいキャリアの道を開きました。
※ ここではwatershedが「人生の大きな転換点」や「節目」という意味で使われています。大学卒業、転職、結婚など、自分の人生や周りの人の人生で大きな変化があった時を思い浮かべてみましょう。その出来事が、その後の人生を大きく変える「境界線」になった、というニュアンスです。よく"a watershed moment"や"a watershed event"という形で使われます。
The invention of the internet was a watershed for how people communicate globally.
インターネットの発明は、人々が世界中でコミュニケーションをとる方法にとって、大きな区切りとなりました。
※ この例文では、watershedが「ある分野や歴史における重要な区切り」という意味で使われています。インターネットの発明のように、その後の社会のあり方を大きく変えるような出来事を指します。この言葉は、歴史的な出来事や社会の変化について話すときに、その出来事が「境界線」となり、その後の状況が大きく変わったことを説明するのに便利です。
画期的な
ある事柄が転換点となるような、非常に重要な、または革新的な性質を表す。watershed moment, watershed electionなどの形で用いられる。
Learning to code was a **watershed** moment in her career, opening many new doors.
プログラミングを学ぶことは、彼女のキャリアにとって画期的な瞬間であり、多くの新たな扉を開きました。
※ この例文は、個人にとっての大きな転機や、人生を良い方向に変えるような出来事を表しています。彼女が新しいスキルを習得し、それがきっかけで未来が大きく開けた、という前向きな情景が目に浮かびます。「watershed moment」は「画期的な瞬間」という意味で、特に人生やキャリアの大きな転換点を表す際によく使われる表現です。
The new medicine was a **watershed** discovery for treating this difficult disease.
その新薬は、この難しい病気の治療法にとって画期的な発見でした。
※ この例文は、科学や医療の分野における、それまでの常識を覆すような画期的な進歩や発見を表しています。研究者が難病の治療法につながる画期的な薬を見つけ、多くの患者に希望がもたらされる、という期待感のある情景が想像できます。「watershed discovery」で「画期的な発見」という意味になり、医療や技術のブレイクスルーを語る際によく使われます。
The company's decision to go green was a **watershed** moment for the whole industry.
その会社が環境に配慮する決断をしたことは、業界全体にとって画期的な出来事でした。
※ この例文は、ビジネスや社会全体に大きな影響を与える、重要な決断や出来事を描写しています。ある企業が環境保護のために大きな決断を下し、それが他の企業にも影響を与え、業界全体が変わっていく様子が伝わります。「go green」は「環境に配慮する、エコに取り組む」という意味の日常的な表現で、ビジネスの文脈で「watershed」が使われる典型的な例です。
コロケーション
分水嶺となる瞬間、歴史的な転換点
※ 文字通りには「分水嶺」を意味しますが、比喩的には『それまでとは全く違う流れが始まる重要な時点』を指します。政治、経済、社会、個人のキャリアなど、あらゆる分野におけるターニングポイントに使われます。単に『重要な瞬間』というだけでなく、『その出来事を境に状況が不可逆的に変化する』というニュアンスが強いのが特徴です。例えば、ある画期的な発明や、歴史的な選挙結果などが『a watershed moment』となり得ます。形容詞として使われることが非常に多いです。
歴史的転換点となる選挙、政治の勢力図を塗り替える選挙
※ 選挙の結果が、その後の政治や社会のあり方を大きく変えるような選挙を指します。単に政権交代が起こるだけでなく、国民の意識や価値観が大きく変化し、それまでの政治の常識が通用しなくなるような選挙が該当します。例えば、冷戦終結後の東欧諸国における民主化選挙や、アメリカの公民権運動後の選挙などが挙げられます。政治学や歴史学の文脈でよく用いられる表現です。形容詞+名詞のパターンで、選挙の重要性を強調する際に使われます。
画期的な合意、歴史的な協定
