英単語学習ラボ

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電圧で光を制御する液晶ディスプレイの構造と仕組みの図解
生命の神秘(生物学・化学)

液晶ディスプレイ(LCD)の仕組み

難易度: ★★☆ 想定学習時間: 約 6 対象単語数: 0

電圧をかけると分子の向きが変わり、光を通したり遮ったりする「液晶」。スマートフォンやテレビの画面を支える、そのprinciple(原理)。

この記事で抑えるべきポイント

  • 液晶とは、固体のように分子が規則的に並ぶ性質と、液体のように流動する性質を併せ持つ、物質の特殊な状態であること。
  • 液晶ディスプレイは、電圧をかけて液晶分子の向き(配向)を制御し、偏光フィルターと組み合わせることで光の透過をON/OFFする原理で動作すること。
  • フルカラーの映像は、バックライトの光を「光の三原色(赤・緑・青)」のカラーフィルターと、微細な画素(ピクセル)単位の液晶シャッターで制御することで作られていること。
  • 液晶という物質は、19世紀末に植物学者がコレステロール誘導体を観察している際に偶然発見されたものであり、生物学研究が起源であったという見方があること。

液晶ディスプレイ(LCD)の仕組み

私たちが日常的に使うスマートフォンの画面は、なぜあんなに薄く鮮明なのでしょうか。その鍵は「液晶」という、液体と結晶の中間の性質を持つ不思議な物質にあると言われています。この記事では、電圧で光を操る液晶ディスプレイの基本的な原理(principle)を、その発見の歴史と共に紐解いていきます。

「液体」でも「結晶」でもない、不思議な状態「液晶」

物質には通常、固体・液体・気体という三つの状態がありますが、液晶はそのどれにも当てはまらない「第四の状態」とも呼ばれます。固体のように分子が規則正しく並ぼうとする性質と、液体のように自由に流動する性質を併せ持っているのです。この、規則性と流動性というユニークな特性(property)こそ、電圧によって光を自在にコントロールするディスプレイ技術に不可欠な要素となりました。

電圧で光をON/OFFする仕組み

液晶ディスプレイの心臓部は、光を精密に制御するメカニズムにあります。まず、特定の方向に振動する光だけを通過させる「偏光フィルター(polarizer)」を2枚用意します。そしてその間に液晶層を挟み込みます。この液晶層に電圧(voltage)をかけない状態では、液晶分子は光の進路をねじるように整然と並び、光は2枚目のフィルターを通過できます。しかし、電圧をかけると分子の配向(orientation)が変化し、光の進路がねじれなくなるため、2枚目のフィルターで遮断されてしまいます。この光のON/OFFが、画面上の表示の基本となります。

白黒からカラーへ - 三原色が織りなす映像

光のON/OFFだけでは、画面は白黒(モノクロ)表示しかできません。私たちが目にする豊かな色彩は、どのようにして生まれるのでしょうか。その秘密は「カラーフィルター」と「画素」にあります。ディスプレイは、画像を構成する非常に小さな点である画素(pixel)の集合体です。各画素はさらに赤・緑・青の三つのサブピクセルに分かれています。背後から全体を照らすバックライト(backlight)の光を、画素ごとに液晶シャッターでON/OFFし、それぞれの色のフィルターを通過させる光の量を調整することで、あらゆる色が表現されるのです。

植物学者が見つけたとされる「光るコレステロール」

これほど高度な液晶技術ですが、その発見のきっかけが19世紀末の生物学研究にあったというのは驚きです。1888年、オーストリアの植物学者フリードリヒ・ライニッツァーは、ニンジンに含まれる成分の研究中、ある種のコレステロール(cholesterol)誘導体が特定の温度で濁った液体のようになり、さらに加熱すると透明になるという奇妙な現象を発見しました。この「二段階で溶ける」中間状態こそが、液晶の最初の発見でした。最先端の物理学ではなく、植物観察という偶然から、現代の巨大なディスプレイ産業の礎が築かれたのです。

結論

液晶ディスプレイとは、目に見えないほど小さな分子(molecule)一つ一つの振る舞いを、電圧という手段で巧みに制御し、巨大な映像として私たちの目に見える形に変換する技術の結晶です。この記事で解説した原理は、スマートフォンからテレビ、パソコンに至るまで、私たちのデジタルな生活を根底から支えています。何気なく見ている画面の裏側にある、科学と技術の精緻な仕組みに思いを馳せるきっかけとなれば幸いです。