※ 国と国との間、あるいは企業間などで結ばれる、それまでの関係性を大きく変えるような重要な合意を指します。単に『合意』というだけでなく、その合意がもたらす影響の大きさを強調するニュアンスがあります。例えば、紛争終結のための和平合意や、自由貿易協定などが該当します。国際政治や経済の分野でよく用いられます。他の類似表現としては『landmark agreement』などがありますが、『watershed agreement』は特に『その合意を境に状況が大きく変わる』というニュアンスが強いです。
画期的な法律、歴史的な立法
※ 社会に大きな影響を与える、重要な法律の制定を指します。単に『法律』というだけでなく、その法律がもたらす変化の大きさを強調するニュアンスがあります。例えば、環境保護法や人権擁護法などが該当します。法律、政治、社会学などの分野でよく用いられます。形容詞+名詞のパターンで、法律の重要性を強調する際に使われます。
分水嶺に達する、転換点を迎える
※ ある物事が、それまでの状態から大きく変化する重要な時点に到達することを意味します。プロジェクトの進行、個人のキャリア、組織の成長など、様々な文脈で使用できます。『reach a turning point』と似た意味合いを持ちますが、『watershed』はより不可逆的な変化を伴うニュアンスを含みます。動詞+名詞のパターンで、具体的な変化の瞬間を捉える際に使われます。
分水嶺となる、転換点を示す
※ ある出来事や行動が、その後の流れを大きく変えることを意味します。例えば、ある企業の画期的な新製品の発売や、政治家の重要なスピーチなどが『mark a watershed』となり得ます。動詞+名詞のパターンで、過去の出来事がもたらした影響を評価する際に使われます。歴史的な視点から物事を語る際に適しています。
使用シーン
学術論文や講義で頻繁に使用されます。特に歴史学、政治学、環境学などの分野で、ある出来事や政策がその後の流れを大きく変えた「転換点」を指す際に用いられます。例:「The Treaty of Versailles was a watershed moment in 20th-century European history.(ベルサイユ条約は20世紀ヨーロッパ史における画期的な転換点だった)」のように使われます。また、地理学においては文字通り「分水嶺」の意味で使用されることもあります。
ビジネスシーンでは、プロジェクトの成否を分ける重要な局面や、市場の変化を示す「転換点」として使用されます。報告書やプレゼンテーションなど、フォーマルな文脈で用いられることが多いです。例:「The launch of our new product line proved to be a watershed moment for the company, significantly increasing our market share.(新製品ラインの発売は、当社の市場シェアを大幅に拡大する画期的な転換点となった)」のように使われます。
日常会話ではあまり使われませんが、ニュース記事やドキュメンタリー番組などで、政治的な出来事や社会現象の「転換点」を説明する際に使われることがあります。やや硬い表現なので、日常会話では「turning point」などのより平易な言葉が好まれます。例:「The election result was described as a watershed moment for the country.(その選挙結果は、国にとっての画期的な転換点だと評された)」のように使われることがあります。
関連語
類義語
- turning point
ある状況が劇的に変化する時点や出来事を指す。ビジネス、歴史、個人の人生など、幅広い分野で使用される。 【ニュアンスの違い】"watershed"と同様に重要な転換点を意味するが、より一般的な表現。"watershed"が分水嶺という比喩的な意味合いを持つため、より重大で不可逆的な変化を暗示するのに対し、"turning point"は必ずしもそうではない。 【混同しやすい点】"turning point"は「好転」の意味合いを含む場合があるが、"watershed"は必ずしもそうではない。状況が悪化する転換点にも使用できる。
目標達成や進捗を示す重要な出来事や時点。プロジェクト管理、個人のキャリア、歴史的な出来事などで使われる。 【ニュアンスの違い】"watershed"ほど劇的な変化を意味せず、長期的なプロセスの進展における重要な一歩というニュアンスが強い。ポジティブな意味合いで使われることが多い。 【混同しやすい点】"milestone"は進捗の指標であり、必ずしも状況全体の方向性を変えるものではない。"watershed"は状況の根本的な変化を示す。
- critical juncture
非常に重要な局面、岐路。政治、経済、歴史など、重大な決定や変化が起こる状況を指す。 【ニュアンスの違い】"watershed"と同様に重大な転換点を意味するが、よりフォーマルで学術的な文脈で使用されることが多い。差し迫った危機感や、重要な決定の必要性を強調する。 【混同しやすい点】"critical juncture"は、その後の展開が不確実であることを暗示する。"watershed"は、すでに変化が起こった後の状況を指すことが多い。
歴史的、文化的、あるいは個人的に重要な出来事、建造物、場所。記念碑的な意味合いを持つ。 【ニュアンスの違い】"watershed"と似たように、重要な出来事を指すが、"landmark"は時間的な転換点というよりは、記憶に残る象徴的な存在を指すことが多い。良い意味で使われることが多い。 【混同しやすい点】"landmark"は、必ずしも状況を大きく変えるとは限らない。むしろ、過去を振り返る際に重要な基準点となる。
- sea change
大きな変化、根本的な変化。社会、政治、経済など、広範囲にわたる変化を指す。 【ニュアンスの違い】"watershed"と同様に大きな変化を意味するが、"sea change"はより緩やかで、徐々に進行する変化を指すことが多い。比喩的な表現で、文学的な響きを持つ。 【混同しやすい点】"sea change"は、必ずしも特定の時点を指すのではなく、長期的な変化のプロセス全体を指す。"watershed"はある時点での劇的な変化を強調する。
- turning of the tide
状況が好転し始めること。主に苦境から脱し、良い方向へ向かう状況を指す。 【ニュアンスの違い】"watershed"が必ずしもポジティブな変化を意味しないのに対し、"turning of the tide"は明確に良い方向への転換を意味する。比喩的な表現で、希望や解放感を伴う。 【混同しやすい点】"turning of the tide"は、変化の始まりを指すことが多く、変化が完了した状態を指す"watershed"とは異なる。
派生語
- watered
動詞の過去形/過去分詞で「水が引かれた」「(比喩的に)薄められた、弱められた」という意味。watershedが分水嶺であることから、その先で水量が減るイメージ。日常会話や文学作品で比喩的に使われることが多いです。
- waterless
形容詞で「水のない」「乾燥した」という意味。watershedが水の流れを分ける場所であることから、その反対に水が存在しない状態を表します。主に地理的な記述や比喩表現で使われます。
- waterway
名詞で「水路」「航路」という意味。watershedが水の流れを決定づける場所であることから、水が通る道を表します。地理、交通、環境に関する文脈で使われます。
反意語
「集中」「収束」という意味。watershedが流れを分けるのに対し、convergenceは複数の流れが一つの場所に集まることを指します。比喩的に、意見やアイデアの集約を意味することもあります。学術論文やビジネスシーンで使われます。
「合併」「統合」という意味。watershedが流れを分ける起点であるのに対し、mergerは複数のものが一つになることを表します。企業合併や組織統合など、ビジネスや政治の文脈で頻繁に使われます。
語源
"Watershed"は、文字通り「水を分ける場所」を意味し、water(水)とshed(分ける、流す)という二つの要素から成り立っています。この単語が比喩的に「転換点」や「画期的な出来事」を意味するようになったのは、分水嶺(watershed)が、降った雨がどちらの方向に流れるかを決定する境界線であるという事実に由来します。例えば、山脈の頂上などが分水嶺となり、そこを境に水が太平洋側と日本海側に分かれるように、watershedは物事が大きく方向転換するポイントを指すようになりました。日本語で言えば、「天下分け目の戦い」のようなイメージです。ある出来事がwatershed event(画期的な出来事)と呼ばれる場合、それはその後の歴史や状況を大きく変えるターニングポイントであることを意味します。
暗記法
「watershed(分水嶺)」は、文字通りの地理的境界から、人生や歴史の重大な転換点を指す比喩へと昇華しました。アメリカの自然保護運動を背景に、水の流れを変える分水嶺は、不可逆な変化の象徴に。法成立、文学の転換点、技術革新…あらゆる分野で未来を左右する瞬間に冠され、その重要性を際立たせるのです。過去、現在、未来を繋ぐ、重みのある言葉として響きます。
混同しやすい単語
『watershed』と『waterside』は、どちらも water が含まれるため、スペルが似ており混同しやすいです。『waterside』は『水辺』という意味で、場所を表します。一方、『watershed』は『分水嶺』や『重要な転換点』といった意味を持ち、抽象的な概念も表します。文脈から判断することが重要です。発音も、stressの位置が異なるため、注意が必要です(watershed: wa-ter-shed, waterside: wa-ter-side).
『watershed』と『waterspout』は、どちらも water が含まれる複合語であるため、混同される可能性があります。『waterspout』は『竜巻』を意味し、水面から立ち上る柱状の渦を指します。スペルも似ていますが、意味は全く異なります。waterspout は自然現象、watershed は地理的な境界や比喩的な転換点を表すという違いを意識しましょう。
『watershed』と『waters』は、どちらも water を含み、スペルが似ています。『waters』は『水域』や『海域』といった意味の複数形の名詞です。一方、『watershed』は単数形で、『分水嶺』や『転換点』といった意味を持ちます。文脈によって意味が大きく異なるため、注意が必要です。watershed は、waters + shed (分ける) というイメージで、語源的に理解すると覚えやすいでしょう。
『watershed』と『wasted』は、発音が似ており、特に早口で話されると聞き間違えやすいです。また、スペルも 'water' と 'waste' で始まりが似ているため、視覚的にも混同される可能性があります。『wasted』は『浪費された』や『無駄にされた』という意味の形容詞または動詞の過去分詞です。watershed は名詞ですが、wasted は基本的に動詞または形容詞として使われます。文法的な役割が異なる点に注意しましょう。
『watershed』と『watered』は、どちらも 'water' が含まれ、スペルが似ています。『watered』は『水を与えられた』という意味の動詞の過去形または過去分詞です。watershed は名詞で『分水嶺』や『転換点』を意味するのに対し、watered は動詞であり、文法的な役割が異なります。例えば、『watered the plants』のように使われます。
『watershed』と『workshop』は、どちらも 'shop' のような音が末尾にあるため、耳で聞いたときに混同する可能性があります。また、どちらも2つの単語が組み合わさった複合語である点も共通しています。『workshop』は『作業場』や『研修会』といった意味を持ちます。watershed は地理的な境界や比喩的な転換点を表すのに対し、workshop は具体的な場所や活動を表すという違いを意識しましょう。
誤用例
日本語の『分水嶺』という言葉から、文字通り『物事がスムーズに流れ出すきっかけ』と誤解されやすいですが、英語の『watershed』は多くの場合、ネガティブな転換点や重大な局面を指します。日本語の『分水嶺』が必ずしも悪い意味を含まないのに対し、英語では『もう後戻りできない』というニュアンスが強く、しばしば危機や転落を伴います。この背景には、英語圏の価値観として、一度信頼を失うと回復が難しいという認識があると考えられます。安易な直訳は避けましょう。
『watershed』を文字通り『水を分ける場所』と解釈し、『水』に関連する文脈で使用してしまう誤りです。もちろん、文字通りの意味もありますが、比喩表現として使う場合は『歴史的な転換点』という意味合いが強いです。日本人は、英単語を最初に覚える際に、どうしても日本語訳(ここでは『分水嶺』)に強く結びつけてしまいがちですが、英語の比喩表現は、その背景にある文化や歴史的文脈を理解しないと、意図しない誤解を生む可能性があります。この場合、印刷技術の革新が情報伝達の方法を根本的に変えたという点を強調することが重要です。
『watershed』を『瀬戸際』のような意味で使い、文字通りの『水』を守る文脈と組み合わせてしまう誤用です。日本語の『分水嶺』が『瀬戸際』の意味合いを持つこともありますが、英語の『watershed』は、より重大な、後戻りできない転換点を指します。この文脈では、『critical juncture(重大な岐路)』や『turning point(転換点)』といった表現がより適切です。また、英語では、比喩表現と具体的な状況を混同すると、文脈が不自然になることがあります。安易に日本語のイメージを当てはめず、英語の表現が持つニュアンスを理解することが重要です。日本人は、抽象的な概念を具体的なイメージで捉えようとする傾向がありますが、英語では、抽象的な概念は抽象的な言葉で表現する方が自然な場合があります。
文化的背景
「watershed(分水嶺)」は、文字通りの地理的な意味を超え、人生や歴史における重大な転換点、不可逆的な変化を象徴する言葉として深く根付いています。この言葉は、一度流れ出すと二度と元に戻らない水のように、ある出来事が状況を一変させ、その後の流れを決定づける瞬間を指し示す、力強い比喩として用いられます。
分水嶺という言葉が比喩的に用いられるようになった背景には、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのアメリカの自然保護運動の高まりがあります。広大な自然の中で、水は生命の源であり、地形を形作る力強い存在として認識されていました。分水嶺は、その水がどちらの方向に流れ出すかを決定する、まさに運命の岐路です。そのため、この言葉は、環境保護の文脈を超えて、政治、経済、社会、そして個人の人生における重要な決断や出来事を指す言葉として、広く使われるようになりました。例えば、ある法律の成立が「watershed moment」と表現される場合、それはその法律が社会に不可逆的な変化をもたらし、新たな時代を切り開くことを意味します。
文学や映画においても、「watershed」はしばしば物語の転換点として登場します。主人公が重大な決断を迫られ、その選択がその後の運命を大きく左右する場面で、「watershed」という言葉が使われることで、そのシーンの重要性が強調されます。また、歴史的な出来事を描いた作品では、戦争や革命などの社会を大きく揺るがす出来事が「watershed moment」として描かれることがあります。これらの作品を通じて、「watershed」は単なる言葉ではなく、人々の記憶に深く刻まれた歴史的な瞬間や、人生における重要な決断を象徴する言葉として、その意味を深めてきました。
現代社会においても、「watershed」は、テクノロジーの進化、社会の変化、政治的な変動など、様々な分野で重要な転換点を指し示す言葉として使われ続けています。気候変動問題における国際的な合意形成や、AI技術の発展などが「watershed moment」と表現されることで、これらの出来事が私たちの未来に与える影響の大きさが示唆されます。このように、「watershed」は、過去から現在、そして未来へと続く、人類の歴史と密接に結びついた、重要な言葉として、その存在感を放ち続けているのです。
試験傾向
- 出題形式: 主に長文読解、語彙問題(準1級以上)。ライティングやスピーキングで比喩表現として使うことも可能。
- 頻度と級・パート: 準1級、1級で比較的頻出。2級以下では稀。
- 文脈・例題の特徴: 環境問題、歴史、政治などアカデミックなテーマで「分水嶺」「転換点」の意味で登場しやすい。
- 学習者への注意点・アドバイス: 名詞としての「分水嶺、転換点」の意味と、出来事の「重要な局面」を表す比喩的な意味の両方を理解しておく。"at a watershed"という形で使われることも多い。
- 出題形式: 主に長文読解(Part 7)。稀に語彙問題(Part 5)。
- 頻度と級・パート: Part 7でたまに見られる程度。頻度は英検ほど高くない。
- 文脈・例題の特徴: ビジネス戦略、市場動向、技術革新など、ビジネス関連の文脈で「転換点」の意味で使われることが多い。
- 学習者への注意点・アドバイス: ビジネスシーンにおける「重要な転換点」という意味で捉える。関連語句(turning point, milestone)との区別を意識する。
- 出題形式: リーディングセクションで頻出。リスニングセクションでも講義形式で登場する可能性あり。
- 頻度と級・パート: リーディングセクションで頻繁に出題される。
- 文脈・例題の特徴: 歴史、科学、社会学など、アカデミックな内容の文章で「分水嶺」「転換点」の意味で使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: アカデミックな文章で頻繁に使われるため、必ず意味を覚えておく。文脈から意味を推測する練習も重要。同義語(turning point, critical juncture)も合わせて覚えておくと役立つ。
- 出題形式: 主に長文読解。稀に語彙問題。
- 頻度と級・パート: 難関大学の入試で頻出。標準的なレベルの大学でも出題される可能性あり。
- 文脈・例題の特徴: 社会問題、歴史、科学など、幅広いテーマで「分水嶺」「転換点」の意味で使われる。
- 学習者への注意点・アドバイス: 文脈の中で意味を捉える練習が重要。比喩的な意味で使われることが多いので、前後の文脈から判断する。類義語(turning point, critical moment)も覚えておくと役立つ。